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縦走・飯豊連峰
峯川 正行
宇賀持 綾子
平野 沙織
平尾 英也

山行日 2015年9月19日~22日
メンバー (CL)峯川、(SL)平野、平尾、宇賀持

【プロローグ】執筆:峯川
 雲ノ平も長年の懸案の一つでありましたが、飯豊もその一つでもありました。なかなか行くチャンスに恵まれず、いつかは~と思っていたのですが久々のシルバーウィークです。今年のはじめには飯豊連峰の縦走を企画することに決めました。7月上旬には平野さんと奥胎内ヒュッテから頼母木小屋経由で杁差岳に偵察に行ってきました。その時の小屋番の亀山さんにはお世話になりました。そして、今回の山行でも頼母木小屋では色々とお世話になることになりました。当初の案は下山後に宿泊予定の新津の旅館に車をデポさせていただき、磐越西線で野沢駅に向かい、弥平四郎を目指し、下山後は大石ダムから米坂線と羽越本線で新津に戻り車を回収という周回ルートを考えていたのですが、急遽宿に車が置けなくなったと連絡が入ったので、弥平四郎登山口まで車で行くことに変更することに。これにより歩き始めの時間も3時間ほど早くなり、初めての縦走の宇賀持さんもゆっくりとしたペースで三国小屋にたどり着けるだろうと、今のところでは万全の計画でしたが・・・。

【9月19日(土) 雨のち晴れ】執筆:宇賀持
 安積PA朝6時出発、西会津ICで下車し弥平四郎口登山口に駐車し、8時頃のスタート。20分で祓川山荘で水を汲む予定だったが、水がでていなかったので、そのまま進む。
 曇天だった空から霧雨のように雨が落ちてきた。雨具を着る。暑い。足があがらない・・・。
 十森の水場手前でウガジがリタイヤ。峯川さんの指示により祓川山荘に戻り、調整することとなった。

スルーしたはずの祓川山荘ウガジ2番手で登る

 11時、祓川山荘に到着。ウガジの下山方法を確保し、翌朝のスタート時間を変更し、山の心得、持ち物講座となりました。
 翌朝、2時起き4時スタート、日も登らぬ真っ暗闇の中、昨日と同じ道を登っていく三人の後ろ姿を見送りながら、ウガジの無謀すぎた飯豊連峰への挑戦は終わりました。峯川さん、平野さん、平尾さんには迷惑をかけて本当に申し訳ない気持ちであります。

祓川山荘に戻ってまいりました ウガジ悔しい!まだ空いている2階で早々に宴会

【9月20日(日) 曇りのち晴れ】執筆:峯川
 昨晩の祓川小屋は満員御礼で、この先一体どれだけの人が飯豊に入山するのか心配になりました。宇賀持さんは6時過ぎに弥平四郎集落に向けて下山してバス、電車を使って新津に向かうことに。もしかしたら我々が下山した後に新津で合流して一緒に帰京できる選択肢も残して、ここでお別れです。これから実質3日で杁差岳に向けて歩くことになりますが、昨日は小屋でゆっくりしたので頑張れると信じて4時過ぎから懐電で歩き出しました。昨日おきてしまったことは、宇賀持さんを無理して誘ってしまった私の責任なので、今日は挽回山行です。頑張ります。
 朝から天気が良いかと思っていたのですが、あまり良くなくて、ガスガス状態で雨もシトシト降ってくる感じです。昨日歩いたルートですが暗く、足元が濡れていて良くないので慎重に登っていきます。1時間半ほどしてようやく十森水場に到着です。祓川より綺麗な水がしっかり流れていました。湧水ではなく沢水です。もうひと頑張りして登って行くと樹林帯を抜け出します。ここが松平峠です。まだガスが抜けてくれません。ザレた尾根を登って行くと山名板などないですが、猪鼻という地点を通過します。昔のエアリアでは水場マークがあり、確かに少し下がると沢の源頭のような感じですが、枯れている感じです。あてにならないので水マークを外したのでしょう。やはりこのルートでは十森で水を汲んだほうが良さそうです。鏡山からのルートと合流する疣岩分岐に到着し、疣岩山まで進みます。三角点はありましたが、山名板などはありませんでした。ここぐらいから祓川小屋で一緒に泊まった人たちが追いついてきて抜かれていきます。頑張らないとです。なかなかガスが抜けそうで抜けない感じで三国小屋に到着です。雨も降り出し、平尾さんは残念そうです。でもナナカマドが真っ赤になっていてこの先は紅葉が楽しめそうです。昨日宿泊予定だった三国小屋の物件調査をしましたが、感じの良い小屋番さんもいて、なかなか良い小屋でした。ただ、昨晩は宿泊者が凄かったようです。逆に祓川小屋で一番乗りで場所を確保したほうが良かったかもしれません。350m缶のビールが700円で飯豊は一番安いかもです。 2連続梯子を登る 地蔵山方面からも結構人が上がってきていて、水場も今日はしっかり流れていたそうです。ただ、季節によっては枯れる時もあるそうであてにならないようです。小屋の裏にまわり切合小屋を目指します。
 ちょっと進むと梯子が二連発で出てきます。二番目の梯子から横にトラバースしないと登りにくいです。どうも三番目の梯子もあったらしいのですが、登りきったところに横たわっておりました。
 しばらく進むと紅葉が始まった尾根が大きく広がりますが、まだガスが完全に抜けてくれません。その先に切合小屋の屋根が見えてきました。ここの水場は頼母木小屋と同じように期間限定で配管を繋いでくれて水が小屋前でジャバジャバ出ています。テント場もほどほどの広さです。長めの休憩をしていると段々とガスが抜けて晴れてくるではないですか。ようやくみんなのテンションが上ってまいりました。
 ようやく陽も差してきて、飯豊にきたぞ~という気持ちになり、景色を堪能して進みます。草草履というところからの飯豊山も勇姿も素晴らしいです。

