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縦走・国師ヶ岳岩屋林道~金峰山表参道
峯川 正行

山行日 2014年11月22日~24日
メンバー (L)峯川、飯塚、大田、林

 なかなか三連休の山予定がたたずに、予定が空いていた林さんに行きたい山域をリクエストしていただくと「奥秩父!」と連絡があり、即興でこのルートを思いつきました。以前から巡ってみたかった案件2つです。クラシックルートの国師ヶ岳岩屋林道と金峰山表参道です。降雪があるかないかギリギリのタイミングでしたが、今回は運良く雪も降らずに3日間暖かい山行となりました。とにかく天候に恵まれて予定通り完登できたことを山へ感謝したいと思います。そして、ご参加いただいたみなさまの協力のお陰で無事に完登できました。単独ではおそらく迷って撤退していました。

【11月22日(土曜) 晴れ】
 前夜金曜夜にいつものロータリーに集合し、道の駅・南きよさとにて仮眠をするが、とても寒かった~ みんなからも、山行中よりこの仮眠での寒さが一番だったと。
 朝5時半起床し、1時間ほど走り登山口の町田市自然休暇村の駐車場に車を置かせていただく。ここは町田市、相模原市に在住の方が宿泊費など優遇されるようです。是非、町田市、相模原市在住の方、ご利用下さい! とても素晴らしい施設です。
 まずは林道を進みますが、五郎山への登山口がある林道を左に見やりながら右側の林道を進みます。しばらくすると植林での鹿よけ用の柵があり、カラビナを外して解錠させてもらいました。じわじわと高度を稼ぎながら進むと第一ブリキ小屋が登場です。造林小屋だったようで、今はかなり崩壊しています。
 しばらく進むとメインの林道との分岐があり、右手側の唐久保沢へ下るルートを進みます。すぐに砂防堰堤があり渡渉しますが、ここは簡単に渡渉できました。対岸には進むべき林道があるので、かつては簡単な橋のようなものがあったのかもしれません。
 しばらく立派な林道が続きます。全く意味をなさない梓久保林道のゲートがありました。とても雰囲気のいいところで、個人的にはここで・・・ いつか再訪したいです。

意味をなさない梓久保林道のゲート渡渉ポイント 東沢にかかる朽ちた橋

 しばらく進むとまた崩壊した堰堤がありますが、崩れた土面を乗り越えて林道を進みます。荒れた林道が続きますが、問題なく歩けます。程なくすると土台の木材が崩れた橋が見えてきました。東沢のようでここの渡渉はなかなか面倒で、岩の表面が凍結していて滑る滑る~ なんとか渡渉すると林道の看板があり、左側を少し進むと第二ブリキ小屋に到着です。屋根は落ちていますが、なんとか使えそうな小屋でした。
 この先からの林道は相当荒れてきます。山側の土が崩れていたり、藪道になっていたりします。下道がありますので道を外すことはありません。現役の木製橋は板が外れていますが渡れます。しばらく進むと第三ブリキ小屋です。
かなり大きい第三ブリキ小屋  小屋の上側にはヘアピンカーブがあり、このエリアも台風の影響なのか道が崩壊していますが、ショートカットして林道を進めそうでした。
 この先は宿敵の石楠花などが林道に出現しますが、問題なく進めます。だんだん沢床に近くなり、沢沿いを歩くようになり、いよいよ踏み跡が怪しくなってきます。無理やり歩けば沢沿いをいけるのですが、できれば先人の踏跡を外したくない思いが強いので、作戦会議ということで少し登ったところで腰を下ろして休憩をしてみました。「どこがルートかね~」と言っていると、飯塚さんが「あ!赤布~」と一言。私には全く赤布が見えません。かなり高いところで離れたところにあり、飯塚さんの目の良さには感服の一言です。
 気を取り直して、赤布を追いかけ沢から離れて右岸を上がっていきます。上がりきったところには赤布やら黄色テープやらかなり賑やかなところで、明らかに重要な地点です! と感じました。山名板などないですが、おそらくここが国師のタルへ道をわける分岐ポイントだと思います。国師のタル方面の左側へ登っていくルートを見やり、右側の踏み跡はまた沢に降りていきます。枝沢はもう凍結していました。数日後にはここにも雪が降るでしょう。
 ここから先は沢沿いに進み、赤布と樹木への赤丸スプレーを頼りに進みますが、これらの情報は最低限であり、特に赤丸スプレーはこのメンバーでは飯塚さんしか分からないようなものもありました。ですので、かなり慎重に進みます。「あれ~スプレーないね~」となると一旦前の赤丸スプレーポイントまで戻り、みんなでキョロキョロして探します。そうすると確かに小さくあったりします。このエリアは単独もしくは二人での山行はかなり難しいと思います。やはり4人で来て大正解でした。みんなの力が必要な山域なのです。

