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地図読み上級講座・奥多摩周辺
高島 さつき
杉本 弓子

山行日 2014年2月1日
メンバー (L)杉本、(SL)内田、鈴木(章)、飯塚、山口(順)、土肥、川崎、三澤、内藤、小芝、永岡、畔上、高島

 かねてから、地図読み山行の要望があり、杉本リーダー発案のもと、『2万5千分の1地図の読み方』等の著書で知られる平塚晶人先生を講師にお招きして、奥多摩で地図読み山行(上級編)が開催された。

 2月1日8時、武蔵五日市駅に集合。タクシーに分かれて乗車し地図読み山行のスタート地点である深沢まで移動する。
 集落にある東屋にて、平塚先生の自己紹介の後、地図が配布される。地図読みの方法論は一つではなく、平塚先生が行っているやり方をレクチャーするものであって、今まで各自が行っていた地図読みに参考になるものを取り入れて、よりよい地図読みができるようになってほしいとのこと。
 また、地図を読むときは、俯瞰して地図を見て地図上の最高点を探し出し、おおざっぱに地形を把握してイメージすること、等高線を読むことが大切だとレクチャーを受ける。本日のコースの説明を受けた後、3人一組のグループに分かれた。1グループが交代で先頭になり、先生が地図上で示したポイントへ行き、なぜそこが、地図上のポイントであるかを説明するという方法で地図読み山行が始まった。
 はじめは谷地形を進む。谷を歩くときは、尾根は見えないから、谷を見て地図を読むように、というアドバイスを受ける。地形図上ではっきりとわかる谷の大きさはどの程度のものなのか、今見えている谷は地図上では、どういった等高線で表現されているのか、おおよそわかるようになることが大切だという。
 先生の説明を聞くと、実際目にしている景色が面白いほど正確に地形図に浮き出ているのがわかる。また、一方で実際の道路が地形図上の道路と違って、少し谷を迂回して通っていることなどもわかる。
 コンパスで現在地を確認する方法などもレクチャーを受け、ここがどうして地図上のポイントに当たるのかを一つ一つ解決しながら進む。まさに目からうろこだ。
地図上のチェックポイントを細かく確認  谷地形を抜けると尾根に出る。尾根歩きでは、尾根を見る。3つの尾根の合流点がピーク、尾根がぶつかり合っているのなら、そこに地図上には現れないピークが隠れている可能性が高い、といった地形図に表れない地形を地形図をヒントに読み解いていく。
 金比羅尾根のタルクボ峰から東に出ている尾根に出て尾根を東に下り、地図上のポイントの支尾根へ入り、肝要の里へ下って行った。深沢の集落から尾根を越えて、里に下りてきて、午後もまた松尾から谷へ入り尾根を越えて、尾根伝いに青梅へ下った。
 谷、尾根、谷、と繰り返し歩くことで、地形図から実際の地形のイメージがどんどん鮮明になっていく。とくに、地図に表れないピークが実際にあると、答え合わせで正解を見つけたようで楽しかった。あっという間の一日だった。

平塚先生と生徒たち

【総評・杉本】
 思いつきから足かけ3年でようやくこの企画を実現できました。講師の平塚先生は、本業である文筆業の傍ら、一般の登山者を対象とした地図読み講習を個人開催しています。
 1回あたりの定員は10名前後のため、募集開始と同時にすぐに満員になってしまう人気講習ですが、「グループ講習」という形で先生をチャーターすることもできます。
 外部から講師を招いての有料山行という初の試みに、私自身、どうすれば実現できるか試行錯誤しましたが、ベテランから若手まで幅広いメンバーに賛同いただき、おかげさまで大変に有意義な山行となりました。
 地図読みは、安全登山のためのみならず、大地が織り成す「地形」を感じとる営みだと思います。お花、きのこ、山菜・・・ お山にはわくわくさせてくれる要素がいろいろありますが、私は目に映る小さな支尾根に「萌え~」とトキメキを感じる変態地図読みフェチです。この快感をたくさんの人と共有したい。早くも第2回開催のご要望をいただいていますので、ぜひ実現したいと思っています。
 講習後、メンバーが自発的に感想や忘備録をメールで寄せてくれましたので、以下に紹介いたします。ぜひまたやりましょう!

