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縦走・雲ノ平~黒部五郎岳
峯川 正行
渡辺 靖代

山行日 2015年8月22日~25日
メンバー (L)峯川、渡辺(靖)、天城、(井上)

【プロローグ】執筆:峯川
 いつかは訪れてみたいと思っていた高天原温泉と雲ノ平。今年こそはと思い、昨年から一緒に山を歩いている会員外の井上君(総ちゃん)と6月ぐらいから計画を立ててまいりました。総ちゃんは穗高に行きたかったのですが、4日も休みをとれるならば、雲ノ平に行こう!と無理やり穗高から雲ノ平に変更させてしまいました。そして黒部五郎岳も行ってみたかったので、今回は折立起点の周遊ルートです。二人で行くつもりではあったのですが、4月に奥多摩の鷹ノ巣山で野点山行を行ったメンバーのことを思い出し、やすよちゃんと天城さんにダメ元で声をかけてみるとOKとのこと。嬉しい限りです~。特にやすよちゃんは初めての北アで長期縦走も初めてと初めて尽くしの山行なので、多少緊張している感もありました。長期山行は4人ぐらいが安定した山行ができるのではと、楽しみに準備をしてまいりました。

【8月22日(土) 大雨】執筆:峯川
なんとも味のある有峰口駅  夏の恒例になっている、毎日あるぺん号での夏山縦走。集合場所は毎日新聞社ですが、こんな時に限って東西線がストップしてしまい、私は飯田橋駅からタクシーで竹橋に向かう羽目に。現地集合の天城さん以外の2名は、いろんな手を使って竹橋に来てくれました。まずはみんな集合でき、バスに乗り込めて一安心。一路夜行バスで有峰口に向かいますが、降ろされたところは周囲に何もないバス停。そして予想通りに雨も降りだす始末。折立行きのバスが来るまで時間があるので、有峰口の駅に避難しようと右往左往して駅を発見。あまりにレトロで私は感動してしまいました。でも通る電車は東急の車両で、あれれ~感が。しばらくまったりして、バス停に向かいバスを待っていると天城さんが乗車しているバスに乗り込むことができました。これでメンバー全員が揃って、また一安心。
 折立に到着すると、天城さんの携帯がないことが判明し、いろいろと探すが見つからないのでホテルに忘れたのでしょうということで携帯充電器は自販機の下にデポして出発です。雨模様で出だしからレインウェアを装着しての歩き出しです。今日は太郎平につけばいいので、今の小雨くらいで許してくれればと思っていたのですが、歩けば歩くほど天候が悪化してきます。最後は登山道が沢のように水が流れて落ちてきます。

沢のような登山道 みんな呆れ顔太郎平小屋で前夜祭です

 修行のような感じで3時間登り、13時半に太郎平小屋に到着です。雨がまだ降っていて、服もびしょびしょなので今日は小屋泊に変更することにして、小屋に入ることにしました。かなりの人でごった返していましたが、ちょうど4人分のスペースが残っていたようでラッキーでした。明日から天気が良くなるはずなので、自炊場で前夜祭のような感じでなかなかお見かけしない1リットルのビール缶を数本買って楽しく盛り上がりました。

【8月23日(日) 快晴】執筆:峯川
薬師沢の赤い吊橋を渡る  今日は快晴予報なので、気合を入れて4時発です。懐電歩行で薬師沢へ降りていきます。周囲が明るくなってくると、薬師沢小屋までの湿原がなんとも清々しいです。天城さんは薬師沢二俣でお仕事があったので、3名は先に薬師沢小屋でまったりすることに。この薬師沢小屋が上ノ廊下の終着点で、一週間前に妻が上がってきたんだな~と思いふけっていました。私は絶対に上ノ廊下は行けないです。収穫を持った天城さんが降りてきて、有名な赤い吊橋を渡り、高天原への大東新道を見やり、いよいよ雲ノ平に向かいます。
 樹林帯の中を黙々と登ります。550mを2時間くらいかけてじっくり登ると、湿原帯に飛び出て、いよいよ雲ノ平の末端部に到着のようです。アラスカ庭園などというおしゃれな名前はかの有名な伊藤正一さんが名付けたらしい。天気も晴れてきて、いいね~いいね~と写真を撮り合い、素晴らしい景色を眺めながら歩いて行くと、印象的な建物の雲ノ平山荘がぽつんと見えてきます。11時過ぎに雲ノ平山荘に到着です。
 数年前に建て替えたようでとても素敵な小屋です。黒部五郎岳を眺めながらのんびり過ごすことができて最高です。1時間ほど休憩し、12時過ぎにいよいよ高天原山荘を目指します。