なんともわかりにくい赤丸スプレーこんな感じの沢沿いを進みます

 実際は沢沿いに進みにくい部分は高巻きのルートにちゃんとなっていました。なんとか道を外さずに進むと、チェックポイントの左岸の白砂大崩壊地がようやく見えてきました。時間は13時前でなんとか予定通りです。そろそろ、ダミーの岩小屋があるはずです。しばらく進むと左岸に小さな岩小屋がありました。目指すべき岩小屋にある縦にかかっている丸太はありませんでしたのでダミーの岩小屋です。
 その先の二俣でしばし休憩し、右俣の水流が少ない方を5分くらい進むと裏に隠れた感じで突然、探していた岩小屋に到着しました。これが梓川岩小屋です。かなりの大きさにびっくりしました。夏場なら岩小屋でシュラフのみで寝られそうです。
 岩小屋は少し高みのような場所にあり、手前の下がったところには小さな沢もあり、水には困りません。水もあり、誰もいないとなれば後はのんびりと語らいの時間です! これをするために、ここに来たようなものです。

洞窟のような梓川岩小屋

【11月23日(日曜) 晴れ】
 あたりもまだ暗い6時10分に出発。今日は天気も珍しく良さそうなので御室小屋までなんとか進みたい。国師ヶ岳までは最後の支尾根に合流するまではトラバースするような感じで尾根まで進むようなルート。昨日の夜からなんか迷いそうだなあ~と思っていたのですが、やはり非常にわかりにくいです。目印は例の赤丸スプレーのみで、さらにスプレー箇所が少なくなっていて、最低限しかつけていない感じです。赤布とは違って幹一か所の赤丸スプレーなので見る方向がずれるとなかなか見つからないです。踏み跡が怪しいとすぐに戻り、再考を繰り返します。昨日に引き続き、飯塚さんの眼力が冴えまくってます。飯塚さんの「あった~」が何度も樹林帯に響き渡ります。途中、ヤマレコで見たことのある【hachi/Yamaotoko7】黄色テープを見つけ、ひとまず安心。

3年前に登ったヤマレコ登山者の目印倒木を越え、国師ヶ岳を目指す

 どんどん高度を上げていき、最後は倒木がかなり多くなりますが目印はピンポイントであります。いよいよ樹林帯を抜け、北側の景色が見えるようになってくると、国師ヶ岳は近いです。人の声が聞こえてくると、ようやく国師ヶ岳に到着です。やはり懐が深い山です。簡単には登頂させてはもらえませんでした。
 国師ヶ岳からの富士山の景色は素晴らしいです。三脚持参でカメラ撮影されているかたも何人もいました。しばし休憩をして、北奥千丈岳の分岐で林さんと私と飯塚さんはザックをデポして大弛小屋に向かいます。ビールの買い出しです! 階段を一気に下っていると、女性二人に挨拶をして走り下りますが、後ろの方で林さんが女性と話し込んでいます! 林さん積極的~と思ったら、なんと会員の青木さんと網谷さんでした。二人で甲武信岳まで縦走のようです。私は青木さんを存じ上げておらずスルーしてしまいました。申し訳ございませんでした。
北奥千丈岳は人が多い  大弛小屋でビールを買い、階段を登り返します。お待たせしていたオオマサさんと合流して北奥千丈岳に向かいます。
 ここまでは多くの登山者に会いますが、それ以降の奥千丈岳方面になると一気にいなくなります。そのままいくと石楠花新道で黒金山方面となりますが、途中でルートをはずれ、2,351mPを経由し御室小屋目指して藪の尾根を下降します。奥千丈岳西尾根という仮称でしょうか。この尾根がかなり厄介で、下道などほぼない感じの藪ルートです。登りに使うのなら問題ないのですが、下りで使うとなかなか見通しが良くなくて、広い尾根なので簡単に尾根に乗ることができません。知らぬ間に尾根から外れることもありました。今回の山行で一番神経を使ったのがこのルートでした。予定していた下降ポイントからずれてしまい、無理やり最後は林道に降り立ちました。結局、奥千丈岳から2時間半もかけての下降となり、大弛峠から林道で降りてくる時間とあまり変わらなかったかもです。そこからは御室小屋への取付点であるアコウ平を目指して林道を下ります。それほどかからずに、20分くらいの林道歩きで到着しました。車も数台おけるスペースがあり、今後色々と使えそうです。

