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ハイキング・浅草岳~守門岳
高島 さつき

山行日 2014年7月5日~6日
メンバー (L)三澤、高島、他1名

 「アサクサ・スモン」は私が山を始めた学生時代から憧れていた山域だった。ヒメサユリの咲くこの時期に2つの山を梯子する例会があり、迷わず参加することにした。
 前日夜に三澤さんの車でまるみ山荘へ移動する。週末の天気は、梅雨の真っただ中とあり、天気予報はあまり良くない。明日の朝の天気次第で浅草岳はカットして、日曜日に守門岳に登るのもありだと、変更も視野に入れて仮眠をとった。

【7月5日(土) 浅草岳】
 翌日、まるみ山荘エリアは雨は降っていないもののすぐれない天気。山の上は雨かもしれないなど話をしながら、とりあえずは浅草岳登山口入叶津へ向かった。途中通った只見の町は、地面が乾いていた。土砂降り大雨を想像していたので、曇り空でもありがたく思える。
 8時30分頃登山口に到着する。駐車場には車が1台停まっていた。ヒメサユリの咲く時期は混雑していることが多いと聞いていたので、天気予報から皆敬遠したのだろうと曇り空に感謝しつつ8時45分頃、登山口を出発。
 登り始めると所々斜面がえぐられている。2011年の豪雨の被害のようだ。それを避けるようにして登り1時間ほどで、山神ノ杉に着いた。みずみずしい山毛欅林が続く。平石山へ向けて、250メートルほど登ると、傾斜は比較的なだらかになる。雨にも降られず視界も開けてきて、得をした気分になる。沼ノ平を過ぎてしばらくすると、前方に迫力のある岩尾根が見えてくる。とくに名もない支尾根のようだが植物を寄せ付けない岩肌は迫力満点だ。
 徐々に植生が山毛欅から低木に変わっていき、小三本沢と登山道が交わるあたりには、大きな雪渓が残っており、斜面にショウジョウバカマが咲いていた。1,400メートルに満たないのに、山肌にへばりつくように残る大きな雪渓からは絶えず白い霞がかった冷気が発生していて視界が途切れる。登山道を見失わないように雪渓を渡り、小休止をとった。登山道から少し離れたところに避難小屋跡があり、三澤さんが確認しに行く。尾根上に平らな小屋があったと思われる跡があったそうな。
ヒメサユリ  ここから山頂まで、さらになだらかな登りとなり、お気楽気分で雪が解けたばかりの登山道を歩いていると、笹やぶの中にひっそりとシラネアオイが咲いていた。今シーズン初めてのシラネアオイに心が躍る。時折、青空も見えるようになった。天狗の庭という名の湿原で、お目当てのヒメサユリの蕾を見つけた。しばらく行くと、うす淡いピンクのヒメサユリが1輪、そこにも1輪、とあっという間に登山道沿いがヒメサユリだらけになっていった。
 12時50分、山頂到着。山頂まで誰にも会わなかったが、山頂は他の登山口から登ってきた人でそこそこ賑わっていた。みんなヒメサユリの話をしている。お昼休憩をとり、来た道を戻ることに。
 帰り、天狗の庭でまさかの青空が広がり、まさに空中庭園のよう。私たち3人以外誰もいない。
空中庭園天狗の庭  眼下に田子倉湖が拡がり、南西に会津朝日岳が見える。北側の眺めは、初めて見る山域で、どの山が見えているのか全く分からないが、しばし見とれるほど景色を楽しんだ。雨だと思ったのにヒメサユリも見られて青空も見えて本当にラッキーだったと話しながら4時過ぎ登山口に下山。
 この日は只見町にある温泉に入りキャンプ場のバンガローにて宴会。明日の守門岳に備えて就寝した。

【7月6日(日) 守門岳】
 4時半にキャンプ場を出発。只見線沿いに守門岳登山口猿倉橋を目指す。天気は晴れ。途中、田子倉駅の手前で、雲をまとった鬼が面が目の前に現れた。あまりの迫力に車を止めて写真撮影。標高1,600メートルにも満たない浅草岳の尾根の一つが、穂高連峰にも勝る迫力だった。これは大発見だ!
鬼が面の尾根  7時、猿倉橋登山口を出発。帰りの時間も考えて二口コースを往復することにした。林道から登山道に入ると、昨日の浅草岳に続き、これまたみずみずしい山毛欅林の中を登っていく。かなりの急登に疲れたころ、護人清水の水場に出る。冷たくておいしい水を補給し再び登る。右の渓谷沿いに展望が開けると、痩せ尾根となる。ここでなんと!オオスズメバチの死体が登山道のど真ん中に転がっていた。あまりの大きさにすっかりビビってしまった私に三澤さんのスズメバチ談義が追い打ちをかける。スズメバチ怖いよ~と思いながら急いで登りきると大岳分岐に出た。雪渓もあり、目の前に守門岳に向かうどっしりとした尾根が見える。
雪渓と守門岳に向かう尾根  ここから山頂まではコースタイムで45分、標高差もあまりないので、お散歩気分で歩ける。途中湿原や池塘あり、トキソウやニッコウキスゲが咲いていた。ヒメサユリは残念ながら見つからない。10時30分、山頂に到着。山頂の展望は雲が上がってしまってイマイチだったが、お昼休憩とする。今日は朝から好天だったので、山頂には、かなりたくさんの人がいた。
 下り、青雲岳付近の湿原で太陽も出てきたので、ここでも休憩をとった。別天地を満喫し、大岳分岐から一気に下る。岩尾根で、今度はマムシと思わしき蛇に遭遇。三澤さんのマムシ談義によると、マムシが臨戦態勢だから慎重に通過しないと危険だとのこと。怖くてなかなか通過できなかったが、勇気を振り絞ってなんとか通過。気がつかなければなんてことなく通りすぎてしまうような場所だが、マムシの顔と三澤談義で恐怖1万倍だった。その後も、例のオオスズメバチの死体の前を通りすぎた辺りで、今度は生きたオオスズメバチが目の前を横切り、大パニックに! 三澤さんに今度は大丈夫大丈夫~と諭されるも恐怖10万倍。護人清水まで戻り、休憩をとり落ち着きを取り戻した。護人清水から登山口までは1時間もかからず、14時過ぎに無事に下山した。

 浅草岳、守門岳ともに、標高は1,600メートルにも満たず、標高だけだと関東では奥多摩の御岳山くらい、大山にも満たない小ぶりの山になるが、豪雪地帯でもあるせいか1,400メートル付近から池塘や湿原があり高山植物も楽しめる。浅草岳の鬼が面はじめ岩峰もあり、一方で美しい山毛欅林も広がり想像以上に素晴らしい山だった。
 ヒメサユリは、浅草岳では満開だったが、守門岳では終わってしまっていたようで、1輪も咲いていなかった。ヒメサユリという花は本当にデリケートで2~3日しか楽しめないらしい。梅雨時期に咲くヒメサユリに会えるかどうかは運次第のようだ。1年を通して登ってみたい山であった。

〈コースタイム〉
【7月5日 浅草岳】 入叶津(8:45) → 山神の杉(9:45) → 避難小屋跡(11:50) → 山頂(12:50) → 天狗の庭(14:00) → 入叶津(16:00)
【7月6日 守門岳】 猿倉橋(7:00) → 滝見台(8:45) → 大岳分岐(9:40) → 青雲岳(10:00) → 守門岳山頂(10:45) → 大岳分岐(11:40) → 猿倉橋(14:00)

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