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雪山登山・火打山
宮本 容幸

山行日 2015年4月25日~26日
メンバー (L)三澤、峯川、斎藤(吉)、渡辺(靖)、宮本

【はじめに】
 34歳、三峰歴9ヶ月の私が中学生ぶりに登山した記録であります。山行に申し込みした時、保有していた雪山装備は、峯川さんから頂いた、アイゼンとピッケル、セールで購入した厳冬期用の靴。未使用品で慌ててハイキングで、履き慣らす状況でありました。
 皆様に迷惑掛けることなく登頂出来るか心配な中、リーダーの三澤さんから的確な装備のアドバイスをして頂き、最低限の準備を整えることが出来ました。三澤さん・峯川さん有難う御座いました。
 あ、尚、このレポート、私目線で書きますので!!

【1日目:天候:晴天】
 皆さん、楽しい雪山登山の始まりです。前夜泊で、お世話になった「道の駅しなの」を7時過ぎに発ち、車2台で出発。一台は夏タイヤの為、念のため麓の駐車場にデポし、三澤号で笹ヶ峰登山口までGO。結果として、路面はドライでしたが、駐車場内の除雪が不完全で、駐車場に止められない車両が溢れて路駐車が多数。2台で上がっていたら大変でした。
 8時50分装備を整えて、スタートです。スタート直後は、雪原をルンルン気分でハイキングと思いきや、峯川さん、歩くスピード速!私は、付いて行くだけでやっとでした。更に、私たちと並走する形で、斎藤さんが、スキーで優雅にスイスイ・・・。私は、心の中で叫びましたよ。「羨ましい、ズルイ」と思いながら歩くこと1時間位で、黒沢橋に到着です。
 そして、待ちに待ったアイゼンとピッケルを装着して、アイゼン装着時の歩き方とピッケルの使用方法を三澤さんに教えて頂き、黒沢橋を渡りました。なお、黒沢橋は、ここ数日の気温上昇で床版が露出していたので、スムーズに渡ることが出来ました。
 しばらくして十二曲と言う、ポイントに到着。眺めながら心の中で、また叫んじゃいましたよ。「急じゃねぇ?これ登るのですか!」そんな思いとは関係なく、普通に歩く峯川さん。
十二曲をようやく登り終える  ここから、本番スタートです。峯川さんは涼しい顔でスタスタ行く中、私も置いてけぼりにならないよう、必死で踏み跡を追いかけました。何だかんだで、富士見平に到着。時刻は13時前でした。そのころから、右足大腿骨付根に違和感が・・・。「この違和感なに?」と思いながらも小休憩をしたら回復!何だったのか?と思いながら高谷池ヒュッテへラストスパートです。
 のんびりと雪原を歩いていると、あの違和感が、徐々に強く主張し始めてきた。最初は、マッサージしながら騙しながら歩いていたが、高谷池ヒュッテが見え始めた頃、右足が上がらない!本当に動かなくなっちゃいました。片足引きずりながら、何故だ!何でよ。しかも、こんな時に・・
 普段から適度に体を使った運動はしているので運動不足が原因とかではないはず。隊列の2番手で歩いていましたが、機動力がかなり低下し、後方へ退避。
 頭の中は、明日のアタックは、絶望的?下山も大変かも?と良からぬことを考えながら、高谷池に到着した時は、右足を引きずる状況。14時前に到着。
 早速、テントの準備等を行なって、水作りと思いきや、池からの引き水が自由に使える大サービスがあり、水に苦労すること無く一夜過ごせます。ラッキーです!
 更に、越冬した賞味期限切れ(2015年1月)のご当地ビールが、300円/缶で販売しておりました。たった数カ月過ぎただけの、賞味期限を気にしますか!!山小屋の主人に感謝しながら美味しく頂きました。
夕陽に照らされる三峰エスパースジャンボ  ここからは、リラックスタイムの始まりです。夕飯の18時まで、テント内で皆さんとワイワイおやつタイムです。そのおやつの量が半端じゃなかった!クラッカー&パテとカマンベールチーズ、白・赤ワイン、バランタインなどなど、ここ標高2000mの山中ですか?と思えるくらい、豪勢なおやつタイムです。流石、食の三峰。
 その頃、外の景色は、夕方に差し掛かり、都心ではあり得ない幻想的な風景が広がっていました。TVの特番で観る風景が今自分の目の前に広がっています。信じられなほど、美しい。
 夕食は、三澤さん特製カレーです。事前に調理してあるペミカンを使うため、ご飯が炊けたら次に、ペミカンをお湯に入れてカレー粉を入れれば完成です。ペミカンに入れるルーを変えればトン汁、ハヤシライス、クリームシチュー等色々なバリエーションが作れるとのことでした。詳しい、作り方は、三澤さんへお尋ねください。
 食後は、のんびりお茶タイムと思いきや峯川さんが食後のデザートがあるとのことで、お湯を沸かし始め、苺ゼリーを作り始めました。山中で食後のデザートまで頂けるとは、有難い。格別でした!次回は、私も持参します。
 満天の星空を見上げながら、私は思いましたよ「寒!!」それもそのはず山頂は、推定マイナス5~8度らしいです。寒いで済んで良かった。21時頃、就寝です。

