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ハイキング・花の佐渡島
川崎 恵美子
渡辺 智世

山行日 2013年4月27日~29日
メンバー (L)箭内、鈴木(章)、別所、高木、吉田(貞)、永岡、川崎、渡辺(智)

 花咲き、山笑う、春の佐渡島へ行ってきました。
 足もとには、こぼれんばかりに咲く色とりどりのスプリング・エフェメラル、山の麓から中腹には煙るように花をつけたオオヤマザクラやミネザクラ、そして遠くに目をやれば真っ白な残雪を頂いた大佐渡山系の峰々。まさに景色は三段紅葉ならぬ三段芽吹き。
 長く厳しい冬から目覚めたばかりの佐渡は、絵の具を絞り出したばかりのパレットのような、それはそれは美しい島でした。

 前夜22時、東所沢に集合した8名は2台の車で出発。時おりフロントガラスに強い雨の叩きつける不安定な空模様のためか、大型連休前半が始まったにもかかわらず、途中、渋滞することなく車は順調に関越道、北陸道を北上。深夜1時半すぎに到着した黒崎パーキングエリアの奥まった所に風を避けるようにテント二張を設営し、すぐ寝る派と一杯呑んでから寝る派とに分かれて仮眠をとりました。

【4月27日(土)曇り】
 明け方には雨も上がり予報どおり天気は快方に向かっているようです。予約してあるカーフェリーに乗り遅れないよう充分な余裕を持って、一行は新潟港へ向かって出発。佐渡汽船のターミナルでは、朝食をとったりコーヒーを啜ったり、海を渡る前からお土産の下見をしたり、一刻の無駄なく過ごしました。
 9時25分、定刻になると私たちが乗り込んだ佐渡汽船「おけさ丸」は滑るように出航。2等船室にはカーペットが敷きつめられ、思い思いに寝転ぶ子ども連れの家族や車座になって談笑するグループで埋まっています。そんな大勢の旅行者に混じって私たち三峰隊も窓際にスペースを確保し、トランプに興じたり、船内を散策したり、デッキに出て海風を浴びてみたり、しばし船旅気分を味わいました。
 そうこうするうちに2時間半の航行は終わりに近づき、ふと気がつくと、ずっと雲に覆われて遠景の望めなかった船室の窓のすぐそこに島影が迫っていました。初めて目にする佐渡島!花の島!早くも胸は高鳴ります。
 ほどなく船内に、両津港到着と下船準備を促すアナウンスが入り、私たちも車両甲板に降りて車に乗り込みスタンバイ・オッケー。係員に誘導されて船のお腹から外に飛び出しました。
 無事、島に上陸したところで脇目も振らず向かった先は「佐渡海鮮市場かもこ観光センター」の食事処。誰一人迷うことなく全員一致で海鮮丼を注文し、トロトロの鮪、プリプリの甘海老、コリコリの烏賊などに舌鼓を打ちました。
 さぁ、お腹も満足したところで、いよいよ向かったのは登山口・・・といきたいところですが、そうはならないのが私たち。
 次は直ぐ隣のスーパーマーケットで夜の宴会用食料の買い出しです。安く新鮮で豊富な魚介類や佐渡特産の食材に目移りし、あれもこれもと買物カゴはアッという間に一杯に。もちろん佐渡の地酒も入手。あ~何だかんだ言って、やっぱり花より団子?!。
 さて、食料満載になった車は、標高890メートルに位置するドンデン高原キャンプ場を目指して今度こそ本当に山へと向かったのですが、その道がとにかくすごかった!。車道の両側を途切れることなく、これでもかこれでもかと覆い尽くすのはカタクリの花、そしてフキノトウ!。それを見て若干2名が息つく暇もなく歓声をあげるものだから車内は大変な騒ぎに。(2名のうちの1人は言わずもがな、この私です)小1時間もの道中、それに耐えて急カーブ連続の山道を冷静に運転してくださったアッちゃんと同乗者のアッコさんに、お礼申し上げます。
 そのカタクリ・ハイウェイ(勝手に命名)を、順調に高度を上げながら走行してゆくと、次第に霧が濃くなり、キャンプ場に到着した頃には風も強まっていました。そして時計を見ると、もうすぐ15時。
 この天気に、この時刻。もう歩きたくな~い。今日予定していたアオネバ渓谷は明後日にまわそうよ~と、みんなの意見はすんなり一致!。それならば早速宴会準備とばかり、まずはテント設営にとりかかりました。ところが、ここでアクシデント発生。冬山の稜線上のように吹き荒れる強風のせいで4、5人用テントのポールが折れてしまったのです。修復を試みるも再び破損。設営は難しくなりました。困った~今夜はジャンボテントに仲良く8人で寝るの?
 しかし、このくらいのことでは動じないのが三峰隊。寝場所は後で考えようと暢気な4名は山菜摘みに出かけてしまいました(4名のうちの1人は、またしても私です)。コゴミ、フキ、フキノトウと、もちろん大収穫でした。
 その後の様子は詳しく記す必要はないですね。テントの中は持ち寄った各種酒類に加え地酒の一升瓶が、ところ狭しと並び、海の幸、山の幸のぎっしり詰まった大鍋と刺身盛り合わせを囲んで、にぎやかに夜は更けてゆきました。【執筆:渡辺(智) 】

