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雪山登山・上州武尊山縦走
津田 友紀子

山行日 2014年3月21日~23日
メンバー (L)鈴木(章)、飯塚、中澤、箭内、杉本、津田

 上州のふかふかの雪を歩いて真っ白銀世界を楽しみたいと思って手を挙げた。
 当初のコースは難関ということで、まだ危険個所の少ない(アッコさん曰く)メルヘンタッチのルートに変更してもらった。はてさて最初の2日間はメルヘンに浸り、3日目はスリリングな冒険を楽しんだ。

大きな田代湿原 【3月21日(金・祝)】
 21日(金)に8:33沼田駅着の電車で集合。ホワイトワールド尾瀬岩鞍のスキー場までジャンボタクシーで行き、スキー場の建物の中でザックの中を整理する。
 スキー客に交じって片道ゴンドラ券を買って上がると、スキー客も滑るのを休止するほどの風が吹いている。突っ立っていると冷たい風で体と手指が冷えていくなか、急いで(と言ってもまだまだ手際が悪く時間がかかってしまったが)ワカンを履いてリフトから少し歩いた先の右脇から登山道に入っていく。
 最初から登りで、お正月以来のテント山行で息が上がる。体も重い。
 登りが間もなく終わると、ひっそりとした樹林帯を歩いていく。途中、分岐をやり過ごしてしまい後戻りする。
 まるっきり私たちの世界のブナの森を歩いていると、曇り空なのもあって目に見えるのは白い雪と黒いブナと薄墨色の空で、全体がグレーのグラデーションのメルヘンの世界だ。ブナの森は景色が似ているので迷いやすいということも教えてもらった。
すき焼きパーティー!  ベテランの皆さんがコンパスと地図を使って進路を確認しつつ進んでいく。
 田代湿原に照準を合わせて進んでいくと、ポッカリと明るく全く木の生えていない広い場所に出た。贅沢にも我々だけの足跡を湿原につけて横切っていく。
 雪の中を歩く疲れと寒さが身に堪えてきたころ幕に好適な場所があちらこちらに見えてきた。もう休みたいなあと甘えた気持ちで歩いていたところに、あそこにしようか、とアッコさんの天の声。風も当たらず平らなところに幕を張った。
 そして、なんとこの日の夕食は中澤さんのすき焼き。驚くなかれ。牛肉5パックに焼き豆腐2丁、白滝2袋、卵8個、大きなネギに野菜陣。こんな豪華なすき焼きは下界でも何年も食べていません。中澤さんのザックのほとんどをこれが占めていて、こんな深い森の中まで背負ってきていただいたとは感謝感激を超えて、ただただ唖然。モリモリありがたく完食した。

青空の尾根 【3月22日(土)】
 翌日、幕を出た後はしばらく曇っていたが、9時を過ぎるころには青空も見え、雪の結晶がキラキラ輝いて、とってもメルヘン。遠くからではアイスクリームのように見える滑らかな小さい雪庇は間近で見ると迫力があった。  尾根を歩くが例年よりだいぶ雪が多いとのこと。ラッセルが続いた。私はすぐへばってしまって息はゼイゼイ、なかなか進まない。そして、すぐ交代してもらう。  この日は青空と皆さんのラッセルの記憶しかないが、またもや夕飯は豪勢な杉本さんの餡かけ皿うどん! 冷凍の海鮮やお肉が出てきて本格的。疲れた体にだしの効いた餡が嬉しい。こちらもあっという間に完食。実はお誕生日だという箭内さんを祝って、この日も幸せに床に就いた。

いつかあそこを登りたい 【3月23日(日)】
 最終日は起きると一面真っ白で一寸先も見えない。昨日、先を越していったパーティーは少し先に幕を張っていた。
 武尊の山頂は残念ながら視界ゼロ。風が強くてやっとのことで記念写真を撮った。少し下に銅像が見えたが、こんな中を真黒な銅像が立っているのはちょっと怖い。風が強くてよろけたら危ないので拝まず、また次回にと先へ進む。それにしても、こんなところまで背負ってきたのかと思うと昔の人はすごい。
 この日はロープを出して懸垂下降をしたり、雪崩を起こさないようにトラバースしたり、またぐずぐずの枯れ木を踏み台にして急坂を下ったりと私にとっては冒険の一日だった。危ないところを過ぎるとアッコさんお手製のキンカン湯を杉本さんのテルモスから回し飲みをして、ほっと一息をついた。
 最終日も尾根ではラッセルが続き、少しの距離を進むのに汗だくだった。ここでも前日のパーティーと前後した。尾根から見るかっこいい山々を楽しみ、噂の獅子ヶ鼻の険しさに見惚れた。あそこを登れたらかっこいいけどきついだろうなー。
 下りでは宝台樹スキー場の方面へ。山スキーの板の跡を追って、下界のスキー場の音楽を聴きながら、淋しいようなホッとするような、なんとも言えない気分のなか、バスの時間を気にしながら急いで下った。

〈コースタイム〉
【3月21日】 ゴンドラ山頂(11:30) → 西山手前稜線(13:00) → 田代湿原(14:25) → 幕(15:30)
【3月22日】 幕(6:30) → 中ノ岳(13:20) → 幕(14:00)
【3月23日】 幕(6:30) → 山頂(10:55) → スキー場(バス停)(15:30)

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