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沢登り・湯桧曽川東黒沢~宝川ナルミズ沢
江島 沙織

山行日 2013年8月31日~9月1日
メンバー (L)荻原、杉本、内田、江島

 週末にかけて台風15号が上陸かと言われるなか、「ナルミズ決行します。エスケープルートは考えています」とのリーダーからメールで22時に新宿駅に集合。道中では話題の「あまちゃん」の番組解説付きで土合駅に向かった。いつもは賑わう駅も今夜は先客1組のみ。星が出ていたが、台風の動向を気にしつつ、静かな駅で就寝した。
 翌朝台風の進路を確認すると、なんと消滅している! じぇじぇ! 寒冷前線が夜中に抜けるため今夜は多少降られるかもしれないけど行けるとリーダーと三峰の猪熊姉さんが言うのを横で聞きながら(私はさっぱり分からず)、白毛門登山口で沢装備を付け出発した。土合橋を渡るとすぐに入渓。しばらく開けたナメ状の小滝のひたひた歩きが続き、久しぶりの沢登りなのでとても気持ちがいい。快適なナメを1時間程歩くとハナゲの滝に出た。水量も思ったほど多くなく、左側を順調に登ることができた。白毛門沢出合から東黒沢に入ると、どこまでも続くナメ床と程よい小滝と小さなゴルジュが連続し、東黒沢はとても楽しませてくれる気持ちのいい沢だった。10m三段の滝で日帰りパーティーと会ったが、これが今回唯一会ったパーティーとなる。人気の沢にもかかわらずこの先は私たちのみとなり静かな沢旅が楽しめた。その後もひたすらナメ床状と程よい小滝と小さなゴルジュの連続で飽きさせない。だんだん水流も少なくなり、しばらく行くと背丈程の笹薮になった。鞍部を目指してワサワサと笹をかき分けていった。当初エスケープルートとしては鞍部に幕を張り、そこから白毛門に続く尾根を行くと言われていたので、背丈もの笹薮の鞍部から尾根を見上げると、ほんとにお天気が好転してよかったと心底思った。そこから沢を下降していく。しばらく歩くとウツボギ沢に合流。ウツボギ沢はさらに開けていて明るい沢で、ウツボギ沢とナルミズ沢の出合は広河原で幕場(4~5張程度)がありとても良さそうな所だったが、今回は行程的にもう少し進んでおかないと次の日の地獄の下山が大変なことになってしまうので先を急ぐことに。
 途中リーダーが「ここにはいる!」とゴルジュの釜で断言し岩魚釣り。半信半疑だったが、3投目あたりでヒット!ほんとに岩魚が釣れてしまった!女子チームのテンションも一気に上がり、私も!私も!ということで、私も挑戦。リーダーに糸と針と餌までつけてもらい、後はたらすだけ。何投目かでググッと糸が引かれ、初めての岩魚釣りでゲット!うれしい! 次は杉本さん。が、騒ぎすぎたのかそこからうんともすんとも言わず。ここは諦めて次へ向かうことに。そこからは歩く先に岩魚の魚影が見られるようになる。今日は先行パーティーがいなくて静かだから岩魚も出てきている様子。ますます夕飯に期待がかかる。次のポイントでまず内田さん。糸をたらすといきなりググッと引かれる。リーダーからゆっくりでいいよーとアドバイスが飛ぶが、こちらにくる魚影が見えた瞬間、じぇじぇじぇ! 大きい! と次の瞬間、釣竿を奪い、逃げようとする岩魚を必死で押さえつけるリーダーの姿が。そしてそれを傍観する釣った本人。そして釣った岩魚はなんと尺サイズ。さすが内田さん。
初めての岩魚釣りで尺サイズ!  またこの騒ぎのせいでか、次の杉本さんの番ではうんともすんとも言わず。次の地点を探して進む。また岩魚がいそうな場所で杉本さんが釣るが、かからず。ということで今夜のおかずは尺サイズも含めて3匹という結果。こんな簡単に釣れるとなると、釣りにはまりそうだけど、そんなことはないか。幕場は大石沢出合の手前の高台に。ここは増水しても大丈夫だが、地面が湿地になっていて歩く度に足元が汚れる。焚火をしながら念願の岩魚の塩焼き。尺サイズの岩魚は肉厚で本当に美味しかった!贅沢な夕食だったがだんだんと雨も本降りに。慌ただしく片付けをし、タープの下に入ると、ザーッと降ってきた。この前線が抜けて明日晴れることを期待して就寝する。
とても贅沢な時間でしたー!  目が覚めると星がよく見える。青空の中の天国のツメを期待しつつ、朝食を食べタープをでると、曇り空。空は少し明るいので、良くなるだろうと出発をするが、しばらく行くとシトシトと降ってきた。ナルミズ沢は昨日に引き続き、ナメ状の小滝に小さなゴルジュが続き、気持ちがいい。水量が多いのか、遡行図ではへつる箇所もとてもへつれる状況ではなく、小さく巻いて行った。途中のS字状ゴルジュのへつりでロープを出すが、今回はロープを出したのはここだけだった。普段だとなんとない所も今日は水量が多く、お助け紐も活躍した。少しずつ草原の雰囲気がでてくるが、まだまだ小滝が続き、最後まで飽きさせない。やっと水流もなくなり、憧れの天国のツメにやってきた。が、青空を期待していたが、一面真っ白。なんだかよくわからない。おかしいなぁと思いつつ、記念のナウシカ写真を1枚撮る。そして歩き始めるとなんと5分程度で天国のツメが終わってしまった!? じぇじぇ! これで終わり!衝撃的結末。もっと青空の中ルンルンで天国を歩けると思っていたら・・・ がっくり。この夢はまた次回に・・・ と思いつつ、ここから地獄の下山が始まるのでした。
真っ白な草原の中のナウシカ  ジャンクションピークに向けて膝丈の笹薮道を黙々と進む。トラバース部分では笹の茎で何度かすべる。ジャンクションピークに着き、登山道と合流する。ここから白毛門登山口までまだ先は長い。朝日岳までは湿原もあり、目を楽しませてくれた。広い尾根で気持ちよく、時々武尊や谷川も顔を見せてくれた。朝日岳から笠ヶ岳まではアップダウンが続く。笠ヶ岳から一気にくだり、白毛門に向けてまた登る。白毛門に到着した時点で、かなりの疲労度。山頂で休憩していると一瞬ガスが切れ、山がよく見えた。まるでここがフィナーレではないかと思えるくらい。が、まだ最後の下りがあるわけで、そこから登山口までは、とても辛かった。段差があり、歩きにくく、ヘトヘトになりながら降りていった。最後は暗くなりヘッ電をつけながら降りていき、昨日渡った土合橋が見えた時はほっとした。
 1日目は9時間、2日目は12時間半と、ロングルートだったが、それだけ盛りだくさんな沢でとても大満足の沢旅だった。

〈コースタイム〉
【8月31日】 白毛門登山口(8:00) → ハナゲの滝(8:40) → 白毛門沢出合 → ウツボギ沢出合 → 幕場(17:00)
【9月1日】 幕場(7:00) → ジャンクションピーク → 朝日岳 → 笠ヶ岳 → 白毛門 → 白毛門登山口(18:30)

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