山行日 2015年12月29日~2016年1月1日
メンバー (L)鈴木(章)、(SL)峯川、深谷、成田、平尾、津田
【プロローグ】
11月末の鹿ノ子池の例会の際に、アッコさんから正月は成田さんと安倍奥縦走するかもという話が焚火を囲みながら出たのでした。当初は、奥秩父の笠取小屋での年越しパーティーに昨年に続き参加しようかと思っていましたが、「安倍奥」というフレーズを耳にしてしまい、また私自身も歩きたいルートであったので、心は安倍奥に動いてしまいました。そして、アッコさんに下山後の温泉宿泊まりをリクエストしました。以前アッコさんが2年前の2月の大雪の際に行ったコンヤ温泉・大野木荘に泊まりたい衝動が・・・。正月山行+温泉泊まりというプランは相当魅力的だったようで、あれよあれよと人が集まり6名での楽しいメンバーでの山行となりました。
【12月29日(火) 晴れ】
今年は暖冬の影響なのか雪がどこも少ないです。安倍奥も同様です。1年前に山伏に行った時は、いい感じに雪があったのであのイメージだったのですが・・・。
一抹の不安を抱えながら駒込駅でちあきさん号とハスラー号2台出発し、新東名を経由で新静岡IC下車。コンビニに寄り、梅ヶ島温泉の黄金の湯でジャンボテントを設営し仮眠しました。ここはトイレもあり、ありがたく使わせていただきました。
翌朝はゆっくり6時過ぎに起床し、ちあきさん号を下山予定の十枚山登山口下の空き地にデポして、山伏登山口にまた戻り登り始めです。少し林道を登って行くと橋があり、その先に「山火事用心」の赤い横断幕が掲げてあります。そこが山伏登山口となります。古いモノレールが最初から並走しますが、おそらくワサビ田からのモノレールかと思います。いくつかのワサビ田を見ながら雪のない登山道を登っていきます。小さな枝に支えられている演出がされている大岩の脇を通り、美味しい水が湧き出ている水場で喉を潤しました。ベンチがある蓬峠には10時半過ぎに到着です。本来ならばこの先は北面で雪が多くアイゼンを装着すべきなのですが、全く雪がありません。なんともぽかぽか陽気で眠くなります。
ここからの登りは初日の重いザックには堪えますが、時間もあるのでゆっくり登ります。そして、先月の例会でも通過した山伏小屋への分岐ポイントである西日陰沢分岐には12時半過ぎに到着です。なんとかうっすら雪が積もっている状態です。ここでザックをデポして山伏小屋まで下り各自水を確保です。水は凍結せずにしっかり流れておりました。幕場は景色も良いので山伏山頂となりました。雪がほとんどかぶっていない富士山を綺麗に眺めることができました。私は3回目の山伏で初めて富士山を拝むことができました。時間もあり、雪が少しあったので一袋の雪袋分だけ雪を溶かして水を作りました。今宵の晩ご飯はちあきさん作、きりたんぽ鍋でした。とても美味しかったです。
【12月30日(水) 晴れのち曇り】
今日は雪の具合でどこまで歩くかが決まる感じです。明るくなり6時半出発で山伏から雪を踏みながら朝日に照らされる富士山とこの後歩くことになる安倍奥東稜を眺めながら気持よく進みますが、しばらくすると雪がなくなってきました。
新窪乗越についたときに、おそらく八紘嶺も雪はないと悟り、当初の幕営予定だった八紘嶺は通過し、水が確保できる安倍峠まで進むということがほぼ確定となりました。八紘嶺側から来る単独の登山者に雪の状況を聞くと、まさにそのとおりでした。
迫力のあるザレが眺められる大谷崩を過ぎ、しばらく登って行くと大谷嶺(行田山)に到着し360度の大展望を楽しみました。
ただ残念なのが山伏でもあった、山名紛争です。山梨の早川町側では行田山と言うらしく、そして静岡側は大谷嶺というらしいです。お互い譲らないのか行田山と書かれた立派な標識をわざわざ消して大谷嶺と手掘りをしているのです。恐ろしい執念です。そこまで意地を張る必要があるのかなんとも疑問です。山名は二つあっても山はいつまでも一つなのですから張り合わなくていいのでは・・・。赤石岳や聖岳などの南アルプスの素晴らしい景色を堪能し、八紘嶺を目指します。
