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集中山行・会津駒ヶ岳
その3 藪山・三岩岳~会津駒ヶ岳
津田 友紀子

山行日 2014年9月1日~15日
メンバー (L)鈴木(章)、軽部、畔上、津田

【9月13日(土)】
 ゴールデンウィークに登った会津朝日岳~三岩岳の続きをいつか果たそうと約束していたが、私はてっきり雪がたっぷりある冬に行くものだと思っていた。しかし、アッコさんからのお達しは「9月の三連休」!!
 これって夏にたっぷり藪が育った後なんじゃないの、ムリ無理、どうしよう、でも行きたい・・・とまたもや自信がないにも拘わらず気持ちを抑えられなくて志願した。
 事前に少しでも情報収集、とネットサーフィンに明け暮れたが、無雪期の情報を探せたのは約10年前の記録1本のみ。こんなに人が入っていないのか!? アッコ山行が近づくにつれて緊張感が増して、3日前からは床に入ってもなかなか寝付けず・・・ついに当日を迎えた。
キノコの勉強中  東武線で森田パーティーと共に会津高原尾瀬口駅までのんびり揺られて3時間。お天気も良く、おしゃべりしながらの車内は緊張も少し緩む。向かいのおじさんは10枚以上ありそうな25,000分の1の地図を出していて、どこに行くのかと思いきや沢で魚釣りとのこと。とっても楽しそうな話しぶりに魚釣りも面白いのかな、とちょっと興味を持った。
 駅からはさらにバスに乗って、小豆温泉の登山口で下車。今日は避難小屋までなので、のんびり登っていく。登山道の入り口からたくさんキノコが生えていて、アッコさんに一つずつ聞いていくが、どれも食べられるものではないようだ。食用は粗方採られてしまっているらしい。それでもこんなにいろんな種類のキノコを見るのは楽しい。その中でもいくつか食べられるというものを採って、その日の夕飯の味噌汁の具にした。
 途中の黒檜沢では水が豊富に出ていたので、ここで各々2L汲んで小屋まで上げた。小屋の目の前の水場はとても細く、水が出ているようには見えないが、笹の葉をストローのように使ってペットボトルにうまく溜める方法を学んだ。小屋の造りはしっかりしていて、20人弱は入れそうだった。

【9月14日(日)】
 4:00起床。6:00小屋を出発。森田パーティーと共に三岩岳の頂上を踏む。朝いちばんは靄があったものの、次第に青空も見え、朝露に濡れた木々の中を歩くのが気持ちよい。ここで窓明方面へ向かう森田パーティーと分かれ、いざ藪の中へ。頼みの綱の軽部さんに視線を向け、登山道の流れで稜線方向に勇ましく向かうが、後尾を守っていたアッコさんが突然、標柱の岩の横へ。「ここへ入るのよ!」。さすが!!ちゃんと踏み跡があった。
 アッコさんに付いていくと15分ほどして大きな湿原に抜けた。びっくり! 急に別世界。先にはこれから行く稜線が続いている。しかしすぐにまた藪に入る。この辺りはずっと笹薮だ。30分ほどすると2,060m手前のさらに広大な湿原に出た。山々もよく見えて、人は私たちだけなのも天国だ。点在する池塘には赤いモウセンゴケと、少し枯れて黄色が混じった緑の湿原の絨毯が美しい。
 天気は時々ガスって空気も湿っている。草木も濡れているので、手袋は休憩の度に絞る。真っ白だった軍手がコーヒー色に染まってしまった。ピーク周辺では藪も高くなる。手で掴みたくなるちょうどいいところにトゲの付いた灌木もあり、軍手を通過して何本もトゲが刺さった。下山した後にも指先に残り、無理やりピンセットで穿り出した。また蔓も足に絡まって厄介だ。

