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山スキー・鳥海山千蛇谷
さとう あきら

山行日 2015年4月25日~27日
メンバー (L)佐藤、成田、永岡、他1名

 鳥海山は遠い。土日でも何とか行けるだろうが、登山安全のためにも余裕を持っての3日間の山行として企画した。
 金曜夜10時に飯田橋集合。早く飲みたい面々に促され、1時間も走らない東北道都賀西方PAで早速幕営宴会に突入だ。ここでの幕営はあまり目立たず、私のお気に入りの場所でもある。
中島平キャンプ場は快適  土曜日朝、タケノコ狩りをして先を急ぐ。12時過ぎ、鳥海山麓の道の駅鳥海に到着。岩がきや焼き魚で昼食。その後明日の下山口近くの中島台のキャンプ場にテントを設営する。広々としたテントサイトにはテーブルもあり快適だ。地元調達の山菜をてんぷらにし、今宵も満足で、8時就寝。
 日曜日、朝3時起床。5時前に酒田在住の均ちゃんが迎えに来た。まず彼の車を下山地となる取水口駐車場にデポ。当初予定では、祓川登山口まで私の車で行き、ここから鳥海山の新山に登頂。そして千蛇谷(せんじゃだに)を延々と滑り、デポした彼の車で祓川に戻り私の車を回収の予定だった。しかし開通したと聞いていた祓川への道路の一般車の立ち入りは、明後日以降だったことが判明。もしかしたらと一応祓川への林道入口まで行くが、やはりまだ通行止めだった。がっかり。
 仕方がないので、山頂からのスキードロップは諦め、鳥海ブルーライン経由で鉾立に登り、ここから登山道経由で千蛇谷1,800m付近に出るよう計画変更とした。
千蛇谷の大斜面が彼方へと続く  8時、ブルーラインのゲートが開き、行列を作っていた車両は一斉に鉾立を目指す。支度をして歩き出し8:45。火山特有の立木のない大斜面を登り、御浜小屋11時。鳥海山は春スキーで有名なだけあり、本当に多くの山スキーヤー・ボーダーがいる。しかし、そのほぼ全てがそのまま往路を戻る人たちだ。
 12時半、千蛇谷への唯一の下降点となる七五三掛の上部に到着。ほんの標高差50mほどだが、千蛇谷への下降は急斜面で、雪面も硬くクラストしており悪い。しかし降り立った千蛇谷は驚くほど広々としており、しかも今までの喧騒がうそのようで全くの無人だ。
 12時50分滑り出し。ザラメ雪は快適で斜面も広く傾斜も適度だ。ここ千蛇谷は鳥海山のカルデラ内に位置するもっとも長大な谷で、その左側には外輪山の火口壁が高く威圧的に覆いかぶさる。とてもこれが日本とは信じがたいような風景が広がる。しかもたっぷりの雪に覆われた谷は延々と続き、標高差1,300m、滑降距離9kmもの滑りは、遠路はるばる来た甲斐がある、十分満足できるものだった。

 1時間程滑って谷を離れ、905m台地を通過。ここから美しいブナ林の中のスラロームとなる。頭上には黄緑色の新芽が広がり、木の周囲に開いた穴を避けながら進む。通過のたびに暖まった木の幹からの春の薫りを感じ、雪面に落ちた小枝をパキパキッと踏みながら滑るのも気持ち良い。こんな無事下山を予感させるようなエンディングが、私は大好きだ。

千蛇谷中央部にて終了点近くのブナ林を進む

 14時半、いよいよ雪が途切れてしまい、獅子が鼻湿原より50mほど上部の溶岩流の舌端上でスキーを脱いだ。ここから溶岩ゴロゴロの歩きにくい廃道を10分ほど歩いて湿原の木道に降り立った。取水口にデポした車へはさらに10分ほどの歩きだった。
 その後は鉾立にデポした自車を回収し、山形道寒河江SAで幕営し、最後の祝杯を上げた。


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