年末とは思えない、ぽかぽか陽気で足取りも軽く、12時前に八紘嶺に到着です。私は昨年5月一人温泉旅で訪れた以来で山頂の雰囲気は全く同じ感じです。アッコさんは昨年1月の七面山の宿坊山行以来で、そのときはたっぷり雪がありワカンで八紘嶺にたどり着いたようです。昨年の正月とは全く状況が違うようです。
ここで今日の幕営は安倍峠にすることが正式決定となりました。私は5月に安倍峠の安倍川源頭部を確認していたので水のことはあまり心配していませんでした。安倍峠までのルートも全く雪はなく、梅ヶ島温泉と安倍川を一望することができます。私が個人的な大好きな温泉宿、よしとみ荘の赤い屋根も見えました。明日の朝一の急登が予想されるバラの段が目に入ります。あちらの稜線もやはり雪がなさそうです。
林道に出ると工事中の公衆トイレがあり、そのまま林道を登るとゲートがあり、横を通り抜けてしばらく歩くと右側に安倍峠を示す案内があるのでそれに従って降りると安倍峠に到着です。先ほど歩いていて気になったのが、昨年5月に安倍峠に来て安倍川源頭部の位置がわかっていて林道から眺めることができたのですが、なんか白いものが見えるのです!もしかしたら凍結しているか、枯れていて霜柱になっているのではと思い多少焦りを感じ、安倍峠についた途端にザックを投げ捨て安倍川源頭部側に走って確認しにいきました。昨年5月の際に見届けた源頭部分は見事に水が枯れていて、これはかなり下がっていかないとないのではと思ったのですが、少し下に下がると水が流れだしておりました。片道7分くらいですんで助かりました。ホッとしてみんなが待機している安倍峠に戻ると、もしここで水が取れなかった場合を考えてすでに会議をしておりました。水があって良かったです!というか雪があれば何の心配もいらないのですけどね~。お水取り班とテント設営班に別れて手際よく幕営準備完了となりました。この安倍峠の峠レベルは非常に高いです。お地蔵さんもあり、林道工事での破壊などもなく昔のままの峠の風景が残っておりました。5月に訪れたときは、いつかここで幕営をするのではと思い、水場を確認したのでした。まさかこんな早くに幕営することになるとは・・・。その夜も楽しく過ぎて行きました。
【12月31日(木) 曇のち晴れ】
今日は大晦日です。本日の予定目的地は十枚山近くまでということになります。今日も6時半出発です。今日は雪がほぼないことを覚悟して各自水を担ぎあげることとなりました。これは致し方ないです。安倍峠のお地蔵様に挨拶をして登り出します。まずはバラの段への朝一の急登アルバイトです。ここも雪はほぼなく霧氷から落ちた粉雪がついているくらいです。急な登りにはトラロープがついています。小ピークを越えて鞍部を抜けてひと登りすると三角点があるバラの段に到着です。狭い山頂でした。なんとも興味深い山名です。
ワサビ沢の頭までのルートも東側が崩壊していたり、急な登りがあったりとなかなか大変です。8時過ぎに広く平らな笹原のワサビ沢の頭に到着して長めの休憩をとりました。ここから先はアップダウンがないのんびりハイクで安倍奥東稜をゆっくり堪能できそうです。一面笹原ののどかなルートですが、本来ならば程々の雪原をルンルン気分で歩いていたことでしょう。でも、この風景も好きですし、また雪があるときの楽しみにしておけばよいのです。安倍大滝への分岐ポイントも確認できました。ここを下ると例のお気に入りの梅ヶ島温泉のよしとみ荘に降りることが可能です。その先は奥大光山ですが、「おおひかり」ではなく「おおぴかり」もしくは「おおっぴかり」と呼ぶようです。以前梅ヶ島温泉に泊まった時に女将さんに教わりました。なんともかわいい名前です。しばらく南下すると10時半前に大光山に到着です。
