トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ351号目次

雪山登山・錫ヶ岳西尾根
鈴木 章子

山行日  2016年3月19日~21日
メンバー (L)鈴木、峯川、成田

 昨年5月の例会で、「宿堂坊山~日光黒檜山」を登った折、錫ヶ岳から西に延びる尾根が大きく美しかったので「歩いてみたいな~」と思った。今年のGWにと一度は計画を立てたが、今年の雪の少なさに諦めざるを得なかった。
 毎年3月彼岸の頃の連休に、谷川周辺の雪稜を歩くのを恒例としていたので、今回はその日を使うことにした。しかし、計画の段階から2泊3日は不安が募った。私にとって未開の地、雪の状態もわからない。もう1日予備日が欲しかった。
 更に、スタートのサエラスキー場は3年前から閉鎖。時間に対する不安は募るばかり。後は参加者に期待をするしかなかった。幸い、峯川・成田両氏は私の山行のお馴染み、荷物の配分上もう一人いると助かったのだが贅沢は言っていられない。

【3月19日】
 19日早朝発、沼田駅8時予約のタクシーに乗り、小雨の中、サエラスキー場へ。
スタートのサエラスキー場  到着したスキー場には、洋風なレンガ作りでおしゃれな建物が、宿泊施設も伴い並んでいたが全て無人。我々3名以外誰もいなかった。
 車寄せの玄関で身支度を整へ、雨の上がった緩やかなゲレンデを登り始めた。空は曇りだったが気温が高く雪質は最悪だったが、リフト終点の沼上山山頂までの傾斜の緩さには助けられた。山頂で目には入って来る撤去中のリフト台が無残だった。
 そこから先、緩い笹原を登りだしたが、だんだん雪の量が気になりだしワカンを履いたが、泣かされるほどに重い雪。成田氏のワカンは高下駄のようになっていた。
 三ヶ峰までの斜度はきつく中々前進できないばかりか、当初の目的地2,077mPまでの半分も行かない内に全員ダウン。馬にニンジンのように酒で励まし、疲れた成田氏を何とか三ヶ峰山頂まであげ、幕場とした。ここまでは、幸いなことにトレースがあった。
 遠くで、鹿の鳴き声はしていたが、それを話題にするほどの元気もなく、一応の作業を終え19時には寝る支度に入った。3人共ぐっすり眠った。

【3月20日】
 3:45起床。天気はだんだん回復気味。ここで帰るのもシャクだからと、山頂を6時に出発。
「今日は錫の水場まで行きたいねー」
そんな話はいつしたのだろうか。
 下りはゆったりだが登りになると何故か斜度がきつくなる。意地悪な尾根だ。更に雪の踏み抜きは激しくなる。
 最初は、峯川氏が先頭だったが、体重の関係で全く進めない。それではと、まず、軽い私が先に行き軽く踏み抜く。その跡を成田氏が、しんがりは峯川氏が歩く。笠ヶ岳の登りは今回一番の急斜面だったが、そこまでは雪が締まり軽快???に歩けた。しかし、そこから先は苦戦・苦戦・・・。
「今日中に錫に着かなければ帰れない」
を、合言葉にじりじりと進んだ。
錫ヶ岳を目指して  空も青空が出てきて、尾根上から足尾・日光の山々は大きく、大きく美しく見える。しかし、この道、この雪は何とかならないかなー。時として踏み抜きは私の首までくる。水さえあったら激ヤブを漕いでいたほうがまだ楽かな?
 錫ヶ岳は3つのピークがある。その3つ目直下でついにダウン。後15分もあればたどり着いただろうに。高齢者2人はもう動けません。道中、振り向けば成田氏のバテ顔が気の毒だった。よく頑張ったと言ってあげたい、重荷に耐え。
 幕も早々に張り終え、早く現実から逃避したかった。

【3月21日】
 最終日、今日も3時半起床、5時45分出発。昨夜は冷えたが、雪のしまりがあまり良くない。ワカンを履き出発。
 15分で山頂、呆気なく着いてしまった。樹林帯に覆われた山頂で記念写真を撮り、早々に下山。ここからは目にうるさいほど日光特有の四角目印が続く。もう、地図を見る必要はない。日光白根山を目指して進むのみ。
 降りるにつれて樹林帯もなくなり雪の状態も良くなったので2,296mP辺りでアイゼンに履き替えた。アイゼンのためにこの雪があるのかと思われるほど状態が良くなり、スピードがどんどん上がる。白桧岳には軽快なステップで「アッ」と言う間に到着。
 白桧岳に着いて一休み。本日初めての展望を楽しむ。成田氏に笑顔が戻ってきた。今日中に帰れる確信が得られたからだろうか。
 ここから先、白根隠山経由か火口湖経由にするか相談。火口湖経由に決まり白桧岳の急な斜面を滑落しないようにトラバース気味に一気に下った。火口湖の中にはデブリが2ヶ所あったが安定していた。火口湖の端から、小屋までの緩い登りを重い足取りで登り切った。
 小屋の周りには、今回初めてのしっかりしたトレースが・・・。
 嬉しかった。こんなにも人恋しかったのかと3人で笑ってしまった。
 小屋から前白根山までは各々好きに登った。前白根山から振り向けば、戦い続けた山々が白く輝いていた。本当に素晴らしい尾根だった。静かで、厳しかったが、安堵感をどこかに持っている山々だった。特に裏皇海山は大きく見えた。

火口湖の中で前白根山で展望を楽しむ

 外山手前の下降点までは3人で語らいながらのゆったりした尾根。下降点からは、青く凍り急な登山道のため、私はマイペースで降りた。湯元スキー場で3人合流。
 こちらのスキー場は営業中で疎らながらスキーヤーもいた。3人揃った所でひと息いれバス停に向かった。バス停着13時。嬉しかった。頑張ってくれた2人に感謝!全員笑顔で嬉しい。
 バス停に荷物を置いて入浴に向かった。峯川氏希望の『若葉荘』は休業日で入浴はかなわず、バス停前の『奥日光パークロッジ深山』という長い名前のホテルで、食事と入浴を済ませ15:20のバスで帰路に着いた。

〈コースタイム〉
【3月19日】 沼田駅(タクシー)=サエラスキー場(9:10~9:30) → 沼上山(11:00) → 三ヶ峰(15:00)
【3月20日】 三ヶ峰(6:00) → 笠ヶ岳(10:35) → 2,146P → 2,351P → 錫ヶ岳山頂直下(15:00)
【3月21日】 錫ヶ岳山頂直下(5:45) → 錫ヶ岳(6:00~6:10) → 水場(6:50) → 白桧岳(8:50~9:05) → 火口湖(9:30) → 避難小屋(10:05~10:15) → 前白根山(10:05) → 外山手前下降点(11:20) → 天狗平(11:35) → スキー場(12:45) → バス停(13:00)

(費用)
◎タクシー (沼田駅=サエラスキー場) ¥12,120
◎奥日光パークロッジ深山 入浴料¥500


トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ351号目次