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縦走・針ノ木谷~読売新道
渡辺 守

山行日 2014年8月11日~15日
メンバー (L)渡辺(守)

 昨年は連日の晴天の中、薬師沢、赤木沢の後に、黒部五郎、雲ノ平から裏銀座コースで烏帽子小屋から下山と盛りだくさんだった。今年も色々とプランを考えたが、最終的には行きたかった針ノ木谷と読売新道を繋ぐことができた。

針ノ木谷  台風の影響で2日間出発が遅れ、やっと出発した初日も扇沢に12時と遅めの到着。しんどかったがその日のうちに針ノ木峠で幕とする。翌朝は少し寝坊して6時半出発。谷への道は明瞭だがさすがにこのルートに下りるパーティーはいなかった。台風の影響で水量が多いのか、途中道が沢になったため早めに沢靴に履き替える。短い渡渉を繰り返して、出合着は9時少し前でコースタイムどおりかかった。そこから雨が降り出しモチベーションが下がる。谷も単調な渡渉の繰り返しで、1時間程度は巻道となる。ペンキは明記され、特に危険な箇所はないが、登山靴では相当つらいだろう。
 南沢出合は11時半着、渡船場12時半とかなり早く進んだ。避難小屋を越えたあたりで対岸から船が来るのが見えた。あれが渡し船かなと思っていたら、上ノ廊下の荻隊が乗っているのではと気付き、船場で少し待ってみた。するとやはり荻隊とさらには別隊の平野君までいた。そのまま奥黒部ヒュッテまで一緒に行く。
渡し船  3日目朝は快晴、水3.5リットルを担ぎ6時からひたすら登る。長いことは覚悟しているので、焦らずに何も考えずに赤牛岳まで2度休んで13時半着。どこまで行こうか、場合によっては高天原までなんて考えていたら、急に疲れが足にきて、1時間くらい先の2,900あたりのコルにいい幕場があるのでそこで幕を張った。この稜線で張るならここがベスト、景色も表銀座も薬師方面もよく見える。
 翌日は視界良好だか雲で覆われている。生温かく湿った強い風が吹いてくる。2日前の猪熊天気情報では前線が上がった場合には相当荒れるとのことだった。すれ違った登山者は、大荒れになるので大急ぎで下ると言ったため、悩んだ末にそのまま最短コースで下山することにした。水晶小屋付近から雨が降り出したが、この日は高度を下げたら曇りとなり、幕場の三俣蓮華でも雨ではなかった。本当は双六小屋まで行くはずだったが、水晶岳付近で道を間違えてしまい1時間以上ロスしたので諦めた。相変わらず幕場は混んでおり、景色も見えない中進んで幕場確保に苦労するのは得策ではないと考えた。というのも三俣山荘での天気予報では翌日午前晴れであったことにある。予報ではそのあとも曇り雨程度で大崩れの感じではなく変だなと思った。
読売新道  翌日は1時半のバスに乗るため4時に出発した。天気は良くなく、明るくなれば晴れてくるかなと思ったら、逆にどんどん悪くなり双六あたりで雨が降りだし、あっという間に本降りとなる。途中土砂降りになったため、休むこともなくひたすら下山、11時半には新穂高バス停につきそのまま温泉に駆け込んだ。林道からみた川の増水の様子が尋常ではなく、荻隊は大丈夫かなと心配になる。しかし、こんな土砂降りでも人はどんどん登ってくる。猪熊予報を見るとやはりこの先の天気は大荒れだった。
 この時に北アルプスで複数パーティーが遭難したことは周知のことだ。しかし、三俣山荘のテレビや掲示板見た予報が頭から離れない。赤木沢のパーティーは私と同じように午前中はもつと考えて暗いうちに出発したのかもしれない。そうでなければ、こんな大荒れの日に入渓するはずがないし、早くに引き返すはずだ。自分も計画では読売新道のあとは雲ノ平から祖父沢、五郎沢に入る予定であったので、判断を間違えれば遭難していたかもしれない。また新たな教訓を得た山行となった。


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