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雪稜登攀・赤岳天狗尾根
山蔦 隆宏

山行日 2016年2月20日~21日
メンバー (L)山蔦、内田、古屋

 三峰雪稜入門第二弾は八ヶ岳東面を代表する天狗尾根です!ところが、最近バリエーションを計画すると天気予報が思わしくありません。今回も今一つ、というより最悪、雪山なのに雨予報です。参加予定だった山口さんは賢明な大人の判断で参加見送り。サブリーダーのうっちー、体力に自信の古屋君と3名で出発しました。状況によってはカニのハサミまでの単調なラッセル訓練で終わる悲壮な覚悟で道の駅みなみ清里前泊です。
 頼りのイノクマ予報は土曜夜に雨またはみぞれ、日曜にかけて回復とのこと。当初は天狗尾根上で幕の予定でしたがイノクマさんに敬意を表して出合小屋泊とし翌日軽荷で挑みツルネ東稜から下降することで作戦は決まりました。美し森の駐車場から地獄谷を出合小屋に向けて黙々、いや騒々しく歩き始めましたが次第にリーダーが遅れます。実は私、木金と腹を壊して会社も早引けをしており金曜の夜からようやく食事がとれた状態で体に全く力が入りません。下山後に知ったところによると二人はこの時点で敗退を覚悟していたとのこと。それでも複数回の渡渉をへて出合小屋に2時間半程で到着、手負いのリーダーを置いて二人は天狗尾根の尾根上までトレースを付けてくれました。
 出合小屋は綺麗なトイレが併設してあり水も地獄谷で取れる快適な小屋でした。この夜は予報の通りのみぞれで大変助かりました。高根山岳会さん、ありがとうございました。
カニのはさみを通過  この日の出合小屋には4パーティー、権現東稜、旭東稜、ツルネの近くのアイスルート、天狗尾根とキレイにルートが分かれました。翌日、6時30分に出発しカニのハサミまではくるぶし程度の雪面の樹林帯を黙々と上がります。トレースは無し。10時ごろ岩稜帯開始のカニのハサミに到着し左から巻くと最初の10m岩壁。ここはノーロープで直登。次の30m壁ではロープを出しました。
 一段上がり右にトラバース後、ルンゼをアイゼンとバイルを効かせて直登。直登に移るところの灌木で手頃な中間支点が取れました。そのまま10mほど、直上した腕大の立木で終了。
 後続はロープマンと肩がらみで続いた。更に岩場が続く。第二岩峰は最初大天狗と誤認するほどの立派な岩峰で基部を左から巻き上部を右から巻いたが左から巻くところで5mほどの小さな岩壁でロープを迷った。ホールドも豊富なことからここはノーロープで越えた。第二岩峰を越えた先、更に10mほどの雪壁で念のためロープを使ったが雪の状態によっては必要ないと思われます。ようやく本日の核心の大天狗に到着です。
大天狗に向かって  ルートはバンドを伝い右上とのこと。実際近づくとやや左を直上気味に草付きが点々とあります。ここでリーダー、判断ミス。右と分かっていたけれど実際近づくとやや左を直上気味にバイルが刺さりそうな凍った草付きが点々と。取付いてみると上には残置ハーケンが。上部はややかぶり気味で私には難しいクライミングとなりました。さんざん粘ったあげく残地ハーケンでクライムダウン、ギブアップです。続いてうっちーが右から挑みます。この時点で時間は既に13時。このトライでダメなら時間切れです。慎重に岩についた雪を払いながらバイルの刺さる場所を探し続けますが残念!後から記録を確認すると最後右手を伸ばせばガバがあった様でした。
 この後は3回の懸垂と1回の肩がらみで出合小屋17時。樹林帯の中懸垂支点には事欠かず、50m一本で十分でした。出合小屋から一時間程度で日も暮れて暗い中のヘッデン渡渉は増水もあり苦労しました。  今年も宿題が残ってしまいました。来年必ず戻ってきます。反省点、次回は宴会を早めに切り上げて3時に出発します。

大天狗に挑むが敗退

後日談1
翌月曜日から古屋君は腹痛で3日間仕事を休んだそうです。
後日談2
テントポールを出合小屋に誤ってデポしてしまいましたが、翌週末峯ちゃんとうっちーのレスキュー隊に無事救助されたとのこと。

〈コースタイム〉
【2月20日】 曇り後みぞれ 美しの森駐車場(9:00) → 出合小屋(11:30)
【2月21日】 曇り後晴れ 出合小屋(6:30) → カニのハサミ(10:15) → 大天狗(12:30) → 出合小屋(17:00) → 美しの森駐車場(20:00)

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