アコウ平は車も数台駐車可能トロッコ道を降りると渡渉

 アコウ平からトロッコ道をたどりながら下降していきます。降り立つと渡渉となりますが丸太をついだ簡易的な橋ができていたので、順次渡っていきます。
 時間は14時半で御室小屋まではあと1時間くらいかかるはずです。さあもうひと踏ん張り頑張りましょう! と言い出して数歩歩き出してから、ここでやめましょう~ 御室小屋は水場があるか怪しいので、沢があり、幕場に適したこの場所を見てしまったので、ここで幕を張ることに急遽変更しました。明日早く出発すればいいのです。そうと決まれば、連日のお楽しみが待っています。とても快適な夜を過ごせました。

【11月24日(月曜・祝) 晴れ】
黒平(K)と金峰山(K)の分岐ポイント  いよいよ、今回の2つ目の案件である、金峰山表参道です。数年前から行きたいなあと思っていて、ようやく歩けます。御室小屋までは沢沿いにしばらく進み、赤テープを見ながら踏み跡を辿って行くと涸れ沢に出ます。ここが黒平(くろべら)への分岐【KK分岐】となります。今度は本来の金峰山表参道である黒平のルートでここにたどり着きたいです。
 分岐からは涸れ沢を登っていきますが、要所要所で赤テープがあり迷うことはありません。沢に挟まる感じのルートを登って行くと突然目の前に崩れた御室小屋にたどり着きました。できれば崩壊する前の御室小屋の時に来たかったです。かつてこの小屋には昇仙峡の金櫻神社の神官がおり、ご神体である金峰山を目指す参拝者をもてなしたと言われております。この場所に多くの人が集まり、金峰山に登っていたのかと思うと感慨一入です。今は静寂に包まれています。

念願の御室小屋に到着 崩壊が進む古の指導標

 みんなが休憩している時に水場の確認に行きました。まっすぐ沢沿いに5分くらい進むと沢の源頭のような所があり凍結せずに、ちゃんと水が出ていました。これならばこの場所で水に困ることはないと確信しました。
 いよいよ金峰山表参道を登ります! 天気も素晴らしく最高のコンディションで清らかな気持ちで登り出します。核心部であるスラブの鎖場はすぐにあります。樹林帯を5分くらい登りアルミの梯子が見えてくると、スラブの鎖場となります。事前の情報だと水がしみでている所があるらしいということで凍結していたらどうしたものかと思っていましたが、水もそれほどしみだしておらず、クラック部分を使って左側に移動して鎖まで移動し後は鎖を使って一気にスラブを登ります。全く問題なく登れ、案ずるより産むが易し状態でした。下りで通過する方が神経を使う場所かと思います。

金峰山表参道の核心部のスラブ全く問題なく登れました!

 スラブ部分から上を見上げると、でかい丸岩がぽつんと乗っかっている片手回し岩が見えました。明らかに象徴的なもので、どうしたらこんな形になるのか・・・。この後は、この片手回し岩の基部を目指して登ります。梯子がいくつかありますが安心して登れます。片手回し岩の基部はゆっくりできるスペースがあり、一本とりました。やはり圧倒的な丸岩です。芸術品としか思えません。
 あとは石楠花エリアを通りながら金峰山を目指します。最近多くの人が歩いているのか一般道の様相で全く危険な所がありません。ただ、かなり急登なので一歩一歩ゆっくり歩く感じになるかと思います。樹林帯をようやく抜けるといよいよ五丈岩が見えてきました。

圧倒的な存在感の片手回し岩いよいよ五丈岩が見えてきました!

