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四万十川滑床渓谷遡行
鈴木 章子

山行日 2013年11月21日~22日
メンバー (L)鈴木(章)、杉本、畔上、吉田(久)

宇和島城にてさんさ踊りに飛入り参加  今年の秋は短かった。この寒いのに、何の思い付きか、それとも狂気の沙汰か、単なる年寄りの冷水か、意見の合ったオナゴ4人。個人装備に風邪薬とホッカイロをプラスして、行ってきました、四国の四万十川滑床渓谷。
 休日は3泊4日、3日目は石槌山を登る予定だったが、21日の時点で石槌山は60㎝の雪と、登山口にある国民宿舎の女将さんに言われてしまった。山登りは急遽変更。宇和島でひたすら食と観光と人情に溺れ、仕上げは道後温泉で終了。非常に心に残る旅でした。

道後温泉にも浸かって愛媛漫遊 【11月21日・1日目】
 吉田さんは福岡から、畔上さんはANAで、杉本さんと私はJALと各々好きな飛行機で松山空港に集合。空港でレンタカーを借り、一路、滑床渓谷を目指す。車中から眺める四国の町々はゆったりとした感があり、紅葉も素晴らしくこれから沢登りをするなんて全く思いもつかない外の寒さ。
 3時間ほどで滑床渓谷に到着。真っ赤な紅葉のお出迎え。『ここには猿が多いので気を付けて下さい』と看板もあるが、何故かこの日は高齢者の団体ツアー。我々が一番若い!
 時間に急かされるように身支度をした。時々吹く風は冷たく、何でここまで来てこんな思いをするのか、心の奥は『やめたいなー』以外浮かばない。30分ほどで身支度は終わり、最後に寒いからと全員でヘルメットをかぶる。
寒さに立ち向かうジャンヌ・ダルクたち? 「ムムム… 何と凛々しい! まさに、昭和のジャンヌ・ダルクではないか!」
 いざ行かん! 強気? 仲間。お前が行けるから我も行ける。
 スタートラインの万年橋を渡り、暫く周遊道を歩く。巨岩帯から滑床へと沢は変化するけれど、入渓の合図がなかなか出ない。沢に降りては、遊歩道へ戻るの繰り返しが続いたが、雪ノ輪の滝に出合ってからは、全員、何故かヒタヒタと沢の中を歩き出した。
 沢はズーと、ズーと滑が続き美しい。しかし、綺麗な薔薇には・・・。
 落ち葉に隠された苔にツル! 油断禁物、緊張が走る。もう少し暖かければ、沢の中を鼻歌交じりで歩けてろうに、悔しさがチョッピリよぎる。
 あの手、この手(足?)で千畳敷まで辿りつくと、日は傾き始めた。千畳敷の上部に小屋があったので、今宵の宿は小屋近くにテントを張った。小屋は鍵が掛けられ入れなかったが、小屋の前には大量の薪と竈。大いに利用させてもらった。
 焚火は威勢よく燃えるが、前を暖めれば背中が寒い、背中を暖めれば前が寒いを繰り返し、ホッカイロも至る所にペタペタ。3時間ほど頑張ったが、寝るために入ったテントとシュラフが一番暖かかった。

暫く周遊道を歩く水が輪を描きながら落ちる雪ノ輪の滝

【11月22日・2日目】
落ち葉の滑はただひたすらに美しい  5時起床。本日も快晴、寒い!
 今朝出たゴミを燃やしつつ、身支度をする。今日一日暖かいことを願って沢に向かう。昨日同様、滑床は続く。美しい、実に美しい。夏でないことが悔やまれる。しかし、今だから見られる紅葉。輝く沢。素晴らしい。ピチャピチャの音も軽やか?
「ンー、これも最高!」
 長時間の休憩は寒いので、立ったままの休憩。と、杉ちゃん、何を思ったのか沢にズズズ・・・。「助けてー」と叫ぶものの、こちらも身の危険(濡れる)は冒したくない。腰まで浸かってやっと引き上げた。(ゴメン!)
 二俣、奥二股も瞬く間に過ぎ、今回の計画に満足。
 さて、ツメともなれば、籔は無く、斜度もそれほどではないのに、3名はキツイとほざく。『ルート選びがなってない。このくらいの傾斜で。まだまだ、根性不足!』
 10分ほど登ると登山道に合流。八面山を目指す。
 八面山山頂で出会った2人、高知県から自然監視に来たと言う。お願いして写真を撮っていただく。そして、少しの情報も得られた。
 しかし、彼らの、この寒いのに沢登りをしてきた我々に向ける眼差しが違う。四国人の歓迎の目だろうか? それとも『お前ら阿呆か?』の目だろうか?
八面山は晴れれば海が一望とのこと。残念!  1,000m以上は霧の中、海に近いこの山域にはよくあることと聞かされて、寒い霧の中、最高峰の三本杭を目指す。途中、三本杭から来た高齢者に出会う(この山は何故か老人に出会うことが多い)。
 彼は、「三本杭は雪やで~」の、一言を残して立ち去っていった。この一言は、沢を降る予定の我々の心にグサ!
 三本杭には、斑だが確かに雪はあった。一等三角点の石までが冷たく目に映る。山頂で暫くすると霧が薄くなり山並みが見えてきた。ゆったりとした山並みは、この土地の人々の心のようだ。遥か遠方に、瀬戸内海と島々(これを我がパーティーの奴らは、雲海と山並みと言う。ここでも私の説明が必要だった)。
 説明を聞いた途端、これまで静かだった畔上さん、「島に行きたい!」と、これで急遽、明日の予定は決まった。明日の予定は、宇和島で食と島めぐりに浸ること。
 三本杭を沢分岐まで下ったが、誰も『沢へ』の言葉はない。出ないまま尾根を降るが、沢靴での下りはなかなか辛いものがある。平坦に見えた山々も手ごわい下りで迎えてくれる。
 シャクナゲの森を越え、御祝山を越え、万年橋を目指す。何度転んだことか。
 大嵓ノ滝分岐で、滝を見る見ないで意見が分かれる。結局、遠いからで諦めた。沢を下っていれば必然的にこの滝に出会うのに。
 残念なことに、この道は、雪ノ輪の滝に出会うことはなかった。もう一度あの美しい滝を見たかったのに残念!
 万年橋に着けば、高齢者が集まり我々は、またもやヒーロー。寒さも忘れついポーズ。昭和のジャンヌ・ダルクたち。山は何時も我々を英雄にしてくれる。やはり山には感謝の心を忘れてはいけない。
 着替えを済ませ、山中で聞いた城川温泉を目指す。風呂と食を求めて。
 これから先、我々に向かってくる温かい人情の風の予感も感じないままに・・・

沢靴での下り
〈コースタイム〉
【11月21日】 万年橋(13:50) → 入渓(14:10) → 雪輪ノ滝(14:30) → 千畳敷(15:10) → 滑床小屋(テント泊)(16:00)
【11月22日】 滑床小屋(7:30) → 奥千畳敷(8:10) → 二俣(8:15~8:20)~奥二股(9:07) → 登山道(10:20) → 八面山(10:30) → 分岐(11:45) → 三本杭分岐(12:08) → 三本杭(ピストン)(12:15~20)~三本杭分岐(12:30) → 御祝山(13:20) → 大嵓ノ滝分岐(14:04) → 万年橋(14:40)

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