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雪稜登攀・一ノ倉沢一ノ沢二ノ沢中間リッジ
荻原 健一

山行日 2015年3月14日~15日
メンバー (L)荻原、小芝

 このルートを初めて例会で企画したのは2007年なのでもう8年も前のことだ。その後たびたび例会で企画するもパートナーがいなかったり、悪天予報が重なり一度も入山すらすることのない縁遠いというか相性の悪いルートになってしまった。2週間前も例会で出していたがやはり悪天で中止。この日は例会計画では一ノ沢右壁左方ルンゼであったが、2週間前の中間リッジ登攀の完登が前提であったため、迷わず中間リッジに変更した。

【3月14日(土)】
 前夜発でロープウェイ駐車場へ。今回は余裕を持って1泊2日の日程なので朝はゆっくりだ。明るくなってから起きだして7時前に出発する。一ノ倉沢出合に着くと3人の先行パーティーに追いつく。一ノ沢左稜へ行くとのこと。
 途中、一ノ倉沢本谷のデブリはさほどではない。一ノ沢出合に着くがトレースはなく人気の東尾根に入っているパーティーはいないようだ。ここから右上し中間リッジに乗る。こちらもトレースはない。しばらく登ると傾斜はあるが開けた雪原のような所に出る。

一ノ倉沢開けた雪原

 ところどころシュルンドがあり要注意だ。ここから先行パーティーのものと思われるトレースに合流する。上部を右へトラバースすると急傾斜の雪壁、灌木、草付きの急峻なリッジになる。ここからロープを付けるパーティーも多いようだが、トレースもあり雪も安定しているのでノーロープでそのまま進む。
 しばらくで中間リッジのハイライトとなるアップダウンのある極狭ナイフリッジとなり、ここでロープを付ける。1ピッチ目は下りからスタートするが、こちらは実質ノービレーとなるセカンドの方が厭らしい。灌木でビレーを取り2ピッチでこの核心リッジを抜ける。

だいぶ高度感が出てくるガスの中の核心ナイフリッジ

 抜けたところが小さなプラトー(雪田)になっており、ここが中間リッジ唯一のビバーク可能地点だ。時間はまだ早いが、次のビバーク適地は国境稜線を越えた肩の小屋でとてもそこまで行く気力はなく、予定通りここを整地して学生時代から使っている1~2人用のゴアテントを設営する。整地している間に雪が降り始め、テントに潜る頃にはかなり強い降雪となる。少々狭いがビバークと思えば天国だ。夕食を個々に済ませ、特にすることもないので日が沈む頃シュラフに潜る。雪はかなりの勢いで降り続けている。明日は大丈夫か?

【3月15日(日)】
 4時に起床し、一番にテントの外を覗くと夜明けの空に満天の星が輝いている。予報通りの快晴だ。一安心して朝食の準備をしつつ、モーニングコーヒーを味わいながら今回の登攀成功を確信する。準備を終えてテントから出ると昨夜の新雪が朝日で輝いており美しい。40~50cmは降っただろうか?
昨日のナイフリッジを振り返る  ビバーク地点から傾斜のある雪壁を登る。ダブルアックスの予定であったが、思ったほどの傾斜ではなくシングルアックスで十分だ。技術的には簡単だが、ラッセルには苦しめられる。二人で交代しながら苦しくも気持のよい雪稜登攀を楽しむ。まもなく東尾根に合流する。上部の大きく発達した雪庇地帯に差し掛かるが、雪の状態は良く安定しているのでノーロープで通過し、第一岩峰基部に到着。
 前回はそれなりに手応えがあったような気がしたが、今回は簡単そうに見えたので、ここもノーロープで登る。が、見た目と違い出だしの一歩では苦労した。第一岩峰上から更にラッセルで高度を上げ国境稜線からの雪庇直下に辿り着く。雪庇に穴を開けて突破するのも大変なので、トマの耳方面にトラバースして雪庇が小さくなった所から国境稜線に這い上がるとそこがオキの耳の頂上だ。
 頂上には一人のボーダーが居て「すごい所から登ってきましたね」と声を掛けられるが、彼はこれからマチガ沢を滑るとのこと。「あなたこそ物凄いところを滑りますね」と返したら「では!」といってマチガ沢の底に向かって消えてしまった。かっこいい!!
 へっぽこスキーヤーの私がここを滑ることは一生ないだろうが、マチガ沢の隣りの隣りの芝倉沢は是非近々滑りたいものである。
 オキの耳から一足でトマノ耳に到着し、パートナーの小芝っちと固い握手。天気は快晴で360度の景色に囲まれながら登攀成功の喜びを噛みしめる。西黒尾根から下降を始めるとすぐにガスが濃くなり進む方向が分からなくなる。コンパスを取り出し慎重に進む。手探り状態でウロウロしながら降りていくと下から上ってくる3人パーティーに会う。本日初めての西黒尾根パーティーのようだ。あとはトレース伝いに下れるなと、ほっとしながら下りていくとすぐに別の3人パーティーに会う。こちらは下っているが後姿がどこかで見た感じの人だったので、追い付いて声を掛けるとやはり小幡パーティーであった。頂上直下で視界が悪くなったので引き返す途中とのことだった。連れてきた新人2名も元気そうで何より。このまま彼らが昨日作った雪洞まで一緒に降りる。拝見させて頂いたが、3人なのにずいぶん立派な宴会用?雪洞であった。ここからもう少し頑張ってロープウェイ駐車場まで降りて本山行を終了する。
 相性が悪く8年掛かりとなったこのルートも今三峰で最も信頼出来るパートナーと天気に恵まれてようやく完登できました。有難う!

〈コースタイム〉
【3月14日】 駐車場(6:45) → 一ノ倉沢出合(8:10~8:40) → 幕場(13:50)
【3月15日】 幕場(6:00) → トマの耳(9:00) → 駐車場(12:00)

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