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沢登り・清津川サゴイ沢
金子 隆雄

山行日 2013年7月27日~28日
メンバー (L)金子、小幡、斎藤(吉)、内藤、山口(敦)、YUKI

 出発する数日前に前週にサゴイ沢へ行ってきたという戸田くんからメールが来た。我々が行く週末は苗場スキー場でフジロック・フェスティバルがあるけど大丈夫なのという内容だった。そうだった、9年前に行った時にもこれに遭遇してえらい目にあったことをすっかり忘れていた。今も続いていたとは思いもしなかった。当初の予定では前夜は月夜野の道の駅で仮眠するつもりでいたのだが、計画変更して夜のうちに苗場スキー場を抜けておくことにした。
 スキー場に着くと真夜中にもかかわらず凄い人でごった返していた。足止めをくらって通過するのにかなり時間がかかってしまった。毎年7月の最後の週末に行われるようなので、この週は絶対に避けるべきだ。
 小日橋を過ぎると道が悪くなるので夜はあまり走りたくない。その前に泊まれそうな場所はないか探しながら車を走らせる。いい具合に林道脇に広くなった場所があったのでテントを張り、軽く一杯やってから就寝。

【7月27日 (曇り後雨)】
 林道ゲート下の駐車スペースまで移動し準備を整え7時過ぎに出発。20分ほどで林道は終わり山道となり、棒沢出合からは上りとなる。この道は何度か通った道だが、辿った先に温泉宿があるなんて知らない人には想像もできないだろう。
 峠を越えてつづら折れの急な道を下るとサゴイ沢に架かる橋を渡る。橋を渡った先が広場になっており、ここで沢支度を整えて入渓する。更に道を辿って上流の橋からの入渓も可能だが時間的にはたいして変わらないようだ。
 ゴーロ歩きを少し続けると5mのCS滝が立ちはだかる。この滝は登れないので右岸を捲くことになるがかなり悪い捲きだ。以前来た時はもっと踏み跡がしっかりしていたように思うが、かなり不明瞭になっている。トラバースし過ぎたようで降りるのに苦労する。強引に降りようとして2mほどずり落ちてしまったが怪我などはなかった。下から見上げてみると少し下流側にフィックスがあるので後続には戻るように指示する。フィックスはかなり古くて不安があったようで懸垂で降りてきた。
 ゴーロ帯を少し行き、昌次新道がサゴイ沢を渡る所に架かる橋を潜る。更にゴーロを行くと熊ノ沢出合手前の五重滝となる。この滝も登ることはできないので左岸を捲くことになる。以前は左岸に岬のように突き出た顕著なクラックにフィックスがあったのだがこれはなくなっていた。このクラックは登るにはロープを出す必要がありそうなので楽に登れる所を探すと30mほど下流の左岸側壁にフィックが垂れていた。このフィックスを使って2mほど上のバンドに上がり、少しトラバースしてから直上する。傾斜が緩んだ所からバンドをトラバースして行く。サゴイ沢に入るには中段のバンドを行くのだが上へ上がり過ぎてしまったようで熊ノ沢へ出てしまった。戻るのも面倒なので熊ノ沢へ降りようとするが切れ落ちていて降りられず懸垂で熊ノ沢へ降り立つ。
 大岩を回り込んでサゴイ沢へ入り少しで10m直瀑が現れる。釜は大きく深く、両岸高くとても登れそうにない。これも左岸を捲く。登れない滝が多く捲きも骨が折れる。
熊ノ沢出合からすぐの10m直瀑  10m直瀑を越えると沢は穏やかになり、泳ぎ去るイワナの影もチラホラしだしたのでバタヤンと2人で竿を出しながら行く。そこそこ釣れたので竿をしまい溯行に専念しようと歩き出すと、またしても登れそうにない滝が出てくる。現在地を確認していると雨が降り出してきて、すぐに止みそうな感じではないので幕場を探すことにした。少し戻った左岸の高台に泊まることにする。藪っぽくて虫も多いが贅沢は言っていられない。整地してタープを張り終わるまでかなり時間がかかり、その間も雨は降り続けていたので全身濡れてしまい寒さが身にしみる。
 夕食も終わった19時頃にようやく雨が止んだ。今日の焚き火は無理だろうと思っていたがバタヤンとモキチが頑張って火を起こしてくれた。直に焚き火は燃え盛り凍えた身体を温め、濡れた物を乾かせたのでありがたかった。