これぞ雲ノ平!最高の天気です素敵な場所にある雲ノ平山荘 温泉行くぞ!

 私の中では、すらっと下っていけば山荘にいけるのではと思っていたのですが、梯子が連続する下降を嫌になるほど繰り返し、ようやく大東新道と合流する高天原分岐に14時過ぎに到着しました。エアリアのコースタイムと全く違います。少々厳し目の時間設定かなあと。分岐からは沢に降り立ち、少し登り返すと、素敵な湿原がありその先にとても小綺麗な高天原山荘がありました。15時過ぎに到着です。以前から段階的にリニューアルしてきたらしいのですが、今年の夏に完全リニューアルを果たし、小屋内はとても綺麗でスタッフの方も素敵な方ばかりでとても気持ちがいいです。大人数を押し込めるような小屋ではないので私好みです。今日の宿泊客はあまり多くないようで寝床もかなり余裕がありました。

素晴らしく快適な高天原山荘高天原温泉の露天風呂を満喫~

ランプのもとで食堂で宴会  まずは温泉です!数分歩けば着くだろうと思っていたのですが、沢まで結構下り、30分くらいかけてようやく河原の温泉に到着です。右岸に混浴、女性用の囲いのある露天風呂もあるのですが、結構混んでいたので、左岸の完全露天風呂に入ることに。瞬間的に何も囲いのないところで裸になりドブン!こちらの温度がちょうどいいようで、長湯になってしまいます。天気も最高で本当に贅沢な温泉です。小屋に近ければ最高なんだけど~。宴会と夕食の時間もあるのでほどほどで切り上げて小屋に登り返します。
 帰りの方がそれほど時間を感じることなく帰れました。小屋前のテーブルを占拠して、宴会&夕食となりました。暗くなってからは小屋の食堂をお借りして、まったりお酒タイムです。高天原山荘は発電機を使用せずにソーラー発電で蓄電しているので夜も静かです。食堂はランプを使っていてとても趣ある中でウィスキーをゆっくり飲むことができました。翌日も長い行程なので早めに就寝することに。

【8月24日(月) 快晴】執筆:渡辺(靖)
 3日目、2時半に起床し予定通り4時前には高天原山荘を出発、思わず振り返ってしまうくらいとても素敵な小屋でした。
 岩苔乗越へ向けて深い樹林帯に入り、真っ暗な上に慣れない岩ゴロゴロの道を水晶池への分岐を通過して1時間半ほど行きました。明るくなってくると朝日をあびた水晶岳 赤牛岳 薬師岳などの景色に言葉を取り戻しさらに緩やかに登っていきます。夜明けとともにやっと樹林帯をぬけ、遠くまで見渡せる広いお花畑を過ぎると水の流れの豊富な緩い登りになり、とても気持ちよく歩けました。この4日間、何度も変化する景色に驚きでした。
 小さな小さな沢をいくつも渡り7時半頃岩苔乗越に到着。途中水場があったのですが、沢から直接汲んだここの水が一番美味しかった様な気がしました。
 高天原、水晶岳、鷲羽岳、雲の平、黒部源流などに分岐するこの峠からは予定通り、天城さんは黒部源流へ下るルートを、私達3名は鷲羽岳へ登るルートにわかれ、三俣山荘で合流することに。ワリモ岳を通過して大きな鷲羽岳の岩岩のルートをせっせと登っていくと、意外とあっさりと山頂に着きました。

