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沢登り・赤谷川笹穴沢
飯塚 陽子

山行日 2012年10月7日~8日
メンバー (L)荻原、山蔦、飯塚

 私にとってこの笹穴沢は、なかなか行くチャンスが得られず心に残っていた沢だった。2年前の同時期に遡行を試みたが、悪天候により二俣で敗退していて、いつかリベンジしたいと願っていたのだが、今回荻原Lの例会計画のお陰で、とうとうそのチャンスが訪れた。
 前夜は小雨の中、東川口駅に集合し、山蔦号で土合駅に向かう。計画では川古温泉まで入る予定だったのだが、関越道の途中から本降りの雨になったために、土合駅に今宵の宿を求めたのであった。この晩の土合駅は、驚くことにざっと30人近くが仮眠をとっていて、最近の閑散とした雰囲気でなく、昔の賑わいを思い起こさせるような土合駅であった。また駅のトイレが綺麗になっていてこれも驚きの出来事だった。
 翌日7日の朝、雨はやんでいたが生憎の曇り空。だが、今日は核心の大滝群の始まる前の二俣までの予定だし時間もあるしということで、余裕を持ってスタートとなった。川古温泉に車を停めて林道を1時間半程歩き入渓となる。昨日の雨のせいか水量も多めである。出だしのゴルジュも水流がかなり激しく流れていて、とてもじゃないけれど水線通しでなんて行けそうもない。ここは適当に高巻いたりして突破する。
 今日はこの時期にしては気温も高く、たまに青空も覗いたりして、今日の焚き火はきっと快適だね!などと話しながら順調に進んでいく。金山沢を越えてから小ぶりな滝が出てきて、夏だったらシャワークライミングを楽しめるのだが、さすがにこの時期はなるべく水に濡れないように登ったり高巻いたりして進んでいく。
 二俣手前の6m滝に到着する頃には、雲行きが怪しくなり、なんと小雨が降ってきてしまった。この滝は、明日の核心部の大滝群を登る予行練習にロープを使って登りましょうと、リーダーの提案。オーダーは、トップ荻原L、セカンド山蔦君、ラスト飯塚の順である。
 この予行練習もスムーズにこなして、二俣に到着。二俣はもともと狭いスペースなのだが、既に先行パーティーがロープで固定してツェルト2張を張ってしまっていたので、我々は更に小さいスペースをなんとか整地して幕を張る。
 そして小雨の降る中ではあったが、お楽しみの焚き火&宴会をし、薪が燃え尽きるまで粘り、明日の天気を期待して就寝となった。
 翌日8日は期待通りの快晴。本当に最高の沢日よりとなり、朝からテンションも高い。
 この日は、我々三峰隊が先行して出発し、まずは朝一番で、2段20mの滝の登りにかかる。昨日練習したオーダー通りに、早速トップをリーダーが快適に登り始める。この大滝も2年前に見た時よりだいぶ水量が多く、本日はかなり迫力ある滝になっていた。まだ朝日が谷に届かない時間だったので待っている間は結構寒かったが、登っているときはそんな寒さも忘れて必死に登った。
 その後も12m、10m、15×30mくの字滑滝など美しい滝が続き、見上げれば空があまりにも青く澄んでいるので、気分上々で登っていくことができる。そして次の大滝の20m赤岩滝は、ロープを出し右岸側を登り、見事なスラブの滑床を越えていくと、迫力ある30m大滝が現れた。ネット等の情報だと左岸を登り途中のバンドで水流側にトラバースし、そこから滝を登っている記録が多かったが、今日の大滝は水量がかなり多く、とてもじゃないけれど水線沿いに滝を登るのは無理な状態。ということで、バンドからは切り立った左岸を登ることになるかもしれないけれど、取り敢えず登ってみます!と、笑顔でリーダーが登り始めた。50mいっぱいで1ピッチを切って、そこでピンを2本打ち、更にロープをのばして左岸を登り、滝の落口のブッシュ帯でビレイをとってくれた。高度感満点の登攀だったが、岩が堅くてしっかりしていたので登りやすかった。そしてハイライトの大滑滝(90×200m)へ。ここは、みんなで思わずワーイ!と手を挙げて叫んでしまうほどの美しい大滑滝だった。
ハイライトの大滑滝にて 大滑滝を慎重に登る この大滑滝と紅葉のコントラストを期待して、この時期の笹穴沢に来たのだが、残念ながらほとんど紅葉が始まっていなかった。
 今年の夏の異常な暑さのせいだろうか…。水量の多い大滑滝をスリップしないよう、十分注意しながら登る。
 次に現れた20m斜瀑は、右岸を簡単に巻ける滝だが、天気もいいし物足りないからもう1本登っちゃいますか~のノリでここもロープを着けて左岸を登る。
 山蔦君は、この笹穴沢で、滝登りがどんどん上達しスピーディーに登っていく。私は中間地点でもたついたものの、なんとかクリアして登ることができた。
 こうして、核心の大滝群を無事に登り終え、あとは小滝群を越えて広々とした草原へ導かれる。本当に気持ちのいい場所で、ここでも思わずバンザイポーズ!そしてこの高度にきてようやく、仙ノ倉岳が赤い紅葉に染められているのが望めたのであった。
気持ちのいい草原でバンザイ!  ここからは、最後のトラバース道(廃道)が意外にも核心だった。途中から背丈を越える笹薮が生い茂り、廃道には古い釘が飛び出ているので、それを踏み抜かないように注意して歩かなければならない。笹穴沢の源頭の草原から、そのまま登山道に登り詰めた方が、得策だと思われた。
 時間に余裕はあったが、下山は平標山の家から平標登山口に下山した。下山途中に電話で予約を入れておいたタクシーで川古温泉に行き、車を回収する。そして、おなじみの猿ヶ京の『まんてん星の湯』に入り、さっぱり気分で帰京する。
 メンバーとお天気に恵まれ、念願だった美しい笹穴沢を登ることができて本当に感謝です!

〈コースタイム〉
【10月7日】 川古温泉発(8:00) → 二俣着(13:30)
【10月8日】 二俣発(6:30) → 30m大滝(8:30) → 大滑滝(9:40) → 1800m草原(12:40) → 登山道合流地点(13:20) → 平標登山口(15:50)

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