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正月合宿・上河内岳
なりた よしまさ

山行日 2012年12月29日~2013年1月2日
メンバー (L)渡辺(守)、深谷、和田、成田

今年の正月山行は聖岳。日程は
1日目 畑薙湖~横窪小屋
2日目 横窪小屋~茶臼小屋 茶臼岳ピストン
3日目 茶臼小屋~上河内岳~聖平小屋
4日目 聖平小屋~聖岳ピストン
5日目 聖平小屋 ~畑薙湖

 コースとしては1日目から3日目までは何でもないが、核心部は4日目の聖岳ピストン。夏タイムで往復5時間だが、冬だとどの位かかるか分からないし、5日目は下山口の畑薙湖までが長い。本当に行けるのか疑問だったが(個人的には行けなくてもよいと思っていた)、やはり聖平まで行けずに上河内岳で引き返してきた。以下は、その報告です。

畑薙大吊橋 【12月29日 曇】
 東京駅22時に集合し雨の中、新静岡ICに向かう。東屋のあるSAを仮眠場所にしたいがこっち方面は疎いので「良い所ないかな」なんて話しながら足柄SAに休憩で立ち寄った。二階に上がってみると畳敷きの休憩室の電気が消えていて扉はオープンになっているので、ここを仮眠場所にさせてもらう。関係者らしい人が脇を通っていったが何も言われなかったからOKかなと勝手に判断。明け方「ここは休憩所ですから出て行って」と起こされる(入口は休憩所ではないから何人か横になっていた)。ずっと音楽が流れているので快適な場所ではないです。  畑薙ダムの駐車場には10台ほどあり、茶臼方面は光岳5人組と上河内1人だけで、他は赤石岳に向かったらしい。雨は上がったものの林道から見えるはずの畑薙山はガスで山頂が隠れている。畑薙大吊橋から登山道に入るが大吊橋は距離もあるし(180m)高度もある。さらにアルミの板は雪で滑り易く、渡るには迫力満点。送電巡視路の急坂を登るとウソッコ沢までトラバース気味にずっと下る。吊橋を5回くらい渡るとウソッコ沢小屋。ここから登山らしくなり横窪沢小屋まで2km、標高差400mの登りになる。予備日含めた7日間の荷物が重い。多分23kgはあるだろうか。中の段、横窪峠を越えて横窪沢小屋 。まだ雪らしい雪はないが、小屋の直ぐ近くで沢水を汲めるので水作りが助かり有り難い。今日は初日なので元気付けにニンニク入りキムチ鍋にする。生食材を担ぎ上げてくれたWさんお疲れ様。旨かったですよ。小屋は光組と年寄りソロと我々の3パーティ。

茶臼小屋 【12月30日 曇時々雨】
 光組は早々と暗い内に出発していった。続いて年寄りソロ。我々は薄明かりになってから出発。小屋の前にある道標は「茶臼小屋 1.9km 160分」。標高差800m、昨日に続き、急登の連続。光組が付けてくれたトレースは2,300m付近から登山道を離れてトラバースして茶臼小屋に向かっている。近道したと思うが、それでも5時間掛かった。小屋到着すると光組は出発準備。我々はここで泊まると言ったら、まだ早いだろうという顔だった。予定では茶臼ピストンだが天候は悪いし、雨で服も濡れたので明日登ることに変更する。小屋には青年ソロが昨日から停滞していたらしい。この人は南アが気に入ってあちこち写真を撮っているようだ。今日の夕飯はカレー野菜の煮込みうどん。長丁場になるから軽量化の指示があったのにCさんも背負ってきた。夜半から小屋がギシッと音を立てるほどの強風になった。

【12月31日 吹雪】
 4時に起床し様子を伺うが強風は収まっていない。青年ソロは諦めて下山。年寄りソロは上河内に向かって出て行く。我々は諦めぎみで停滞状況。3時間ほどして年寄りソロが帰ってきた。「あきまへんわ~。持っていかれますわ~。旦那はん」。稜線まで出たものの強風で撤退。この人は一昨日から我々と前後して登っていた。黙々とした雰囲気の人で話しかけられなかったが、テンションが上がっていたのか扉を開けた途端にこの第一声。関西人とは思わなかった。その後諦めて下山していった。そして天気は吹雪に変わり今日は誰も来ないのかなと思っていたら、G山の会2人と単独行が下から登ってきた。夕方、光組も戻ってきた。易老岳で引き返したようだ。