早朝のドンデン高原から両津港、加茂湖を望む 【4月28日(日)晴れ】
 今日は期待通りのいい朝を迎えた。早くから行動したいところだが9時にならないと登山口方面へのゲートが開かないこともあり、ゆっくり朝食をとってから白瀬登山口へと向かうことになった。
 ドンデン山荘の標高は890mなのに白瀬登山口の標高はたったの90mだ。ここが海に囲まれた島なのだと改めて思う。
 身支度を整えながらも目に入ってくる周囲の光景に期待が更に高まってきた。白瀬川を小さな橋で渡るところから登山が始まる。渡り終えたその瞬間から早くも舞い上がってしまった!。
 最初に私たちを迎えてくれたのはニリンソウやキクザキイチゲ、エンレイソウにヒトリシズカ。薄紫色のキクザキイチゲの可憐さに胸キュンし、エンレイソウの大きさと数の多さには度胆を抜かれた。
カタクリとアズマイチゲが乱舞  登山道を暫く進むと、もうそこから先はカタクリ街道だった。カタクリなんかどこにでもあると言われるかもしれないが、ここまでたくさんのカタクリに埋め尽くされたところはまずないだろう。いくら歩いても右も左も前も後ろもどこもかしこもカタクリだらけ!それだけでもすごいのに、そのカタクリ街道には、これまた至る所に可憐なオオミスミソウ(ユキワリソウ)が咲いているのだ。
 この花は、私が今回、佐渡島でいちばん見たい花だった。色は白、紫、ピンク、それも濃いのや薄いのなど数々のバリエーションがあり、歩きながら頭がくらくらしそうなくらいだった。さらに登山道の両脇を埋め尽くすピカピカの大きい葉っぱはオオイワカガミ~。今年はちょっと遅いようで、ここではまだ蕾だったけど数日先にはどういうことになるのだろう・・・。
 高度が上がるにつれて残雪が出てくるようになった。組上(くみあげ)の少し手前でケージーと智世さんと別れ、残りの6人で先へと向かった。

オオミスミソウはバリエーションが豊富たっぷり雪の残る道を進む

 まもなく組上に着くと展望が開け、正面にきれいな真っ白の三角が見えた。あの白い三角のてっぺんまで自分が本当に行けるのかどうかと不安が過った。
 箭内Lが、かるーく「ここから1時間だな」と言うのを聞いても、気の小さい私は、嘘だ嘘だ、そんなに簡単に行けるはずがないと思っていたくらいだ。
 山頂が間近に見えるようになると、そこには銀世界が広がっていた。シャリシャリとした残雪を楽しみながら、直下まで来て、その先が山頂かと思ったら、まだその先に藪があった。
佐渡島のカタクリは色鮮やか  石楠花やツツジなどの枝に難儀しながら、やっと抜けたらその先に鳥居が見えて962.2mの山頂に着くことができた。組上から1時間弱で着けたので箭内Lは嘘つきじゃなかった!。
 日当たりのいい山頂は暖かく、ここにも小さなカタクリが咲いているのを見つけて、なんだかとても幸せな気分になった。
 山頂からの景色は素晴らしく今まで地図でしか知らなかった佐渡島の形がくっきりと日本海に浮いているのがわかるのが面白かった。山頂から先にこの島の最高峰である金北山が聳え立っているのが見え、雪の尾根で繋がっているのがよくわかった。この時期の縦走は厳しいということでピストンにしたお蔭で、またたくさんのお花たちに逢えたので、帰り道もルンルン歩くことができた。
 登山口で少し待っていると先に下山していた二人が買い物を終えて戻って来たので合流し次の目的地へと向かった。

肩を寄せ合うニリンソウ

<他に登山道で見た花>
アオキ、アラゲヒョウタンボク、ウスバサイシン、オオタチツボスミレ、コチャルメルソウ、シュンラン、ショウジョウバカマ、シラネアオイ、スミレサイシン、ナニワヅ、フクジュソウ、ホクリクネコノメソウ、ミヤマカタバミ、ミヤマキケマン他 【執筆:川崎 】

