トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ350号目次

縦走・鹿ノ子池~山伏
峯川 正行

山行日 2015年 11月21日~23日
メンバー (L)峯川、箭内、山口(順)、鈴木(章)、成田

【プロローグ】
 最近は山ばかり行っていて、なかなか茶道に本腰を入れられない状況ではあるのですが、和菓子は見ているだけで楽しいです。その中でも「鹿ノ子」という和菓子は中に求肥が入っていてとても美味しく、見た目も面白い和菓子です。数年前、鹿ノ子の作り方を調べていたら、偶然「鹿ノ子池」の山行記録が出てきたので、興味深く調べてみると安倍山域の東河内山域にある幻の池とのこと。私は「幻の・・・」というフレーズに弱いので是非訪れて一晩過ごしてみたくなった次第です。稜線を詰めれば笊ヶ岳から続く山伏県境尾根にでるので山伏を絡めた2泊3日の山旅を計画いたしました。

【11月21日(土) 晴れ】
 峯川車の駒込集合組と順三さん車の西国分寺集合組の2台体制で、中井PAに22時半過ぎに2台とも無事に集合。そのまま新東名で新静岡ICに向かいますが、東名集中工事で深夜なのに渋滞しておりました。仮眠場所として偵察確認済みの真富士の里には1時に到着し、少々宴会をして2時に就寝。
 翌朝は6時過ぎに明るくなってから出発。ここから今回の取付部にたどりつくのがとにかく長いのです。東河内温泉近くの取付部まで2時間ほどかかり、下山口の井川大橋横の林道通行止めのゲート前に順三さん車をデポしてするために2台で向かいます。山行とは全く関係ないですが、順三さんの車が私と同じハスラーで、今回はじめてハスラー2台体制での山行だったので、2台ハスラーが並んでいるところを撮影して喜んでおりました。今回わかったのが、ターボ車である私のハスラーはとても燃費が悪いのです。順三さんハスラーのマニュアル・ノンターボの方がかなり燃費がいいのです。
筑波大学の重機があるところが取付部  井川大橋横に順三さん車をデポしてみんなが待っている取付部に戻ります。わかりづらい場所ですが、あまごの里方面を指す看板にそって東河内川に下っていくと取付部にたどり着きます。あまごの里を過ぎて数分で橋があり、その先に筑波大学農学部所有の重機があるので、その手前に峯川ハスラーを駐車いたしました。取付部はこの重機があるところとなります。9月に偵察に来ていて、取付部は確認していたので安心です。
 なんやかんやで歩き出しは9時になってしまいました。出だしは急坂で尾根に乗ると一気に高度を稼ぎます。まずは1,243mPを目指します。赤布のようなものは全くないルートですが、薄く獣道のようなものがついていて迷うことはないです。途中、熊捕獲用の檻がありましたが、しばらく使われていないような感じでした。1,518mPを経由して1,801mPを目指して登っていきますが、かなりザレていて斜度もかなりあるのでとても歩きづらいです。高度を上げるにつれて針葉樹より広葉樹の方が多いようで、陽射しを一杯に受けてとても暖かい中での登りとなりました。
1,800m手前の緩やかな広葉樹林帯  高度も1,800m手前となり、いよいよ鹿ノ子池の探索となります。1,801mPには上がらずに手前の鞍部から北方向の窪地に向かうと鹿ノ子池があるのではと推測しておりました。私と成田さんとでその方向に降りて行くと、ばっちり水面を発見することができました。右往左往することなく一発で幻の鹿ノ子池を見つけられたことは嬉しいです。どうも奥の方が鹿ノ子池の源頭のようで、上流から流れてきた水が奇跡的な地形のこの部分に溜まりヘアピンカーブを描いて沢に落ちていきます。上流側には素晴らしい幕営地があり、その横には小川が流れ鹿ノ子池に注ぎ込んでおりました。
幻の鹿ノ子池 思ったよりこぢんまりして地味  鹿ノ子池を発見してみんなで喜んで、手前で待機していたアッコさんに報告すると箭内さんがいないとのこと。鞍部につく手前で足が攣ってしまったようで、アッコさんから薬などをもらっていて、出発が少し遅れてしまったようです。地形が入り組んでいてわかりづらいエリアなのでとにかく急いで探すことに。大声でモートーコールを繰り返しました。10分くらいしてようやく箭内さんからコールが返ってきました。無事に箭内さんと合流できました。尾根をはさんで反対側にいってしまったようでした。途中、水が湧き出ている場所があったようで、それが鹿ノ子池の源頭と思い、それにしたがって進んでしまったようです。この箭内さんが見つけた源頭はおそらく尾根をはさんで反対側の場所で、この尾根は分水嶺なのでしょう。思い込みは怖いものです。私もリーダーとして箭内さんの動向を確認しなったことはミスであり、猛省すべきことです。一般道ならともかく、ルートが全くないこのようなエリアでは致命的な遭難に繋がることになります。
 箭内さんとアッコさんを幕営地まで連れて行くと、まずはジャンボテントを設営し、薪集めとなりますが、やはりこれだけ人数がいると薪集めが早いです。あっという間に集まり火起こしとなりました。今回の最大の目的である「鹿ノ子池の横でまったりすること」が実現できて本当に嬉しい限りです。それも我々三峰隊のみの独占です。最高です。14時から始まった宴会は20時半くらいにお開きとなり、明日に備えて就寝です。

