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沢登り・黒部川上ノ廊下~赤木沢
荻原 健一

山行日 2015年8月11~16日
メンバー (L)荻原、永岡、和田、軽部、内田

 上ノ廊下は2014年も企画したが、お盆前後に上ノ廊下に入ったパーティーは悪天候と増水で我々も含めた全パーティーが敗退。1年を通しても3パーティーしか遡行に成功していない(薬師小屋情報)。
 今年こそはとの思いは強く、昨年メンバーを中心に精鋭5人で再度挑戦することになった。

【8月11日】 晴れ
平ノ渡 渡し船  前夜発(新宿)のバスで早朝5時頃に扇沢に到着。トローリーバスの始発は7:30なので少々時間が空く。黒部ダムに到着したのが8時で平の小屋までのコースタイムが4時間。平の小屋12時発の渡し船に乗る予定なので少々忙しい。渡し船に乗り、平ノ渡場に到着するとようやく時間の束縛から解放される。
 ここからゆっくり2時間ほどで奥黒部ヒュッテに到着。ヒュッテで計画書を提出し水量などについて情報を聞くと、「今年は水量が多かったが、最近は晴れっぱなしなので落ち着いてるかもしれない」ということで、多いのか少ないのか良くわからない。とりあえず時間もまだ早いのと、13日から天気が崩れそうなので少しでも先に進もうということで上ノ廊下に入渓する。昨年は入渓直後から徒渉に難渋し、5人スクラムでも何度か流されそうになり「これが上ノ廊下なのか」と厳しさを思い知らされる感じであったが、今年は昨年と比べると楽勝で進める。1時間ほど歩いた広河原の適当なところを本日の幕場とする。

【8月12日】 晴れ時々曇り
 明日から天気が崩れる予定なので今日は早めの出発とする。昨年に比べると随分楽ではあるが、下ノ黒ビンガでは早くも飛び込んでの泳ぎ徒渉が始まり、その後もすぐに高巻き・懸垂などを強いられ決して水量が少ないという感じではない。(平水時なら下ノ黒ビンガはスクラム徒渉で十分渡れる)しばらく行くと核心の口元のタル沢先のゴルジュとなるが、こちらも昨年よりは少ないものの、川幅いっぱいに激流となって流れており、とても人が泳いで突破できるような水量ではない。一目見て高巻きを選択し、昨年とは逆の左岸からの高巻きを選択する。高巻きルートについては事前にかなり記録を調べていたが、左岸の方が人が入っており時間も短いこと、そして水量が多い場合右岸から高巻くとその後の最初の徒渉が困難となり、過去に事故も起きていることから、その徒渉を省略できる方を一番に優先した。結果として危険度は同程度と感じたが、時間は右岸が昨年3時間かかったのに対して左岸は2時間程度、右岸の懸垂が2回に対し、左岸は0回、その後の危険な渡渉も左岸は無いので適正なルート選択ができたと思う。その後は穏やかな広河原となり、廊下沢、スゴ沢の出合を見送ると上ノ黒ビンガに突入する。

上ノ黒ビンガを行く上ノ黒ビンガの美瀑

 威圧的な大岩壁が現れ、かつてのクライマーが何度も通ってルートを開拓したという歴史に思いを馳せながら進む。途中、右手に花崗岩を流れ落ちる美瀑が素晴らしい。やがて本日の幕場予定地である金作谷出合に到着し、まだ早かったので焚火と釣りを十分に満喫する。

【8月13日】 雨時々曇りと一時晴れ
金作谷先のゴルジュ  昨夜から雨が降り始め本日も朝から雨だ。少々増水もしており、早いところ立石まで行きたいところだ。金作谷出合の先のゴルジュは後半戦の核心となるが、泳ぎが得意なメンバーが多いので積極的にどんどん泳いで突破して行く。
 最後の関門となるスゴ淵は過去の記録の写真と比べても水量が多く、左岸から行くと右岸への徒渉が不可能だ。KGが泳ぎとヘツリで右岸より突破してくれる。このあたりから天気は晴れてきてメンバーの顔も明るい。やがて立石(岩苔小谷との出合)に到着し、上ノ廊下も終盤戦となる。立石奇岩手前の最後の悪場は通常飛び込み泳ぎで突破可能だが、水量多く無理なので高巻く。踏み跡は比較的しっかりしている。懸垂で川底に降りると穏やかな河原歩きとなる。すぐに立石奇岩が現れるがスケールはあまり大きくない。
立石奇岩  天気が一時的に回復してお日様が出てきたので、しばらく釣り糸を垂れながらゆっくり進む。KGのテンカラ初釣果で盛り上がったところで、また雨が降り出し本降りとなる。雨はますます激しくなり、焚火なしタープだと寂しい夜になりそうなので頑張って薬師沢小屋まで行くことにする。A~E沢付近では濁流となり、水は真っ茶々で水深が分からない。懸垂を2回交えてロープ徒渉1回でようやく登山道のあるB沢出合に辿り着く。あとは登山道を1時間ほど、最後は暗くなって小屋に到着、長い一日だった。

【8月14日】 終日雨
 今日は終日雨なので小屋で停滞。トランプで盛り上がった。

【8月15日】 終日晴れ
 今日は昨日と打って変わって朝から最高の天気。キラキラに輝く赤木沢を存分に楽しむ。北アルプスの“宝石”とは良く言ったものだ。岩魚も面白いほど釣れる。詰めのお花畑と森林限界から上の景色も素晴らしかった。

赤木沢の美爆群の一つお花畑の詰め

【8月16日】 晴れ
 薬師峠から太郎平小屋を経て折立へ下山。

(リーダーから一言)
 昨年からの宿題だった上ノ廊下を最高のメンバーとチームワークでとても楽しく遡行できました。メンバーの皆さんに心から感謝です。

〈コースタイム〉
【8月11日】 黒部ダム(8:00) → 奥黒部ヒュッテ(15:00) → 幕場(16:30)
【8月12日】 幕場(5:30) → 廊下沢出合(11:00) → 上ノ黒ビンガ入口(12:30) → 金作谷出合幕場(14:30)
【8月13日】 幕場(6:20) → スゴ淵を越えた所(9:30) → 立石(10:45)~立石奇岩(13:00) → 登山道出合(17:30) → 薬師沢小屋(19:15)
【8月14日】 終日停滞
【8月15日】 小屋(4:40) → 赤木沢出合(6:00) → 稜線(12:00) → 薬師峠(15:30)
【8月16日】 幕場(4:30) → 折立(7:45)

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