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沢登り・皆瀬川春川西ノ又沢中俣~虎毛沢左俣下降
金子 隆雄

山行日 2013年9月21日~23日
メンバー (L)金子、箭内、小幡、飯塚、高木、深谷

 春川の西ノ又沢は国土地理院の地形図によれば標高550m付近で北西から流下して三滝を形成する沢にこの名前の記載がある。今回行った西ノ又沢はこれではなく標高655m付近で本谷と分かれて北西へと延びている沢である。地形図に沢名の記載はない。ネット上で溯行記録を探すと一様にこの沢を西ノ又沢と記載している。どういった理由からなのかその答を見つけることはできなかった。
 8月下旬から毎週のように週末になると台風などで悪天になり沢へ出かけることができなくて腐りかけていた。ようやく訪れた好天に満を持しての出発となった。遠いので前夜のうちになるべく近くまで行きたかったが菅生PAで力尽きてPAビバーク。

【9月21日 晴れ】
 古川ICで高速を降りて大湯へ向かう。当初の計画では田代沢林道を車で最奥まで入りアプローチを楽しようと考えていた。田代沢林道の入口はすぐに見つかり林道へ入ったがかなり荒れている。少し行った橋の手前にロープが張ってあり通行止めとなっていた。まだ先へ行けるかもしれないとロープを外して先へ進んだがしばらく行くと土砂崩れで進めなくなる。9月3日付の青森森林管理局の情報では通行可となっていたが、車ではなく人が通行可能という意味だったのか。Uターンもできずしばらくバックで戻って引き返す。
 田代沢林道がダメなので皆瀬川沿いの林道から入ることにして大湯へ向かう。大湯への道は新しく作られていてナビを見ると道ではない所を走っている。林道入口を見過ごしてしまって行き過ぎてしまった。戻って見つけることが出来たが、林道入口には大岩が置かれ封鎖されていて車は入れないようになっていた。歩いて行くしかないようだ。林道入口の反対側の国道脇に広い駐車スペースがあるのでここに車を停めて歩き始める。
 この林道は高低差がほとんどなく広いので歩き易い。林道を半分くらい来た所で見覚えのある本流を渡る橋が出てくる。「腐っていて危険なので渡るな」との看板があるが渡らないと先へ進めない。幅1m弱の欄干もない橋で、途中で橋はなくなり梯子になっている。以前来た時はこの梯子は木で組まれたものだったが鉄パイプで組まれたものに変わっていた。
 歩き始めるまでに手間取ってしまい、春川出合に着いた時にはもう昼になっていた。出合にはかなり高いコンクリート製の橋桁が残っている。国土地理院の地形図には春川の左岸沿いに林道が続いているように記載されているが、この道を見つけるのは難しいだろう。
 春川に入ると水が白っぽく濁っている。セメントのような泥が溜まっているところをみると石灰岩でも溶け出したのだろうか。20分ほど進むと濁りも薄くなり澄んできた。春川はつい最近大規模な増水があったような形跡が残っている。1週間前の台風による雨での増水だと思われる。
 春川は出合から延々と平瀬が続く。2時間ほどでようやく最初の滝が出てくる。3mくらいのナメ滝で左岸のフィックスを使ってヘツって越える。
 滝上からナメが少しの間続くと目の前に大きな滝が現れた。三滝に着いたようだ。ここは三俣になっていて右が西ノ又沢、真ん中が本谷、そして30mほど下流で左から東ノ又沢が合流している。東ノ又沢は地図で見るほど離れてはいない、また滝は少し奥まった所にあるので出合からは見えない。西ノ又沢は北西から流下しているので西ノ又でもまあ間違いではないが、東ノ又沢はほぼ真南から流下しているのになぜ東ノ又なんだろう、西ノ又の対岸に出合っているから東ノ又なんだろうか、まあそんなところだろう。
春川の三滝にて 左が本谷、右は西ノ又沢  時間的にはまだ先へ進めるがこの先に良い幕場があるか分からないので今日はここまでとする。今日の最低ラインはここ三滝としていたのでまあいいだろう。左岸の高台に適地があったのでテントを張り、フライ代わりにタープを上に張る。テントを張り終えると待ちかねたようにバタヤンは釣りに出かける。この辺はナメが多いので釣れないだろうと予想していたが結構粘ってヤマメを2匹釣ってきた、おみごと。渓流の女王と言われるだけあってその魚体はとても美しい。哀れな女王様たちは火あぶりにされて我々の腹に収まった。焚き火も燃え盛り久々の沢の夜を満喫できた。

