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縦走・越百山
なりた よしまさ

山行日 2014年11月1日~3日
メンバー (L)鈴木(章)、大田、杉本、永岡、青木、津田、成田

【11月3日 雨】
 越百山から南下して安平路山に至るルートはガイドブックには載っているが藪山が続き、一般登山道は無い。その途中にある奥念丈岳などは一般登山の対象になっていないので知名度は低いだろうし、そこから派生する念丈岳はもっと知られていないと思われる。さらに、交通の便が悪いため行きたくても簡単に行けるものではない。いまだ未踏のコースが例会に出たので手を挙げた。当初、この山行は女子組で企画していたようだが、ルームでおじさんとじいさんが手を挙げたものだから一瞬戸惑いがあった。女組5人は名古屋から、男組2人は松本から須原に集合することになった。ところが中津川駅手前で事故が起き予定通り乗換えが出来ず、タクシーで須原にやってきた。予定より1時間半遅れになった。
 11時、伊那川ダムの先にある駐車場から林道を歩く。ずっと以前は登山口まで車が入れたが、今はずっと手前からの歩きとなる。駐車場からすぐ先にゲートがあって進入禁止になっている。橋を渡るとすぐ分岐点。左が空木岳、右へ行けば越百山・南駒ヶ岳。林道を40分ほど歩き、福栃橋を渡ると南駒ヶ岳と越百山の分岐点。越百山頂まで4時間と書いてある(我々は小屋まで4時間かかった)。雨は降ったり止んだり、樹林帯の中を尾根伝いに登りつづける。1時間ほどで水場。このあたりから少しずつメンバーの間隔が開きだす。先頭を行く2人について行けない。寝不足とザックの重さもあるだろうが、やはり老いぼれた。2番目の水場で水汲みをする間、待っていると体が冷えてくる。雨の中、雨具を脱いで着替えるのも大変だし、あと1時間弱で小屋に着くからこのまま我慢して行こうと。でも、遭難はこんなためらいから得てして起きるのかなと思う。雨でシャツが濡れて体が冷えて体温が奪われ、そのうち動けなくなるのだろう。頭では分かっていても実行できない。
越百小屋のサービスビールを頂きました  水場から少し下り、また登り返しが始まる。この登りがなかなかきつい。道は水溜りから沢のように流れている。九十九折れにひたすら登りつづけると平らなところに出る。ここまで来れば小屋は近い。しばらく下りると越百小屋の赤い屋根が見えてきた。
 小屋には余ったビールがケースで置いてあって「ご自由にほどほどにお飲みください」とあるが、今は寒くてその気分ではない。小屋では足が攣る人が続出。寒さと疲労のせいだろう。濡れたものを脱いで体が温まってきて、鍋物を食べているうちに元に戻った。

越百山山頂 【11月4日 曇】
 起床4時。昨夜の雨は上がったものの周囲はガスに囲まれて白い。越百小屋を後に越百山へ。登るにつれて雲の間から青空が見えているが擬似好天でないことを願う。小一時間で山頂。三角点標柱が土から随分飛び出て長い石柱になっている。所々青空が見えているが周辺の山は望めず、風が冷たいので早々に南下して奥念丈岳に向う。
 ここからは初めてのコースになる。20分ほどで飯島側登山道(中小川登山道)分岐にでる。途中崩落箇所があるため現在は通行止になっている。ハイマツに覆われた道を登り返すと石積みのケルンが立つ南越百山に着く。広い山頂は周囲が見えず方角を確認しながら砂礫の中を下り、ハイマツの森に入る。その藪がやがて笹の藪に変わる。しばらくは道形もはっきりしているが、2,454m手前辺りから笹の葉が踏跡をすっぽりと覆うようになる。踏跡を外さないように、細心の注意で脚を運ぶ。笹薮が切れてガレ場の縁を歩く。再び笹藪になり怪しい部分が多く時折外してしまって手分けして踏み跡を探すことも度々。この笹の斜面は滑り易く足をさらわれやすいので注意。緩やかに登って小さく切り開かれた奥念丈岳の山頂に到着。ピークらしいピークではなく、細長い尾根の一部といった感じだ。字の消えた板切れが落ちているだけで三角点標石がなければここが山頂とは確信が持てない。越百山からコースタイムでは1:40(ヤマケイのアルペンガイド)を倍の3:30かけたゆったりペースだ。
奥念丈岳への藪漕ぎ  安平路山のコースを分け核心部に入る。明確な踏み跡はないが、位置的にこの辺りだろうと思われるところにテープと境界見出杭があり、一筋の踏み跡があるように見える笹の斜面を下る。不明瞭な部分は笹が窪んでいる方を選びながら、できるだけ外さないように足元の笹を掻き分け踏み跡を確認しつつ下る。時折、窪みに足を取られそうになるので注意。笹は腰くらいの高さで細くて軟らかいから抵抗は無い。薄い踏み跡と目印を頼りに進んでいくが、踏み跡を見失い、強引に笹をかき分け進むと池に突き当たり行く手を阻まれる。少し戻って尾根を辿ると最低鞍部(与田切乗越)で、ここから急登が始まる。標高差150mを笹を掴みながらの急登。登りきると小八郎岳からの縦走路に合流。ここからは刈り払われた一般道。念丈岳はここから100mほど先になる。山頂は樹林が切れているので天気さえ良ければ展望が利くのだろうが今は残念ながら曇っている。
奥念丈岳山頂 右手下に山名板が見えます  念丈岳から下っていくと尾根から外れる地点から上澤新道となる。上澤新道のいわれが立ち木に書いてある。曰く「念丈倶楽部代表 上澤広一氏は倶楽部の代表として平成7年より12年に渡り登山道の笹刈をはじめ登山道の整備に心血を注ぎ今日の登山道になりました。氏は雄図空しく平成19年3月2日、61歳で病に倒れました。氏の功労を顕彰して本高森山から念丈岳の間を上澤新道と命名するものである。念丈倶楽部」(立木の説明文のまま)。エアリアマップでは藪道の奥念丈~念丈岳と刈払いされた念丈岳~前高森山は同じ赤破線で書かれているが雲泥の差だ。刈り払われた道を下っていくと「上沢の泉」の沢に出た。水場と良いテン場が揃っているので少し早いがここにテントを張る。