切合小屋の期間限定の水場草草履からの飯豊本山

 ちょっと怖い姥権現を過ぎると岩場の御秘所という面白い名前の岩場を通過します。雪がついているとちょっと嫌らしい岩場かもしれません。
 そこを過ぎるとびっくりするぐらい広いテントサイトがある本山小屋下に到着です。まだ時間は13時過ぎですが、平野SLが明日の朝日を飯豊山でみたいので、ここで切りましょうというご提案が。本来は御西小屋まで頑張る予定で、時間的にも15時くらいには御西小屋に到着予定でしたが、少し稜線も雲が出てきて、確かに御西までの稜線がガスっていては感動が半減するなあと。私も歩きながら本山小屋で切ってもいいかなあと思っていました。実際に着いてみて、テントサイトは飯豊山も見えて素晴らしいし、水も豊富だし。早々にテント設営です。小屋とトイレまでが太郎平のように遠く、登らなくてはいけないのが残念ポイントでした。ロング缶ビールは我々が最後で売れ切れてしまいました。良かった~。ただ1本1,000円ですが、これが飯豊価格なのです!この価格設定は飯豊に入ると麻痺するので問題なかったです。その日はテントの外で、素晴らしい景色を眺めながらのんびりできて良かったです。明日は絶対に頼母木小屋まで歩かなくてはいけないので早めに就寝です。

御秘所の岩場を通過夕日に照らされる本山小屋テントサイト

【9月21日(月) 晴れのち曇り】執筆:平野
 今日は天気が回復するということで、昨日は本山小屋で終わりにし、ハイライトを今日に持ってきた。長丁場になるが、そこまで標高差もないので、予定通り頼母木小屋を目指すことになった。5時に幕場を出発した頃から朝焼けが始まり、真っ赤な朝日が飯豊の稜線を照らし始めると、私の心も興奮してきた。30分ほど歩き体も慣れてきたころに飯豊山山頂に到着。これから歩く稜線が朝日に照らされとても綺麗!大きな尾根が雄大で飯豊の懐の広さを感じる景色だ。のんびり山頂でゆっくりしたいところだが、本日の行程は10時間強、先を急がなくてはと、歩を進める。