鹿ノ子池に注ぎ込む小川鹿ノ子池の畔で大宴会開始

【11月22日(日) 曇り】
 11月末なので日の出の時間が遅くなり、6時出発で薄明かりの中、1,801mP北側の鞍部を目指して進み、そこから北北東方向に登っていきます。藪もなく、ほどほどの斜度で快適に主稜線目指して登れます2,000m手前ぐらいで進路を東方向に変えていくと登山道が通る尾根道に出ました。どうも、ここは水無峠山の台地ではなかったようで、尾根ルートの東側の台地を登って行くとだだっ広い笹原があり、地形図の2,080m台地だと確信しました。どこか「水無峠山」と書かれた山名板があるのではと右往左往して探しましたがどこにもなく、アッコさんが持参の赤布に「三峰山岳会」とマジックで書いたものを樹の枝にぶら下げてきました。ちょうどガスに巻かれてしまい、深南部的な感じの幻想的な笹原で腰を下ろしてしばしの休憩です。
広い笹原台地の水無峠山  ここから山伏を目指しますが、この台地からの降り口が顕著な尾根からスタートしないので、なかなかいやらしいです。コンパスで方向を合わせながら南東方向に進みながら方向を変えて南方向を向く頃になると、少ピークがありそこからは尾根が細くなり、1,988mPへ向けての主稜線に乗ることができました。笹原の中に踏み跡もあり、結構な人が入っているみたいです。途中樹木には古い指導標もあり、この稜線は「山伏県境尾根」というらしいです。笊ヶ岳を指す指導標もあり、アッコさんが絶対に近い将来歩くと思います。
 鞍部を通り、急坂をこなすと、幾つかの看板が置いてある小河内山Ⅲ峰です。どうもこから南南西に伸びている尾根があるようで、とてもとても気になります。藪が酷そうなので行けたとしても残雪のときでしょうか。

山伏県境尾根から望むガスに包まれた小河内山味のある小河内山Ⅲ峰の指導標

 しばし休憩し、三角点のあるⅡ峰、そしてⅠ峰を巡ります。景色が良ければ七面山が見られるはずなのですが、山梨側からガスが流れてきて全く見えません。静岡側はそれほどガスに巻かれてなく、小無間山などが見えます。山伏手前の大笹峠まではどんどん下る感じで進みます。踏み跡もバッチリあり、ルンルン気分で歩けます。古い指導標もありルートをロストすることはないと思います。
 大笹峠には11時頃に到着です。よくぞこんなところに林道を作ったものです。やはり大崩れしている箇所があり、現在はここまでは車は入れません。また山梨の雨畑方面への林道も通行止めです。ここから山伏までの登りがかなりの急斜面で北面なので凍結した際などはアイゼン必須かと思います。登っていて目に入ったのですが、山伏の西側は大崩壊したようで、大規模な治山工事が終わったばかりのようでした。
 ここに至るまで山で全く人に会っていなかったのですが、つづら折りのルートを頑張って登って行くと多くの人の声が聞こえるではないですか。山頂に飛び出ると、多くの人がランチ宴会をしておりました。まるで高尾山のようでした。大きな秋田犬2匹まで来ていて、少々びっくりしてしまいましたが、秋田犬は足がとても長いことがわかりました。昨年12月に来たときは一面雪景色で富士山が見えなかったのですが、今回も富士山を眺めることができませんでした。お昼なので少々行動食を食べて、山伏小屋を目指します。

