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縦走・海岸寺山~比志の塒~斑山
峯川 正行

山行日 2015年5月23日~24日
メンバー (L)峯川、鈴木(章)、飯塚、土肥、成田、津田、渡辺(靖)

 比志津金山塊・・・。あまり聞いたことがない名称かと思います。私も冊子の記録を読んでいる際に久々にこの名称を目にしました。最初に目にしたのは・・・。そうです8年前のアッコさんの山行です。『比志の塒(とや)』という名称が非常に頭に焼きついた記憶があります。その際にこの比志津金山塊という名称も目にしたのです。いったいどこにあるか。釜無川の支流塩川と須玉川の二つの川に挟まれた山域を通称津金の山と呼ぶようです。簡単に言うと八ヶ岳と偽八ヶ岳と言われる茅ヶ岳の間に挟まれた南北に走る尾根です。
 今回の例会の募集の際に珍しくアッコさんが真っ先に手をあげたので、その際は不思議に思ったのですが、その後予定しているルートを色々と調べていくとその理由がわかったのです。

【5月23日(土曜):晴れ】
 駒込駅に6時半集合で、成田さんと私の車で須玉を目指して出発しますが、やはり朝の中央道は渋滞が凄いです。事故渋滞だったのか予想以上の渋滞で登山口の海岸寺峠に到着したのが11時過ぎとなってしまいました。当初考えていたのが、3月に偵察に来た時に確認していた下山口に成田さん車をデポしてから登り始める案でした。時間的に厳しいかと思いましたが、下山口も偵察していて場所がわかっていたので往復30分ぐらいで海岸寺峠に戻ってこられました。
 結局登り出しは12時前となり、おそらく幕場は笠無の先ぐらいになるのでは・・・と思い始めました。明日頑張れば!というフレーズが聞こえ始めました。海岸寺峠から薄い踏み跡をたどり取り付き、15分程の緩い登りで三角点のある海岸寺山に到着です。眺望のない山頂です。林道からあがる南側からの踏み跡も確認できました。陽射しはありますが自然林の眩しい新緑を眺めながらの登りでそれほど暑さは感じませんでした。標高もすでにある程度高いので清々しいです。そして小ピークを一つ越えて登って行くと、珍しい山名の笠無には14時に到着です。
新緑の笠無にて  ここに至るまでのルートは本当に気持ちがいいです。紅葉の時期など素晴らしいと思います。歩いて気になったのが岩です。通常の岩ではなくて溶岩のような感じの岩なのです。あまりこの地域の地質には詳しくはないのですが、なにかどこかの山の噴火の影響を受けたのでは?それとも海岸寺山というぐらいなので以前ここは海底だった?角がとれたような岩が多いのでもしかしたら海の中にあった?などといろんな創造を浮かべながら登っておりました。
 時間も14時となり、当初幕営を予定していた比志の塒の稜線が細そうでテントを2張り張るのは厳しいのではと懸念していたこともあり、幕営に適した笠無の先あたりにしようではないかという空気が流れてきました。おそらくアッコさんなら無理をしてもいっていたでしょうが、私は運転で眠かったこともあり、1,476m三角点の笠無の横のピークに幕営することといたしました。14時半で2時間半しか歩いていませんが、明日頑張ればいいのです!一応明日向かうルートは酔っ払う前に確認しました。あっという間にテント2張り設営となり、宴会と相成りました。この時間が楽しいです。日帰りで突破することも可能な今回のルートですが、山登りというより山旅を尊重する私なので自然に身をおくこの時間が素晴らしいと思います。あれやこれやといろんな話となり完全に就寝したのは21時前くらいだったかもしれません。

気持ちのいい幕場で語らいます

【5月24日(日曜):曇りのち晴れ】
 3時起床で4時50分出発です。当初はお昼前くらいから雨が降るという予報だったので、午前中勝負だと思っておりました。まずは幕場から東方向へ鞍部に向かっております。ラクダのコブのような二つの小ピークがあり、左側の岩峰小ピークにひとまず登って景色を見てみました。
小ピークから見える八ヶ岳  八ヶ岳や樫山牧場の草原帯が見えます。そして、アッコさんが以前歩いてきたというルートも見えました。昨日アッコさんに確認したのですが、やはり今日歩くルートは8年前に当初計画していた後半ルートだったのです。アッコさんが早々に参加表明したことが納得できました。8年前はこの小ピーク下にザックをデポして笠無まで寄ったようです。でも、アッコさんが以前歩いてきたルート側を見るとかなり踏み跡が怪しくどこから来たのかよくわかりませんでした。
 岩峰を下がり、南方面への薄い踏み跡を進み比志の塒を目指します。地形図には記載されていませんが、尾根上に岩峰が多少あったりしていくつか巻きながら進みますが、全く危険因子はありませんでした。左側に目をやると茅ヶ岳や瑞牆山方面の景色がとても綺麗で気持ちがいい尾根だなあと感じました。
 岩場を抜けていくと、台地状のエリアもあり、当初稜線が狭く、幕営には不向きなのではと思っていましたが、なんとも快適なエリアでした。緩い登りの尾根を行くと1,460mPの手前の大尾根峠分岐ポイントに到着です。下降ポイントを示すテープ類がいくつか付いていました。ザックをデポして、比志の塒に向かってみます。この尾根は地形図通りでかなり細いです。眺望もない比志の塒には文字が消えてしまっている山名板と、三角点だけがあるなんとも地味なピークでした。まさしくだれにも邪魔されない鳥の寝床(塒)のような場所でした。お決まりの写真を撮り、デポエリアに戻り大尾根峠を目指します。

