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雪山登山・八紘嶺
藤岡 弘之

山行日 2015年1月10日~12日
メンバー (L)内田、鈴木(章)、青木、大田、高木、成田、内藤、藤岡

【1月10日】(羽衣~敬慎院)
 甲府駅で集合し、ホームのコンビニで少し行動食を買い足して、9時5分発の身延線の電車へ乗り込む。今年最初の山行で、また、初めて会う方もいて、少し緊張気味。電車は快晴の中を進み、雪を被った南アルプスが大きく見える。身延線は単線のため、途中駅で何度かすれ違い待ちで停車しながら、10時30分下部温泉駅へ到着した。駅からジャンボタクシーで30分ほど移動し、表参道の登山口となる羽衣へ到着。車中から七面山が少し見えていた。運転手さんの話では、今年になってから、雪は降っていないとのことで、少しホッとした。
 トイレと身支度を済まして出発しようとすると(11時20分)、登山口鳥居の横には「敬慎院に宿泊される方は500円で荷物を運搬いたします」という看板があり、重い荷物と標高差1,200mを考えるとかなりお得に思われ心魅かれたが、リーダーの「歩荷訓練だと思って!」という言葉で、気持ちを入れ直してスタートする。
 表参道には丁目石があり、50丁目となる敬慎院まで続いている。道は参道なのでしっかり整備されていて、最初は雪もなく、順調の滑り出しだが、なかなかの急登である。50分ほど登って最初の休憩となるが、私が順調であったのはここまで。1,000mを越えるとアイスバーンが出始めて、アイゼンを装着する。歩きやすい道が続くが、眺望が得られるところは数カ所と少なかった。
 36丁目の晴雲坊に着く頃には、かなりバテて一人で大きく遅れをとってしまい、膝を故障した後の運動不足を痛感した。40丁目を越え、足が前に出なくなってマズイなと思っていると、高木さんの「もう少しだからガンバレ~」の声が聞こえ、大きな和光門(46丁目)が見えた。ストックを貸していただき、皆さんより10分ほど遅れて何とか15時20分に敬慎院へ到着する。
 敬慎院には小さな風呂があり、到着してすぐに入り、体を温めることができた。そして部屋(20畳くらいで私達だけ)には大型のストーブがあり、天国のように感じた。
敬慎院にての夕食  食事は精進料理(煮しめ、ひじき、黒豆)で少し寂しいが、ご飯とみそ汁はおかわりし放題!で嬉しい。それに、禁酒のはずが、お神酒が徳利で出てきて驚いた。成田さんとほどよく飲んで、充分満足した。
 夜は太鼓を叩いて、お勤めをする。七面山は、七面天女を由来とする七面大明神を信仰する霊山で、女性の神様を祀っているのは、とても珍しい。お勤めから帰ると、5人ほど寝られそうな長い布団がひかれていた。掛布団も長いのだが、2枚掛けにしてくれていて、結構重い。重なり合う所では、重い!と声が上がりながら、20時30分に就寝となった。ちなみに、今夜の宿泊者は20名足らずだが、宿坊の収容人数は1000名で、参拝シーズンになると、かなりごった返すそうだ。

【1月11日】(敬慎院~七面山~幕営地)
 2日目は朝のお勤めを途中で抜け、食事を済ませて、7時30分に敬慎院を後にした。
 階段を上るとすぐに隋身門で、門の中に富士山が見える。門を越えると展望台になっていて、晴天の下で朝日に照らされた富士山が雲海に浮かんでいて、素晴らしい。
 時期が合えば、ここからダイヤモンド富士も見られるらしい。
 隋身門から七面山山頂までが今日一番の登りになるが、トレースのしっかりした雪道で登り易い。8時30分に山頂(1,989m)到着、林の中で展望はない。