【7月28日 (曇り)】
 昨日はほとんど進めていなかったので3時起床、5時出発とした。沢でこんなに早くから行動することは滅多にないことだ。
 予定通りに5時に出発。直ぐに昨日引き返した滝に着く。溯行図では3m~6mの小滝の連瀑となっているが、どう見てもそんな小さな滝には見えない。下の滝が崩れてしまって高くなったのかもしれないがよく分からない。いずれにしても登れないことに変わりないので右岸から捲きにかかる。草の根頼りに直上、トラバースして小尾根を乗越し全部まとめて捲いて沢床へ戻る。
 この先は滝は出てくるものの厳しい所はなく順調に進む。2条7m滝を越えた先には核心部とも言える10m滝が待ち構えていた。滝は階段状なのだが釜が大きく深く、取りつくには泳ぐしかなさそうだ。高捲きルートを探るが右岸は絶望的、左岸は5mほど上がバンドになっているように見えたので捲ける可能性があるように見えた。高捲きしようと登り始めたが後に続く者なし。モキチが滝の直登に挑戦するというので一旦降りて成り行きを見守る。
核心部の10m滝を登る  途中泳ぎを混じえて左岸をヘツって行きなんとか滝の下に辿り着いた。滝は階段状だが一段一段が高く、また頭から水をかぶりながらの登りなので辛そうだ。時間はかかったが何とか登り切った。全員が同じルートを登り切るには相当時間がかかりそうなので自分は捲くことにした。草の根をホールドに泥壁を5mほど直上すると下からバンドに見えた所に出る。しっかりしたバンドではないが微かに踏んだ跡のようにも見える。10mほどトラバースし2mほどの岩場を木の根をホールドに登るとブッシュ帯に入る。後は歩いて滝上に降り立つことができる。案外楽に捲くことができて2番手がまだ登り終わらないうちに高捲き終了。
 3段15m滝を浮石の多い左岸のリッジから捲いて越えると二俣に着く。地形図で水線がなくなる所だ。本流の左に入る。二俣を過ぎると水量は激減する。3mほどの滝を2つ捲いて越すともう滝はなくなり詰めを残すのみとなる。登山道へ出るまでの時間短縮のため標高1,670mくらいで南から流入する枝沢を詰めあげようと考えていた。目的の枝沢は直ぐに見つかり入ってみたが1分も行かないうちに沢は尽きて目の前には濃密な根曲竹の藪が広がるばかり。とても突っ込む気にはなれず引き返す。先の枝沢も同じようなもので机上の空論だったと諦め本流を忠実に詰めることにする。かなり手強い根曲竹の藪こぎ1時間半で池塘のある登山道に出た。
地獄から天国に出た気分  幕場を出てから9時間もかかっている。先はまだ長い、沢装備を解いて下山にかかる。赤倉山分岐までは道も良くて歩き易い。赤倉山は分岐から数十mなので行ってみたが展望もなく看板がなければ山頂だとは分からないような山だ。分岐から赤湯へ下る道は刈り払いはされているが歩きづらい道だ。山口館に着いたのが既に18時、途中で暗くなるだろうとの予想通り峠を越える前に暗くなりヘッドランプでの行動となる。途中で携帯の通じる所があるので下山連絡をする(Docomoは通じるがauは通じない)。
 真っ暗な中、20時30分にようやく車に辿り着いた。既に終電が気になる時刻になっていたので風呂なし、飯なしで帰路についた。

〈コースタイム〉
【7月27日】 林道ゲート発(7:10) → 入渓点の橋(9:00~10) → 熊ノ沢出合(11:15~25) → 幕場(13:30)
【7月28日】 幕場発(5:00) → 二俣(10:10~25) → 登山道(14:00) → 赤倉山(15:35) → 赤湯山口館(18:00~10) → 林道ゲート着(20:30)

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