真っ赤な朝日に照らされる飯豊山ナウシカな草紅葉と大日岳

 大日岳の分岐までは、アップダウンもなく快適な稜線歩きが続いていく。朝日に照らされ草紅葉が黄金色に輝いている。特に御西小屋手前の草原はまさしくナウシカに出てきそうな黄金の草原。思わず「飯豊最高!」と言葉が出るほど。
 御西小屋は2008年に改築されきれいな小屋だった。こちらも昨夜は大盛況だったようで、小屋から溢れた人たちが小屋のテントやツエルトで泊ったそうだ。今回は大日岳は行けなかったが、なかなかカッコいい容姿でいつか登ってみたいと思わせる山だった。その先も赤に黄色に素晴らしい紅葉が目を楽しませてくれる。
素晴らしい秋晴れでの飯豊の稜線歩きを満喫  梅花皮小屋は飯豊の中で一番の大きさだろうか、2階建の立派な小屋だった。ここの治二清水もおいしく、冷たい水が喉をすり抜けていく。北股岳への登り返しも順調に登り、門内岳まで着くといよいよ本日のゴール頼母木小屋が近くなる。昨夜の本山小屋の状況を踏まえると、今夜の頼母木小屋も大盛況な予感。私は脚が痛くなってしまったため、お二方には幕場確保のため、先に行ってもらった。アップダウンももうほとんどなくあとはひたすら歩くのみ。やっと頼母木山に着くといよいよ小屋が目前となる。少しガスがあがってきていて白い雲の中に頼母木小屋が佇んでいたが、そこには沢山のテント。予想通り今夜の頼母木は大盛況。
 幕場もいっぱいだったが、小屋番の亀山さんの計らいで、小屋で張っていたテントを使っていいよとのこと。ジャンボテンを3人で使わせて頂いた。頼母木小屋はシーズン中は小屋まで水を引いており、ジャバジャバ冷たい水が出ている。その水で冷えたビールをありがたく頂戴し、小屋の前で夕暮れの飯豊を眺めながら晩酌。「やっぱり飯豊はいいな~」赤に黄色に染められた飯豊を歩き、すっかり魅了されてしまった。

雲の中に佇む大混雑の頼母木小屋頼母木小屋で冷えたビールで乾杯

【9月22日(火) 晴れ】執筆:平尾
 昨日から平野さんが古傷の靱帯を痛め、長時間の歩行は難しそうなので、下山ルートを当初の横内尾根~大石ダムルートから、足の松尾根~奥胎内ヒュッテルートに変更。平野さんとは後ほど大石山で合流する予定で頼母木小屋に残し、5:00に杁差岳へ2名で出発。
 本日も天気は良く、朝焼けがあたる杁差岳が綺麗に映える。杁差岳は近くに見えるが、途中に急なアップダウンが続く大石山と鉾立峰を越えなければならず、そう簡単には近づけない。
 息も絶え絶えで杁差岳山頂には6:40に到着。山頂からは今まで歩いた飯豊連峰の山々、西側は二王子岳、東側には朝日連峰がくっきり見えた。平野さんがいる頼母木小屋へは大きく手を振り、登頂の合図をしてみる。

朝焼けの杁差岳杁差岳山頂

 山頂の北東側数分の所には草原と池塘が幻想的で美しい長者平を散策。頼母木小屋の方がおっしゃるには、この長者平は保全のため、近い将来立ち入りが規制されるとのことでした。
草原と池塘が美しい長者平  杁差岳から大石山へ戻り、平野さんと9:30に合流。平野さんに山頂で手を振ったけど見えたかなと確認すると、「まったく何も感じなかった。」とつれないお答え、「そんなことより、ビッグサプライズがあります。」とのこと。なんと頼母木小屋でお留守番の間に、小屋の方々や支援をされている地元山岳会の方々と仲良くなり(手だまに取り!?)、奥胎内ヒュッテで待っていてくれれば、中条駅まで車で送ってくれるとのこと。「さすがエジ?~(平野さんの通称)」と、峯川さんと感心しきりとなりました。おかげさまで、その区間のタクシー代約8,000円が浮きました。
頼母木小屋管理人・亀山さんと平野さん  大石山から足の松尾根の下山の際には、今まで愛用していた平野さんから借りていたストック1本を返して、怪我をしている(中条駅まで送って頂ける方々とお友達の)平野さんを気遣いながら、ゆっくりと下山をする。
 なお、このストックはちょっと割高ですが、軽くて収納にも便利でして、かなりお薦めです。詳しくは平野さんへ。
 足の松尾根は、岩と松の根だけの難所が数ヵ所ありますが、予定通り12:45に取り付けに到着。取り付きからは奥胎内ヒュッテ行きのマイクロバスに乗り、約20分程度で高級ホテルの雰囲気がある奥胎内ヒュッテに到着。ヒュッテでは、中条駅まで送ってくれる頼母木小屋から下山される地元山岳会の方々を待ちながら、リラックス気分で、コーヒーを飲み、足湯につかる。
 地元山岳会の方々のご好意により、中条駅まで送っていただき、その後電車で新津駅まで移動し、駅近くの会津屋旅館で宿泊することに。宿の女将さんから梨やおはぎをご馳走いただき、家庭的なお風呂で縦走の垢を落としました。頼母木小屋、地元山岳会、会津屋旅館の皆様、ありがとうございました!!
 本日の最後は、駅前の居酒屋で、今回の天候に恵まれた飯豊連峰の縦走を、峯川さん、平野さんと振り返りながら、楽しい打ち上げをしました。

