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沢登り・楢俣川ヘイズル沢~アリキノ沢
内田 優生

山行日 2016年8月6日~7日
メンバー (L)内田、和田、永岡、内藤

 ヘイズル沢という沢は昨年、澤野さんと和田さんが「釣りを絡めてヘイズルに行こう」と話しているのを傍らで聞くまで実は存在すら知らなかった。そのときは結局実現しなかったが、その名前は妙に耳に残った。ヘイズルと聞いて、平鶴という漢字だと思い込み、織物のような、日本酒の銘柄のような、なんて美しい名前なんだろうと思ったのだ。後日調べてみると「へつる」が濁りヘイズルになったと聞いて、なんとなくとガッカリした。しかし、美渓で魚もいると聞いていたし、三峰でも過去に例会は出ていなかったようなので、8月の初旬で例会を出すことにした。昨年計画したもののヘイズルに行けなかった澤野さんと和田さんがすぐに参加表明をしてくれた。蓋を開けてみれば募集をかける前に埋まってしまい、逆に5人程の参加を断る結果となった。

【8月6日】 晴れ
 金曜の夜、東所沢に集合してその晩は楢俣ダムの入口付近の資料館で仮眠した。仮眠テントは持って行ったが雨も降っていなかったので使わなかった。晴天予報通りに朝から快晴だった。入渓ポイントまでは長いと覚悟していたが、キレイに舗装された緑のトンネルを歩く快適ハイキングで、特に前半部分はここは軽井沢?と思うほど爽快に歩けた。途中洗ノ沢などいくつかの沢を跨ぐ橋を渡るとあっという間にヘイズル沢の出合に到着。橋を渡る手前を左から川原に降り沢装備を身につけいざ出発。入渓した瞬間から見たこともないようなサイズのイワナが足元を走り一同興奮状態。今日は1,188mのシバ沢との二俣までと比較的短い行程だったので、永岡さんと和田さんが竿を出しながら進む。しかし魚影は見えるものの全く手ごたえがないらしく、結局2匹釣れただけだった。釣り人の足元をからかうように主サイズのイワナ達が4,5匹涼しい顔で?駆け抜けて行くのだから、相手の方が数段上手だったということだろう。腕におぼえありという人は是非お試しを。
左壁からとりつけるが左岸を巻いてしまった  釣りをしない内藤さんと私は日向ぼっこしながら昼寝をしたりして時間を潰し、結局なかなか進まず1,188mの二俣に着いたのは3時半近かった。ここまでロープを出したのはわずか一箇所。しかもそれは結局ルートミスだった。それは10mのそれなりの水量のある滝でよく見れば左壁に階段状の登る岩があったが確認せず、手前の左岸のトラロープに引き込まれてしまい、しなくてもいい危うい高巻きを皆にさせてしまい申し訳ない気持ちになった。その後は特に危ないところもなく、唯一魚止めの滝の高巻きだけどこから巻くのかわからずもたついた。記録では左岸にとりつくと河岸段丘状になっているとあったが、どこが?といった感じで、どこもそれなりに傾斜のある高巻きに見えた。結局滝の30-40mほど手前まで戻り無理やり左岸の壁を木を掴みながら10mほど登るとすぐに、真っ平な登山道のような道に乗ることができた。
魚止めの滝16mは戻って左岸から巻く  その後すぐに今夜の幕場の二俣に到着した。到着と同時に小雨がぱらついて来た。和田さんが右俣方面に幕場を探しに偵察に行くが、適当なところが見つからず戻ってくる。結局ヘイズル沢を10メートルほど上がった右岸を今宵のテン場とした。タープは藪に入ったところにちょうどいい適地があり、焚き火はナメの岩の乾いた場所を陣取った。この日は入渓ほどなくして我々を抜かして行った単独の男性以外誰にも会うことはなかった。宴会が始まりいつものように酩酊状態でウトウトして、気がつくといつものように焚き火の前からいつの間にか人が消えていた。

岩の上の快適な幕場

【8月7日】 曇り
 翌朝は出合いまで戻り、右俣に入ると間もなくしてアリキノ沢とシバ沢の出合が現れる。右俣のアリキノ沢に入り調子よくペースを上げて行く。途中幕場になりそうなところが数カ所あったが、どれもそこまで快適とは思えなかった。1,490mあたりの奥の二俣を過ぎると傾斜が徐々に急になり茶褐色の微妙に滑る巨岩帯に突入する。途中二俣が出てくるがここまで来たらどこを踏んでも頂上に繋がるのだろうと考えなるべく歩きやすい道を選ぶが、藪はないものの結局はヘロヘロになってしまった。2日目も美しいナメや小滝があるものの、ロープを出すようなところはなく、このコースは初心者もしくは経験者の癒し沢希望にピッタリのコースだと実感した。10時40分笠ヶ岳山頂到着。今まさに頂上でラーメンを啜ろうという単独の男性が腰掛けた目の前のハイマツからボロ雑巾のような4人が出て来たので男性をひどく驚かせてしまった。その後も数人の登山客が山頂を踏むものの、皆至仏経由で上がって来たようで、我々の下山路から上がってくる登山客は皆無。なんとなく嫌~な予感。ここで沢装備を解き、異様なトンボの集団を横目で見ながら下山用意を整える。
沢の詰めは巨岩帯の急登だが藪はない  下山路は片瀬沼まではよかったが、その後はぬかるんだ登山道となりこれがあの大人気の尾瀬の山々に詰めあげる一般道?と首を傾げてしまうような藪や倒木も出てくる始末。あまり人が通っていないようだ。途中オドロオドロしい咲倉沢ノ頭避難小屋の前で20分ほど休憩をしたが、恐ろしいので中には入らなかった。その後永遠に終わらないような単調な下山路に飽き飽きした頃、ようやく人工道に出た。でもここからがまた長い。ようやく車に戻ったのは15時半を過ぎていた。次回からは絶対鳩待峠に降りタクシーで戻ろうとメンバーと思いを分かち合った。次回はぜひヘイズル沢を遡行する計画でもう一度来てみたいと思った。

〈コースタイム〉
【8月6日】 楢俣ダムゲート(6:50) → 入渓地点(9:10) → 二俣(15:30)
【8月7日】 幕場(6:20) → 笠ヶ岳山頂(10:40~11:10) → 楢俣ダムゲート(15:30)

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