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縦走・寸又峡~朝日岳
津田 友紀子

山行日 2014年12月28日~1月1日
メンバー (L)鈴木(章)、成田、青木、津田

 去年の正月山行のランカン尾根が楽しかったので、今年も正月は南アルプス深南部の山に行きたいなあと思っていた。静かな雪山縦走に温泉宿、そして大井川鐡道の旅という盛りだくさん企画に心を躍らせて出発。

【12月28日(日)】
猿並橋、けっこう揺れます  朝7時過ぎの東京駅発の新幹線に乗り、途中でいくつか乗り換えてお昼前に寸又峡温泉に到着。
 寸又峡温泉は、年末を過ごす観光客が多く、縦走の大荷物の山登りの恰好をしているのは私たちだけだ。あからさまな視線を浴びてちょっと居た堪れない感じだが、数年前は私も向こう側だったのだ・・・。
 温泉街を出ると、大井川にかかる吊り橋、猿並橋(全長96m、高さ11m)を渡って、朝日岳登山口へ。今日は水の持ち上げもあるので、1,232mの合地ボツまで。午後の陽の差す中、重い荷物に体を慣らしながら歩いていく。しばらく行くと、崩れたところがあり、つかまって登れるロープが張ってあった。そのあとの長いトラバースを過ぎると、道の脇に石碑の合地ボツが立っていた。その先を曲がったあとは広く緩やかになっており、適当な広さのところで今晩の幕とした。その日の晩は予報通り雨雪であった。

【12月29日(月)】
美しい樹林  雨が収まったころに歩き出そうということで9:30にテントを出発。前日とはうってかわり登山道は雪が着いていた。展望所まで行くと、雲は低く垂れこめているが、周りの山々は見渡せる。栗山沢ノ頭までは急坂で、岩場は今朝降った柔らかい雪の上で足を踏ん張ると、すぐ下に分厚い氷が張りついていて滑る。両足がその状態なので木に手を掛けながら登るが、脆い枯れ木も多く肝を冷やした。ふと頭を上げると木々に雪が着いて白く美しい光景が広がっている。そしてすぐに朝日岳(1,826.6m)の山頂に着いた。
 ここから先が今回の山旅のメインコースだ。午後になると青空も見えてきた。朝日岳からは200mほど痩せ尾根を下る。そのあとも細かくアップダウンを繰り返して、1,717mP手前の1,660m辺りで幕を張った。

【12月30日(火)】
ラッセル、ラッセル  翌朝はヘッデンがなくても足元が見える6:30に出発。真っ赤な朝日が昇ってきて、今日もお天気はまずまずのようだ。
 ひたすら尾根に忠実に登っていくが、相変わらずの痩せ尾根で、1,838mPの手前ではガレた岩場とそれに絡みついた古木をよじ登らなければならない個所があり、とても緊張した。標高が上がり、尾根が広くなると雪が深くなってきた。風も吹き付け寒くて仕方ない。1,844mPの手前で立派な作業小屋があり、風もよけられるのでこの場で長めの休憩を取った。この後はラッセルが続く。最短距離を目指して猪突猛進して疲労困憊になるより、迂回して雪が少ないところを探していっていくことを学んだ。青木さんと成田さんのラッセルで進んでいったが、それでも私にとっては疲れが激しい日で、だんだん足取りも遅くなった。天気も悪くなり、少し斜面を下って風がよけられる稜線の下、1,883mの次のピークの手前で幕を張った。
 夜は明日からの山行の相談会議。今年は雪がとても多いようで、以前はワカンなどなくても冬は登れたとのことだったが、これから大無間山までは標高も高くなり雪も深くなるはずだ。ワカンなしで行けるだろうか。予備日を使えば行けると思うが、月曜日からは会社だから必ず日曜日までには下りなければならない・・・全員一致で今回は朝日岳に戻ることにした。

【12月31日(水)】
 翌朝はすっきり快晴。今まで歩いてきたトレースを追っていくが、ところどころ消えているところもある。行きでも活躍した成田さんのGPSも使って無駄なく進む。さらさらの雪は腰までになると、倒木を乗り越えるのにも足場が固まらなくてその場でもがく。この日はいくつかアップダウンを繰り返し、急登の先の1,730mPで幕とした。

【1月1日(木)】
初日の出とN氏  年が明けた翌朝は木々の間から朝日を拝むことができた。あとは朝日岳に戻り、温泉に浸かってゆっくりできるのだ。身も心も軽くなるはずだが、私は行きに怖かった氷の岩場を下らなければならないということが頭から離れなかった。雪がちらつく寒空の中、朝日岳への登りは痩せ尾根の急登が続く。雪もますますたっぷりついている。そしてやっぱりこの正月に入ったのは我々だけだったようだ。朝日岳の頂上を踏むと安堵した。懸念していた氷の下りは、雪がしっかりついていたせいかつるつると滑るようなところはなかった。展望所では曇りのため、周囲の山々は白い靄に包まれてあまり見えなかった。合地ボツは初日には雪がなかったが、この日はうっすらついていた。ブナの枯葉がたっぷり落ちていて、滑るから気をつけて、とアドバイスをもらって慎重に下った。
 寸又峡温泉にはちょうどお昼時に戻ったので、アッコさんおすすめのお店で昼食を取った。本来は大無間から南下して接岨峡温泉に下りるはずだったため、接岨峡温泉の宿にお願いをして寸又峡まで迎えに来てもらった。いざ車に乗ってみると、けっこうな距離で、宿の人の親切さに感激した。
 接岨峡温泉はこぢんまりとした街だ。宿も数件しかないとのこと。温泉は泉質もよく、出た後は全く体も冷えず、布団に入ると暑くて眠れないほどだった。
 宿のご飯もお正月ということもあってちらし寿司にお鍋などの豪華版。朝食もすべてが美味しくて大満足だった。

【1月2日(金)】
 翌朝はよく晴れて、接岨峡を出るまでの間に街を散策した。散策マップが準備してあって、街を1時間~1時間半ほどで一周できる。八つのさまざまな形の橋で構成される八橋小道や迫力満点の接岨大吊橋を渡り、最後に若宮神社でお参りをした。そして最後の目玉、大井川鐡道南アルプスあぷとラインの真っ赤なレトロ電車に乗って鉄道の旅へ。車掌さんがこの鉄道の歴史や沿線の観光名所、ダムの話などをしてくれるので、この日は観光を目いっぱい楽しんだ。
 今回は残念ながら大無間へは行くことができなかったが、とても充実したお正月山行で大満足でした。

大井川鐡道の車窓から
〈コースタイム〉
【12月28日】 寸又峡温泉(11:30) → 登山口(12:09) → 合地ボツ(14:32) → 幕場(14:45)
【12月29日】 幕場(9:30) → 展望台(10:00) → 朝日岳山頂(12:00) → 1,717mP手前幕場(15:20)
【12月30日】 幕場(6:30) → 1,717mP(7:00) → 五林沢口 → 作業小屋(9:40~10:10) → コッパ沢の頭1,883mP → 幕場(14:30)
【12月31日】 幕場(6:35) → コッパ沢の頭(9:30) → 作業小屋(10:08~10:30) → 寸又峡林道分岐(11:10) → 五林沢口1,706mP(12:30) → 1,730m幕(14:30)
【1月1日】 幕場(6:30) → 朝日岳山頂(8:30) → 合地ボツ(9:55) → 登山口(11:45) → 寸又峡温泉(12:05)

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