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沢登り・摺上川滑谷沢
澤野 穣

山行日 2014年10月25日~26日
メンバー (L)高木、紺野、金子、永岡、内藤、森田(純)、成田、小芝、内田、軽部、杉本、荻原、澤野

 山菜、イワナ、キノコ。言わずと知れた山の幸三部作。私はキノコだけ未経験。三峰入会後、初めて参加する山行は迷うことなく滑谷沢キノコ採りにすることにした。
 これで、ついにビンゴだ。3つ揃う。いや、キノコにも坊主があるかもしれないぞ。桑原、桑原。

【10月24日(金)】
 22時那須高原SAに先着した高木車の4名で仮眠用テントを設営する。程なくして小芝車の5名と合流し、ひとつのテントに9名入り盛大に入山祝いをして、しばらくすると永岡車も無事到着した。

【10月25日(土)】
 5時頃起床。小一時間走り高速を降りて東栗子トンネル脇に駐車、荷物をまとめ、8時に林道を歩き始めた。
 10月下旬にしてはとても気温が高く空には雲ひとつない。燃えるような紅葉に周りを囲まれている。しばらく進むと二ッ小屋トンネルに着いた。なんでも明治に開通したらしく、まるで、千と千尋の神隠しに出てくるトンネルのようだ。抜けたその先に入渓点となる烏川橋があり、そこで装備を整え入渓した。
 数日来、雨が降っていたのだろうか、全く濁りはないものの平水よりもだいぶ水が多い。渇水期の晩秋の割には瀬音が賑やかだ。
 驚くべきことに下降に使ったこの沢は全くと言って良いほど荒れたところがない。沢床にはまるで人の手で磨き上げたような玉石が絨毯のように敷き詰められていて、崩落した岩塊や沢を塞ぐ倒木は皆無で出水の気配すら無かった。そんな中を歩いて30分程経った頃だろうか、前の方で大騒ぎしている。近づいてみると、ありました。ナメコです。倒木にびっしりです。なんと表現すればいいのでしょう。ナメコナメコナメコナメコナメコナメコナメコナメコナメコナメコナメコナメコナメコナメコナメコナメコナメコナメコナメコナメコナメコナメコナメコナメコナメコナメコナメコナメコナメコナナナナナナナナナナメメメココ。
ナメコナメコ!!  こんな感じでした。その他にも大量のムキタケも発見。高木リーダー曰く、いつもこんなに採れる訳ではなく大変幸運とのこと。
 昼過ぎに滑谷沢出合に合流し、この二俣の右岸にテン場を設営した。日が暮れるまでだいぶ時間があるが13人分の食料と夜を過ごす為には相応の薪が必要だ。全員で手分けして薪を集めた。
 一段落すると高木リーダーが中心になって早速キノコの下処理をはじめ、前菜を作りだした。一品目はナメコおろし。あまりの旨さに絶句してしまった。これがナメコおろしなら、私が今までたべていたのはナメコおろしではない気がした。
 次は、パスタを二種類。ムキタケがどっさり入ったカルボナーラとペペロンチーノ。
 どう考えてもメインディッシュの気がするがこれも前菜。
 更に、大量のキノコのだしが効いた具だくさんのキノコ汁。残念ながらこの旨さを表現する言葉を私は持ち合わせていない。あっという間にキノコ汁は完売して腹はパンパンである。がしかし、これで終わらない。
 ふと焚き火の傍らに目をやると、まるで火の番人のような永岡氏がトングで火の中をつついている。出てきたのは、なんと焼きイモ!その横では杉本女史がまた料理を始めている。当然食べた食事それ相応の酒も飲んでいるのにである。一体、この人達は何なんだ!?危険だ。これ以上この人達のペースに飲まれてはいけない・・・。
 辺りは、すっかり夕闇に包まれ怪しく揺らめく炎の周りには酔態百景が繰り広げられている。
 岩に挟まって寝入ってしまった人。まるで幼児のように睡魔と闘い船を漕ぐ女性。非常に不安定な体制で木にもたれかかり絶妙なバランス感覚を披露して、つまりこれまたほとんど眠っていた大先輩。
 気が付けば自分も酔っ払ってフラフラ。翌日のことを考え戦線離脱してテントに避難した。自分のとなりに誰が寝ているのかも分からないまま眠りに落ちて気が付くと朝だった。

【10月26日(日)】
 快晴。昨夜の宴会が嘘のような爽やかな朝で絶好の沢日和である。テントをたたみ、丁寧に焚き火跡を消し8:15出発した。
 それにしても昨夜の飲みっぷりには驚いた。二日酔いで要介護者が出るに違いないと思いきや、全員涼しい顔をして足取りも軽やかである。山で調子に乗って飲み過ぎ、何度か吐いたことのある自分が恥ずかしい・・・。
 テン場から先、本流筋は水量こそ増えるものの、遡行に支障をきたすような悪い所はまるでない。
 ふと見上げると自分が慣れ親しんだ奥多摩や奥利根とは全く違うブナの森が広がっている。以前山火事でもあったのだろうか、ほとんど同じ樹齢のブナがこれまたほぼ等間隔に生えていて、さながら校庭で整列している子供たちのようだった。
 のんびり歩を進め、10:00に二俣に到着。左俣を進みしばらくすると10m滝。右岸を巻いて更に進むと裏見の滝。同じく右岸を巻く。
 場所の詳細はあえて控えるが、今回の遡行中とても素晴らしいテン場に行きあった。幾つかデポしてある備品があったものの、ゴミ一つなくそこを使用している人達の山への想いが見えた気がした。地元の方々だろうか。
 テン場のみならず、全体を通して沢にはゴミが少ない。原発の影響で訪れる者が減ったせいなのだろうか。更に印象的だったのは、沢の荒廃があまり見られなかったことだ。傾斜がきつく出水の影響により目まぐるしく変化する沢に比べ、穏やかな流れがどこまでも続いていた。
穏やかな沢の流れ!!  圧倒的な側壁や大滝、泳ぎを強いられる淵を連ね、名を馳せる溪谷をホテルの大広間に例えるならば、この沢は秘密の屋根裏部屋と言った所だろうか。
 一度は増えた水量も徐々に減り始め12:30林道に到着し、13:15烏川橋にたどり着き、14:30東栗子トンネルに戻りすべての行程は無事に完了することとなった。
 2日間の好天に恵まれ、キノコの坊主もなく、大満足の山行だった。これもひとえに山行を企画立案し、13名もの大部隊をそつなくまとめ上げた高木リーダーの手腕によるところが大きく、ここに敬意を表します。
 また来年、暖かくなったら再訪しようと心に決めたことは言うまでもない。

〈コースタイム〉
【10月25日】 那須高原SA(5:50) → 東栗子トンネル(7:40~8:00) → 烏川橋(8:50~9:00) → 滑谷沢出合(12:45)
【10月26日】 滑谷沢テン場(8:15) → 二俣(10:00) → 林道(12:30) → 烏川橋(13:15) → 東栗子トンネル(14:30)

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