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雪山縦走・会津朝日岳~丸山岳~三岩岳
鈴木 章子
峯川 正行
軽部 剛
津田 友紀子

山行日 2014年5月3日~6日
メンバー (L)鈴木(章)、(SL)峯川、軽部、杉本、津田

【総括】《リーダー 鈴木(章) 》
アッコ仮面が会津の山を占領!  長~い間歩いてみたいと思ってはいたが、まさか実現するとは思わなかった。4日間で完歩するには計画段階から苦しいものがあり、心の奥では三岩岳までいければ上出来と思っていた。幸い好天に恵まれ、心の予定通り三岩岳からの下山は許された。
 4日間苦しい戦い続き。全員よく頑張ったと思う。若さとは実に羨ましい。ただ一人、自分の馬鹿さ加減にあきれ返る部分は多かった。
 2日目の9時間の藪こぎ大きな誤算。中間点の大幽朝日は小さなピラミッド形、美しい山形だったが、チビほど侮れないものはない。あの藪こぎが大幽朝日で終わっていたなら駒ヶ岳まで行けたのかもしれない。悔しい面もあるが、悔しさが再度の計画を生むこともある。次回は、駒ヶ岳~三岩岳~小豆温泉泊もいいかな。
 参加して下さった皆さんありがとうございました。冬眠明けの親子連れの熊、母親の姿が愛おしかった。4日間会津の山を我々5名で占領? できたことは幸せでした。

【5月3日(土)晴れのち濃霧】《記録:峯川》
たった3年で廃墟と化してしまったいわなの里  今回の山行はそれほどの大荒れにはならないであろうと、山行の成功を信じて浦佐で新幹線を下車し、乗り換えで只見駅に9時15分くらいに到着する。只見線は初めて乗車するが、1時間くらいの長閑な車窓が逆にこれからの山行への緊張感を高めた。なにせ、久々の長期GW山行なので、いくつかのアクシデントはあるのではと準備段階から緊張しまくっていたのです。
 只見駅でアッコさんが予約したジャンボタクシーに乗車して登山口のいわなの里の入り口に向かいました。残雪がなければ、いわなの里までタクシーは入ってくれるのだが、平成23年の豪雨災害により林道が崩壊してしまい、タクシーが入ってくれないのです。約1時間の林道歩きが必要になりました。豪雨災害のために、いわなの里は廃墟となり悲しげな姿になっていました。帰京してからネットで平成22年の頃の画像を見ると多くの人が訪れ、賑やかな場所であったことがわかりました。建物も何が原因なのか知りませんが、消失してしまい営業を再開するのは、ほぼ無理だなあと感じました。地元の人の大事な憩いの場であったいわなの里がたった1日の豪雨により、いとも簡単に廃墟になってしまい、自然は本当に怖いものだと感じました。
いきなりの赤倉沢の渡渉  廃墟のいわなの里で装備などを準備して、会津朝日岳登山口の看板から出発です。予想していたとおり、渡渉ポイントがいきなりありました。かつては橋がかかっていたはずですが、何もありません。靴を脱いでの渡渉でしたが冷たい冷たい!
 初めての素足渡渉だった? 津田さんも冷たさに耐えて渡渉できました!
 登山道は赤倉沢沿いを進んでいきますが、しばらくは林道を進みます。やがて沢は雪渓に隠れてしまい、ピッケル、アイゼンでの雪渓登りとなりました。久々の登山で重い荷物の津田さんはあまり体調が良くなく、アッコさんが最後尾で一緒に歩きます。残り3名はルート取りを考えながら少し先行して進みました。
 ほぼ踏み跡もなく、夏道もよくわからないなか、地形図を見ながら沢から尾根に這い上がる地点を探しながら雪渓を登ります。非常に暑く、ぜいぜい言いながら登ります。叶の高手方面から伸びる細い急登の尾根を見つけたので軽部さんトップでガシガシ登っていきます。夏道はここなのだろうか? と周囲を確認しながら登り、なんとか鞍部の休憩ポイントに到着しました。