2,060m手前の湿原、左には東の山々が広がる終始藪の中・・・

1,918mのピーク後の湿原、中門岳方面を望む  藪の中ではピークを踏んだのかどうかわかりづらい。地図とコンパスと高度計で確かめていく。軽部さんを先頭に進んでいくが、迷うことなく道が見えるようだ。畔上さんも先頭に立ってスイスイ。私は付いていくだけなのに遅れがちになる。とにかく有り難い。お昼前には1,918mのピーク後の湿原に出て、タイミングよくガスも切れ、中門岳方面を望めた。
 大戸沢岳方面へ進むとますます藪は濃くなっていく。アッコさんのプラン通り、大戸沢岳まで順調にやってきたので、2,089mのピークを過ぎた辺りの湿原で幕とした。さすがに湿原では張れないのだが、藪の切れたところにちょうどテント一つが張れるスペースをアッコさんが見つけた。「ここですか!」よもやここに張るとは思いつかない。とても勉強になります。この時間ではまたガスが入ってきてしまったが、夜には一時、満天の星空を望むことができた。

【9月15日(月)】
 この日も朝6:00出発。まだ高曇りしているが、周囲の山々はよく見渡せる。中門岳も見えた。金子隊はどの辺りを登っていただろう。
 藪の取付きではさらに背の高くなった笹薮(ネマガリタケ?)に跳ね返される。曲がりくねったシャクナゲも出てきて、どこをどう跨いだらよいものか。ちょっとでも前と離れると打撲だらけの脛にシャクナゲが当たって痛い・・・。
 2,098m付近では駒の小屋もよく見え、ここからの景色を見たことがある人はそんなにいないと思うと特別に嬉しい。
 ここでもう十分、集中の時間に間に合うと安心し、最後の藪に入る。取付きには赤布も付いており、会津駒方面から人が入ってくるようだ。踏み跡があってだいぶ楽になった。
 終始先頭を行ってくれた軽部さんの笑い声が聞こえると思ったら、頂上で休んでいた人を驚かしたらしく、いつの間にか頂上に出た。熊かと思われたそうだ。そういえば、前日に濃い藪の中で、「ガサガサッとなんか動いていった」、と言っていたがあれば熊だったのだろうか。
 まだ8:30だったので、中門岳まで下る。前日から藪の中を歩き通しだったので、木道歩きが慣れず何度か躓いた。
 そして、歩いてすぐに森田パーティーと合流。早い時間だったため、お互いに驚いたが、とっても嬉しかった。中門岳周辺でゆっくり休んで記念撮影をした。中門岳から会津駒の木道では、この2日半歩いてきた尾根を眺めて感慨にふける。いつまでも眺めていたくて立ち去り難い。

中門岳の木道から歩いてきた尾根を眺める集中第一陣!

 最後にもう一度、会津駒の山頂で写真を撮ったら、先に下ろしてもらうこととなった。帰りの登山道ではアッコさんがまた美味しそうなキノコを見つけ、軽部さんも採って帰りに皆に分けてくれた。
 桧枝岐で「駒の湯」に入り、近くの蕎麦屋でお蕎麦と天丼のセットを食べて、帰途についた。
 終始藪、時々湿原、というコースだったが天候にも恵まれ、誰にも会わずに会津の山々を堪能でき、とても清々しい山行だった。

〈コースタイム〉
【9月13日】 小豆温泉・三岩岳登山口(11:00) → 黒檜沢水場(13:10) → 三岩岳避難小屋(15:25)
【9月14日】 三岩岳避難小屋(6:00) → 三岩岳山頂(7:00) → 2,060m前の湿原(7:50) → 2,060mを過ぎた湿原(8:30) → 1,918mを過ぎた湿原(11:50) → 大戸沢岳2,089mを過ぎて幕(14:45)
【9月15日】 幕場(6:00) → 2,098mを過ぎた湿原(7:45) → 会津駒ヶ岳山頂(8:25) → 中門岳(9:20) → 会津駒ヶ岳山頂(10:10) → 滝沢登山口(12:20)

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