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沢登り・魚野川本流
小幡 信義

山行日 2014年8月13日~16日
メンバー (L)小幡、金子、YUKI

 例会表の計画では、奥利根・利根川本流の予定であった。入渓地点までボートで行くのであるが、予約いっぱいで取れず、湖岸道を行ったとしても藪で荒廃して、健脚でも丸一日かかるとのことで、山域を変更し、7月に敗退した魚野川本流に再度行くことに決めました。メンバーは、金子、山口、小幡の3名です。

【8月13日(水) 曇り】
 高崎から上越線、吾妻線を通り長野原草津口駅に10:34到着する。ここからバスに乗り換え野反湖まで行く。駐車場は夏休みとあってかなりの混雑ぶりだ。本日は魚野川の入渓地点まで、時間として4時間弱の予定である。ゆっくりと昼食をとりながら出発準備に取り掛かる。7月に一度歩いた登山道であるため、特にあわてることもなく、のんびりとした気分で12:20に出発する。
 地蔵峠を通り北沢に着く。前回より水量が多いようだと3人で話す。3日前の台風11号の影響があるのか? ちょっと心配だ・・・。
 西大倉山からは一気に下りとなる。樹林の間から沢が見え出し、本日の泊まり場所が近くなったのを感じる。灌木をかき分け魚野川の河原に降りようと顔を出すと、すでにタープ2張りの先客がある。沢の流れは増水の気配は感じられず、1日経てば更に平水時に戻るだろうと一安心する。予定していた幕場は占領されていたため、仕方なく少し先の渋沢の右岸に移動し、石ころの少ない砂場を整地しタープを張る。16:00であった。

【8月14日(木) 曇り一時雨】
 幕場を7:00に出発する。先客組のタープはまだ撤収されておらず、焚火も燻ぶっている脇を横目で見ながら、いよいよ魚野川本流遡行開始だ!・・・。
 幾度かの渡渉を繰り返すが、水量、水勢ともロープを出すまでもなく通過できた。しばらく行くと右岸から千沢に出合う。その先は、桂カマチ、箱淵、不動コイデと呼ばれる第1の核心部だが、今回も左岸の巻き道を利用させていただく。途中2名の釣り師が下降してくる。腰の脇に籠をぶら下げていたが中の様子までは確認できず。
 イタドリ河原を過ぎると、またゴルジュとなり、腰まで浸かってへつったり、膝上までの渡渉を繰り返したり、飽きさせない遡行が続く。出発してから3時間半、高沢出合いに着く。7月に来た時は出合いからちょっと登った丘の上に良い幕場があり、1日目の泊まり場となった。残念であったが本流は諦め、高沢を遡行する羽目となったが、今回は見慣れた幕場を尻目に前進する。前回は高沢周辺で竿を出すも全く釣れず、本当に岩魚は居るのかよ!とぶつぶつ言いながら歩きだす。
 最奥に大ゼン10mが現れる。左岸のガレ場を利用して越す。その後は渓が開け、原生林の中、快適な遡行を続ける。本日は時間的に余裕のある日程のため、竿を出しながらのんびりと進む。金子氏が直ぐに1匹釣り上げる。「オオーやっぱり居たのか・・・」これは負けられないと先を急ぐ。
 ナマリ岩と呼ばれる所に、敵地な幕場があるので本日の行動はここまでとする。13:00着である。タープを張り、薪を集め、早速釣りに出かける。50mほど行った上流の左岸の黒沢に入り竿を垂らすと直ぐに食いついた。1匹・・2匹、あっという間に5匹まで釣り上げる。レジ袋は岩魚の重みで膨れている。十分な成果で大いに満足し、ウキウキしながら幕場に戻る。早速金子氏による岩魚料理が始まった。牛蒡と岩魚を煮込み、後は卵で綴じる料理だ。残った骨はスープとなる。自然の恵みに感謝しながら晩飯にありつく。焚火に、岩魚に、酒、これぞ沢ヤの至福の時間だ・・・。更に満天の星が見えれば最高なのだが・・・。今夜は曇っていて見えなかった。
 深夜になって雨が降り続き、明日の行動に不安を感じながらも、いつの間にか深い眠りに入っていってしまった。

