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岩登り・ダイヤモンドAフランケ赤蜘蛛ルート
荻原 健一

山行日 2014年7月19日~21日
メンバー (L)荻原、小芝

 以前から行きたいと思っていたこのルート。7~8年前からチャンスを狙っていたが、パートナー不在でお蔵入り。今回は昨年の本ちゃんシリーズですっかりザイルパートナーになった小芝さんにアブミ登攀を覚えてもらって、ようやく念願の赤蜘蛛ルートにチャレンジ出来ることとなった。なんと言っても名前がかっこいい! そして、名前負けしない大岩壁の写真を見るたびにいつしか憧れのルートになっていた。
 このルートはクライミング技術変遷の歴史そのものにもなっている。約40年前に井上進氏他赤蜘蛛同人によって開拓され、20年後の1991年に鈴木昇己氏等によってフリー化(スーパー赤蜘蛛、プリプロテクション)、更に2003年平山ユージ氏によって全ピッチオンサイトされた。その際このルートをワールドクラスのクラックと評している。
 もちろん私ごときがフリーで挑戦できるはずもなく、アブミ持参のオールドスタイルでチャレンジさせて頂くこととする。

【7月19日】曇り時々雨、午後は雨
 前夜新宿22時発の特急かいじで甲府経由小淵沢へ。いつも仮眠しているホームの待合室から追い出され、改札を出たところで仮眠。5時に起きてタクシーで竹宇駒ヶ岳神社へ向かう。ここからガチャがたんまり入った重荷を背負いテクテク黒戸尾根を登っていく。七丈小屋に着くと小屋の管理人から八合目岩小屋は光苔が減っているから止めてくれと言われたので、素直に天場を使うことにする。水場とビールはあるし、八合目までは30分程度なので結果的にはこちらの方が良かったかもしれない。幕を張ってすぐにAフランケの取付の偵察へ向かう。八合目左脇の赤石沢奥壁へ向かう踏み跡とA・Bフランケへの踏み跡は明瞭ですぐ分かった。30分ほどでAフランケ頭の岩小屋に出て、ここから左側の八丈沢へ降りようとするが踏み跡がはっきりしない。岩小屋からAフランケ方面に踏み跡が延びているが、こちらはAフランケ登攀後に岩小屋へ戻る踏み跡だ。散々うろうろしたが、Aフランケ頭の岩小屋の手前30mくらいのところに左側へ延びる踏み跡を見つける。これが正解で、岩小屋に出てしまったら行き過ぎなので素直に戻りましょう。その後も1ヶ所うろうろしてようやく八丈沢に降り立つ。ここから取付まで更に30分ほどあるが雨も本降りとなり、およその目処は立ったので幕場へ引き返す。今日はクライマーらしき人たちは誰も見なかった。明日は我々だけだろうか?

岩壁のスケールに圧倒される 【7月20日】晴れ後曇り、夕方前から大雨
 2時起床で3時出発だ。4:30くらいから明るくなり始め5時過ぎに赤蜘蛛ルート取付に到着。我々以外誰もおらず、この日のAフランケは終日貸し切りとなった。準備やキジで6時ちょうどにクライム・オン!
以下のピッチ数はトポに合わせて表記(実際はもう少し短く切ったり長く切ったり)。
(1P目)
アブミピッチ。出だしが遠いがあとは単純な掛け替え。ビレー点に上がるところが一手フリーになる。
(2P目)
コーナークラック沿いのルートで唯一フリーで登るピッチ。V級なので特に難しい個所もなく快適だ。
(3P目)
引き続きコーナークラックを登るが細かいところがあり、アブミも併用する。残置の他にカムが使える。逆に残置だけだと厳しいかも。途中からスラブも左に移り、その後はボルトラダーをアブミの掛け替えで上がる。ビレー点はハング直下。
(4P目)
ハングを左側からアブミで越える。ピンの間隔は短く簡単。ハングを越えたら右上して短い垂壁を越える。その後は傾斜の緩いフェースをフリーで上り大テラスまで。ビレー点は立木。ここまで約4時間。大テラスでほっと一息、大休止。
(5P目)
簡単であまり覚えてないが、ほとんどフリーで登れるし短い。出だしだけアブミ使ったかな?
ハイライトの痺れるピッチ (6P目)
核心のハイライトピッチ。見事なクラックが真っすぐ天に向かって伸びている感じ。
 最初数本は残置ボルトがあるが、すぐになくなり後はひたすらクラックが走っている。
 カムは2セットあるが、記録によれば0.4、0.5、0.75に集中するので全て残置すると40mの半分も登れないだろう。2つ目のカムをセットしたらその下のカムを回収し・・・ するとセカンドが登れなくなるので長いシュリンゲを垂らして・・・ などということを繰り返すうちに頭がこんがらがってくる。ヌンチャク20本すべてを使いきったころ漸く40m上のビレー点に着く。が、ここは足場の一切ないビレー点なのでアブミに乗っかったままのビレーとなり結構つらい体勢だ。気を使ってシバちゃんがスピーディーに登って来てくれるのがありがたいが、それでも次の恐竜カンテ越えピッチのリードをビレーしている時間を合わせると1時間くらいは、つらい体勢を続けることになる。
アブミビレーの辛い体勢の中、ハイポーズ! (7P目)
恐竜カンテを越え抜群の高度感の中、垂壁をアブミで直上。一部ボルトがなくカムを使用。(キャメ1番、2番)最後の1、2手がフリーとなるが難しくはない。
(8P目)
最初はフリー。フリーのまま終わりかと思ったら最後に10mくらいアブミで登る。実質の登攀ピッチはこれでおしまい。雨がぽつぽつ降ってくるが、登攀成功が見えているので気持ちは明るい。
(9~10P目)
Ⅱ~Ⅲ級ピッチで半分は歩きみたいなもの。Aフランケの岩小屋について終了。パートナーと硬い握手を交わす。
 岩小屋から八合目に戻り、登山道で七丈小屋の幕場まで。乾杯のビールが最高に旨かった。

Aフランケの頭 岩小屋にて

【7月21日】
 翌日は朝から快晴。Aフランケには登ったけど、まだ甲斐駒ヶ岳に登ったことのない芝ちゃんと二人でテクテク山頂を目指す。ご来光にあわせて山頂到着。最高の景色だ。同じ山頂の景色でも縦走で来たのと、登攀成功後に来たのとでは見える景色が違う気がする。七丈に戻り、あとは行きとさして重さが変わらないガチャの詰まったザックを担いで黒戸尾根を下山する。でも気分はこのうえなく軽い。

<装備・その他について>
2名でヌンチャク20本、各自予備アブミ、キャメロット(0.4~1番)2セット、2番を1セット、マイクロカムは数本持って行ったが未使用。
ハーケンはクロモリ、アングルで5~6本持って行ったが未使用(打てるリスはある)。
支点は案外しっかりしていた。リングの飛んでいるボルト用に3mmシュリンゲやワイヤーが必要。

〈コースタイム〉
【7月20日】
七丈小屋幕場(3:00) → 八合目(3:30) → 赤蜘蛛ルート取付(5:00~6:00) → 大テラス(9:40~10:00) → 8P目終了点(14:10) → Aフランケの頭岩小屋(14:40) → 幕場(16:00)


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