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雪稜登攀・阿弥陀岳南稜
山蔦 隆宏

山行日 2016年1月23日~24日
メンバー (L)山蔦、内田、YUKI、宮本

 ようやく寒波が入り今年も雪稜シーズンがやってきました! 昨年、悪天候によりP3ガリー手前で敗退の補習山行の阿弥陀南稜です。コースは昨年計画と同じ旭小屋経由でP1-P2のコルで幕を張り下降は御小屋尾根を予定して入山です。サブリーダーにうっちー、久しぶりのYUKIちゃん、雪稜デビューの宮本ちゃんの4人で挑戦となりました。
 年に何度もない寒波が西日本に入り南岸低気圧と日本海にも弱い低気圧が・・・関東は雪の予報となり天候によっては2年連続の敗退も覚悟で臨みましたが頼みのイノクマ予報はそれほどでもなく日曜も午前中は持ちそう、天候悪化には十分気をつけて出発です。
 人気の南稜、ラッセルはないのではと思っていましたが、意外や意外舟山十字路まではアイスのトレースが付いていたものの1日目のテン場まで終始軽いラッセルとなりシーズン初めの良いトレーニングとなりました。自分達でトレースを付けるのはやっぱり気持ち良い!うっちー大活躍。
 旭小屋の裏手から南稜に取付くのですが少しルートが分かり難くリーダー右往左往、結局、大きく左に回り込んでから1,920m峰コルのやや向かって右寄りの尾根から上がりました。上がってからは終始、ダラダラとした登りが2,370mの立場山まで続きます。ここで雪稜デビューの緊張と冬山装備の重さから宮本ちゃんの腰が悲鳴を上げペースダウン。易きに流れるリーダーはこの日のテン場をP1,P2のコルから青ナギに早々と変更し共装を再配分、今夜の宿の青ナギに急行しました。雪稜とは思えない長い宴会を楽しみました。雪も風も問題なく予報も日曜午前は良好!腰を心配しつつ20時過ぎには就寝。明日は4時半起きだ。
 翌朝、宮本ちゃんが雉打ちをしていると、後発パーティが!しまった、出遅れた。今週の南稜はやはり貸し切りでなかった。渋滞にならなければ良いとの心配とラッセルが軽くなるとの怠け心が同時に首をもたげる。予定より45分遅れて出発した。
 その後無名峰、P1と高度を上げるに従って徐々に風が強くなり完全装備に身を包んだメンバーは先行パーティを追った、追った。P2でようやく先行パーティに追いついたがどうも彼らは引き返して来るようだ。風を心配してとのこと。確かにいつもの強風だが引き返すほどとも思えないが念のため「引き返す?」と4人に確認。女性2人は「行こう!」と即答。これでリーダーも覚悟が決まった。
 P3ガリー取付きまではP3基部の左側をトラバースしながら回り込む。雪も足元も安定している。取付きのワイヤーとリングボルトを支点にロープをつなぎダブルアックスで登攀開始、さあ核心だ。下準備でも分かっていたことだがやはり中間支点はない。雪が付いているが幸い雪の下の岩や氷にアイゼンの前爪やバイルが掛かるので問題ない。ガシガシと登ること暫し40mほど上がったルンゼ中央の一抱えほどの岩に一本のリングボルトが見えた。支点が見えたとたんにランナウトが怖くなる。ここから急に慎重に這い上がった。登攀というよりは雪が多く急斜面のラッセルに近い感覚だった。バイルでバックアップを取りロープを固定、笛を思いっきり吹いて後続を待った。あの風で40m離れたら声なんて届きません。ホイッスル必携です。寒い寒いと足踏みしながら後続を待つと宮本っちゃん、うっちー、YUKIちゃんの順に上がって来ました。中間はロープマン、最後はATCガイドを使いセカンドビレーで確保。そのままやや左に直上し岩と草付きのミックス帯を超えるとP3を超えていました。
 その後P4は左側の岩場をトラバースしルンゼを直上し突破。P4の次の岩場が現れ、直上は無理。左は長めのトラバース、右は短めのトラバースどちらも雪が付いており少し嫌な感じがしたが結局うっちーと相談して右を選んだ。見た目には嫌なトラバースも足を出せばしっかりとした足場があって無事通過。一登りするとそこは見慣れた阿弥陀岳山頂だった。うっち―、宮本ちゃん、YUKIちゃんの順に登頂!

強風の山頂直下を行く宮本!強風の阿弥陀岳山頂

 その後、腰の状況も鑑みて小屋のない御小屋尾根ではなく中岳沢から行者小屋、南沢で下山した。P3から先はトレースもなく雪のお陰で簡単なルートファインディングも楽しむことができた。簡単な登攀、ラッセル、ルーファイ、強風に寒さ雪稜の魅力と厳しさがギュッと詰まった充実の山行になりました。一緒に行ってくれた皆さん、とても楽しかったです。また行きましょう!

山頂からの南稜上部
〈コースタイム〉
【1月23日 曇り】 舟山十字路(7:00) → 旭小屋(8:50) → 青ナギ(13:15)
【1月24日 曇り時々雪】 青ナギ(7:45) → P3取付き(10:00) → 阿弥陀岳(12:00) → 行者小屋(14:00) → 美濃戸口(16:45)

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