静寂の比志の塒で菱型ポーズ岩場がいくつかある大尾根峠へのルート

 まだ時間は6時過ぎです。なんと健康的なのでしょうか。大尾根峠へのルートはいくつかの記録を読むとこのエリアが岩場でかなり緊張すると記載があったので注意深く進みますが、こちらも展望のいい岩場が多く、多少巻きながら行きますが特に注意を払う場所はありませんでした。アカマツがかなり多く、これはあれが採れるのでは・・・。
 踏み跡を追っていくと1,170m台地で西側に方向を変えて降りていくと林道が見えてきます。林道でしばらく休憩をして、雨竜山を目指します。尾根っぽいところがあり薄い踏み跡があったので、急登をこなしてしばらく登っていくと、これまた地味な山頂の雨竜山です。一応山名板と三角点はちゃんとありました。
なんとも地味な雨竜山  その後は南へ下り、西方向へ進み、境界見出標21号の小ピークで尾根が分かれるので、地形図を出してみんなで確認します。右側の尾根(西側の尾根)が正解で地形図の林道のヘアピンカーブ側に向けて踏み跡を進みます。途中から尾根から外れてトラバースする感じで下る踏み跡があったので進むと、途中から尾根ルートから外れてトラバース気味に下降する感じとなり、林道が見えてきました。林道降り口にはお地蔵さんが静かに佇んでおりました。方面の崖などもなく無事にヘアピンカーブの少し北側の峠に降り立ちました。石仏峠と勝手に私は命名していましたが、実は峠の名前はないようで、「石仏のある峠」と命名したいと思います。
峠の目印となる石仏  峠からは分断された尾根の形状を確認してから、尾根を確認して踏み跡のない急登の尾根を無理やり登ります。1,025m台地に着くと、右側から踏跡が合わさってきます。1,025m台地からは南側に進路をとり踏み跡を追いかけながら快適に登っていきます。小ピークに出て西側に進むと、崩れかけたトタン小屋がある斑山に10時半くらいに到着しました。トタン小屋には受信機なようなものがあり、アンテナらしきものもありました。山奥の人たちがテレビを見るためにかつてはテレビ受信施設があったのではと思われます。調整するためにおそらくかなりの頻度でこのトタン小屋に来たはずです。北側からも踏み跡がありました。樹木に覆われた山頂からは景色は全く見えませんでしたが、とても清々しい気持ちでした。
期間限定しか到達できない斑山  あとは下山ですが、多くの人が訪れていたのか踏み跡がかなりしっかりしておりました。首なし地蔵、烽火台など歴史的な遺構がありました。馬頭観音がいくつかあったので、斑山へのこのルートはかなり昔から馬も通る山越えの主要街道だったようです。歴史のあるルートが好きな私にとって嬉しいルートです。
首なし地蔵 廃仏毀釈の影響でしょうか  そして992mPを過ぎて南東方向に踏み跡が伸びて、アカマツ林を通り最後は植林エリアに出て例の新しい林道にぶつかり、目の前にはばっちり成田さん車が待っておりました。予想した場所に降り立つことができました。その後は登山口にデポしているハスラー号を回収するために、成田さんと一緒に向かい、女性陣にはゆっくり待っていただくことにしました。
 そして、近くのがら空き状態のたかねの湯で入浴し、おいしい学校という施設でイタリアンランチを食し、歴史のある海岸寺を見学するという観光ツアーのような感じで午後を過ごして帰京となりました。海岸寺は石仏がたくさんありとても見応えがありました。
 しつこいようですが、今回のルートは頑張れば日帰りも可能ですが、ゆっくり自然の中で過ごす泊まり山行がやはり良いのです。ご注意を最後に。斑山界隈は秋には例の貴重なキノコがとれるので、入山が一切禁止となります。ということで、このエリアは期間限定となります。

重厚な歴史のある海岸寺山の石仏
〈コースタイム〉
【5月23日】 海岸寺峠(11:50) → 海岸寺山(12:05~10) → 笠無(14:10~20) → 笠無東小ピーク(14:30)【幕営】
【5月24日】 笠無東小ピーク(4:50) → 分岐小ピーク(4:55) → 大尾根峠分岐(5:45) → 比志の塒(5:50~6:00) → 大尾根峠分岐(6:05~15) → 大尾根峠(7:20~30) → 雨竜山(8:00) → 石仏のある峠(8:50~9:15) → 1,025mP(9:35~45)~斑山(10:35~50) → 首なし地蔵(11:05) → 新設車道(11:55)

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