 天気にも恵まれて本当に最高の気分で金峰山頂を目指します。9時に五丈岩の裏側に到着しました。ここが表参道ルートの取付部だったのかと。以前2回ほど山頂に来たことがありますが、全然気づきませんでした。次回は八幡尾根から山頂を目指したいです。はるか彼方の昇仙峡の金櫻神社から黒平をめぐり、御室小屋で休息し・・・ かつての人々は何日かけてこの五丈岩まで歩いたのでしょうか。信仰心とは凄いことであり、私的にはとても興味深いのです。日本各地のこのようなかつての参詣路を歩いてみたいものです。
五丈岩が大きすぎて我々が小さくて見えない!  この後は一気に廻目平目指して下山です。昨日で小屋仕舞いだった金峰山小屋の前でしばし休憩し、あとは惰性で廻目平の金峰山荘まで歩きます。初めて通るルートだったのですが、とても歩きやすく、手入れがされているルートだなと感心いたしました。金峰山小屋の若主人が常に整備しているとのことです。懐かしい車が廃棄されている林道終点からは周囲の景色を見ながらタクシーの呼び出しもあるので私が先を急ぎました。金峰山荘に着いてタクシーをすぐに信濃川上駅から呼び出し、みんなを待ちながらしばし休憩です。今日は連休最後なのでとても静かでしたが、とてもいいところです。今度、焚火キャンプと山登りをセットに来てみたいものです。みんなが到着したと同じくらいにタクシーも到着しました。スタート地点の町田市自然休暇村までお願いしました。タクシーではいつものごとく、この界隈の山の情報を色々と聞き出すことができました。ハスラーを回収してお風呂を目指してヘルシーパークかわかみへ。温泉ではないですが、300円という良心的な金額で食事も食べられます。季節的なものか空いていて快適でした。みんなで食事をしながらテレビをつけると、小谷村、白馬村で大地震があり相当の被害があったという情報が。我々も同じ長野県にいるのですが、全く山に入っていたので情報が入っておらず、そして地震が起きた時も梓川岩小屋ですやすや熟睡していたと思われます。かなりの被害が出ていたのでとても心配になりました。
 今回の山行は、かなりギリギリになって企画したクラシックルート山行でしたが、雨男の私にはありえない晴天で、以前からあたためていたルートを2本つなげて歩けて嬉しい限りでした。今度はどのクラシックルートにしようか、神保町の古本屋で色々と古い山書籍を探したいものです。

最高の山行をありがとう!!
〈コースタイム〉
【11月22日】 町田市自然休暇村(7:25) → 第一ブリキ小屋(8:20~35) → 唐松久保沢渡渉(9:00) → 梓久保林道ゲート(9:05) → 東沢渡渉(9:40) → 第二ブリキ小屋(9:50~10:05) → 第三ブリキ小屋(10:20) → 国師ノタル分岐点(11:15) → ダミー岩小屋(13:05) → 二俣(13:25~30) → 梓川岩小屋(13:40)【幕営】
【11月23日】 梓川岩小屋(6:10) → 【hachi/Yamaotoko7】黄色テープ(7:50) → 国師ヶ岳(8:30~45) → 前国師ヶ岳(9:00) → 大弛小屋(9:25~35) → 北奥千丈岳(10:15) → 奥千丈岳(11:00) → 2.351mP(11:20) → 川上林道(13:35) → アコウ平駐車場(13:55) → 荒川渡渉点(14:30)【幕営】
【11月24日】 荒川渡渉点(5:55) → KK分岐(6:15) → 御室小屋(6:25~40) → 鎖場・スラブ(6:45) → 片手回し岩(7:10~25) → 金峰山山頂(9:00~15) → 金峰山小屋(9:25~45) → 川端下林道終点(10:55~11:10) → 金峰山荘(12:00)

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