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沢登り・名取川穴堂沢
金子 隆雄

山行日 2016年9月24日~25日
メンバー (L)金子、箭内

 この飛び石連休は休暇を1日取って和賀山塊の沢へ行く計画だったが、どうも木、金と天気が悪そうだった。9月は雨の中の沢登りが続いたので好天の下での沢登りがしたかった。土、日は天気が良さそうなので日程と場所を変えていつか行ってみようと考えていた穴堂沢へ行くことにした。
 あらためてメンバーを募集したが新たな参加者は現れず箭内さんと二人で行くことになった。途中前も見えないような豪雨に見舞われたが目的地の二口キャンプ場の駐車場に午前2時ころ着いたときには雨はすっかり上がっていた。駐車場にテントを張って軽く一杯やってから寝る。駐車場に他の車はなく我々だけだった。

【9月24日 曇り】
 朝は青空が広がり素晴らしい秋晴れとなった。のんびり7時ころに起き出す。穴堂沢へのアプローチは2kmほど戻って穴堂沢林道へ入るのだが1kmほどでゲートが出てきて車ではここまでとなる。ゲート前に駐車して荷物を整理して歩き出す。雨上がりで道はグチャグチャだろうから始めから沢靴にした。
 林道は広くて歩きやすいが面白山方面の林道を分けると穴堂沢林道は急に細くなり沢のように水が流れている。林道が尽きて踏み跡を少し辿ると猿倉沢に行き合う。ここで沢装備になり溯行開始する。猿倉沢を少し下って左の小尾根を乗り越して穴堂沢へ降り立つ。
 穴堂沢は若干増水しているように思えるが穏やかに流れている。特に厳しい所もなく時折でてくる深い釜とも瀞ともつかないようなのは容易にヘツって越えられる。時間もたっぷりあることだし釣りながら行く。テンカラを振ると待ってましたとばかりに毛鉤に飛びついてくるがちっとも掛からない。たまに掛かっても引き上げるときにバレてしまう。なんでだろうと毛鉤をよく見ると針の先端が折れていた。これじゃ釣れないよね。
 しばらくナメが続いた後に左岸より出合に20mの滝を掛けて古唱沢が入ってくる。そういえば直ぐ下で右岸から沢が1本出合っていたがそれは東沢だったようだ。一匹も釣れないまま竿を仕舞う。
名前の由来になったと言われる大岩  古唱沢出合から少しで沢の真ん中に巨岩が現れる。右から張り出した岩と合わさり狭い隙間から水が流れ出している。ここは穴堂沢(穴戸沢)の名前の由来になったと言われる所だ。隙間を覗いてみると奥は滝になっているようだ。左岸を容易に捲けるので捲いて越えた。その後幾つかの滝を快適に越えていくと核心部と言える短いゴルジュが現れる。左岸の岩が覆いかぶさるような狭いゴルジュ内は深そうな瀞が続き奥には4mほどの滝が見える。滝には流木が立てかかっているので泳いで滝に取り付き流木を利用して登ったという記録もあるが、今日の水量では瀑流で吹っ飛ばれそうだ。ここは捲くことにする。左岸は灌木のない草付きの急斜面、右岸は灌木が生い茂っている。迷わず右岸を選ぶ。枝沢のナメ滝を登って灌木帯に入ってトラバースして沢に戻る。かなりの大高捲きになる。
核心部の短いゴルジュ  朝はあんなに晴れていたのに雲が多くなってきている。核心部を越えたのでもう何処に泊ってもいい。幕場を探しながら行くとすぐに左岸に適当な場所があったので行動を終える。整地をしてタープを張り終えてもまだ2時前、時間があり過ぎる。上流へ釣りに出てみる。そこそこ釣れたので1時間ほどで戻る。焚き火は薪が湿っていて燃えづらいかと思ったが結構よく燃えてくれた。釣ったイワナは天ぷらにした。初めてイワナの天ぷらを食べたという箭内さんはいたく感激していた。

【9月25日 晴れ】
 予報通り今日は晴天だ。早出する必要もないのでゆっくり朝飯のラーメンを食べて7時過ぎに出発する。10分で左岸より西晴沢が滝を掛けて出合ってくる。登れない5m滝が出てくるので右岸の枝沢の滝を登って続く3m滝ともまとめて捲いた。枝沢の滝は嫌らしいがフィックスが垂れていた。
 その後次々と出てくる滝を快適に越えていくと標高760m付近で1:1の二俣となる。左へ行けば大東岳まで近そうだが藪漕ぎになりそうなので藪漕ぎのなさそうな右へ進む。標高900m付近で左岸に赤テープと共に登山道の標識が現れた。だが、想像していたのとはまるで違っていた。権現様峠へは樹林の中に道が続いているが大東岳への道がない。標識は沢の中を指し示している。900mくらいで沢は終わって普通の登山道に上がると思っていたがそうではなかった。地図をよくよく見ると沢はここで大きく左に曲がって大東岳直下まで続いている。登山道は沢の中にあったのだ。
赤テープと共に登山道の標識  沢は1,200mくらいまで続いており沢が尽きるとそのまま登山道へと繋がっていた。急登だが道はよく踏まれている。大東岳で大休止の後、表コースを下山する。途中で穴堂沢林道へ下る道があるそうなのだが分かりにくい道のようなのでそのまま登山口まで下る。登山口から30分ほど車道を歩いて車を回収した後、秋保温泉で一風呂浴びて帰途についた。なお、近くにあった「ばんじ山荘」は廃業して跡形もなくなっています。

 この沢は厳しい所もなく、ナメも綺麗で初心者にもお薦めです。1泊で行けば余裕があって更に楽しめます。

〈コースタイム〉
【9月24日】 穴堂沢林道ゲート(8:05) → 林道終点(9:20~45) → 古唱沢出合(10:45~11:10) → 幕場12:50
【9月25日】 幕場発(7:15) → 西晴沢出合(7:25) → 二俣(8:05) → 登山道合流(8:45) → 大東岳(10:25~55) → 表コース登山口(13:15)

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