【4月29日(月・祝)晴れ】
 金剛山で思いっきり花を堪能した翌日、もっともっと花に会いたくて、初日に悪天のため見送ったアオネバ渓谷へ向かいました。
 水川内沢沿いの登山道は変化に富み、水辺にあふれるように咲くニリンソウの可愛らしさといったらたとえようがないほどでした。カタクリの多さも金剛山と同様で、もう見飽きた~なんていう贅沢な言葉が出てくるほど。
 するとカタクリも負けていません。何と数万株から十万株に一株しかないと言われている白いカタクリが姿を現したのです。後続のアッちゃんが見つけて声をかけてくれなかったら、恐らく私は見過ごしていたでしょう。
 大急ぎで駆け戻り初めての対面。思わず嬉しくて歓声をあげてしまいました。その後、陽だまりの中に花開いたオオイワカガミを見つけた時も大騒ぎでした。
 更に金剛山では数輪しか見ることのできなかった日本固有で一属一種のシラネアオイの花も沢山見ることができ感激!。やさしい薄紫色の大輪の花は、他の小さな花々のなかで一際目立ち、あたかも春の花の女王のようでした。

蕾だけれど、とても珍しい白いカタクリ見応えあるシラネアオイ

 ほかにも肩を寄せ合って咲くヒトリシズカ、色とりどりのオオミスミソウ、青や紫のキクザキイチゲなどスプリング・エフェメラルが金剛山にも負けないくらい、あちらこちらに咲いていました。
 それにしても、どうしてこんなに佐渡は花が多いのだろう?と不思議に思ったら、北緯38度線上に位置する佐渡島は、ちょうど北限と南限の植物が重なりあうため種類が多く、また、タヌキよりも大型の動物(サル、シカ、イノシシなど)がいないため食べ尽くされることがないからだそうです。
 さて、当初の計画ではアオネバ登山口からアオネバ十字路を経てドンデン高原まで歩く予定でしたが、帰りのフェリー出航時刻まで時間的余裕がない上に車の回収が複雑になるので、登山口から行けるところまで進み時間をみて引き返すことになりました。そのためアオネバ十字路の辺りに咲いていると思われるザゼンソウを見ることができず、箭内さんは、とても残念がっておられましたが、楽しみは、ひとつくらい残しておくのもいいかもしれませんね!。

瑞々しいヒトリシズカとうとう見つけたオオイワカガミ

<アオネバ渓谷で見た花>
アズマイチゲ、アマナ、アラゲヒョウタンボク、エゾエンゴサク、エンレイソウ、オオイワカガミ、オオタチツボスミレ、オオミスミソウ、カタクリ、キクザキイチゲ、ショウジョウバカマ、シラネアオイ、スミレサイシン、タムシバ、ナニワヅ、ニシキゴロモ、ニリンソウ、ヒトリシズカ、フクジュソウ、ミネザクラ、ミヤマカタバミ他

剥製ではありません、本物のトキです  恥ずかしながら、それまで佐渡といえば?と問われて私の頭に思い浮かぶものと言ったら、トキ、金山、流刑地・・・くらいのものでした。そんな佐渡が花の島だと知ったのは、ちょうど2年前の『岩つばめ336号』に箭内さんが寄稿してくださった個人山行の記録でした。そして、川崎さんや私が踊り狂うほど美しい花が咲いているなんて、もぉ~箭内さんたら大げさなんだから~と、実は半信半疑でした。
 しかし、やっぱり箭内さんは嘘つきではありませんでした。本当に狂喜乱舞してしまったからです。今、こうして思い出してもウットリするくらい佐渡は美しい花の島でした。
 そして、今回、佐渡では花を堪能しただけでなく、2日目の金剛山下山後には、佐渡トキ保護センターに隣接する「佐渡市トキの森公園」に立ち寄り、園内に今年3月にオープンしたばかりの「トキふれあいプラザ」で、ガラス越しとはいえ目の前で活きた小魚を食べるトキを観察し、最終日には加茂湖に面する温泉「朱鷺の舞湯」で汗を流し、更に両津港のターミナルでは佐渡の味覚の食べ納めをし、カーフェリー乗船時間ギリギリまでお土産を物色するという、中身のぎっしり詰まった楽しい3日間を過ごすことができました。
 魅力的な佐渡島を紹介してくださり、例会まで出してくださった箭内さんには感謝するばかりです。
ドンデン山荘前に集合!  そうだ忘れてはいけない!定員オーバーになったジャンボテントから追い出され車中泊してくださったのも箭内さんと吉田さんでした。寒くて熟睡できなかったそうですね。辛い思いをさせてしまって申し訳ありませんでした。
 また、自動車だけでなく調理器具や調味料など一切を準備してくださったアッちゃんとケージー、そして、ご一緒したメンバー全員に、この場を借りてお礼申しあげます。
 大変お世話になり、ありがとうございました。【執筆:渡辺(智)】
【写真:永岡、渡辺(智)】

〈コースタイム〉
【4月28日(日)】 白瀬登山口(9:10) → 組上(11:35) → 金剛山平(12:10) → 山頂(12:30)往路を戻る → 白瀬登山口(14:40)
【4月29日(月・祝)】 アオネバ登山口(7:30) → ユブ(8:40)往路を戻る → アオネバ登山口(9:40)

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