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雪山登山・日光白根山
内藤 美智子

山行日 2016年2月27日~28日
メンバー (L)小幡、藤岡、有馬、内藤

【2月27日(土) 晴れ】
 わたしは冬の日光白根山は同じコースで三峰入会前に登ったことがある。当時はまだデジカメではなく3~4枚の写真しか残っていないし、記録も書いていないのでよく覚えていないが、あまり苦労せずに登ったような印象が残っている。
 当日朝に東武日光駅に集合して8:40発のバスで湯元に向かう。湯元には10時ごろ着く。ここで装備を再配分して準備する。
 今年の冬はどこも雪が少なく、日光も例外ではなく、日光駅から湯元までの車道は乾いていたし、湯元のバス停周辺も除雪された雪が道路わきに残っているくらいだ。バス停から湯元スキー場に入り、ゲレンデのはしっこをトボトボと登る。
雪の少ないゲレンデを行く  ゲレンデの平坦な斜面が終わったところでアイゼンを履き、急登にとりつく。以前来た時はズルして一番上のリフトに乗って高度を稼いだ。その時乗ったリフトはなくなったのか、小雪で動いていないのか、見当たらなかった。気温が高く汗が流れる。雪が少ないため木の周りなど氷になっているところもあり、雪が多い時よりかえって歩きにくい。ラッセルしなくてすむのは助かるけれど。
 外山のコルで2人パーティー2組(男女ペアと女性2人)に追いつく。稜線に出たため強風が吹き、慌ててヤッケを着こむ。しかし風は時折吹くだけでおおむね穏やかな気候だ。
 コルから疎林の間を緩やかに登って行く。ガイドブックには「積雪が増え始める」とある天狗平でも雪は少ない。気持ちの良い林の間を登って行く。林を抜けると目の前に白根山がドーンと現れた。その大きさに圧倒される。
白根山と前白根山  前白根山頂上は風があって寒いので休まず通過。ここまで来ればこの日の目的地である五色沼避難小屋までは遠くない。
 前白根山頂からの下りは雪がなくなってガレが露出していた。南西に雪の少ない尾根をたどる。この辺りは風が強くて雪が飛ばされてしまうようだが、それにしても少ない。
 道標にしたがって西の樹林帯に下って行く。小屋までの間に3人とすれ違った。群馬側からの日帰りの記録はよく見るが、日光側からも条件さえそろえば日帰りできるようだ。
 午後2時半、五色沼避難小屋に到着。先着の男性2人は荷物をデポして、これから山頂へ向かうとのこと。わたし達も時間的に可能だが、計画通りに山頂へは翌日に登る。その後、彼らもこの日は山頂まで到達せずに戻ってきた。
 テントを持参していたが、小屋に泊まることにする。小屋内部は2段になっているので意外と多勢が泊まれそう。この日はわたし達含めて8人。男性2人と途中で追い抜いた女性2人が小屋に、男女ペアのパーティーは外にテントを張った。