ワリモ岳から鷲羽岳を目指す三俣山荘からの鷲羽岳

メルヘンチックな黒部五郎小舎  山頂には5~6名の人がいて、360度の雲海に感動しました。4日間の周遊での最高地点です。
 鷲羽池を左手に眺望の良い稜線を下り、天城さんの待っている三俣山荘まで順調に歩きました。途中、峯川さんが「あれが黒部源流だよ」と教えてくれたり、最高のお天気に感謝です。また、この辺りには有名な黒部の山賊の舞台です。
 休憩後再び4人で次は三俣蓮華を目指します。振り返って今歩いてきた稜線を見渡すと素晴らしい景色で、「よく歩いたなぁ」と思いました。山頂直前は30分ほどのガレ場の急登、残念ながら登りきるとガスが出てきてしまいましたが、三俣蓮華は名前の通り富山 岐阜 長野の3県を分ける山で、3県をまたぎました!
 今日の行程では、あとは隣の黒部五郎の山小屋まで下るだけ。と思っていたのになかなか目的の小屋が見えて来ず・・・、ようやく見えて来たのは赤い屋根で「黒部五郎」の名に似合わないメルヘンチックでかわいらしい小屋でした。「見えてからが長いねぇ」と天城さん。それでも今日は無事、15時前と早めにテン場につくことができ、3泊目ではじめてテントを張りました。
 気温も下がり明日はお天気が下り坂とのこと。夜までの時間をゆっくり楽しく過ごし、「明日は帰るのか」と少しさびしい気もしましたが朝も早いので19時すぎ、就寝しました。

小屋前でやはり宴会

【8月25日(火) 晴れのち雨】執筆:峯川
前日の黒部源流と黒部五郎岳  いよいよ最終日です。とにかく15時までに折立には到着したいので、2時起床の3時半出発で懐電歩行です。黒部五郎岳へ向けてしばらくは樹林帯を進み、カールを目指すのでそれほど危険ではないので、ゆっくり進みます。カールで明るくなってきて、朝焼けが不気味に綺麗でした。これは午後からは天気が崩れるなあと。黒部五郎岳の岩壁を見ながらカールから一気に登っていきますが、朝日が差し込みなんとも神々しいです。稜線に到着すると、素晴らしい景色が待っていました。太郎平までの綺麗な稜線がずっと続いていました。なんとも感動的でした。
 しばらく左に進むと分岐があり、天城さんは山頂には行ったことがあるのでしばし分岐ポイントで休憩となりました。初黒部五郎岳登頂を目指す3名はザックをデポしてはしゃいで登ります。山頂からは槍ヶ岳もばっちり見えて、360度最高の展望です。まさか天気が崩れる最終日に朝だけでも晴れてくれるとは思ってもいませんでした。これまで歩いてきた稜線もすべて見えます。新穂高側に降りないでこちらに来てよかったなあと。名残惜しいですが、この後も長い稜線歩きが待っているので天城さんの元に向かいます。

