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都道府県最高峰登山・釈迦岳/経ヶ岳/普賢岳
箭内 忠義

山行日 2013年12月27日~30日
メンバー (L)箭内、小山、澁谷

 百名山が終わったので、次は各県の最高峰を登ろうと進めています。今回は、福岡県の釈迦岳、佐賀県の経ヶ岳、長崎県の普賢岳に挑戦です。

【12月27日(金)晴れ】
 釈迦岳は大分県日田市と福岡県八女市との境界にある標高1,231mの山です。
 博多駅前のレンタカー会社からスタートです。事前に矢部村役場に問い合わせたところ、雪のため車は途中までしか行けないこと、山は雪で覆われていること、一か所岩場がありクサリがついており危険であることを伝えられました。雪山装備での登山と理解しました。
 杣の里渓流公園に車を止めました。ここから歩きです。普通は、ここから御前山(県第2峰)に登り釈迦岳に縦走するルートが一般的です。しかし、私たちは直接釈迦岳を目指しました。
 林道をしばらく歩いていくと、橋に出ました。橋のところから薄く山に向かいトレースらしきものが付いています。標識もないので迷いましたが、ここから登り始めました。しばらく行くとしっかりとしたトレースになり、標識も出てきました。ルートに間違いはなかったようです。久しぶりの山なので体が重くゆっくりと登って行きましたが、澁谷さんは体調がよいのか、先頭に立ちぐんぐん登っていきます。危険な岩場と教えられた箇所も雪が付いていたのでアイゼンを効かせてガシッ、ガシッと登ります。寒く雪が薄く舞っていましたが、思いのほか順調に頂上に着くことができました。頂上に着き、やり遂げた達成感を味わえました。満足感にしばし浸っていました。
頂上です。隣は釈迦像です  釈迦岳の頂上には釈迦像が鎮座しています。
 下りも往路を戻りました。アイゼンが気持ちよく効いて雪山ハイキングが楽しめました。
 車は雪で埋まっていないか心配でしたが、里の方は雪が降っていなくて助かりました。タイヤがスタッドレスではなく、チェーン対応だったからです。
 福岡空港に小山さんを迎えに行くまでに時間があったので、「べんがら村」(日帰り温泉)に寄り、すっきりさっぱりしました。
 空港で小山さんと合流し、そのまま小山さんの実家に直行です。小山さんの実家は床の間があり、欄間、長押のある立派な純和風住宅です。畳の上でゆっくり眠れました。勿論寝る前には宴会です。筥崎神社前の屋台の焼鳥屋「花山」で遅くまで激しく飲み、食べました。小山さんご馳走様でした。ゲップ。

【12月28日(土)晴れ】
 今日は移動日です。小山さんは自分の車を取りに自宅に向かいます。私は、前から行きたかった「吉野ヶ里遺跡」見学です。日本百名城の一つなのです。山と同時に百名城巡りも同時にやっているのです。吉野ヶ里は弥生時代の環濠集落です。40haを超える国内最大級の環濠集落です。発見当時は卑弥呼がと騒がれた遺跡です。遺跡内は広いのでバスに乗せてくれました。
櫓と竪穴住居他に墳丘墓などがあります  佐賀駅前で小山さんと合流し、今度は小山さんの車で明日の登山、経ヶ岳の麓、黒木町に向かいました。黒木町の登山口に着き、テントを張る場所を決めていると、丸太を処理している男性がいました。小山さんが話しかけ、経ヶ岳の登山口などの話をしていると、当然のように「家に泊まってもかまわないよ」と言ってくれました。風が痛いほど冷たく、テントはさぶいなあと思っていたところなので、渡りに船です。すぐに「お願いします」と頼み込み泊めてもらうことにしました。
 登山口のすぐ近くにある家です。案内されて家に行き、驚きました。超豪邸山小屋なのです。部屋の暖炉ストーブには丸太が燃やされていました。調度類も高級なものばかりです。お金をかけ、手間をかけ、時間をかけ建てられた、素晴らしい家でした。その1階部分をすべて使っていいというのです。布団も自由に使ってかまわないと言ってくれます。畳の部屋があり、キッチンは最新のガス設備です。冷蔵庫にはビールも入っています。コーヒー、カステラ、大福を御馳走になった上に、ビールも自由に飲んでよいというのです。恐縮してしまいましたが、しっかりビールを泊めていただいた山小屋風邸宅で飲み、快適に寝させてもらいました。
 御主人(女性)は、気を遣いお礼などしなくていいですよ。その代わり、この家をだれでも利用するよう広めてください。というのです。ですから、ここに紹介する次第です。九州、長崎、佐賀方面に行く人がありましたら、箭内、小山、澁谷に連絡してください。ご紹介します。