ここで方向を南東方向に変えます。草木集落への下山ルートも確認できました。十枚山も目の前のドンと聳えて確認できましたが、手前にも少ピークがあり、まだまだ時間がかかりそうです。そして晴天の中、安倍奥東稜の山々がいくつも連なっており、近い将来すべての東稜のルートを歩きたい気持ちとなりました。下っていくと、かつての峠路であったことを思わせるお地蔵様がある刈安峠に到着です。とても良い風情です。
少し進むと黒崩という大規模なガレ場がありました。東側が相当崩れていて、西側を迂回して進みます。どうも安倍奥東稜は東側が脆いようで、かなりの箇所で崩壊が進んでいました。
鞍部からの1,632mPへの登りはかなり急でしたが、1,632mP付近になると笹原のなだらかなエリアとなりました。少し進むと十枚山に到着です。平な山頂で単独の男性がうどんを食べていました。鐘があり除夜の鐘のつもりでみんな鳴らしていました。十枚山からの富士山も素晴らしいですが、私はここから南側に続く安倍奥東稜の果てしなく続く尾根にとても感銘を受けました。ピークから伸びる支尾根が何重にも連なっているのがとても印象的でした。
予定ではこの平坦な十枚山山頂に幕営でしたが、今日は風がとても強く、また時間も早いので少し目立たないところを探すこととなりました。少し戻ったところに、これぞ!という場所があったので物件確認をすると少し傾いていましたがよしとなり、設営となりました。今日は水を各自2リットル以上担いでいるのでどこで幕営しても問題なかったのです。水場は稜線近くにはなかったので担ぎあげて正解でした。夕食はアッコさん作のパエリアですが、初めて山でパエリア食べましたがとても美味しかったです。水の分量が非常に難しいのですが、アッコさんパエリアは完璧でございました。その夜は明日は無事に下山できそうだという安心感もあり、皆さん大フィーバーでした。お酒も飲み尽くして、ラジオで紅白歌合戦が始まったぐらいで早めの就寝となりました。
【1月1日(金) 晴れ】
本日はゆっくり6時半の起床です。いつもと違うのは起きた途端に初日の出を十枚山から拝むということです。ひと登りして十枚山山頂にたどり着くと、素晴らしい初日の出が迎えてくれました。風もなく、これが正月の山なのかと疑うぐらいの静かな元旦となりました。三峰山行での「あけましておめでとうございます!」は私にとっては何年ぶりでしょうか。
初日の出に照らされる駿河湾と富士山をたくさん写真に収めることができました。みんなで記念撮影などをして、一旦テントに戻り、峯川担当のお雑煮をつくり、朝からお腹いっぱいとなりました。
テントを撤収してゆっくり9時出発。十枚山でまたまた素晴らしい景色を堪能して十枚峠まで降りていきます。下ると水場があるので幕営候補地だった十枚峠ですが、やはりジャンボテントを張るには狭かったです。ソロテン、2~3人テンならば大丈夫かもです。十枚峠はすべてのルートが廃道になっておらず現役で十字クロスをしていています。しつこいようですが、峠レベルは高いかと思います。十枚峠にザックをデポして、下十枚山に向かいます。
山頂はあまり展望がよくないですが、この先の南側のルートは近い将来歩きたいと思います。
十枚峠に戻り、時間は早いですが気持ちが今宵の温泉宿にみんな向いておりました。水場がある三の沢ところまで一気に十枚峠まで降りていきますが、結構距離がありました。昨日各自水を担ぎあげなければ、ここまで降りて登り返さなければいけなかったのですが、なかなか大変だったと思います。
沢を幾つか跨ぎながら進むと十枚山直登ルートに合流しますが、我々が降りてきたルートには通行禁止の札がかかっていました。確かに沢沿いのトラバースルートは崩壊している箇所もあったのであまり多くの人が入らないほうがよいかもしれません。