【2日目:天候:晴天】
もうすぐ火打山 後ろには妙高山  朝です。山頂を目指してアタックする日です。戦の前の腹ごしらえは、峯川さん特製、一晩寝かしたカレー雑炊。温かくて最高に美味かったです。
 必要最低限の装備を準備して出発です。昨日、足が動かなくなったことを考えて、股関節付根(右)にテーピングを貼って、補強を行なったので、問題なさそうです。
 右足をかばうようにピッケルを駆使してアタックです。それが功を奏したのか、右足の負担も少なく、問題なく動けています。先ずは一安心。途中で滑落停止の方法を伝授頂きトライ!うまく滑れない・・・。仕方なく、フォームだけ練習しました。滑落時の初期制動が重要で、転倒時に素早くピッケルを雪面に刺すことで滑落防止になるなど、色々と教わりました。三澤さん、峯川さん有難う御座います。
 その後、9時30分頃に全員で登頂成功です。山頂から見える景色は、絶景です。天候に恵まれ遠くの富士山、アルプス山脈、辺り一面雪山だらけですよ。
火打山山頂にて 雲ひとつない快晴  その後は、ベースに戻り、撤収作業を行ない、11時50分には下山開始です。下りは登りよりも危険とのことで、特に十二曲手前の急こう配は、バックステップで降りるとのことです。そこまでは、雪原をスタスタ快調に下っていけます。
 十二曲手前の急こう配前で小休憩。バックステップを伝授頂き再スタート。この時の順番は、先頭から峯川さん・宮本・渡辺さん・三澤さんの隊列です。
 バックステップ区間が終わるとトラバースに移行して、十二曲を下るルートです。今回、予期せぬハプニングが発生!! 場所はバックステップ区間からトラバースに移行する際のプチテラスで発生しました。ここから出来るだけ詳しく書きたいと思います。
※内容は、私の記憶とメンバーの話を総合して書かせて頂きます。

【小規模滑落?の発生】
 12時55分頃、バックステップ区間を峯川・宮本通過、峯川は、少し先に進み安全地帯で待機。宮本はテラスにてレスト中に後方から渡辺の小さい悲鳴が聞こえ、振り返る。
 三澤が歩行中に滑落し、前方にいた渡辺に接触した際の悲鳴(小)を上げたものだった。
 二人は団子になって、滑り落ち、前方でレスト中の宮本に急接近。
 宮本はピッケルを放棄し、腰を低く構え両腕で三澤・渡辺を制止させようとする。一度は弾かれそうになるも放棄したピッケルが滑落者と雪面の間に挟まる形で、支点となり、ピッケルに接続しているスリングが、セルフビレーで確保状態になったことで、宮本は体制を維持することが出来、無事に二人を初期制動範囲内で停止させることができた?偶然止まった?どちらにせよ、OK!!

【再滑落】
 三澤が立ち上りながら状況説明を始める。  前方の渡辺の足使いに注視していたところ、踏み外してしまったとのこと。誰も怪我無く一安心。三澤の次に、渡辺が立ち上る。体制はザックが谷側。立ち上ったと同時か、立ち上りながら再滑落しはじめる。この時、宮本は両名の谷側で膝立ち状態。渡辺がうつ伏せ状態で再滑落し、宮本に突っ込む。宮本は渡辺の右足を右腕で片手絞め状態で確保するが、制止出来ず、共に滑落。この時、体制としては、渡辺うつ伏せ、宮本は渡辺の右足を片手絞めした状態で、右前腕を雪面に押し当てた体制(横向)。