雪渓に覆われている赤倉沢急登をこなせば人見の松

 その頃から一気にガスが広がり、見通しがかなり悪くなりました。あとで調べると、この鞍部が人見の松と呼ばれるポイントのようです。そんな松あったかな? やれやれと休憩となりましたが、津田さんとアッコさんとの距離がこの時点でかなり離れてしまい、しばらく待つことにしました。登ってきた尾根もガスに隠れて全く見えず、2人の姿も全く見えず、かなり不安を感じました。津田さんの体調が悪く歩行不能で登れなければ、我々も下降して合流したほうがいいのでは? と考えながら休憩していました。しばらくして、杉ちゃんの猛登コールにアッコさんが答えてくれて、私は心底ホッとしました。パーティーが分断することは絶対にやってはいけないことであり、反省すべきことです。しかし津田さんもよくぞこの急登を登ってくれました。
 ここからは尾根をたどっていきますが、尾根の左側は雪庇があったので樹林帯を慎重に登っていくと、叶の高手に到着です。ガスガスの中で全く景色は見えませんでした。時間がすでに16時をまわっていたので、今日の終着点は避難小屋に決定です。雨も降ってきそうなので先を急ぎます。
 叶の横手から進路を西側に変えて下っていきます。立派な大クロベも時間がないのでスルーして先を急ぎ、途中のピークも登らずに南側を巻いて進みます。地形図を見るとおそらく夏道も巻いていると思います。トラバースしていると、ようやく行き先に朝日岳避難小屋が見えてきました! かなり立派な小屋です。
 16時半になんとか転がり込むことができました。ここの小屋は素晴らしいです。土間部分に囲炉裏があり焚火ができるのです。本日はもちろん我々の貸し切りなので、アッコさんに焚火をしていいかどうか許可をとり、みんな一斉に薪集めに繰り出します。その頃から雨が降り出しました。降り出す前に小屋に到着できてよかったです。今日の夕食の食当は津田さんだったのですが、出てくる食材の量に一同ビックリ! これだけの量をよくぞ担いだなあと驚きました~ そんなに多くなくても大丈夫ですよ! 夕食は少し少ないぐらいがちょうどいいのです!
 その夜は焚火のお陰で本当に幸せでした。冷えた体も一気に温まり、夜も熟睡できました。

立派な青い屋根の朝日岳避難小屋囲炉裏があることは幸せです!

【5月4日(日)晴れ】《記録:軽部》
 2:30起床、4:30に朝日岳避難小屋を出た。会津朝日岳より先は道が無く藪こぎになるので雪の付き具合で伸ばせる距離が変わってくるとのことで、この時期に藪山行をしたことがない自分としては不安もありつつ楽しみな気もする。

朝日に照らされて、会津朝日岳を目指す会津朝日岳にて藪との戦いに備える!

 避難小屋から会津朝日岳へは雪が締まっていて気持ち良く登り、山頂直下で一本取り空身で山頂まで行ってきた。鋸刃から先を見ると雪は落ちているものの残っている雪をひろって行けそうな印象だったがいざ歩いてみると雪は稜線から落ちていて乗れなかったり、乗れてもその先で尾根に戻れなさそうな所が多くアイゼン、ピッケル、ビーコンを身に付けて大汗をかきながらの藪こぎになった。

会津朝日岳から望む鋸刃藪から雪の有り難さ

 大幽朝日岳は名前は良いがチョコンとした藪に覆われたピークで西側を巻き、結局1,442m辺りまで、ほぼ1日藪の中。大幽朝日岳から先の藪はある意味想定外でかなりの時間を要した。
 1,552mピーク下で尾根上を行くかトラバースするか話していると300mほど離れた斜面に熊の親子が歩いていた。子熊2頭は好奇心旺盛なようで、立ち止まってキョロキョロしたりじゃれ合ったりで、なかなか進まず親子の間が離れてしまう。その度に母熊は2頭を待っていたり、戻ってせっついたりしているのを見ていたら子連れの熊が獰猛だというのにも納得してしまった。熊たちが見えなくなってからトラバースして1,552mの先の丸山岳手前の平らになった所で幕を張り手巻き寿司と杏仁豆腐で満腹になって就寝した。

