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新年山行・草戸山
小堀 憲夫

山行日 2013年1月20日
メンバー (L)原口、播磨、田原、江村(皦)、佐藤夫妻、広瀬(昭)、勝部、菅原夫妻、遊佐、吉田(貞)、小堀、他3名

メジロ  いつもの朝より少し早く目が覚めた。窓から覗くと道端に一週間前の大雪がまだ残っていた。庭にはメジロが遊びに来ていた。暖房をつけてコーヒーをいれた。良い香りと苦味で身体が目覚めた。昨夜のうちに用意したザックにつまみと酒を追加して玄関で綻びた登山靴を履いた。コーヒーの香りが残る鼻腔に、戸を開けた途端、新鮮な外気が飛び込んできた。新しい一日が始まるこの瞬間がたまらない。しかも今日は山の日だ。
 高尾駅に着くと、集合時間には15分以上早いのに、メンバーの大半が揃っていた。
「モウトウ、小堀~、こっちぃ~」
 いつもの田原さんの声だ。ひとしきり新年の挨拶などしてみれば、つい先日の忘年山行とほぼ同じメンバーだ。お互い無事年が越せて良かった、良かった!
 肝心のシェフ原口が寝坊したとのことで、待つ間の立ち話に花が咲いた。と言っても、話題は、病気、怪我、誰かの葬式、年金の話、子供、孫の自慢話にほぼ限定される。いやだ、いやだ、と思いながらもその話題にしっかり付いていっている自分がいた。
 やがて原口さんも到着していざ出発。JR高尾駅南口から草戸山に登るこのルートは、ホームから見える金色の大きな仏舎利様の塔が起点となる。これは、高尾みころも霊堂と言って、産業殉職者を合祀慰霊するために公益法人によって建てられたものだ。霊堂の横に、高尾天神社の石碑と牛のオブジェのある急な階段がある。頑張ってそれを登ると巨大な菅原道真公の銅像が現れる。確か九州の太宰府にもいらっしゃったなぁ、などと思いながら階段を見下ろすと、丁度、菅原さんが登って来るところだった。
 ルートは道真公とお別れして山道に入る。先頭でしばらく静かに歩いた。このルートはほとんどが雑木林の里山ルートで、途中、住宅街に降りたりもするが、人も少なく心安らかに歩ける。拓殖大の敷地と隣接するため、縄張り印の金網が煩いが、今回もレトリバーを連れた散歩中の中年男性に会っただけだった。
「ここも歩かれるようになったなぁ」
 誰に言うともなくその男性。後ろでは15名が皆お互いの近況報告か、おしゃべりに夢中。
『うるさくてすみません』
 ふと数メートル先のミズナラの木を見ると、コゲラが忙しそうに木をつついていた。最初はこちらの目の高さだったのが、木をつつきながら段々上に登っていった。

コゲラウソ

 またしばらく行くと、喉の辺りがだいだい色のずんぐりした小鳥が二羽、道案内をするように我々の前をしばらくの間飛んでいった。後で図鑑で調べたら、ウソと言う嘘みたいな名前の鳥だった。
 ルート半ば、1時間ほど歩いた小ピークで一息入れた後、なだらかなアップダウンを心静かに歩いた。やがて高尾山口からのルートと合流。標識には拓大分岐とある。分岐から約30分で草戸山頂上に到着。
 さあ、いよいよお待ちかねの大鍋宴会だ。テーブルベンチ2つと周辺を占領して、鍋を待つ間も、皆持ちよりのつまみでグイグイ杯は進んだ。原口さんご友人差し入れの金箔入りの日本酒一升があっという間に無くなった!その他、ビール、濁酒、ワイン等々、どんどん蒸発していった。風も無くポカポカ陽気の中、皆、ニコニコ、ワイワイ、ご機嫌!
『ああ、山の上で飲む酒は格別に美味いね~!』
 やがて辺りに美味しそうな匂いを漂わせて原口シェフご自慢の豪華フグ鍋、海鮮鍋が次々と完成!周囲の登山客の存在を忘れて(スミマセン!)大いに盛り上がった。
 降りは京王線高尾山口駅へ降りる組(2時間弱)と大戸沢からバスで横浜線橋本駅へ降りる組(30分強)に分かれて下山した。
 太宰府天満宮では、ウソは道真公の遭難を救い、夢を現実に変える力を持つ神鳥とされ、毎年正月、木彫りのウソを交換し、昨年の凶事をウソに替え、今年の吉事を招く願いを込めた“ウソ替え”の神事が行われる。登山口で菅原道真公にお会いして、ウソに道案内されたこの新年山行、何とも不思議な偶然だが、吉事の前兆に違いない。

〈コースタイム〉
高尾駅南口(9:45) → 草戸山(12:00)【鍋宴会】
【高尾山口駅下山組】
草戸山(14:30) → 高尾山口(16:00)
【橋本駅下山組】
草戸山(14:30) → 大戸沢(15:00)


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