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沢登り・和賀川源流~高下岳
金子 隆雄

山行日 2015年9月19日~23日
メンバー (L)金子、飯塚、高木、大田

 高下登山口から和賀岳へ至る登山道が和賀川を渡る渡渉点から上流が和賀川の源流部になる。溯行記録を探してみても全く見つからず釣りに関するものしか見つからない。沢登りとして捉えられないほどの沢なのだろうと思われる。実際行ってみて確かにそうだった。だが、いつかこの沢を辿って高下岳に立ってみたいと思っていたので例会山行として計画したのだった。今回のコンセプトは、「厳しいことはやらない、ゆる~く行こう」だ。

【9月19日】 曇り後雨
 前夜、東川口駅に集合し安達太良SAでSAビバーク。天気予報では今日は悪天だが明日から良くなるので登山活動は明日からにすることにしてのんびりと出発する。秋田自動車道の湯田ICで高速を降りる。行動食が足りないと言うヨーコのためにコンビニを探すがいくら車を走らせてもコンビニはない。目についた商店でおにぎりを作ってもらい車に乗り込むと早速おにぎりにかぶりつくヨーコ、おいおい今食うんかい。
舞茸を見つけてしまいました  高下林道に入り少し行くと栗が沢山落ちていたので少し拾っていく。高下林道は崩れている所もなく登山口まで入ることができた。登山口周辺には泊まるのに適した場所がなかったので戻って幕営できる場所を探す。高下川との高低差が少なくなった辺りに川へ下っている道があったので入ってみるとどん詰まりに広くて平らな場所があったので今日はそこに泊まることにした。
 テントとタープを張り終え焚き木を集めているときに偶然にも舞茸を見つけてしまった。大御所ともなれば探していなくても見つけてしまうものらしい。思いがけない収穫に大喜びでこの夜は舞茸の天ぷらを美味しくいただきました。途中で拾ってきた栗は焚き火に放り込んで焼き栗にする。
 夕方から降り出した雨は朝まで降り続いた。

【9月20日】 晴れ
 明け方目を覚ますとまだ雨が降り続いていた。今日もダメかなともう一寝入りする。7時前には雨が止んだので起きだす。目の前の高下川は濁りもなく増水もしていないので和賀川も大丈夫だろうと予想する。撤収が終わった頃には青空も広がり始め絶好の沢日和になってきていた。
 車で登山口まで移動、登山口奥の駐車スペースはもう車でいっぱいだ。ほとんどが地元のキノコ採りのようだ。
 登山口から30分の急登で赤沢分岐に着く。分岐とは言っても赤沢への道は既に廃道で見つけることは難しい。赤沢分岐からはしばらく緩く登って行く。高下分岐で高下岳への道と別れて和賀岳への道を辿る。トラバース道が終わると一気に下って渡渉点に至る。
和賀川の渡渉点 ここから溯行が始まる  ここから和賀川の遡行が始まる。和賀川は直ぐにゴルジュっぽくなる。ゴルジュと言っても大したことはない。滝や淵などはなく流れは速いが膝上程度で通過できた。入渓直後のゴルジュっぽい所を過ぎると後はもう何もない平瀬が続くだけとなる。
 溯行を開始してからまだ1時間しか経っていないが標高770m付近に開けて少し高くなった幕場に良さそうな所があったので今日の行動は終わりとする。少し整地をしてタープを張り終えても暗くなるまで時間はたっぷりあるので釣りに出かける。岩魚は沢山いるようで4人で食べるには十分なだけ釣り上げて戻る。
 薪を集めて焚き火を起こし冷やしておいたビールで乾杯。岩魚は天ぷらとなめろうにしていただく。焚き火もよく燃えて今日もいい一日だった。