泊めていただいた山小屋風邸宅です

【12月29日(日)晴れ】
 今日は経ヶ岳に登ります。経ヶ岳は佐賀県と長崎県の県境に位置する山です。つまり山が県の境を決めているのです。昨日の男性の話から靴はハイキングシューズでも大丈夫ということなので、アイゼンも持たず軽い気持ちで出発しました。最初は棚田の脇を登っていきます。どこも鉄の柵で囲まれています。イノシシ除けだそうです。
 杉の植林地帯に入ると辺りは光が遮られ暗くなっていきます。ここの黒木杉は材がよく有名なのだとのことです。杉林を抜けると、照葉樹林帯です。東北とは全然違う樹木が密生しています。木の肌にいぼいぼがついていたり、木の肌の色が赤茶色のものがあったりと変わった木がたくさんあるので興味をそそられます。
 急斜面になると地面は落ち葉で埋め尽くされ、道が判別しづらくなってきました。とうとう道から外れてしまいました。しかし、方向はわかります。とりあえず尾根まで急登をゼエゼエ言いながら登り切りました。澁谷さんのコーヒーアメとチョコボールが美味しく、助けられました。
 尾根をたどると山道に出合いました。「つげ尾」というところです。ほっとしました。ここから尾根伝いに登ります。すると予想に反して雪が出てきてしまいました。そのうえ稜線上なので雪が凍っているのです。まいりました。小山さんの靴は革靴なのでよかったのですがアイゼンは持ってきていません。澁谷さんと私はハイキングシューズです。澁谷さんは軽アイゼンを持ってきていたのでよかったです。
 頂上近くなるとハイキングシューズでは歩けないほどの、雪の凍った急斜面となりました。しかし、そこから先はずっとロープがフィックスされていました。助かりました。ロープを頼って、なんとか頂上に到着です。ロープがあり本当についていました。ほっとし、頂上まで到達できてよかったなあという満足感に浸れました。
経ヶ岳の頂上です。ニコニコの二人  私たちが頂上で休んでいると続々と登山者が登ってきました。この山は佐賀県の人気コースの山だそうです。頂上に置いてある登山ノートには今年だけで243回も登ったということが書いてありました。私たちのすぐあとから登ってきた夫婦の旦那は多良岳登山者山の会の会長でした。その方も毎年150回以上登っているということでした。経ヶ岳から西岳、多良岳のコースに金泉寺山小屋があり、その小屋は百人を越える登山客が泊まれる人気の山小屋だそうです。山の会の会長はその金泉寺山小屋の管理もしているとのことでした。会長の助言で、アイゼン無しでこの先に行くより、ロープを頼って来た道を降りたほうが安全だ、ということなので来たコースを戻ることにしました。
 登るより、下りが怖い雪の道、ロープにしがみつくようにつかまり、とっとと下りてきました。
 稜線が終わり南斜面の下りになったら、あとはさっさと下るだけです。
 登山口に戻ったのが午後1時。明日は長崎の山なので、泊めていただいたお宅にお礼の挨拶をし、長崎に向かいました。
 行ったところは長崎のグラバー邸です。観光をしました。でも、高島炭鉱がグラバーも一緒に開発したこととか、ビールが初めて作られ、それがキリンビールになったこと等、面白いことが分かりました。
 今夜の宿は、雲仙の民宿です。何のことはない、折角テントやコッヘル、ガスなどを持ってきましたがまったく使いませんでした。民宿は6,500円。安い。

【12月30日(月)晴れ】
 最後の日は長崎県の最高峰、普賢岳です。本当は雲仙岳(平成新山)なのですが、出来たての山なので、噴煙があがり、まだ危険で登れないのです。
 共同風呂で会った地元のおじさんの話から登るルートを決めました。雪がなければぐるりと巡って5時間のハイキングコースとのことでした。今日も冬山装備で出発です。
 車でロープウエイ乗り場の仁田峠まで行けるのですが、われらは山岳登山隊なのです。もっと下から歩きます。池ノ原園地の駐車場からスタートです。最後の日なので宴会疲れもあり、身体がすこぶる重い。最初はゆっくりゆっくり身体を引きずるように登っていきました。まずは仁田峠です。ロープウエイが動いています。
 私たちは登山道を登ります。ロープウエイの終点が妙見岳山頂でした。ここから先は雪が付いていましたが、ズック、スカートと、軽装備の人も沢山います。ロープウエイで妙見神社に参拝に来た人のようでした。
 さらに国見岳方面の尾根を進みます。国見分かれの分岐に着くと、今度は登山者と多数出会いました。普賢岳を登り平成新山の噴煙を見る一方通行の巡回登山道があるのです。私たちは巡回などせず普賢岳だけを登るピークハントねらいです。最後の頂上へのコースはかなり急な登りでした。アイゼンを効かせてよっこらしょ、どっこいしょと登っていきました。小さな神社があるところが広場になっていました。そこから頂上までは巡回コースとは方向を変えてひと登りです。頂上に到着すると360度の展望です。目の前が海です。長崎、そして、熊本方面まで見えます。とてもいい気分になりました。風が冷たいので記念写真を撮り景色を楽しんだら食事ができる下の広場に移動です。
後ろに見えるのが平成新山・雲仙岳です  昼食は宿で作ってもらったお弁当です。雲仙にはコンビニがなく行動食を買うことができず困りました。宿の女将に頼むと何とか都合をつけてくれ、作ってくれました。ちょっと豪華な弁当です。350円でした。
 下りは尾根コースではなく、仁田峠に続く近道を下りました。頂上まで行くのに思いのほか時間がかかりました。急いで長崎空港に向かいました。空港そばの日帰り温泉で解散です。小山さんは奥様と親類との会食のため博多に車で帰りました。私たちは飛行機です。
 無事3つの県最高峰に登ることができました。小山さん、澁谷さんお付き合いいただき、助けていただき本当に有難うございました。

〈コースタイム〉
【12月27日(金)】 登山口(10:00) → 頂上(13:45~14:00) → 登山口(15:30)
【12月29日(日)】 登山口(8:00) → 頂上(10:30~11:00) → 登山口(13:00)
【12月30日(月)】 池ノ原(8:50) → 普賢岳頂上(12:00) → 池ノ原(14:00)

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