山伏だけは人だらけの別世界でした山伏小屋下の水場はかなり水が豊富

 山伏小屋は西日陰沢登山口からのルートと分かれてさらに進んで下って行くとあります。昨年も偵察をしていて、水場が近いことはわかっておりましたが、トイレがないのが心配でした。小屋には12時半についてしまい、時間も早いし、小屋も暗っぽいし、小屋の周囲はどうもいろんな物が散乱し、あまり衛生的に・・・。ということで、水を各自2リットル確保して、さらに進軍することとしました。明日の行程が楽になるので、行けるところまで行こうということとなりました。
 小屋からすぐ下がっていくと百畳平というなんとも不思議な場所に到着です。右に行くと百畳峠で車はここまで入れるようです。百畳平は百畳くらいあるような広さですが、妖精が出てきそうな平な場所でした。
 まだ平らな場所がありそうなので、さらに進みます。猪ノ段あたりもとてもいい所でどこでもテントが張れそうな場所です。少し下って行くと猪ノ段分岐があり、林道側に行ってみるとそこは梅の木がたくさんあり、またもや不思議な場所でした。成田さんがいい物件を探してくれました。電波塔みたいなものがあり、そこを目指して台地に登って行くと、またもや幻想的で気持ちのいい場所にたどり着きました。時間はまだ早い13時半くらいですが、ここでビバークすることに決定をしました。周囲から煩いと誰からも文句も言われない場所での幕営は最高です。楽しくお酒が進み、早めの就寝です。

