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沢登り・頼母木川足ノ松沢
金子 隆雄

山行日 2016年8月27日~28日
メンバー (L)金子、軽部、永岡、大田

 足ノ松沢はいつか行ってみたいと思っていた沢だ。飯豊の沢は厳しいが泳ぎはKGに任せればいい、登攀はカルベッチに任せればいい、いいメンバーがそろったものだ。自分にできるのはドロドロの草付の高捲きくらいのものだ。
 飯豊は遠いので早目に集合して関越道をひた走る。沼田の辺りでは前も見えなくなるほどの豪雨に見舞われる。小雨の中、2時ころに「道の駅 たいない」に着いた。どこで寝るかウロウロ探し回った結果、クワハウスの入口に雨に濡れずに寝られるところがあったので拝借して仮眠をとる。

【8月27日 小雨】
 奥胎内ヒュッテから出る乗合タクシーの時刻に間に合うように5時に起きて奥胎内ヒュッテを目指す。奥胎内ヒュッテの駐車場にはかなりの車が停まっているが登山者の姿は一人もない。以前来たときは建て替え中だったので新しくなったヒュッテを見るのは初めてなのだがまるで豪華ホテルのような姿に変わっていた。乗合タクシーも客がいないので一度も走っていない様子だ。我々が乗り込んだらその時が出発時間になるのだろう。ヒュッテ前で準備を整え6:30にタクシーに乗り込んだ。10分ほどで足ノ松登山口に到着した。料金は一人500円、昨年まで300円だったが値上げされたとのことだ。歩けば1時間近くかかるので500円は決して高くはないと思う。
 登山口から緩く登山道を数分登っていくと足ノ松沢へと下っていく踏み跡があるのでこれを辿って沢へ降り立つ。足ノ松沢は昨日からの雨の影響もなく、この先の厳しさも感じさせないいたって平凡な流れを見せている。小雨の中、7時溯行開始。
小滝で早速の泳ぎとなる  S字状に曲がる2段18m滝下までは苦労はしたが途中の小滝で1回泳いだだけで順調に来られた。泳いだのも午前中だったのであまり寒さは感じなかった。この調子なら今日中に黒滝は越えられるなと思ったがとんでもなかった。足ノ松沢の真骨頂はこの先にあったのだ。2段18m滝は登れずに右岸から捲いたがこれがまたとんでもなく大変な高捲きだった。なるべく低く捲こうと思ったがトラバースできなくてどんどん高みに追い上げられていく。当然踏み跡など皆無で2時間かかって最後は懸垂でようやく沢へ戻った。
 続く2段20m滝、これは登山道からも見える滝だ。これも登れず同じように右岸から捲いたが1時間かかって最後は懸垂。この沢は捲くとほとんど懸垂でないと降りられない滝が多い。深い釜を持った3m滝は左岸の細いルンゼから灌木帯をトラバースして歩いて降りることができた。ルンゼがかなり悪そうだったのでカルベッチがロープを引いて登ったがツルツルでスタンスのないかなり悪いルンゼだった。
5mCS滝の左壁 ホールドが細かく難しい  沢が大きく右に膨らんで瘤のようになったところに出てくる小滝はツルツルの微妙なヘツりとなる。もう薄暗くなってきていて寒いので濡れたくはなかったがまともに水流を浴びて泳いだのと変わらないくらい濡れてしまった。続くCS滝も厳しいヘツりで滝下へ、CSの下を腹ばいで全身フリクションで落口へ抜ける。沢が曲がり切ったところの5mCS滝はホールドの細かい左壁しか登るところがない。ここはカルベッチの出番だ。ザックを背負っては厳しいので空身で途中でハーケンを1枚打って登る。壁を登り切って草付から灌木帯に入って後続をビレーする。後続もザックを荷揚げしてから登り懸垂で落口へ降りる。
 ここでもう真っ暗になりヘッドランプの出番となる。小滝を2つ越えたところに何とか4人横になれそうな場所があったので行動終了とする。斜めで石がゴロゴロしているが真っ暗で他の場所を探すこともできない。タープを張り小雨の中で焚き火も何とか燃え上がり夕食を終え一杯やるともう眠気に耐え切れず皆より先にタープの下へ潜り込む。シュラフを持ってこなかったのでカバーだけでは寒くて寝つかれなかったがいつの間にか眠ってしまったようだ。夜中に寒さで目が覚めるともう眠れない。猫のように丸まって朝まで耐える。

【8月28日 曇り後晴れ】
 今日の天気は高曇りで降りそうな様子はない。7時過ぎに出発する。ここから黒滝まではそれほど時間がかからなかった。黒滝までの間には滝などもなくゴーロを行くだけだった。古めの溯行図にはゴルジュや滝が記されているものが幾つかあったが最も新しいと思われる溯行図には何も記されていないのでなくなってしまったのかもしれない。
 例年だと黒滝の手前に雪渓が残っていて雪渓の状態によってルート取りが変わるようだが今年は全く雪渓がなかった。2段になった黒滝には近寄ることもできず離れたところから眺めることしかできない。右岸から合わさる幅の広いガレたルンゼを登って藪に突入して捲いたが高く上がり過ぎてしまったようでかなり時間を要してしまい最後は懸垂で沢へ戻った。
2段30m黒滝にて  二俣手前の8m滝を右岸の枝沢を少し登って捲いて降りるとすぐに二俣となる。二俣を左に入ると後はどんどん高度を上げていくだけだ。天気が回復してきて時々晴れ間ものぞくようになってきている。草原状になってからは右に寄ると藪っぽいので左の低い方を目指すと藪もなく楽に登山道に上がることができた。靴を履き替え大石山へ登る。すっかり天気が回復し日差しが暑くてたまらない。
 大石山から足ノ松尾根上の登山道を下る。4時のタクシーに間に合わせようと頑張ったが木の根っこだらけの登山道は歩きづらく時間がかかる。自分とオオマサが登山口に着いたのは4時5分、タクシーは既に出発した後で誰もいなかった。KGとカルベッチは乗っていったようだ。ヨレヨレでもう歩く気にはなれなかったので5時まで待つことにする。水が切れていたので川まで汲みにいくことにする。川まで踏み跡が付いているが川は遥か下だ。降りるのはいいがまたこれを登らなければならないことを考えると止めておくことにする。タクシーは5時近くにならないと来ないと思っていたが4時半ころにやってきた。我々が4人パーティだということを知っていたので2人だけのために迎えに来てくれたのだ。ありがたい。
 奥胎内ヒュッテで風呂に入ろうとしたが4時で終了ということで道の駅のクワハウスで入浴し帰途についた。

〈コースタイム〉
【8月27日】 奥胎内ヒュッテ発(6:30)=足ノ松登山口(6:45) → 入渓(7:00) → 780m幕場(19:00)
【8月28日】 幕場発(7:10) → 黒滝(7:50) → 二俣(10:50) → 登山道(12:30) → 足ノ松登山口(16:05)

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