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岩登り・瑞牆山大面岩左稜線
荻原 健一

山行日 2015年10月17日~18日
メンバー (L)荻原、軽部

 瑞牆のフリーマルチは敷居が高い。

 菊池敏之著の"日本マルチピッチ"によれば、「瑞牆山は小川山と並ぶ花崗岩クライミングの代表的エリアである。しかし小川山が良くも悪くもポピュラーといえるのに対し、こちらはかなり厳しい。それはまず壁の規模が大きいこと、また傾斜が強いこと。そしてなによりクラック中心のトラッド・フリーが小川山以上に強く貫かれてきたことによる。そういった意味でここは、小川山をひととおり登り終えた後、初めて足を踏み入れる岩場といえる。」
 4年前に人工主体の大ヤスリ岩ハイピークルートを登ったが、フリーとなると私レベルのクライマーが手を出せるマルチルートなどないと思っていた。しかし今年の春に瑞牆クライミングガイドという上下巻で7,000円の本が出たので、山の店で立ち読み(その後買いました)をしていたら、私でもあと一歩の努力で届きそうなマルチルートがいくつかあることを知った。それから半年、例会企画とすることで自らの逃げ道を塞いで今回のチャレンジとなった。パートナーは2週間前に錫杖岳・注文の多い料理店を一緒に登った軽部さん。天気予報は晴れ。もう逃げられない。もう行くしかない。

【10月17日】雨ときどき曇り
 今日は天気予報通り雨であるが、大面岩どころか植樹祭公園すら初めてなので、今日は専らアプローチの偵察の予定で問題なし。想定通りいろいろ迷って大面岩左稜線の取付きを確認、下降で使う大面岩山頂から小面岩方面への懸垂地点、コルからパノラマ新道への下降路なども確認できて満足の一日。でも随分とウロウロしたので結構疲れた。今日は1mも登ってないのに瑞牆の岩場にいるという妙な高揚感から夜は随分盛り上がった。

【10月18日】快晴
 暗いうちから出発する予定だったが、昨日飲み過ぎて遅刻する。すっかり明るくなってからの出発となる。取付き近くでクライマーの声が聞こえたので一番乗りは逃したかと思ったが、ニューモンタージュあたりを登っており、左稜線は我々の貸し切りとなった。

(1P目)
苔が多く現在はほとんど登られていない、というトポの言葉通り、このピッチは割愛する。

(2P目)
ワンポイントが5.8であとは簡単。ビレーは立木。

(3P目)
木登りと簡単なフリー。

(4P目)
実質のクライミングはここから。右の大きな岩の下を這うように右にトラバースするところが10aか。

(5P目)
左稜線の核心ピッチにして10c。右のカンテをうまく使って離陸する。右側の足元が大きく切れ込んでいて高度感がありフラフラする。途中から左にトラバースして直上。ペツルはあるが最小限でトポには「安易な墜落は許されない」と書いてあり緊張する。

(6P目)
左稜線のハイライトピッチ。景色抜群、高度感満点の中のフェース~カンテのピッチ。出だしは3mくらいの大岩のボルダリングから始まる。カンテのワンポイントが難しい。10b。

左稜線のハイライトピッチ (7P目)
10aで少し楽になるかと思ったが、4P目の10aより全然厳しい。出だしは左に3mの恐ろしい下りトラバース。捉えたフレークからの直上の出だしの一歩、上部の手掛かりの全くない"どスラブ"と盛りだくさんの内容だった。

(8P目)
3級、ほとんど歩き。

(9P目) チムニー~スクイーズチムニー~オフウィズス。チムニーはバック&フット、バック&ニーで簡単だが、どんどん狭くなりスクイーズサイズとなると奮闘的になってくる。ワイドの技術は全くないので、ここは最初からアブミを用意していた。無理せずアブミを使い、上部のオフウィズスも人工で上がる。ザックはセカンドが荷揚げする。

(10P目)
3級程度、右上気味にトラバースして大面岩の頂上台座へ。

 終了点から更に50mいっぱいで大面岩山頂に立つと、十一面岩が眼前に聳えている。瑞牆本峰、大ヤスリ岩、小ヤスリ岩、十一面岩末端壁~左岩壁~正面壁~奥壁と日本離れした素晴らしい岩壁群を見渡すことができて、完登の喜びと相まって感動してしまった。大面岩山頂からの景色はクライマーにしか見ることのできないというシチュエーションも良い。
 山頂から50m懸垂1回と少々の歩きで小面岩とのコルへ。ここからパノラマ新道への踏み跡を辿って取付きへ戻る。
 瑞牆クライマーの一員になれた気が少しだけした充実の一日であった。

十一面岩左岩壁~正面壁~奥壁~小ヤスリ

〈コースタイム〉
取付き(9:00) → 大面岩左稜線 → 大面岩山頂(13:30)


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