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沢登り・大井川赤石沢
荻原 健一

山行日 2016年8月11日~14日
メンバー (L)荻原、和田、永岡、内田、古屋、澤野

 赤石沢は私の中では昨年のお盆シーズンに遡行しているはずの沢だった。それが一昨年に敗退した上ノ廊下が昨年のお盆にスライドとなり、それでは9月のシルバーウィークに行こう!となったのだが、鬼怒川氾濫の直後ということもあり、赤石沢ももれなく大増水中で入渓してから30分で敗退。そして今回、昨年メンバーに澤野さんを加えての最強メンバー?で再挑戦することと相成ったのである。

【8月11日 晴れ】
 牛首峠でバスを降ろして貰い、すぐに入渓。水量は昨年比大幅に少なく遡行成功の可能性はMAX、モチベーションが上がる。しかし昨年敗退したイワナ淵の通過は、残置シュリンゲに体重をかけた状態からジャンプなども必要で膝下の水量で歩いて行けるという例年の記録ほど簡単でもない。
 後で聞いたのだが、今年は取水堰堤が工事中で水を取っていない=取水堰堤ができる前の本来の赤石沢の状態と同じとのこと。だとすれば大幅にグレードが上がるわけだが、今年は連日の晴天に助けられてそれほどの困難は感じなかった。その後のニエ淵入口の深い釜もそこそこ流れがあるもののKGが華麗な泳ぎで突破してくれる。

イワナ淵の通過ニエ淵入口の深い釜を泳ぎで突破

 続いてニエ淵出口にあるかつては最悪と言われた5m滝は残置ハーケンを利用して落ち口に立つが、ハーケンはボロボロ・グラグラで静加重が精一杯。近くにハーケンを打ち足すが良いリスがなく半分くらいしか入らない。気休めにタイオフしたが本当に気休め程度であった。セカンド以降はロープを出して確保し、全員無事に通過。

ニエ淵出口の5m滝(落ち口への一歩が悪い)取水堰堤が突然現れる

 6m滝は右から取り付くが出だしの這い上がりが厳しくその後もヌルヌルしていて要注意なのでロープを出す。神の淵を越えるとようやくゴルジュが終わり、その先の巨岩帯を越えると沢は穏やかになる。6人いるので結構時間がかかってしまった。まだ時間に余裕があるので竿を出しながら進む。やがて取水堰堤が姿を現し、これを越えて北沢出合へ。
 出合から30mほど本流を進んだ左岸に広い幕営適地があり本日はこれで終了。6人の腹を満たしてくれる程度の釣果は30分ほどで終了し、よく燃える薪にも恵まれ楽しい夜は更けていく。

【8月12日 晴れ(夜のみ霧雨)】
 今日も天気は上々だ。1時間ほどで本日第1の核心となる大迫力の二条の門の滝が姿を現す。
 これは右岸に付いているよく踏まれた高巻き道を使って簡単に越える。すぐに現れる第2の核心:5m滝は右の大岩の隙間に垂れた残置スリングを利用して人工で攀じ登る。6人いるので突破に1時間くらい要した。

大迫力の二条の門の滝5mの大岩内面登攀

 更に大ガランのガレ場を左岸からトラバースすると赤岩の淵となり、ラジオラリヤの赤岩が美しい。のんびりと休憩をとりテンカラ教室となる。初心者でも十分練習できる良い場所だ。次に出てくるのが本日第3の核心で赤石沢最後の核心でもあるシシボネ沢の先のゴルジュだ。ここは圧巻で通過は全く不可能。トポ通りにシシボネ沢を少し上がり踏み跡を右上後にトラバースする(トポには約1時間の高巻きと書いてある)。途中から踏み跡がやや不明瞭というか錯綜するようになり少々ウロウロする。1回の懸垂を交えて沢床に戻るとちょうど1時間くらいだった。我々の通ったルートは恐らく正規ルートではないので迷わなければ30分~40分くらいで十分巻けると思われる。後には難所はないが河原歩きというよりは巨岩帯を右往左往しながら進むので結構時間はかかる。更に竿なんかも出しながら進んだので、もはや時間の観念は皆無となったのだが、後はどこに幕を張ってもよい計画なのでこれでいいのだ。今日も我々6名の腹を満たしてくれる十分な釣果を得ることができて山の神様に感謝する。大雪渓沢の先の大滝淵を越えたカンバ沢出合のすぐ先の右岸を幕場とする。夕食の準備をしていると俊介パーティーがやってきて合流する。夜は合同宴会となり歌なんかも飛び出して大いに盛り上がる。

【8月13日 晴れ(夜から未明にかけて霧雨)】
 今日は特に難所もなくお気楽モードなのだが、1,200mアップが待っているので体力的には甘くない。幕場から15分程度で裏赤石沢との出合。さらに30分程度で百間洞沢出合に到着し、我々はルート通りに百間洞沢に入る。1時間くらいで百間洞大滝15m。
 これは左岸より簡単に巻けるが、一ヶ所滑りそうで滑らないスラブの通過があり念のためロープを出す。これを越えると渓相が変わりお花畑となる。藪こぎのないお花畑が最後の詰めとなり、100点満点の沢が更に加点となる。
 やがて百間洞山の家に出て遡行終了。後は赤石岳避難小屋まで陸に上がったカッパとなる。

見事な百間洞大滝詰めのお花畑で、はいチーズ!

【8月14日】
 今日は下山のみ。赤石岳から赤石小屋経由で椹島へ。

 赤石沢は長年に亘り、私の憧れの沢の一つであった。今回、図らずも取水堰堤ができる前の赤石沢と同じ条件で遡行できたことは素直に嬉しい。また山の恵み、愉快なメンバー?もといそれぞれに違う個性と能力を持ったメンバー、天候等々の様々な条件が揃って、今までで最高の沢登りとなった。上記すべてに心から感謝したい。

〈コースタイム〉
【8月11日】 牛首峠より入渓(9:00) → 北沢出合(16:00)
【8月12日】 幕場(6:00) → カンバ沢出合の先のBP(16:00)
【8月13日】 幕場(6:15) → 赤石岳避難小屋(14:30)
【8月14日】 小屋(6:00) → 椹島(12:00)

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