【宮本滑落中】
 滑落直後に、茂みがあり枝や幹に引っ掛かると思ったが、あっさり通過。
 ※雪山のため、茂みも樹木の先端部が雪から露出し、茂みに見えていただけで、枝が細く斜め横方向に枝が出ている為、引っ掛からなかったと思われる。葉の上を滑る感じで通過。
 茂み通過後に、目の前に広がるのは、斜面のみ。曖昧だが、遥か下に数本の木々が見えた?滑落停止の為に、ピッケルを探すが見える範囲にはない。
 ※最初の滑落停止時に放棄したため、この時ピッケルは、斜面上方か宮本ザックの裏側又は、上部方向にあったかと思われます。
 滑落中、宮本は両足がフリーなのでアイゼンの踵爪を雪面に擦りつけるが、減速する気配はない。また、谷方向に足が向いているので反転して、頭部が下になる危険があることから、アイゼンのみを頼りにした減速は諦めることにした。
 その頃、視界左下に太い樹木を確認、軌道的には横を通過すると感じた。ただし左側面にザックがあるため、腕を伸ばしても届かない。
 ※その時の心境は、腕一本で止まるか?試しても弾かれて凄く痛そう、もしかしたら骨折するの?と脳裏を横切った。
 同時に雪山滑落時の怪我の原因が、露出した岩や樹木との接触・樹木の周りに出来た穴に落ちて大怪我すると聞いたので、遥か前方まで、樹木が確認出来ないので、早く穴に落ちて骨折程度の最小限の怪我に抑えた方が良いのではと考えていたら、全身に衝撃が走り、滑落が停止していました。

【渡辺滑落中】
 状況が状況だけに、鮮明な解説は出来ないが再滑落中ピッケルを保持していたので、幾度か雪面に打ち込もうとした。宮本が右足をホールドしている中の限られた活動範囲で懸命に滑落停止を試す。スピードと体制、力の関係でブレードが利かなかった。

【滑落停止までの推測】
今回、運よく軽傷で済んだのは、幾つもの偶然が重なったからかと思われます。
◆足が谷方向を向いた状態で滑落した。
◆運よく穴に落ちることが出来た。正確には宮本のザックが穴の縁に引っ掛かり穴に滑り落ちた。
◆渡辺の足を宮本がホールドしていたことで、宮本が穴に落ちたと同時に渡辺を振り回しながら、引きずり込んだ。
※団子になっていた場合でも、一人が穴に落ちても、連結されていなければ、他者は穴に落ちることが無かったかもしれない。
※停止時の状況は、穴の中で宮本が山側にザックを向けて寄り掛る体勢。渡辺は、谷側にザックを向けて、宮本と向かい合う体制になっていた。(渡辺談より)

【怪我の状況】
 宮本は、右前腕と両足に擦り傷。右足のズボンとインナースパッツがボロボロに裂けた。右腕の擦りキズは、行動中、暑いため腕捲りをしていため出来た。腕捲りをしていいなければ防げた怪我。
 渡辺は、当初無傷と思われたが、帰宅途中に足首の痛みが発覚。事故当時~下山までは、ハイカットブーツで足首が固定されていたのと、興奮状態がしばらく続いていたことから、痛みを感じにくかったためだと思われる。帰京後、翌日病院で診察してもらい、軽い捻挫とのこと。
 両者共軽傷で済んで良かったです。布切れ一枚の有無の重要性を改めて知らされました。皆様、腕捲りの際は、ご注意を。

【その後】
 下山途中に、対岸の山肌を雪崩が発生し、轟音と地響き?に圧倒されてしまいました。幸いにも登山ルートではない急斜面だったので、何方も怪我されずに済んだと思われます。
 それ以後は、スムーズに下山し14時30分頃に駐車場着でした。お待たせしました、斎藤さん。2時間近く駐車場で待機されていたそうです。山スキーを羨ましいと心底思いました。機会と資金があればやってみたいです。
 その後、お決まりのお風呂と三澤さんお勧めの蕎麦屋でお腹を満たし、帰路につきました。この蕎麦屋、蕎麦と丼のセットメニューを注文したのですが、其々が並みサイズでした。腹ペコの私には、大変有難かったです。蕎麦も手打ちの様で、美味かったです。

〈コースタイム〉
【4月25日】 登山口(8:50) → 黒沢橋(10:00~10) → 十二曲上部(11:00~10) → 富士見平(12:50~13:10) → 高谷池ヒュッテ(13:45)【テント設営】
【4月26日】 起床(6:00) → 高谷池ヒュッテ(7:50) → 火打山登頂(9:30~50) → 高谷池ヒュッテ【テント撤収】(11:00~50) → 富士見平(12:15) → 十二曲上部(13:30~40) → 黒沢橋(14:00) → 登山口(14:55)

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