【1月1日 快晴】
 夜半の雪は止み風も弱まった。3:30に起床して新年の雑煮を食す。出発準備しているうちにG山の会は出て行ったものの直ぐに戻ってきた。強風だからもう少し様子を見るという。我々は月明かりの中を聖平に向かう。雪は硬く、このままなら聖平までラッセルは無さそうな感じ。稜線に上がると猛烈な風で耐風姿勢をとりながら一歩一歩進む。この先は稜線歩きなので、こんな調子では聖平までは無理と判断し一旦小屋に戻ることにした。我々の後に茶臼に向かった筈の単独行も、まもなく戻ってきたが全身霜まみれの冷凍人間の格好だった。これでは少し時間を置いた方がよさそうだと10時まで様子を見る。今日の聖平行きは時間的にも無理なので茶臼ピストンにしておこうかと話し合う。G山の会は9時半頃上河内岳に向かって出発。風は少し収まったようなので空身で再出発。明日の天気はまた崩れる予報なので先に上河内岳ピストンに変更し、状況によっては茶臼にも登ることにする。稜線に上がると相変わらずの強風。Lは引返したい様子だが、Wがあの先まで進んで景色を見てみようと引っ張る。風の通り道は抜けたのか抵抗は感じなくなった。青空が輝き、周囲の景色を見渡せる稜線歩きだが、ちょっと寒い。鞍部に下りた樹林は風がまったく無くぽかぽかした良い場所だ。前方に笊ヶ岳の稜線や富士山が見えてテン場には最適な場所を見つけた。次回?はここまで上がろうか。前方の上河内岳は青空に三角形の頂が突き刺さり見事な景色。登りは肩を目指して急斜面を進むが、なかなか辿り着かない。肩からも急登が続く。山頂頂上の道標は巨大な海老の尻尾が付いていたので削って記念写真。さすがに展望は良く、北の聖岳は奥聖が見えたが右側の山々(赤石岳、悪沢岳、富士山など)の展望が良い。  戻りは例の無風の鞍部から2,555mピークへ上がる稜線は再び強風が吹き出し(身体を確保しないと振られる程なので風速20mくらいか?)、よろけながら小屋に戻る。当然茶臼はパス。
 夕食は明日からの聖岳を中止したので本食のカレー鍋と予備食のサラダスパを食べ尽くす。ボリュームたっぷりの野菜入り。毎日こんなに旨い食事を頂いていいんですかね。そのため、ちょっと食べ過ぎて帰宅したら3kgも増えてました。

上河内岳を背景に上河内岳山頂

【1月2日 曇】
 昨夜降った雪でトレースは完全に消えていた。トラバース道は分からなく稜線に上がることに。樹林の中は雪が深いのでよくわからなかったが、なんとか夏道の青テープを見つけ稜線を目指す。後から来たおじさんもルートを探っていたが稜線で目印を見つけたようで声をかけてくれた。雪が深いのでワカンを履き、ひたすら急斜面を下る。行きでは落ち葉だった道が今度は凍結している箇所が多くアイゼンは履いたまま。今日から入山する登山者も多く、ウソッコ沢小屋付近で元会員の外人EとSに出会う。光岳に行くがスノーシュウを持ってこなかったが大丈夫かなと言っていた。稜線は雪が硬いから不要でしょうと言っておいた。どうだったかな。
 5日間入山して全て山小屋泊まり。茶臼小屋には3連泊した。こんな山行は初めてだったが、お陰様で吹雪の心配も無く、衣服も乾燥でき、荷物は外に置けて広々したテントで使わせてもらった。御礼に善意の箱に寄付。帰りの車中では北アで相次いで遭難があったニュースを聞いた。我々は無理せず、まあこんなもんでしょう。お疲れ様でした。来年は聖に行きましょうか。

〈コースタイム〉
【12月29日】 畑薙第一ダム(10:10) → ウソッコ沢小屋(13:20) → 横窪沢小屋(15:30)
【12月30日】 横窪沢小屋(6:20) → 茶臼小屋(11:10)
【12月31日】 起床(3:30)⇒停滞
【1月1日】 茶臼小屋(5:30) → 小屋戻り(6:40) → 再出発(10:35) → 無風の鞍部(12:05) → 上河内岳(12:50) → 茶臼小屋(14:50)
【1月2日】 茶臼小屋(6:45) → 横窪沢小屋(9:10) → ウソッコ沢小屋(10:40) → 畑薙第一ダム(13:20)

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