あとは惰性で降りていくと十枚山登山口を通り、茶畑が見えてきます。しかしここからが長かったです。つづら折りの茶畑林道を嫌というほど降りていきますが、ちあきさん号がなかなか見えてきません。間違えて降りてきてしまったのではと錯覚するほどかなり降りていくと、ようやくちあきさんの車が見えました。かなりホッとしました。私とちあきさんはハスラー号を回収するためにスタート地点の山伏登山口まで行き、みなさんは待っているのも寒いので、国道までのんびり歩いてもらって、我々が戻る頃に国道のバス停で無事にピックアップとなりました。
全員乗車したら、一路コンヤ温泉大野木荘へ直行です。宿に連絡を入れて14時くらいにチェックインできるようにお願いもしたので安心して向かうことができました。アッコさんも以前大雪の際に泊まったことがあり、女将さんはアッコさんのことを覚えておりました。あの大雪の中を遅い時間に降りてきて、相当女将さんも驚かれたみたいです。
大野木荘の玄関にはびっくりするほど大きな門松があり、ここでようやく正月気分を味わうことができました。下山しているときもどうも正月、厳冬期の寒さではなくて11月末くらいの初冬の雰囲気でどうもピンとこなかったのです。宿は昨年リニューアルしたそうで、とても綺麗です。早速温泉に向かいますが、PH10.5のアルカリ性温泉でお肌がつるつるになります。とてもいい温泉で私好みでした。朝晩含めて5回くらい入浴しました。お楽しみの元旦の夕食でみんなで祝杯をあげました。そして、正月からみんなで温泉宿というのは初めてかも知れません。みんなでわいわいと楽しい夕餉となりました。
【エピローグ】
今回は以前から気になっていた安倍奥縦走をアッコさんの企画に乗っかる形で歩かせて頂きました。本来は程々の雪なのかを歩くはずでしたが、ほぼ雪もなく水を担ぎあげたりと大変でしたが、天候にも本当に恵まれ、みんなで協力して安倍奥を歩き通すことができて本当に良かったです。まだまだ十枚山から南側のルートも魅力が一杯なので、また訪れるつもりです。やはり下山時は温泉宿に一泊することになるかと思いますが・・・。
【12月29日】 | 山伏登山口(8:30) → ワサビ田跡(9:10~20) → 大岩(9:30) → 蓬峠(10:35) → 西日陰沢分岐(12:35) → 山伏小屋【水汲み】(12:55~13:10) → 西日陰沢分岐(13:25) → 山伏(13:40)【幕営】 |
【12月30日】 | 山伏(6:30) → 新窪乗越(8:25) → 大谷嶺(9:15~50) → 八紘嶺(11:45~12:10) → 富士見台(13:10) → 安倍峠分岐(13:40) → 林道トイレ(14:05) → 安倍峠(14:20)【幕営】 |
【12月31日】 | 安倍峠(6:30) → バラの段(7:20~30) → ワサビ沢の頭(8:15~25) → 大笹の頭(9:05) → 奥大光山(9:50) → 大光山(10:25~45) → 刈安峠(11:15) → 黒崩(11:35) → 十枚山(13:10~30) → 十枚山の肩(13:35)【幕営】 |
【1月1日】 | 十枚山の肩(6:30) → 十枚山(6:35~6:55)【初日の出】 → 十枚山の肩(7:00~8:55)【お雑煮】 → 十枚山(9:00) → 十枚峠(9:25~30) → 下十枚山(9:50~10:00) → 十枚峠(10:25~45) → 三の沢水場(11:00) → 一の沢水場(11:45~55) → 十枚山直登ルート分岐(12:05) → 十枚山登山口(12:20) → 中の段農道記念碑(12:30) → 駐車場(12:55) |
〈諸経費〉
コンヤ温泉 民宿・大野木荘 1泊2食: 12,000円(正月価格設定)⇒通常は10,000円程
TEL: 054-269-2224