トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ351号目次

岩登り・小同心クラック
小芝 泰規

山行日 2016年3月12日~13日
メンバー (L)小芝、軽部、大田、和田

 3年前、渡辺パーティーのメンバーとして取付まで行ったものの天候不良のため敗退したが、今回は気持ちの良い晴天の中で臨むことができた。

【3月12日】晴れ
 前夜に新宿でメンバーと待ち合わせ小淵沢駅の改札を出たところで仮眠させてもらう。この日は自分たち以外に誰も仮眠しておらず、立ち食いそば店前のスペースをゆったり使うことができて快適な寝床を確保できた。翌日の行程が楽なので6時半起床と決めてシュラフに潜り込んだが、5時半ごろから乗客の往来が気になりだし、6時にはそば屋のおかみさんが開店作業を始めだした。我が会にはどんな状況でもぐっすり眠り続けられる、胆が据わった?会員が多いがノミの心臓の私にはとても寝続けることができず、6時過ぎに起床を早めて行動を開始した。
大同心ルンゼからのトラバース  美濃戸山荘まで道路には全く雪がなく、赤岳山荘までの砂利道も例年はチェーン必須だが、赤岳山荘に駐車している車の半数はスタッドレスタイヤのみで登ってきたようだった。赤岳山荘に車を止め、8時ごろ赤岳鉱泉に向けて歩き始めた。しばらく歩くとようやく雪景色に変わってきたが、気温が高くてオーバージャケットを着ていると暑くてしょうがない。皆で汗だくになって赤岳鉱泉にたどり着いた。
 山荘入口とトイレにほど近い高台に手際よくテントを設営し、サブザックを持って偵察に向かう。大同心ルンゼまでは苦も無く到達できるほどしっかりトレースがついていたが、小同心基部までのトラバースには踏み跡が全くなく、雪のつき方もいやらしい感じで、氷の張りついた岩の急斜面をトラバースしなければならなかったので、ロープを出した。
 そのため思いのほか通過に時間がかかったが、取付きまでトレースを付けることができ、ルートの下見もできた。これで翌日は順調にスタートが切れそうだ。テン場まで下るときれいな夕日がテントを照らしている。テント前に即席の屋外テラスを作り、沈む夕日を見ながらの宴会が始まった。ちらりと皆の横顔をのぞき込むと景色を見ながらにんまりとしている。明日は楽しいクライミングができそうだ。

【3月13日】晴れ
 5時ちょうどに出発。前日の下見の甲斐あり予定通り2時間で取付きに到着できたが、途中でガイド山行と思われる3人パーティー1組に追い越され先行を譲ることになった。小同心の取付きは平坦で広いので、3人が2ピッチ目を登り始めて見えなくなるまで待つことにして、のんびりと見物させてもらった。

(1P目)
下部15mはピトンがないので岩を使って支点を工作する。ホールド・スタンス共豊富。取付きから見えるテラス上がビレー点で何とか4人が立てるほどのスペースでペツルあり。

岩の中間部、欠けて見えるのがビレー点のテラス

(2P目)
ビレー点上のピナクルを右側から巻いてやや狭いチムニーを抜ける。ホールド・スタンスとも豊富。要所にピトンがあるが古いので注意。ビレー点は3人が立てる程度でペツルあり。

(3P目)左ルート
出だしで張り出した岩を越えるところが核心で、チムニーが狭く体を岩から張り出すようにして登るので高度感があり、雪のつき方でホールドがつかみにくい場合はバイルを使ったほうが登りやすいかもしれない。一見ピトンが見当たらず、スリングが掛かりそうな丁度よい岩もないのでビレー点にクイックドローを掛けて慎重に登ったが、チムニーの中をよく見るとランニング用のペツルが打ってあった。この5mほどの垂壁を越え、ズルズルと10mほどロープを引きずるとピカピカの支点があり小同心の頭に出て終了。

出だしの乗越し

(小同心の頭~横岳)
小同心の頭でロープをしまい100mほど歩くと横岳直下の岩稜帯基部に出て、そこから頂上までは40mほどスラブを登る。下部は傾斜が緩く階段状になっているので難しいところはないが、ピトンは全くない。また、横岳直下なのでそれなりに高度感がある。中間から上部にかけては岩が氷で覆われていて起伏が滑らかになっているところがあり、グローブを付けた状態で登ると難しく感じるかもしれない。ここを登り切ると横岳頂上標から数メートルの位置に出る。手ごろな岩で支点をとり、ロープをフィックスしてアッセンダーで登った。

横岳直下のスラブ

(横岳~硫黄岳~赤岳山荘)
横岳頂上は360°の大パノラマで風も殆どなかった。お互いの健闘を称え合い、がっちりと握手を交わした。最高の気分だった。

横岳山頂

 山頂からの下降には大同心ルンゼを下るルートもあるが、今回は計画書通りに硫黄岳経由で赤岳山荘まで下山した。
 最後まで順調に登り、大パノラマの中を楽しく縦走して締めくくることができ、メンバーには本当に感謝しています。さあ、次はどこにいきましょうか。

(おまけ)
 小淵沢駅で仮眠するときに、朝はここの駅そば食べたいね。とほぼ毎回話しながら朝7時の開店まで待つことができない丸政の駅そばですが、調べてみるとグルメサイトの評価が思いのほか高く、どのメニューも写真を見ているだけでヨダレが出てきそうな逸品揃いで、コラーゲンそば(420円)なる他のそば屋ではそうそうお目にかかれなそうなメニューもあり、女性からも大人気のようです。
 せめてもの恩返しに、「いつもそこで寝ているものですが、店で一番高いものを」などと石田純一っぽく言ってみたいものですが、1万円の裏メニューがあるよ。と返されると困るので止めておきます。皆さん積極的に利用しましょう!

〈コースタイム〉
赤岳鉱泉(5:00) → 小同心クラック(7:00~50) → 小同心の頭(10:40) → 横岳(11:40~12:00) → 硫黄岳(12:50) → 赤岳鉱泉(14:20) → 赤岳山荘(16:00)


トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ351号目次