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雪稜登攀・谷川岳幕岩尾根
金子 隆雄

山行日 2015年3月21日~23日
メンバー (L)金子、内田、軽部

 正月以来3ヶ月ぶりの山行でこんな所へ行っていいのかという気持ちで車を走らせる。仮眠場所の土合駅はかなり混んでいて待合室は人で一杯、風が吹き抜けて寒い改札を入った通路で寝る。いつまでも大声で話している連中が近くにいてうるさくて寝つけない。

【3月21日(土) 晴れ】
 車をベースプラザの駐車場へ移動し、動きだしたばかりのロープウェイで天神平まで上がる。雪は硬くクラストしているのでアイゼンを装着し、谷川岳を目指す大勢の登山者たちに混じって登り始める。出だしの急登を登り切って天神尾根に上がると目の前には晴れ渡った空の下に目指す幕岩尾根と俎嵓尾根が大きく展開している。熊穴沢の避難小屋はすっぽりと雪に埋まり屋根さえも出ていない。入口だけは掘り起こされていて中には入れるようだ。
 少し休憩した後、巌新道の下りにかかる。と言っても道はもちろん雪の下で影もない、自分は巌新道を通ったこともないので適当に尾根を下る。雪が緩んできているのでアイゼンからワカンに替えて駆け下る。約1時間で二俣に着いた、あっという間だ。谷川温泉から谷川沿いに歩くよりはるかに楽で時間的にも早い。
 二俣で基本的な確保方法の確認を行ってから幕岩尾根に取り付く。峭壁門のピーク手前のコルを目指して傾斜の緩い所を選んで登る。峭壁門のピークというのは 1,039mピークのことだろうと思う。他に幕岩尾根上に顕著なピークはない。峭壁門のピークの登りは急ではあるが悪い所はない、所々雪が消えて藪になっている程度だ。幕岩尾根はもっと雪がしっかり付いているかと思っていたがそうでもないようだ。
 しばらくはロープも要らずに進めたが、やがて尾根も細くなりナイフリッジ状になってきたのでロープを出す。ナイフリッジを2ピッチ行くとCルンゼのコルと思われるコルに着く。顕著なコルではないが他にそれらしい所はなかった。藪に悩まされずに来られたのはここまで、この先は藪が出ている所が多くなる。
峭壁門のピークと快適な雪稜  雪がない部分は結構厳しくロープ出しっ放しとなる。トップは全てカルベっち、老兵の出る幕ではない。Cルンゼのコルから3ピッチ目が核心部となる。正面は登れないので右から捲き気味に行くがザックが藪に引っかかってなかなか進めない。掴んだ灌木を離せばそれまでよという感じでとにかく時間がかかってしまった。どうにかナイフリッジに這い上がった時には陽は既に爼嵓の向こう側に隠れ日没が近づいていた。
 泊まれそうな所がないか先を偵察してみるが平らな所などどこにもない。やむを得ないので1時間半ほどかけてナイフリッジを削ってなんとか3人泊れるほどのスペースを作りだした。谷にはブロック雪崩の轟音が響き渡っていた。

【3月22日(日) 晴れ後吹雪】
 もっと早く出発すべきだったが出発は7時となってしまった。今日も天気が良くて幸いだ。相変わらず藪の出た細い尾根をロープを出して登る。数ピッチ登ると藪もなくなり尾根も広くなってきたのでロープをしまう。今日もかなり時間がかかっている。
 雪を付けない幕岩のAフェースを右に見ながら幕岩の頭へと続く雪面を登る。いたる所にクレバスが口を開けているのでそこを避けてジグザグに登らなければならない。
藪の出た尾根を爼嵓へと向かう  幕岩の頭で休憩後、藪の出た尾根を俎嵓へと登る。藪といっても背の低い笹薮なのでそれほどの面倒はない。俎嵓尾根に出るとオジカ沢の頭へは一旦大きく下る。下りきった所には幕営跡があった。
 20年以上前のことであるが幕岩尾根に登ったことがある。その時は幕岩の頭辺りでホワイトアウトになり何も見えず、登って行くはずなのに先に進むと下って行くのでルートが違うと思い止むなく引き返した。今思えばその時既に俎嵓へ出ていたのだろう。
 オジカ沢の頭へ着いた時にはまだ晴れていた。肩ノ小屋も見えていたので遅くなるだろうけど下山できるだろうと考えていた。すぐに暗くなりヘットランプでの歩行となる。暗くなると同時に風が吹き始め、やがて雪が降ってきて吹雪になる。近くに見えていた小屋も暗い中では歩いても歩いても登っても登っても辿り着かない。この時点で今日中の下山は諦めた。
 小屋に着いたのは20時半過ぎ、勿論他には誰もいない。携帯の電波が弱いので通話はできないがメールなら大丈夫なのでメールで下山が遅れることを連絡できたので大騒ぎにならずに済んでよかった。

【3月23日(月) 曇り視界不良】
 今日ものんびりとした出発となった。下山が遅れることは連絡がついているので慌てる必要はないのだ。天気は昨夜と変わらないような感じで視界は悪く何も見えない。肩ノ小屋辺りはだだっ広くてルートファインディングが難しいと言われているがその通りである。天神尾根を目指して下っていったが途中でGPSで確認すると西黒尾根へと向かっていることがわかり戻ってルートを探っていると旗竿が見つかり無事に天神尾根に乗ることができた。後はトレースもあり要所要所に旗竿もあるので迷うようなことはなくロープウェイ駅に着いて無事下山となった。
 幕岩尾根は雪が少ないと大変なのでもう少し早い時期、3月上旬くらいの方がいいのではないかと思う。

〈コースタイム〉
【3月21日】 天神平(7:40) → 熊穴沢避難小屋(8:40~50) → 二俣(9:50~10:20) → Cルンゼのコル(14:00) → 1260m幕場(16:30)
【3月22日】 幕場(7:00) → 幕岩の頭(15:15) → 俎嵓尾根(16:35) → オジカ沢の頭(17:50) → 肩ノ小屋(20:35)
【3月23日】 肩ノ小屋(7:10) → 天神平(9:30)

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