【9月22日 晴れ】
 夜半に結構雨が降ったが朝には止んでいた。すっきりしない空の下幕場を後にする。先ずは三滝を越えねばならない。本谷の滝は登れないので西ノ又沢の滝を中段まで登る。階段状で易しい。トラバースしていってブッシュ帯に入り本谷の滝上に降り立つ。踏み跡もあり、すんなりと越えることができた。
 三滝を越えて少しでナメが続くようになる。虎毛山塊特有の亀甲模様のナメだ。すべてが六角形というわけではなく四角形だったり五角形だったりする。他の山域ではお目にかかったことがないものだ。
 朝はどんよりした曇り空だったが、出発後間もなくしてすっかり回復し青空が広がる好天になった。万滝沢までは滝もなくナメを気持ちよく歩いて行く。
 やがて万滝沢出合、名前からして凄そうな沢だが奥に厳しい滝群が控えているとは思えないような穏やかな出合だ。万滝沢を見送ると滝が4つほど連続する。大きな滝はないが、どれも深い釜を持ち滝はツルツルでフェルト靴ではとても登れない。2つ目の滝は泳がないと取り付けそうにない。泳ぎを嫌って左岸より捲いたが結構厳しい捲きとなる。トラバース中にスラブ状の急なルンゼに突き当り懸垂で降りる。ここは泳いだほうが良かったようだ。更に続く滝もフェルト靴では登れず、アクアステルスを履いているバタヤン、ヨーコに登ってもらってロープを垂らしてもらう。
ホールドの少ないナメ滝を登る  しばらくナメが続き気持よく溯っていくとやがて西ノ又沢の出合に着く。本谷は左に分かれ西ノ又沢は本流かのように真っ直ぐ続いている。本谷から分かれると水量もぐっと減り沢幅も狭まり用水路のようになる。虎毛山と戸沢山とのコルへ出るために標高800m付近の二俣を左へ入る。850m辺りで左岸の枝沢に入りコルを目指す。この枝沢は稜線近くまで続いていたが少し虎毛山寄りに出たようだった。少し藪をこいでコルまで下り、コルから虎毛沢目指して下降する。直ぐに沢形が現れ水も流れ出したのでこれは楽だと思ったのも束の間、蔓が絡んで前進が困難になる。後を歩いていたメンバーから左に沢があるとの声、見ると深い切れ込みがありしっかりした沢になっている。急な斜面を灌木頼りに下って沢に降り立つ。
 虎毛沢の左俣は平坦なナメが続き下降にはもってこいの沢だ。やがて4段の滝が現れ懸垂で下る。この滝は見覚えがある。2年前に虎毛沢の右俣を溯行したときに右俣の出合を見落としてしまい左俣に入ってしまって登った滝だ。その時は引き返して右俣に入った。
 二俣から1時間ほど下った標高650mくらいの左岸を今日の幕場と決めて行動終了。2年前に来た時に泊まったのと同じ場所のようだ。亀甲模様のナメが続くど真ん中だ。

【9月23日 曇り】
 虎毛沢は滝がほとんどないが微妙なヘツリを要する所は何箇所かある。下るにつれ水量も多くなってくる。2年前の夏に来た時は渇水で極端に水量が少なかったので違う沢へ来たような感覚になる。
 やがてゴルジュが出てきて左岸の踏み跡から捲くと赤湯又沢の出合だった。赤湯又沢から春川の出合までは直ぐだったような記憶があったが意外に長かった。
 駐車場に戻ると箭内さんが目敏くキノコ採りから戻った人を見つけて何が採れたか聞きに行く。見せてもらったのは山のような舞茸、女性陣も加わりオジサンを取り囲んで「キャー凄い」の連発。オジサン堪らず「これけるがら持ってけ」と言って舞茸を分けてくれた。秋田県民は良い人だね。
キノコ採りのオジサンから貰った舞茸  駐車場から直ぐの民宿で温泉に入る。源泉の温度が90度以上あるというかけ流しのいい温泉だが熱過ぎるのが難点だ。話し好きの主人と奥さんに捕まって帰るタイミングを失ってなかなか帰れない。何とか振り切るように民宿を後にして帰路についた。

〈コースタイム〉
【9月21日】 駐車場発(10:00) → 春川出合(12:10~30) → 三滝(14:20)
【9月22日】 幕場発(7:00) → 万滝沢出合(7:55~8:15) → 西ノ又沢出合(10:00) → 稜線(12:45) → 虎毛沢二俣(15:00) → 幕場650m(16:00)
【9月23日】 幕場発(6:00) → 赤湯又沢出合(8:15) → 春川出合(10:00~20) → 駐車場(12:15)

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