【2月28日(日) 晴れ】
 夜は強風が吹き荒れている音がずっと続いていた。朝になっても止んでいない。あまりに風が強いなら山頂には行かず下山するか、という言葉が小幡さんから漏れる。早めに出発しようと早起きしたのだが、なんとなく気が緩んでしまう。それでも朝食が終わったころには風音が少し弱まったようなので行けるところまででも行こうとなった。
 外に出てみるとこの日も快晴。前夜雪がちらついたのでうっすらと新雪が積もっていた。小屋から左に緩い凹地を少し進み、道標を右に行くと樹林帯の登りになる。葉を落とした木の枝が白くなっていて青空を背景にとても美しい。
青と白の世界  木が疎らになって行くにつれ傾斜が増し、前方に岩場が見えてくる。岩場を右に巻くように急な斜面を登って行く。
 先頭は有馬さん、続いてわたし、後ろを振り向くと藤岡さん。小幡さんはまだ見えない。雪面の状態は場所によって柔らかかったりアイスバーンだったりで気が抜けない。岩場の真横辺りまで登ると急なうえに蹴り込んでもステップがきれず、アイゼンのツメが入るだけなので滑落するのではと怖くなる。ピッケルのピックを指しながら3点支持で確実に登り、雪が柔らかいところまで登って一息つく。
 有馬さんも追い越していった藤岡さんもわたしのように恐れる様子はなくスタスタと登っていってしまう。上を見ると二人はますます傾斜が強くなる雪面をまっすぐに登って行く。ここでコケれば下まで滑って行きそう。まだ左の岩場の方が下まで行くことはなさそうなのでわたしはトラバースして岩場の方に移動した。
 先頭を行く有馬さんのルートファインディングにはちょっと不安がある。先頭を行くなら確実にキックステップを切って行ってほしいのだが・・・。小幡さんなら最善のルートをとってくれるはずだし、確実にキックステップを切ってくれるはず。小幡さんがまだ登って来ないので二人に声をかけて待つことにした。
 藤岡さんが様子を見に行くため、わたしのそばまで下りてきたところで小幡さんが登ってきた。わたしは小幡さんの後ろに付き、藤岡さんは待っていた有馬さんの方へ登って行った。
 藤岡さんが有馬さんのところまで行って座り込んでいた有馬さんが立ち上がった時なのだろうか、それとも歩き出した時なのだろうか、有馬さんが滑落した。すぐにピッケルが手から離れてしまい、なすすべもなく滑ってくる。いったんスピードが緩み、止まるかと思ったがまた加速した。時間にして数秒、距離は50mもないか。「止まって」と叫んだのか、心の中で思っただけだったのか。幸いなことに雪が柔らかいところで自然に止まった。ちょうど小幡さんとわたしと同じくらいの高さのところだった。
 小幡さんが「お前は一番後ろを歩け!」と有馬さんに指示。それからは急斜面が終わるまで小幡さんを先頭に慎重に登って行った。
 急斜面が終わり、山頂部の凹状の一画に立つ。一旦下って時計回りに登って奥白根神社を見る。そこからまた一段下り、岩場を登って白根山の頂上に着く。小屋から1時間半くらいかかった。小屋で一緒だった男性二人のすぐ後だった。藤岡さんがきいたところによるとこの方達はあるアウトドア雑誌の取材だったらしい。
白根山頂上  すごく晴れていたはずなのに山頂にいるときは雲があって遠望はきかなかった。
 山頂にいたのは10分くらい、来た道を戻る。途中でテントの二人とすれ違う。登りより下りの方が危険なのでかなり緊張して下り始めたのだが、意外にも登りの時よりも怖さを感じないで下ることができた。トレースがはっきりしていたせいか気温が上がって雪が緩んできたからなのだろうか。1番急な部分は後ろ向きになって下った。
 安全地帯の樹林帯まで下ってから、ザックをおろして初めて休憩した。樹林帯から小屋まではあっという間だった。
 小屋に戻って下山の準備。女性二人は山頂には行かずに下山したようだ。日帰りの単独の方が早くも通過していった。前白根山付近は強風だったそうだ。
 前日のトレースを追って下山する。前白根山付近は確かに白根山頂より風が強かった。
 自分たちが雪面につけたトレースが見える白根山の姿を目に焼き付けて湯元に下った。
 湯元スキー場のゲレンデを歩いているとき先行トレースの中にアイゼンが片方落ちていた。この日わたし達の前を歩いているのは小屋に泊まった女性達だけ。そのどちらかが落としたとしか考えられない。もしかして会えるかもと拾って下山した。他のメンバーと離れて一人になり、バス停がわからずにウロウロしていたら、その女性達に会えて無事に返すことができた。

〈コースタイム〉
【2月27日】 湯元温泉バス停(10:30) → ゲレンデトップ(11:10~11:25) → 外山のコル(12:45~13:00) → 前白根山(14:00) → 五色沼避難小屋(14:30)
【2月28日】 五色沼避難小屋(6:35) → 白根山頂上(8:10~8:20) → 五色沼避難小屋(9:20~10:05) → 前白根山(10:40) → ゲレンデトップ(12:05~12:15) → 湯元バス停(12:45)

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