雪がないんです!ぴりりと小粒な大幽朝日岳でした

【5月5日(祝)曇りのち強雨のち雪】《記録:峯川》
丸山岳にて会旗を掲げての記念撮影  昨日の灼熱の9時間耐久藪こぎは本当に疲れました。果てしない稜線の藪は精神的に良くなく、昨日はテントに入るとどうも体調が悪く、薬をこそっと飲んで就寝しました。そのせいなのかセットした起床タイマーに全く気づかずに20分の寝坊で2時50分起床となってしまいました。おかげで出発が4時50分となり、当初の予定より少し遅目の出発になってしまいました。今日は一気に距離を伸ばす予定なので失敗しました。でも、その反面、よく偶然目が覚めたなあと。
 朝一の登りは丸山岳西側の1,736m台地への登りです。昨日からその尾根を見ていると藪が出ていて、どこから取りつくべきか考えていました。直下に行けば弱点があるかなあと思いながら進みます。近づいてみると雪がついている右側をトラバースして登っていくしかありませんでした。朝から緊張するトラバースもあまり精神的によくないですが、軽部さんが慎重にステップを切って前進します。最後は藪にぶつかってしまいましたが、アッコさんが絶妙な藪の取付点を見つけ出し、少々の我慢の藪こぎで稜線に飛び出ました。昨日の藪を経験していれば、これくらい大したもことはないです。
 下から見えた尖った藪のピークはうまくまけた感じで抜け出し、あとはデブリの雪の上を慎重につないで安全地帯まで進み、休憩を取りました。「あとは広い稜線をずんずん進むだけだよ!」と緊張していた津田さんにお声がけすると、安心した顔をしてくれました。
 丸山岳に登ると、次のステージがすべて見えました。時間的に考えても、今日は印象的なコルが見える坪入山ぐらいまでだろうか。以前から思い入れのあった丸山岳だったが、もっともっと丸いのではと期待していたが、思ったほど広くなくてちょっと寂しい。今回の行程のおへそ部分と思っている丸山岳なので、新しい会旗と新しいミニ三脚を持ってきたので、みんなで記念撮影をする。会旗を持っての撮影も長期山行ではいいものである。
丸山岳の丸みを下るアッコ隊  丸山岳からはまずは下降して火奴山からの火奴尾根合流点の1,723m台地まで登り返す。この火奴尾根は残雪期のルートでもあるようで、記録で少し見かけた。このルートも非常に気になる。
 休憩しながら梵天山を見ると、尾根には藪が出ている。ここもアッコさんと確認し、右側の雪面をトラバースしながら進む。それにしてもこのGWの山は何回トラバースしていることやら・・・
 梵天山ピークへは行かないでコル部分から下降する。この梵天山からの下降はスキー場のようで本当に気持ちがよい。先にある高幽山がほどほどの大きさで見えるが、実は奥に本峰が隠れていて立派な山なのです。右側には越後駒ヶ岳、八海山が見え、写真を撮りまくって進む。高幽山はなかなか辿り着かない。ピークかと思うと更に先にピークがあるということを何回か繰り返し、ようやく高幽山に到着である。ここまで来ると坪入山も近づいてくるが、藪の箇所がどうしても気になってしまう。ここからは進路を南東方向に切り替えて1,740mから一気に300m下降して、また300m登り返すこととなる。今日最後のお仕事です。

立派な高幽山を目指すこれが高幽山です!

坪入のコル手前で幕営 奥が坪入山  先ほどから遠目から見ていて、1,500mコルから1,712m台地の登りが最後の核心だと思い、ルートをつけていく。尾根の左側がデブリ状態になっていて、雪面通しで歩くことはほぼできないので、やはり右側の雪面+藪エリアを進むことに。ブリッジになっている所もあり、忍者のように忍び足で越えていく。うまいこと雪面をつなげることもできて、14時前に1,712m台地にたどり着く。時間的にも坪入のコルから坪入山を登って越える時間が厳しいと考え、坪入のコル手前の1,754m台地付近に幕営することとする。
 手前のピークはもちろん巻いてテント設営のために急いで進む。風が常に強いのか結構雪面がうねっていて、なかなかいい場所がなかったが、一段下がっていて、いかにも幕営して下さいという場所があったのでザックを下ろしてすぐにテント設営。
 今日の天気は一日曇りではあったが雨も降られずに本当に助かった。昨日のような快晴にもならなかったお陰で今日はここまで距離を伸ばせたと思う。昨日とは同じ行動時間なのに、明らかに昨日と比べて倍以上は歩いている。昨日より早めにテント設営できたので、みんな思い思いにゆっくりした。今日は私が夕食担当であったが、青椒肉絲が好評でほっとした。真空パック器を購入して野菜などを真空パックにして持参した甲斐があった~。いちごゼリーも大量に製作。体調を少し崩していた津田さんもゼリーは食べてくれました。