【9月21日】 晴れ
二つ目、三つ目の滝 滝はこれでお終い  今日も天気は良好で朝から青空が広がっている。急ぐ必要もないのでのんびりと仕度して幕場を出る。和賀川は相変わらず何もない平瀬が続く。標高830m辺りでようやく3mほどの滝が現れる。この滝を簡単に越えて少し行くと二つ続けて滝が出てくる。さっきの滝よりは大きいがこれも簡単で一つ目は右から二つ目は左から容易に越えられる。滝はこれだけでその先にはもう滝はなかった。 何というゆるい沢なんだろう。
 出発して1時間も経っていなかったがヨーコが足を滑らして膝を打ってしまった。幸い少し休んだら歩けるようになったが、これを口実にしてもう1泊していくことにした。せっかくこんな遠くまで来たのだからさっさと下山してしまうのは勿体無い。食糧は2日分持ってきているので大丈夫だ。これで明日溯行することを予定していた高下川はなくなったがまたの機会があるさ。
 泊まれそうな場所はいくらでもあるので薪の多い所を選んでタープを張る。後は釣り三昧、キノコ三昧で一日を過ごす。夜は星空の下で盛大な焚き火と岩魚料理とキノコ料理を味わう。

【9月22日】 晴れ
 今日はそんなにのんびりはしていられない。今日は早めに(とは言っても7時を過ぎていたが)出発する。出発して間もなく左岸より水量の多い枝沢が出合ってくる。更に30分ほどで二俣となる。右は荒れた感じのゴーロで高度上げており、左は細いが苔むしたしっとりした感じの沢だ。ここは右俣へ進路を取る。
巨岩のゴーロ帯で高度を上げていくと和賀岳から朝日岳へと続く稜線がかなり近づいてきた。何かおかしい。高下岳へ上がるルートとして考えていたのは標高1,000mくらいで左岸から出合う枝沢を詰めて高下岳の直下に出るというものだったので反対側の稜線に近づくはずはないのだ。ルートを確認すると目的の沢はとっくに過ぎていて本流をかなり上まで登ってしまっていた。反対側の稜線に上がっても稜線上の道は廃道で和賀岳までは長時間の藪漕ぎになってしまう。時間的にはまだ余裕があるので戻ることにする。
 1時間ほど下降して目的の枝沢の出合に着いた。そこは幕場を出て最初に出合った沢だった。出合の滑滝を越えてナメを少し行くと急に沢幅が狭まりゴルジュとなる。ゴルジュの中をしばらく進むと深い瀞の先に7~8mくらいの滝が見えてくる。沢が右に曲がっていて登れそうなのかどうかはよくわからない。その前にこの深い瀞を越えなければ滝に近づけない。両岸ともツルツルだがオオマサがヘツリに挑戦する。が、あえなくドボン。こりゃ泳がないと無理そうだ。泳いで越えられたとしてもその先の滝が登れるとは限らない。今回のコンセプトに反するということで引き返して本流を忠実に詰めることにする。
紅葉の始まった稜線を歩く  本流は源頭で小滝が出てくるくらいで厳しい所は全くない。水が涸れてから30分くらいの藪漕ぎで根菅岳の少し下の登山道に出た。
 稜線上はもう紅葉が始まっていて青空の下に広がる赤や黄色の絨毯が見事だ。ちょっとの登りで根菅岳に着く。ここから先の道は刈払いされたばかりで広くなっていて歩き易くなっていた。高下岳からはキノコを探しながら下る。登山道脇にはダケカンバの巨木もある。和賀山塊には日本一と言われるブナの巨木や日本第二の栗の巨木などもあり和賀山塊は巨樹の森なのだ。何度来てもいい所だ。登山口には17:00に到着。帰るのは明日でいいので初日に泊まった場所に今日も泊まることにする。食糧も酒も車に沢山残っているので今宵も大宴会だ。

〈コースタイム〉
【9月20日】 登山口発(8:45) → 赤沢分岐(9:15~25) → 高下分岐(9:55) → 和賀川渡渉点(10:30~11:00) → 770m幕場(12:00)
【9月21日】 ほとんど動いていないため割愛
【9月22日】 幕場発(7:05) → 登山道(13:15) → 高下岳(14:25) → 登山口(17:00)

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