【永岡メールより】
先日の平塚さんの地図読み講習での平塚さん語録をチェックしておりましたので皆さんにも情報共有のため展開させていただきます。他にもあったかと思いますので、補足して頂ければ幸いです。
<共通編>
・コンパスのチェックは10秒以内(時間がかかると、面倒になり、見なくなる)
・木が密集しているところは、等高線が甘くなっている可能性がある
・コンパスをチェックするベスト位置=沢、尾根の一番奥まで見える位置
・メンバーと意見の齟齬が生じたら、相手の意見が間違っていることを指摘する(自分が正しいということを伝えても、相手は納得しない)
・人工物(林道、建物等)は地図の記載が間違っている可能性がある
<尾根編>
・尾根では尾根を見る(尾根では沢はわからない)
・ピークは3本の尾根でできている
・等高線が広い地点の尾根では若干の等高線の膨らみをチェックすることで、ピーク(コル)の有無が判断できる
・ピークは下り始め
・送電線の鉄塔は尾根上にある
<沢編>
・沢では沢を見る(沢では尾根はわかりづらい)
・地図上に記載されている沢は必ずわかるが、実際にある沢は必ずしも地図上に記載があるとは限らない(等高線が10m間隔なので、10m以下の高低差がない沢は地図上に記載されない)
・本流、枝沢を意識する。特に自分が歩いている側の沢を見る
・沢の大きさを意識する

【内藤メールより】
永岡さん、ありがとうございます。
わたしも帰宅後すぐに教えて頂いたポイントをメモしておいたのですが、忘れてしまっていたこともあり、助かります。それで永岡さんのメールを読んで思い出したことなど。
・尾根上で支尾根が派生するところはピークになっている。
・上部は尾根になっていないが下部に行くと尾根になる『もやっと尾根』に注意する。
・?と思ったことはとりあえず、声に出す。

【土肥メールより】
沢の地図読みは単純ですっておっしゃいまして、納得。そう思いました。難しいのは尾根の地図読みですね。
<尾根(ピークの3点セット)>
①ピーク
②支尾根の合わさる地点
③尾根線の屈曲

①ピーク
本来のピーク(閉じた等高線)の概念を拡げ、コルが発達してこれからピークになるところも含む。手前が下がっていなくても、尾根の下方へ(急傾斜で)下がっていることがポイント。
②支尾根の合わさる地点
「もやっと」尾根を含む
(1)ただもやっとしているもの
(2)分岐点はもやっとしていても数10m下ではっきりとした尾根になっているもの
 地形図では、1つのピークに複数の支尾根が合わさっているよう見える場合でも、たとえば、そのピーク(閉じた等高線or10メートル以下のため地形図に描かれていないピーク)の中に左右の複数の支尾根の発生点がある場合、それぞれの尾根の発生点はわずかでも異なっているので、その閉じた等高線の中にきちんと2つのピークを確認すること。
③尾根の屈曲
尾根通しの道だと尾根の屈曲は道に表現される。ピークのある側に等高線は膨らみ(もやっとorはっきりと)支尾根をそちら側に発生させる。しかし、道は尾根線に忠実にしたがっているとは限らないので、どこまでも「尾根線」で見ること。
感動した講習会でした。青梅の餃子も美味かった~!

<講習会メモ>
◎グループ講習費用:1日4万円(今回は13名参加、一人3,100円)
◎ルート:奥多摩上級コース
五日市駅(タクシー)=三内川・深沢集落~△631.9~607~493~肝要~松尾~無名沢~△646.7(三室山)~琴平神社~346~吉野梅林(バス)=青梅駅


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