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谷川岳西黒尾根
内藤 美智子

山行日 2012年12月1日~2日
メンバー (L)小幡、飯塚、荻原、渡辺(守)、内藤

【12月1日(土) 天気:曇りのち雪】
 今回は珍しく当日朝発で電車利用の谷川岳。谷川岳ベースプラザで仮眠できなくなったのは山屋にとって手痛いことだ。水上駅集合なのでJR湘南新宿ラインを利用し、高崎で水上行きに乗り換える。この電車に乗らないと集合時間(10:26発のロープウェイ駅行きのバス)には間に合わないはず。ところが他のメンバーは見当たらず、にわかに不安になってくる。
 最近は全くルームには行けず、山行の連絡は、もっぱらメールで済ませている。今回はリーダーの小幡さんに参加のメールをしただけで計画書の内容を確認したあとは、こちらから連絡もしていなかった。もしかして直前に変更があったり、連絡ミスがあったのかも?と急に心配になる。あわてて携帯で小幡さんにメールした。小幡さんは同じ電車に乗っていて他のメンバーは車で現地に向かっているとの返信がすぐにあり一安心。ルームに行けないのは仕方ないにしても、もっときちんと連絡をしなければと反省する。小幡さんとは水上駅で、他のメンバーとはロープウェイ駅で無事に合流できた。
 上越線に乗っている時には雨が降ったりしたので暗澹としたが、水上では雪になっていた。ベースプラザで身支度を整えて白銀の世界へ。林道ですれ違った人から「上は風が強いですよ」と話しかけられる。途中まで登って戻ってきた人なのか?西黒尾根登山口から登山道に入る。この辺りは、まだ積雪は少ない。
 1時間ほど登ったところで休憩。雪は止み、時折、青空ものぞく。次の休憩になる前に必要になりそうなので、ここでアイゼンを付ける。以降は積雪も増え、トレースがないので先頭を交替しながら進む。ただラッセルというほどの積雪量ではない。登山道の位置と風向きによるのか、風が当たるところと全く当たらないところがある。風が当たれば極寒だが、当たらないと着込んでいるので暑くなり、汗をかく。
ラクダの背のクサリ場を通過  周りの木の丈が低くなり、視界が広がるあたりからは尾根も狭くなる。ラクダの背のクサリ場は雪がうっすら付いているだけでクサリは出ていた。3ヶ所のクサリ場を通過。森林限界を越えて風にさらされる。一時は青空ものぞいていたのに段々と天気が悪くなり、雪が舞ってくる。
 ラクダのコブでテントを張る。翌日はテントを置いて山頂へ行くので風に飛ばされないようにしなければ。幸いまだブッシュが出ていたので、そこに張り綱を結び付けて固定した。
 テントを立てる間に本格的な雪になった。その日の夕食はキムチ鍋。1人3種の材料を持参することになっていたが、皆多めに持ってくるので食べきれないほどの豪華な鍋になった。

【12月2日(日) 天気:晴れのち曇り】
 前夜は雪が降り続いたようだ。テントの周りに雪が積もり、外に置いていたアイゼンやピッケルは、すっかり埋まっていた。前日の自分たちのトレースも、まったく見えなくなっている。夜明けには、まだ雲が渦巻いて山頂を隠しており、その上に月が白く光っていた。徐々に雲は消えていき、青空が見えてくる。風もほとんどなく、登頂日和になった。
 アイゼンはもちろん必要だが、その上にワカンを履くかどうか悩むところ。とりあえずワカン持参でアイゼンのみで行く。前夜の雑談でアイゼンとワカンを一緒につける時はワカンを裏返すという話が出た。それで荻原さんだけ経験のため途中までアイゼンとワカン両方をつけて行ってみる。ちなみに私のように、いまだに木製ワカンを使っている古い人間にはアイゼンと一緒に使う時はワカンを裏返すというのは当たり前の知識だった。といっても実際は一緒に使ったことは1度もないのだが。今のアルミワカンの中には裏返すと使えない形状のものもあるようだ。
西黒尾根上部を登る  ラクダのコルへの下りは腰までのラッセルだった。コルを過ぎてからは、それほどのラッセルになるところはなく、上に行くほど雪が風で飛ばされるので、かえって積雪が少なく、ラッセルは楽になった。岩稜帯になると岩が露出しているところも多い。登るにつれ、かかっていたガスが晴れ、朝日岳や白毛門が見えてきた。谷川岳山頂もくっきり。先頭を交代しながらじりじりと進む。
 傾斜がゆるむと肩の広場だ。ここまではノートレースだったが、肩の小屋から山頂までは足跡があり、残念ながら山頂1番乗りは逃してしまった。人影は見えず、おそらく肩の小屋に泊まって朝一番で山頂を踏み、すでに天神尾根へ下山した人がいたのだろう。谷川岳頂上(トマノ耳)までテントから2時間20分かかった。
 山頂から見渡す上越国境の山々は、すでに真っ白に雪化粧して、厳冬期のような景色に見えた。南の空は、やや雲があるものの遠く富士山も望むことができた。無風快晴で他の登山者もなく、ゆったりと景色を楽しめて大満足だった。

谷川岳山頂にて

 休憩後、自分たちのトレースを辿ってテントへ戻る。トレースがあるので下りは速い。テントに戻り、撤収、パッキング。再び重いザックになってロープウェイ駅に下る。テントに戻るまでに1人、テントから下で2人パティー2つとすれ違った。クサリ場の通過は登り以上に緊張した。樹林帯に入ってからアイゼンを外す。登山口付近は雪が解けてぬかるんでいた。
 私と小幡さんは渡辺さんの車で水上駅まで送ってもらい、JRで帰った。渡辺さんたちは温泉に寄ってから帰京したようだ。

〈コースタイム〉
【12月1日】 ロープウェイ駅(11:20) → ラクダのコブ付近天場(14:45)
【12月2日】 天場(6:45) → 谷川岳頂上トマノ耳(9:05~25) → 天場(10:20~11:05) → ロープウェイ駅(13:10)

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