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雪稜登攀・谷川岳東尾根
小幡 信義

山行日 2013年3月9日~10日
メンバー (L)小幡、飯塚、大田

 2年前に星野リーダーのもと、4人で行ってみたものの、天候不良により一ノ沢手前で敗退となった。次の年も同メンバーで行こうと決めていたが、うやむやとなってしまった。
 その後、星野君は海外に転職となってしまい、ここは自分が成し遂げなければと考え計画しました。

【3月9日 晴れ】
 上越線水上駅16時30分に集合。バスでロープウェイ駅まで行く。本日の仮眠場所は如何するか・・・? 取り敢えず指導センターを覗く。テント1張り、便所の脇に張ってあり、テーブルでは4~5人の登山者が酒盛りをしていた。外では2人のクライマーが登攀具、ロープ等を整理していた。話を聞くと東尾根に行って来たとのこと。天気は快晴、トレースもしっかりついていて、すこぶる快適に登攀出来たと笑顔で話してくれた。明日は午後から崩れる予報であるので、午前中には第一岩峰を越えていたいところだが・・・。
 我々もセンターの中に入り軽い酒盛りをする。仮眠スペースもないようで18時30分にベースプラザに移動し駐車場で仮眠と決め込む。

【3月10日 晴れ午後より風雪】
 3時30分ヘッドランプを点けながら一ノ倉沢に向かう。既に先行パーティーがいるようだ。一ノ沢に入る頃は明るくなり天気も良さそうだ。デブリの後が2ヶ所くらいあり、左右を気にしながら高度を稼ぐ。先行パーティーは2人連れのようだ。我々を含め2パーティーでは順番待ちもないだろうと考えながら、黙々と登る。シンセンのコルまで2時間かけて到着。1本とり後ろを振り返ると一・二ノ沢中間登攀している2人を見つける。前方では先行パーティーが第二岩峰にロープを出してよじっているところだ。ゆっくり休憩をとり2人が岩峰を乗っ越したところで我々も出発する。
第二岩峰  第二岩峰手前でトレースを見ると尾根上に取り付いているようで、我々も同じくロープを出し進む。脆い岩に雪も腐ってきておりスタンスが決まらず少々焦ってしまうがバイルをしっかり打ちこみ越える。ここから上は雪稜から岩稜となった。右を行くか左を行くか迷ったが、雪が付いている左の岩稜を登っている際に、まさに数メートル脇で雪崩が発生した。地形的には同じ条件だ! 上の方は雪解けし口も開いている。恐る恐る登ったが尾根上に出た時は一安心した。下の2人も同じ気持ちであっただろう・・・!。
 観倉台という地名辺りから天気が急速にくずれ始め小雪がぱらついてきた。前方の稜線は全てガスに覆われ雪庇の張り出しも全てガスの中、忠実にトレースを信じ前進した。意外に早く第一岩峰に到着。岩を越えるには4級の登攀となるが、嬉しいことに一ノ倉側にしっかりとしたトレースが巻き道となっており迷うことなく右側にルートをとる。その後は国境稜線直下の雪壁を越え10時30分に稜線に出る。稜線は風雪が厳しく逃げ込むように肩の小屋へ入る。スキーヤー4人も風雪を遣り過ごしていた。この時点で下山予定は西黒尾根であったが天神尾根に変更。30分も待ったが回復する様子もなく、ますます酷くなるようだ。ここは下山すべしと考え小屋を飛び出す。肩の小屋周辺は広い尾根状でホワイトアウトの時は下山道を間違いやすい。それにこの風雪だ・・・!。不安がよぎる・・・!。それでも恐る恐る足を進めていくと前方に倒れんばかりの赤布が目に入った。と、同時に助かったと思った。等間隔に赤布が立っており下山道を導いてくれた。その後も小さなクレバスに落ちたり、強風雪に何度も耐風姿勢をとったりでかなりの時間をくったものの、天神平のスキー場を見たときは、無事に帰ってこられたと不安は吹き飛び嬉しさがわいた。
 ロープウェイも通常15分で運行するところ強風に揺れながら倍の30分かかったようだ。自分もそうだが他の客も不安がよぎった顔付きで少々笑いがこみ上げてきてしまった。
 ロープウェイ駅では、頂上の天気が嘘のように繰り広げられていた。我々も下山祝いとしてビールで乾杯。強風の為かバスも遅れているようで40~50分待つ羽目となった。
 最後に振り返り、3月の谷川はまさに怖い山だとつくづく痛感しました。

〈コースタイム〉
10日 登山指導センター(3:30) → 一ノ倉沢(5:00) → シンセンのコル(7:30) → 第二岩峰 → 第一岩峰 → 国境稜線(10:30) → 肩の小屋(11:20) → 天神平(13:10)


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