猪ノ段分岐近くの幻想的な幕営地

【11月23日(祝) 曇り】
 今日は一般ルートがメインでの下山ですが、帰りの高速の渋滞が心配なので6時発で出発です。あたりはガスっていてまたもや幻想的です。猪ノ段から牛首峠にかけての台地上のエリアは若い木々よりも朽ちかけた大木がかなり多くあり、神秘的です。
とても神秘的な猪ノ段の朽ちかけた大木  秋に来るとまた雰囲気も違って素晴らしいと思います。不思議な景色なので周囲をキョロキョロしながら進んでいきます。まるで荒船山の軍艦台地のようで平らな地形です。
 1,785mPあたりで右にルートが曲がるのですが、そのあたりに違法に建てたらしい風速測定のために櫓があり、警告文のようなものもありました。この台地に吹き抜ける風を調べているのでしょうか。太平洋から上がってくる潮風とこの朽ちかけた大木との因果関係があるのでしょうか。
 フラットエリアともお別れで、牛首峠への急斜面を転げ落ちるように激下りすると、単独の男性に出会い、笹山から来たとのことです。早い時間からご苦労さまです。落石に注意をしながら7時前に牛首峠がある林道に降り立ちました。牛首峠には西日陰沢を結ぶルートがあったようですが、上部の崩壊が激しいようで廃道となっておりました。このルートがあれば西日陰沢起点で山伏経由の周遊ルートがとれたはずです。
 笹山に向けて林道をすぐに離れて急坂を登っていきます。今回の山行での最後の急登となりました。笹山につくと、ようやく富士山を拝めることができました。笹山からの富士山のシルエットは素晴らしいです。
笹山は秀麗富士の撮影スポット  井川峠までは歩きやすい起伏の少ないルートでトレランには最適ではないでしょうか。稜線から東側を眺めると、ちょうどアッコさんが正月山行として計画している安倍奥東稜が見えます。今年は久々にアッコさんの正月山行に参加するので、正月にはほどほどの雪が積もってくれればと祈りながら足を進めました。
 私の好みの「峠臭」のする井川峠には9時前に到着です。なんの景色もなく殺風景ですが、私の峠レベルでは高いです。十字方向すべてにおいてルートが生きておりました。
峠レベルが高い井川峠  井川峠から林道へは数分で降り立ちました。普通なら林道に降り立てば山行は終わりだなあという感じなのですが、計画時からこの後のルートが心配ではありました。井川大橋へのルートが存在するのですが非常にわかりづらいとの情報がいくつかあったので気を引き締めて順三さんのハスラーが待っている井川大橋に向けて進みます。上部の方は樹木散策ルートがあるようでしっかりした踏み跡もあるのですが、1,169mPあたりが地形図に出てこないいやらしい二重山稜エリアで非常にわかりづらかったです。地形図とコンパスを駆使して方向を確認して進みます。途中902mの三角点も立ち寄ることもできて、しばらく進むと荒廃した茶畑がある林道に降り立ちました。林道から1時間半ぐらいかかりました。このルートは登りで使ったほうが安全に登れると思います。茶畑の横を通りすぎていくと、貞子が出てきそうな井戸もあったり、生活臭がする遺構がいくつかありました。井川大橋が見えてくると下に民家があるのですが、そのあたりのルートがなんとも不確かでしたが無理やり下降して、偵察した際に確認した茶畑の中の登山口に無事に降り立つことができました。
茶畑の登山口に無事に下山  林道を右に少し進むと通行止めのゲートがあり、順三さんハスラーが待っておりました。順三さんと私は取付にある峯ハスラーを回収しに向かい、その間アッコさんたちにはここで待機してもらいました。お風呂はどこにしようか思案していたのですが、田代にある民宿ふるさとに電話をしたら、日帰り入浴(500円/人)ができるとのことなので助かりました。畑薙ダム下の白樺荘は綺麗でいいのですが、なにせ遠いので行くのが面倒だなあと思っておりました。
 ぬるぬる感がある田代の温泉はとても良かったです。おばあちゃんから巨大なしいたけも購入できて満足でした。現在は田代から小無間山は山頂直下の崩壊で登山客も少ないようで、なんとも閑散していて寂しい限りです。

味わいのある民宿ふるさとアルプスの里で蕎麦と静岡おでんを食す

 昼食は民宿のおばちゃんから教えてもらった井川のアルプスの里で蕎麦と静岡おでんを食べて満腹となり13時半出発での帰京となりました。東名はやはり大混雑でしたが、早めに井川を出発できたので助かりました。

【エピローグ】
 今回の山行は昨年よりあたためていた計画であり、「幻の鹿ノ子池」に素晴らしいメンバーで訪れることができて、鹿ノ子池の横で盛大に宴会をすることができて嬉しい限りでした。この安倍奥エリアはなんとも魅力的で、結局そのまま正月山行につながることとなりました。元旦は安倍奥で迎えたいと思います。ご参加いただきました皆様、誠にありがとうございました。また安倍奥行きましょう。

〈コースタイム〉
【11月21日】 井川大橋【車デポ】(8:20)=東河内温泉下重機置場【取付】(9:00) → 熊の捕獲檻【1,243mP東鞍部】(10:30) → 1,801mP左側鞍部(12:45) → 鹿ノ子池(13:00)[幕営]
【11月22日】 鹿ノ子池(6:00) → 水無峠山(7:30~45) → 小河内山Ⅲ峰(8:40~50) → 小河内山Ⅱ峰(9:20) → 大笹峠(11:00~10) → 山伏(11:40~12:05) → 山伏小屋(12:25~40) → 百畳平(12:45) → 猪ノ段分岐(13:20) → 幕営地(13:30)
【11月23日】 幕営地(6:00) → 牛首峠(6:55~7:05) → 笹山(7:40~55) → 井川峠(8:40) → 林道【井川峠入口】(8:55) → コマドリの道入口(9:35) → 902m三角点(10:20) → 茶畑/林道(10:30) → 井川大橋(11:00)= 東河内温泉下重機置場【車回収】(11:35)

トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ350号目次