【エピローグ】執筆:峯川
 みなさんの協力のもと、おかげさまで飯豊連峰の縦走を達成することができました!宇賀持さんの初日のリタイヤ、計画していた大石ダムへ行けず完登できなかったことは残念でしたが、長期の山行なので、これはしょうがないことです。
 何にもまして、7月に平野さんと頼母木小屋と杁差岳に偵察に行ったことは無駄ではなく、頼母木小屋の亀山さんには今回も色々とお世話になりました。7月に偵察に行っていなかったら、おそらくタクシー代は・・・。
 とにかく頼母木小屋の亀山さんは今までいろんな小屋番を見てきましたが、これほど多くの人に慕われている人はいないと思います。とにかく笑顔が可愛いです。そして、飯豊のことを事細かく教えてくれました。残雪期のルートも詳しく教えていただき、来年のGWは飯豊にすることにしました。私にとって、飯豊はただの縦走ルートではなく、今後も何度も訪れるエリアになるかと思います。
 そして、宇賀持さんですが、山中で連絡が取れ、新津にご友人がいたようでその方の家に泊まらせていただき、帰りの車は一緒に帰れるとのこと。打ち上げ会には参加できませんでしたが、会津屋旅館宿泊後に新津駅で無事に再会を果たしました。その後は磐越西線の列車旅をして野沢駅経由でタクシーで弥平四郎登山口までハスラー号をピックアップして参りました。そして、サプライズが!一日遅れで入山していた森田ご夫妻からお手紙が車に挟んでありました!嬉しい限りです~。森田ご夫妻はおそらく最高の天気の中、飯豊連峰の縦走ができたことでしょう!
 また来年も飯豊に来ます!よろしくお願いいたします。

杁差小屋と歩いてきた飯豊の素晴らしい稜線杁差岳山頂にて 本当は4人でたどり着きたかった~
〈コースタイム〉
【9月19日】 弥平四郎登山口(8:10) → 祓川山荘(8:25) → 引き返し点(10:15) → 祓川山荘(11:10) [小屋素泊]
【9月20日】 祓川山荘(4:10) → 十森水場(5:45~55) → 松平峠(6:20) → 疣岩分岐(7:20) → 疣岩山(7:35~55) → 三国小屋(8:40~55) → 梯子エリア(9:10) → 七森(9:30) → 種蒔山(10:10) → 切合小屋(10:30~11:05) → 草草履(11:35) → 姥権現(12:10) → 本山小屋テントサイト(13:10) [テント泊]
【9月21日】 本山小屋テントサイト(5:00) → 本山小屋(5:10) → 飯豊山(5:25) → 御西岳(6:20) → 御西小屋(6:30~50) → 天狗の庭(7:25) → 御手洗池(8:00~10) → 烏帽子岳(9:15~35) → 梅花皮岳(9:55) → 梅花皮小屋(10:25~45) → 北股岳(11:10) → 門内岳(12:20) → 門内小屋(12:25) → 胎内山(12:50) → 扇ノ地紙(13:00) → 地神山南峰(13:25~35) → 地神山北峰(13:50) → 頼母木山(14:10) → 頼母木小屋(14:40)[テント泊]
【9月22日】 頼母木小屋(5:00) → 大石山(5:20) → 鉾立山(6:05~15) → 杁差小屋(6:40) → 杁差岳(6:40~50) → 長者平(7:00~10) → 杁差小屋(7:30~40) → 大石山(8:55~9:25) → 水場分岐(10:20~30) → 姫子の峰(11:45~55) → 足の松尾根登山口(12:45~13:00)=奥胎内ヒュッテ(13:20)

〈諸経費〉
【テント代】
 本山小屋:500円/人
 頼母木小屋:500円/人
【電車】
 新発田駅⇒新津駅(羽越本線):500円
 新津駅⇒野沢駅(磐越西線):1,140円
【タクシー:会津交通】
 野沢駅⇒弥平四郎登山口:9,620円 (最終日・車ピックアップにて)


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