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雪山登山・鹿島槍ヶ岳天狗尾根下見
小幡 信義

山行日 2012年11月23日~25日
メンバー (L)小幡、斎藤(吉)

 昨年の正月の鹿島槍天狗尾根、リーダー渡辺氏を中心に6名で計画したが、第2クーロワールで敗退した。今年はオジサンメンバーを結集して何とか達成してみようと意気込み、先ずは下見ということで行って来ました。
 11月22日国立駅22:00集合し斎藤氏自慢のボルボで中央道を目指す。梓川SAで天ぷら蕎麦を食い仮眠に入る。

【 11月23日 小雨のち曇り】
 梓川SA7:10発、小雨の中大谷原で駐車、4~5台駐車有り、3連休、私たちと同じように下見に来た登山者の車か?
 雨も上がり、曇り空の中、大谷原を8:45出発する。大川沢右岸の林道を終点まで、とことこ歩く。踏み跡も古いが僅かに残っており、誰か天狗尾根に来たかな? 少し期待する。しかし取水口先からは誰も歩いていないようだ。取水口を過ぎ1回目の渡渉、登山靴を脱ぎ、沢用のソックスを履き、ズボンを膝上まで上げ、いざー・・・! 10m位の川幅を渡るのであるが対岸に着いた時は我慢限界の冷たさだ。帰りもと思うとうんざりする。結局2回渡渉をやる羽目となる。
 しばらく右岸を進むと左側に沢が出てきた。ここが荒沢だろうと判断し進む。片側は岸壁となっておりルンゼ状ではデブリが沢を埋めていた。雪の降った後は雪崩の注意が必要だろうと考えながら進む。渡渉はないものの石がぬめっていて、飛び石伝いに越えるときなど滑って幾度か靴を濡らしてしまった。出合から200m位入った少し張り出した尾根状に古い赤布をみつける。ここから登るのであろう。一応、目印とし、我々も三峰と書いた布を枝に縛りつける。赤布頼りに、どんどん急登で高度を稼ぎ何とか1時間位で尾根上に出る。
 今年の三連休は積雪量が多いようで全く藪漕ぎの心配はなさそうだ。しばらくは鬱蒼とした樹林を進むが、途中より膝上の深さとなりワカンを取りつける。1,600m地点の平坦地で本日の行動は打ちきりとし幕営の準備に取り掛かる。15:00到着である。

【11月24日 曇り】
 幕場を6:10出発する。朝よりワカンを付け交替で進む。所々、吹き溜まりがあり、腰上のラッセルに喘ぎ喘ぎ、かなり体力を消耗させられた。樹林帯を抜けると目の前にクーロワールらしき地形に出くわす。手前のトラバース、見た目一寸嫌らしかったのでロープを出し通過するが、たいしたことはなかった。
 第1クーロワールは50m位の雪壁であるが雪が柔らかいのでキックステップを刻み突破する。ここを抜けた辺りから、やせ尾根となり足の運びが慎重になる。
 続いての第2クーロワールも同じような雪壁であるが少し長いような感じだ。この2か所は降雪の際、雪崩に要注意だろう・・・。
 そろそろ時刻も14:00過ぎ、幕場を出発してから8時間弱、前方に天狗の鼻らしき地形が確認できるが、雪が深く、足の運びも重く、気持ちは沈みがちだ・・・。斎藤さんもペースが上がらず少し間が空いてしまった。が、とにかく早く幕場を見つけたかったので先を急ぐ。
 天狗ノ鼻16:00着。平坦で何処でもテントを張れそうだが、風が絶え間なく吹き体温を奪われる。風を遮る木も疎らにあるだけで良いテント場はない。しばらく彷徨ってみるが条件は何処も同じようだ。適当なところでテント設営にかかる。しばらくして斎藤さんも来るがかなりバテ気味のようだ。ワカンのバンドが凍りつき外すのに苦労する。テント内に入り先ずはコンロを焚き温まる。ほっとするひと時である。
 シュラフに潜りこむものの、夜中じゅう風は止まず、テントを揺さぶり続け、なかなか眠りにつけなかった。

【11月25日 晴れ】
 朝5:00テントから外を覗くと風はあるが星が輝いていた。東方向の尾根をヘッドランプの明かりが2つ見えた。多分遠見尾根辺りだろう。
 本日の行動予定はどうするか2人で相談する。天気も良さそうだし、先の尾根も全て見渡すこともできたので、気持ち的には鹿島槍を越え赤岩尾根を下山したいところだが・・・。しかし、今回ここまで来た積雪量からすると、赤岩尾根もかなりのラッセルを強いられるだろうと判断し、撤退と決め7:20に下山にかかる。2~3度後ろを振り返り悔しさを噛み締める。
 昨日のトレースは消えることなく、雪も締まっていてアイゼンもよく効き、景色を堪能しながら気持ちよく降りることが出来た。
 1日目の幕場に9:20着。登りに10時間かかったが下りは2時間で降りてしまった。
 荒沢を通り、大川沢の渡渉も右岸のフィックスロープを張った崖を強引ではあるが通過することが出来、一度も水に浸かることなく大谷原に着けた。一応、下見は終えたが、斎藤さんがシュラフとカバーを途中で落としてしまったことが心残りである。

【天狗尾根、天狗ノ鼻までの下見を終えて】
1.正月は他パーティー入山の期待も出来ないことを踏まえ、我々三峰で計画した場合最低5~6人の人員が必要であろう。
2.大川沢の渡渉はなしで行けそうだ。
3.降雪後の荒沢、第1クーロワール、第2クーロワールの通過は雪崩に要注意だ。
4.天狗ノ鼻の幕営は、遮る木なく、風強し、ブロック囲いも考えておいた方が賢明だ。

〈コースタイム〉
【11月23日】 大谷原(8:45) → 天狗尾根取付き(11:00) → 1,600m地点(15:00)
【11月24日】 幕場(6:10) → 天狗ノ鼻(16:00)
【11月25日】 天狗ノ鼻(7:20) → 大谷原(12:25)

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