大島山の山名板 【11月5日 晴】
 昨日の天気予報では寒冷前線が通過するため北アはもちろん、当中央アルプスも雪が予想されていたが、早く前線が通過してくれたようでピーカンの晴れになる。やはり11月3日はジンクス通り晴れ日なのだ。沢から2,158m地点の稜線に登り崩落斜面の際を越えると大島山に到着。笹原の広いピークで気持ちがいい場所。今日は南アが見えるすばらしい展望。丁寧な手彫りの山名板が印象的。
 大島山から急降下して広く笹が刈り払われた場所に出る。「清水平」の標識があってテン場にもってこいの場所だ。上沢の泉から1時間弱である。他にも多くのテン場が存在するのは、この縦走路を整備しているからだろう。 正面に本高森山の尾根が見えているが、どんどん下ってばかりで本高森山ピークがなかなか近づいてこない。最低鞍部付近から小さなザレ、少し登って大きな白ザレが現れ、坂を登りきると、笹原の奥にやっと本高森山を捉えることができた。上澤新道終点だ。
 本高森山までは多くの人が登るらしく、さらに快適な登山道となる。 前高森山への分岐でザックをデポし前高森山に向う。標識には前高森山と吉田山の名前が書かれているが、勘違いして、この分岐から吉田山に向かえるものと思ったようだ。 途中で吉田山分岐があったため気づく。三角点は前高森山頂手前にあるはずだが道の真ん中に長く飛び出た石柱は三角点ではなかった。三角点はその傍にあったようだ。気づかなかった。そこから少し進み山頂に到着する。樹林帯に覆われ景色は無いが、暖かいので休憩する。
 下のデポ地点まで戻って登り返し吉田山へ向けて歩く。入口は最近刈り払われたばかりのようでトラバース道は安定してないが尾根に上がるとしっかりした道で、ゆるゆると進んで本日最後のピークとなる吉田山に着く。広い山頂は明るく、暖かく小春日和の様相。南アの展望がすばらしく、終着まであと一下りなので長々と休憩。
最後のピーク 吉田山  隣政寺コースは山頂の直ぐ下で分岐となり、東へ向かう左のルートへ入る。 クラガリ沢に沿って痩せた尾根で結構な急斜面だ。 赤い社の戒壇不動に到着。岩に不動明王が彫られており、安永6年に彫られたものらしい。周回コースになっている。戒壇不動からの道は、ベンチが置かれていたり展望台があったり、本当によく踏まれ歩きやすい。
 終点の隣政寺はとても立派で大きなお寺だ。タクシーを待つ間、山門に登って南アルプスの景色を楽しむ。
 ガイドブックなどには前高森山から吉田山はコースが書かれてないが、道はハイキング道のように整備されている。かえって、越百山から念丈岳のコースはエアリアでは赤の破線で書かれているが黒の破線のほうが適当だ。しかしテープも点々とあり山慣れた人であれば問題なく行けると思う。

〈コースタイム〉
【11月3日】 伊奈川ダム登山口(10:55) → 越百山登山口(11:40) → 最初の水場(12:05) → 上の水場(14:15) → 越百小屋(15:25)
【11月4日】 起床(4:00) → 越百小屋出(6:20) → 越百山(7:15) → 南越百山(8:10) → 奥念丈岳(10:55) → 念丈岳(12:40) → 上沢の泉(テント13:35)
【11月5日】 起床(4:00) → 上沢の泉出発(6:30) → 大島山(7:05) → 清水平(7:20) → 本高森山(8:35) → 前高森山(9:45) → 分岐に戻る → 吉田山(11:00) → 戒壇不動(12:35) → 隣政寺(13:10)
越百地図
越百地図

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