太郎平までの稜線が一望360度大展望の黒部五郎岳

 分岐から一気に下りルンルン稜線歩きです。だんだんと雲が広がってきますが気持ちがいいです。なんてなだらかな気持ちのいい稜線なのでしょうか。私はギザギザ系よりこのような山容の方が好きなのかもしれません。やすよちゃんも初めての縦走で疲れている中、景色を楽しんでくれているようです。総ちゃんは淡々と写真を撮りながらクールに歩きます。
気持ちのいい稜線歩き  岩がゴツゴツした赤木岳を過ぎて行くと、赤木沢から詰めてくると思われる場所を通過して北ノ俣岳への登りを頑張り、10時に山頂到着です。ここに来るまで多くの登山者とすれ違いました。みんな太郎平から三俣蓮華か双六まで頑張るのでしょうか。私は黒部五郎小舎の静けさがとても気に入ったので、いつか逆ルートを歩く時があれば、黒部五郎小舎にまた泊まりたいと思います。
 しばし休憩して太郎平を目指すと神岡新道との分岐に出ます。このルートも帰ってから調べたのですが、かなりマニアックな避難小屋があるそうです。いつかこのルートを巡ってみたいものです。
 11時過ぎには太郎平に着くであろうと思っていたのですが、なかなか小屋が遠いのです。微妙な登り返しもあり、雨も降り出し、なかなか着きません。エアリアのこの部分のコースタイムはかなり厳しい設定のようです。途中、docomoだったら稜線でも通じるのではと思い、やすよちゃんのdocomoスマホを出していただくと電波OKでした。そこで予約してあったタクシー会社に連絡し、だいたいの折立到着時間を連絡しました。これでひとまず安心です。結局11時50分くらいに雨の中、太郎平小屋に到着です。ここから折立まで3時間かかると計算しているので、あまり時間をかけて休憩もできません。太郎ラーメン食べそこねた総ちゃん、申し訳ない!
雨が降り出す中ようやく太郎平へ  行きも帰りも雨の中の折立までのこのルート。行きのように登山道が沢になっていなかったのがせめてもの救いでした。まあ、核心の部分が晴れてくれたので全く文句はございません。最後になってやすよちゃんも足もかなり疲労が溜まってきたので、できるだけペースを抑えて下っていきます。三角点ベンチを過ぎて樹林帯を下り、アラレちゃん看板が出てくればあとひと踏ん張り。15時半に折立に到着です。
5代目アラレちゃんを見れば折立は近い  下山するといつもの富山地鉄タクシーさんのジャンボタクシーが待機しておりました。その後は、亀谷温泉の白樺ハイツで入浴しました。嬉しいことに、温泉に入っている間はタクシーはメーターを落として待ってくれるのです。富山地鉄タクシーさんは温泉施設に寄ってくれるのでいつも助かります。
 ところで、天城さんの携帯の件で、白樺ハイツで天城さんが宿泊した富山のホテルに連絡するとホテルにも携帯がないとのこと・・・。一体どこにいったのでしょうか。今回の山行で唯一心残りなのが天城さんの携帯紛失事件でした。富山のどこかにあることは確かなのですが・・・。
 1時間ほどしてまたタクシーに乗車して綺麗になった富山駅に到着です。富山駅がすっかり綺麗になっていてビックリしました。以前のごちゃごちゃした感じは全くありませんでした。そして駅ビルで富山の海の幸を食べながら楽しく打ち上げ会をして、20時前の北陸新幹線かがやきに乗車し22時過ぎには東京に帰京となりました。約2時間でついてしまうなんて素晴らしいです。
 今回はなかなか行けなかった雲ノ平を早々に総ちゃんと計画し、男2人の縦走予定でしたが、楽しく4名で天気にも恵まれて雲ノ平、高天原山荘に行けて本当に良かったです。来年は読売新道に行ってみたいなあと。

〈コースタイム〉
【8月22日】 有峰口バス停(7:05)=折立(8:05~25) → アラレちゃん(9:50) → 三角点ベンチ(10:45~55) → 五光岩ベンチ(12:30) → 太郎平小屋(13:25)[小屋素泊]
【8月23日】 太郎平小屋(4:00) → 薬師沢小屋(6:55~7:35) → 木道末端(9:50~10:00) → アラスカ庭園(10:25) → 奥日本庭園(10:55) → 雲ノ平山荘(11:15~55) → 電波塔(12:40) → 梯子エリア(13:25) → 高天原峠(13:55~14:10) → 高天原山荘(15:10)[小屋素泊]
【8月24日】 高天原山荘(3:40) → 岩苔乗越分岐(3:50) → 水晶池入口(4:40~50) → 岩苔乗越(7:15~30) → ワリモ岳分岐(7:45) → ワリモ岳(8:10) → 鷲羽岳(8:45~9:00) → 三俣山荘(10:00~35) → 三俣蓮華岳(11:30~50) → 巻道分岐(12:30) → 黒部五郎小舎(13:40)[テント泊]
【8月25日】 黒部五郎小舎(3:25) → 黒部五郎岳直下分岐(6:05) → 黒部五郎岳(6:15~30) → 直下分岐(6:35) → 赤木岳(8:55) → 北ノ俣岳(9:55~10:05) → 神岡新道分岐(10:15) → 太郎平小屋(11:45~55) → 三角点ベンチ(13:55~14:05) → アラレちゃん(14:25) → 折立(15:20)

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