敬慎院を出発綺麗な富士山をバックに記念撮影

七面山山頂にて  15分ほど休憩して出発した。少し下って登り返すと、すぐに喜望峰(1,980m)へ到着(9時10分)、ここからは、西側にある笊ヶ岳-青薙山ライン上の山々がよく見渡せた。先行していた二人組が喜望峰で折り返したため、これ以降はトレースが薄くなった。この先の足跡はおそらく一人のもので、雪深いということではないが、それでも、あるのとないのとでは随分違うように思われた。
 七面山と八紘嶺のおおよそ中間地点になる1,964mピークを11時、インクラ跡を12時30分に通過。その少し先の1,800m峰への登り出し付近の場所を幕営地にすることとした(12時40分)。夜は風が強くなるので、稜線から少し下りたところに幕営しようとの声が鈴木さんより出て、東側斜面を造成することになった。全員で30分ほど掛けて二張分の雪のひな壇を作り、一汗かく。
稜線から少し下りた幕営地  初めての経験であり、造成するという発想がなかったので勉強になった。1時40分頃にテントへ入り、少し休息していると、小雪がちらつき始め、風が出てきたので、この場所にして正解だと思った。
 水を作りながらの長~い宴会が始まり、あまり量を飲んでいる訳ではないが、結構良い気分になれて今日は安上がりである^^ 私のテントの今夜の食当・大田さんが、つまみ&夕食の一部にと、マッシュポテトをポテトの粉(素)とコーンスープで作ってくださった。技ありの一品で美味しい。そして、今夜のメインのハヤシライスになった。こちらも食欲をそそる一品で美味しくいただいた。
 日が暮れて外を見ると、富士宮の街の夜景が綺麗に見える。気持ちの問題だと思うが、雪山から見ると、無雪期よりも人里離れた場所にいるように感じられた。19時就寝。

【1月12日】(幕営地~八紘嶺~梅ヶ島温泉)
雪面が真っ赤となる  4時に起床し、朝食(餅ラーメン)を食べ、テントを撤収して、6時にヘッデンで歩き出す。6時50分頃に雲の上から太陽が顔を出すと、雪面が真っ赤になり、美しい風景が目に飛び込んでくる。木々の間から富士山も見えている。今日も天気が良さそうだ。
 この後、少し迷う場面があった。テープとトレースが左の東側へ、しかし、八紘嶺の稜線は真っ直ぐ正面の南側に見えている。どちらも数名で確認に行き、南側にもテープがあることを確認し、方角的にも南側へ進むことにした。数日前に、このルート上で尾根を間違えて下って遭難騒ぎがあったと敬慎院で聞いたが、東側へのトレースはその登山者のものなのかもしれない。何が災いするか分からないので、やはり、人少ない雪山の一人歩きは厳しいように思われた。
 八紘嶺が近づくと少し雪が多くなり、ワカンを装着した。内田さん、青木さんがドンドン道を作っていく。最後の登りで、自分も練習したいと志願するが、なかなか進まず、ついには見苦しいとの声が飛んで、あえなく成田さんへバトンタッチとなった。まだまだ、雪慣れしていない。8時30分に八紘嶺へ到着。
 木々の間から富士山が少し見えるが、展望はほとんどなく、少し寂しい。

八紘嶺にて

 ワカンを外して休息、集合写真を撮って、8時50分に下山を開始した。
 少し進むと、山伏方面の眺めが良くなった。陽当たりも良いので、雪も少ない。9時50分に富士見台へ到着、富士山の眺めは良いが、登山道が崩れたような場所で、あまり止まっているような場所ではないので、写真を数枚撮って通過する。

富士見台より

 この辺りになると、人数は少ないが、梅ヶ島温泉から登ってくる人とすれ違った。10時35分に、一旦、林道へ出て、アイゼンを外す。ここから一気に下降して、登山口11時20分、そこから少し歩いて梅ヶ島温泉11時30分到着となった。
 縦走の充実感とともに風呂に浸かり、バスの出発(13時25分)まで時間があったので、近くのおでん屋でビールを飲んで帰宅の途についた。

〈コースタイム〉
【1月10日】 羽衣(11:20) → 敬慎院(15:20)
【1月11日】 敬慎院(7:30) → 七面山(8:30) → 喜望峰(9:10) → 1,964mピーク(11:00) → インクラ跡幕営地(12:30) → 幕営地(12:40)
【1月12日】 幕営地(6:00) → 八紘嶺(8:30) → 富士見台(9:50) → 林道(10:35) → 登山口(11:20) → 梅ヶ島温泉(11:30)

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