【8月15日(金) 曇り午後雨】
 本日も幕場を7:00に出発する。釣りで楽しませてくれた黒沢出合いを右に見ながら第2の核心部に突入する。川幅いっぱいに流れ落ちる滝の連続である。魚止めゼンから始まり、カギトリゼン、イワスゲゼン、スリバチゼン、へトリゼンと続く。カギトリゼンで一回ロープを出したのか? 記憶が曖昧になってしまった。
 左岸から出合う奥ゼン沢を見送り、直ぐ先で本流は直角に右曲する。大きな釜に燕ゼン5mが豪快な音を立てて泡立っている。丁度単独の人が右壁を登り終えたところが目に入る。水量の有る小ゼン沢が直線的に出合い、うっかりすると真っ直ぐ行ってしまいそうな場所である。
 この先からは渓も落差を見せ始め、小滝を何回か乗り越え、遂に庄九郎の大滝10mに出くわす。左岸のガレ沢を登り左にトラバースの踏み跡があるようだが、嫌らしそうなので、そのまま尾根まで登り、回り込んで本流に降り立つ。この先には第3の核心部のゴウトウと呼ばれる巨岩の積み重なる一帯が続く。午後になると雨もぱらつき始める。大岩の乗っ越しには、かなりの体力を消耗しよれよれ状態だ・・・!
 幕場を探しながら、のろのろと前進する。予定では、南沢出合いまでとなっていたが、時間も14:30となっており、手前で本日の行動は終了としタープを張る。焚火となる薪もしっかりと湿っていたが、メタブロックを2個使い何とか燃えた。雨で濡れた身体に火は有り難い。焚火が燃えたところで、早速釣り竿を持ち上流に向かう。本日も4匹ゲットする。晩飯の岩魚焚き込みご飯となった。
 7月の高沢遡行2泊目の幕場では、ブヨの大群に襲われ、顔中ぼこぼことなったが、今回は多少顔にまとわりつく程度で助かった。一応、虫よけネットを被り、去るのを待つ。暗くなるとどこかへ行ってしまうようだ。
 今夜はしとしとと雨が降り続き焚火を囲むことなく、タープ内で静かに飲む。

【8月16日(土) 雨】
 本日は朝から雨、予備日を1日取ってあったが、本日中に下山の予定で出発は5:25となった。いくつかの小滝をやり過ごし、南沢出合いに6:15着く。ここまで来ると魚野川の水量、水勢は弱くなる。北沢、赤石沢を辿る。その先もいくつかの枝沢に分かれていたが、GPSを頼りに源頭を目指して進む。トンネルの藪から、遂には根曲り竹の藪漕ぎとなる。背丈を越えた太い竹にバリバリ、ぱきぱき音を立てながら掻き分けたり、踏みつけたり、戻されたり右往左往・・・!!
 先頭を交替して進むが、本当に登山道に向かっているのか心配になってくる。金子氏のGPSによると、あと50m程真っ直ぐに進めば出るはずだ! とのこと。突入してから2時間弱と思われるが、根曲がり竹と戦い続け、精神も体力も疲労困憊状態だ・・・。
 先頭で挑んでいた山口さんが「近くで人の声がする」と叫んでいる。最後の力を振り絞り10:30、遂に登山道に出た! 土砂降りの雨の中であったが座りこんで行動食を貪った。ザック、雨具は雨に濡れた笹がべっとりと張り付いていた。空は雷が鳴って本降りだ。動物にたとえると、ドブネズミ状態の3名は寺子屋峰に向かってひたすら前進するのみ・・!!
 峰から1時間弱でバス通りの高天ヶ原に着く。13:00であった。そこからバスで発哺温泉に行き、風呂に入りさっぱりしようと行ってみたものの、人の気配はなく、建物の窓には破れたカーテンが覆われており、まるで幽霊屋敷の感じだ・・・??
 仕方なくバス停に戻り小屋で着替えなどしてバスを待つ。蓮池から白根火山で乗り継ぎ草津温泉から長野原草津口駅へ帰ろうと予定していたが、バスの運転手から運転していないと話される。詳しいことは聞きそびれてしまったが、仕方なく湯田中駅から長野電鉄に乗り換え、長野駅から高速バスで新宿まで帰る羽目となりました。

〈コースタイム〉
【8月13日】 野反湖(12:00) → 渋沢(16:00)
【8月14日】 渋沢(7:00) → 高沢出合い(10:30) → ナマリ岩(13:00)
【8月15日】 ナマリ岩(7:00) → 南沢出合い手前(14:20)
【8月16日】 幕場(5:25) → 南沢(6:15) → 登山道(10:30) → 高天ヶ原(13:00)

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