【5月6日(祝)曇りのち晴れ】《記録:津田》
 この日は朝から白い靄がかかっていた。幕場の脇から坪入山方向に向かうと、すぐに急な斜面が出てきて峯川さんを先頭にトラバースして登る。トラバースはやはり一番緊張するが、この3日間、皆さんがステップをしっかり作りながら歩きやすくしてくださったので私は一番楽なはず。
 坪入山は樹林の中にちょこんと山頂があるかわいらしい山だった。ここからは緩やかな尾根になり、いつの間にか雲が切れた青空の中で、一面雪景色の山々を見ながら進んでいく。こんな大きな山々の連なりを私たちだけで堪能できるなんて、ずいぶん贅沢だ。
 最後の山、窓明山に登る手前の尾根でまた樹林の中を歩く。樹林を出たり入ったりしながら、たまにヤブが出てきたりして、2日目のヤブ地獄を思い出し一瞬気が萎える。だが、あの長いヤブ地獄を経験した後では大したことではない。

ガスが抜けて神秘的な窓明山への稜線三岩岳が目の前に見えるが手前で下山

無事下山!お疲れ様でした~  三岩岳下の分岐ポイント周辺で避難小屋を探すが見当たらない。尾根を少し下ったところに三角の茶色い屋根が見えた気がして、あそこに見えるよね、と言いながらその方向に進んでいくが、木々が立っているだけだった。そこに在ってほしいという願いが錯覚させるのか・・・ 結局、後で峯川さんが調べたところ、もう少し三岩岳の方とのことだった。
 下山の分岐ポイントでしばし休憩し、後は下るのみだ。下山先の麓が見えてくるとなんだか名残惜しくなってくる。特に前日までの3日間は体調の悪さと体力のなさが祟って下を向いて歩くばかりで、景色を存分に楽しむ余裕がなかった。ようやく良くなったこの日の体調のまま、もう少し雪の山々を堪能したいと思った。
 吹きさらしの斜面でアイスバーンのところがあり、風が強かったこともあって、へっぴり腰で慎重に下った。その後はもう気持ちよくキラキラした樹林帯の中をさくさく歩いていく。途中で赤いジャケットに黒のズボンを来たM氏に似た恰好の単独の男性が登って来るのが見え、4日ぶりの人影に嬉しくなり、もしかして迎えに来てくれたのかな、などと冗談を飛ばしながら下りていったが、残念ながら別の登山道を行ったのか対面することはなかった。
 小豆温泉登山口に下りてすぐの「窓明の湯」でさっぱりして、そのバス停から出発する会津高原尾瀬口駅行きのバスに慌ただしく乗った。
 いつもアッコ山行では体調不良と体力不足で迷惑をかけ、また、あまりの辛さに足を前に出すだけで精一杯というシンドイ思いをするが、喉元過ぎればなんとやらで、日が経つにつれて辛さは薄れていき、もう頭に浮かぶのは楽しい思い出ばかり。そして、またアッコ山行で素晴らしいメンバーと山々を歩きたいと思いを馳せてしまうのだった。

会津高原尾瀬口駅でのいつもの店で打ち上げ!
〈コースタイム〉
【5月3日(土)】 只見駅(9:20)=<タクシー>=白沢集落(9:50~10:00) → いわなの里(10:45~11:05) → 人見の松(15:00~45) → 叶の高手(16:00) → 朝日岳避難小屋(16:35)
【5月4日(日)】 朝日岳避難小屋(4:30) → 会津朝日岳(5:30) → 鋸刃エリア(6:30) → 1,610m分岐(6:45) → 1,554m(7:30) → 1,451m(9:40) → 大幽朝日岳の肩(11:20) → 1,442m(13:30) → 1,570m台地(丸山岳手前)【幕営】(15:40)
【5月5日(祝)】 1,570m台地(丸山岳手前)(4:50) → 1,736m先【藪脱出】(6:40) → 丸山岳(7:25~40) → 1,723mピーク【火奴尾根合流点】(8:50) → 梵天山のコル(9:35) → 高幽山(11:10~30) → 1,712m点(13:50~14:10) → 1,754m点【幕営】(14:40)
【5月6日(祝)】 1,754m点【幕営】(5:30) → 坪入山(6:00) → 窓明山(8:20) → 三岩岳手前分岐ポイント【1,816m付近】(9:40) → 小豆温泉登山口(12:10)

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