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北鎌尾根~槍ヶ岳
渡辺 守

山行日 2012年10月6日~9日
メンバー (L)渡辺(守)、大田、戸田

 今回は3連休に1日有給休暇を付けて、朝発で4日間のゆっくりとした行程を組んだ。しかも高瀬ダムからのルートにもかかわらずP2でなく北鎌沢からのアプローチ。3人とも初めてのルートであるし、8月の笹穴沢で滑落したとき傷めた私の膝がまだズキズキ痛むからだ。天気には比較的恵まれる方だが今回もこの選択が当り、6日の雨の降り出しそうな曇り空から7、8、9日と進むにつれて青空がどんどん広がり、クライマックスの8日は快晴無風状態で槍の穂を目指しての快適な尾根歩きとなった。そして9日は光り輝く紅葉を楽しみながら下山できた。
 朝一のあずさ号に乗って、信濃大町からタクシーで高瀬ダム、そこから二股まで歩くともう夕方になる。静かな幕場である。受付で確認すると連休初日の今日も1~2パーティー位しか入っていないそうだ。明日入るのは間違いなく我々だけ、北鎌尾根を独占できる可能性が高いと期待が膨らむ。天気も回復に向かっている。
息ぴったりのスクラム渡渉  7日は6時発、吊り橋を渡ると右が伊藤新道、左が北鎌尾根と小さく表示がでる。ここで整備道はなくなる。左側の川原に下りるとそのまま10回以上渡渉を繰り返しながら千天出合に向かう。特に危険な箇所はないが水量の多い場所ではスクラムで渡渉する。まるで沢登りにきた気分だ。千天出合には8時半到着、沢靴も持ってきたため「チャレンジアルパインクライミング」のコースタイムより1時間半時間短縮。頑張れば初日でここまで到着可能だったがあまりいい幕場がない。貧乏沢を過ぎ北鎌コルへの取付きには11時半到着(所要2時間半)。コルには15時到着(所要3時間)。千天出合以降は逆に1時間半多くかかった。北鎌沢の紅葉はとても綺麗だ。
 8日も6時前に順調にスタートするが、独標を臨むP8で滑落事故発生。谷底まで落ちたのか、途中のハイ松に引っかかり急死に一生を得ているのか滑落地点からは分からない。とりあえずハイ松の際までダブルで25m下降するが見当たらない、そこでシングルに切り替えてもらいさらに下降すると約45m地点で辛うじて松の間に挟まっていた。滑落した「私のザック」には、テント、シュラフ、着替え、食料、現金、免許証、家の鍵など全てが入っており、回収できていなかったら洒落では済まない。こんなに良い天気の中、行くのも戻るのも小屋まで一日で必死の行程が強いられたはずだ。滑落の原因は、出発しようとして背負いかけたザックを一度降ろした際に不安定な状態のまま離れたこと。
この後に滑落事故  その後はトラブルなく進み、独標上9時半到着(所要3時間)、北鎌平13時到着(所要3時間)。北鎌尾根は近く破線ルートになるのではと言われるとおり踏み跡が明瞭だ。しかし稜線とトラバースを自由自在に行ける感じでかえって迷う。稜線一本に決めればいいのだが、行き詰まると元の地点に戻るのが危険であるため、安全を考えてトラバースすることが多かった。結果としてしなくてもいい懸垂を2度ほどしたようだが、きちんとした支点があったため別に間違えた訳ではない。ルートを知るリーダーがいるか否かで、難易度も時間も大違いであることを今回も実感する。
 クライマックスの総仕上げは突然に訪れた。槍穂の登りはロープなしで行けるが、やはりここは最後の演出をしたいところだ。2ピッチ目は頂上やぐらの直ぐ下でビレイするため、一般登山者を観客に気持ちよく登れる。時には「ロープなんかいらないのに」と野次まがいのことを言う失礼な観客もいるらしいが、我々の場合は山ガールから拍手喝采をもらい山頂では握手、一緒に記念撮影も。とても気分が良かった。若手T君も鼻の穴を大きくして半ば興奮気味でした。ゆっくりと15時に登頂(所要1時間半)。
 翌日は新穂高温泉に下山。バス停付近は工事中でかなり様変わりしていた。無料公衆浴場がないのは残念だが、清潔で雰囲気もいい有料温泉が新たにバス停の上に出来ていた。とても充実した縦走でした。次は積雪期にP2からですね。

独標上でごきげんの二人槍穂の登攀歓喜の頂上にて

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