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沢登り・葛根田川~大深沢
津田 友紀子

山行日 2016年9月22日~25日
メンバー (L)荻原、津田

【9月22日(木) 曇りのち雨】
 前日に東川口駅に22時前に集合。途中のインターで仮眠をして朝6時ごろ起床し、盛岡ICで下りる。天気はあまりよくなく、今にも雨が降り出しそうなどんよりとした空だ。滝ノ上温泉の近くの玄武洞までやってきたが、ゲートが封鎖してあって8:30まで入れない。玄武洞の駐車場にはトイレもあったのでそこで準備をした。8:30になって滝ノ上温泉の駐車場まで移動し、そこから葛根田地熱発電所を通って入渓地点まで歩く。入渓地点近くなると背の高い笹に覆われてくるが踏み跡はある。堰堤の先で入渓する。
お函  河原は開けていて明るいが若干水量が多いようだ。左右の枝沢を眺めながら歩く。エメラルドグリーンの深い淵がいくつも見られ、「もう今回のハイライトに来ちゃったねえ」というお函には大きなイワナが何匹も見られた。今までの沢では見たことのないスケールの淵瀞とベージュ色の明るい岩肌に癒された。
 葛根田大滝は明瞭な左岸の巻道を上がった。しばらく行ってまた川幅が広く緩やかな流れになると、滝ノ又沢と北ノ又沢の出合の左岸に整地された幕場があった。薪を集めて宴会を開始。今回は軽量化で食事は各々、おかずはイワナのバター焼き。チューブバターで炒めて最後に醤油で味付けするだけという私にも嬉しい簡単料理だがとっても美味しい。3日間食べたがまったく飽きない。温まってきたところで雨が本降りになりテントに退散。寝不足もあってすぐに眠りについた。

葛根田大滝

【9月23日(金) 雨】
 この日は朝から雨。テントの中では雨音が当たって大きく聞こえ、今日はゆっくり出かなあと寝袋の中で思っていたが、ほぼ予定通りに小雨が降る中を出発。北ノ又沢を進み、二俣で左に入る。出発から1時間半ほどで雨が止んだ。10mの滝を越えると、白っぽい碧色の岩盤が出てきた。初めて見る色と、急に変わった岩質に驚いた。その後の10m、5mと続く滝はすぐ左側の脇を登る。940mの二俣では右に入り、15m滝は右岸を巻くがちょっといやらしかった。水量が減って平坦なひたひた歩きになり、藪っぽくなってくる。荻原さんの正確なルート取りで、すぐに八瀬森の湿原に続く登山道に出た。周囲に誰もおらず、ここでしばらく休憩。低木も黄色、赤、えんじ色と紅葉していてまるで絵本の世界だ。八瀬森山荘を覗いた後、大深沢に入っていく。最初は少し笹薮があるが次第に沢ははっきりしてきて、今晩のおかずを狙って竿を出す。ただ小さいイワナばかりで、獲れてもほとんどがリリースだ。また雨が降り出してきた。北ノ又沢との出合で幕。最初に予定していた場所は日が射さず湿ったところだったが、北ノ又沢を渡らずに左に折れると開けたところがあった。
 雨と低い気温で体は冷え切っていた。雨が降っていたので焚火もあきらめ、テントに入って暖を取っている間に、荻原さんは雨の中でずいぶん長い間、夕飯のイワナを釣っていて、再び薪も集めてくれ、焚火をすることができた。雨の中しつこく焚火を続けて17時半ごろにようやく雨が止み、体も温まって本当に助かった。この日もイワナを食べられて満足!
 明日は晴れますようにと願ってこの日も早々に就寝。

【9月24日(土) 快晴】
 7:20に出発。北ノ又沢に入るとゴーロが続く。ちょうど1時間でナイアガラの滝。ガイドブックの写真と比べて断然水量が多い。ナイアガラと命名されたのも納得。直登できるという滝の中央は激しい水流でまったく登れそうにない。左側の水流がほとんどないところをロープを出してもらって登る。
ナイアガラの滝  滝を上がると、鮮やかな緑色の藻をまとったナメが広がっていた。日が射しこんで水面がキラキラ輝いている。すぐに十字峡に着いて、そのど真ん中の日が当たる場所で大休止。天国だ。
 再び歩き出して、竿を出してしばらく粘ってみるものの、やはり小さいものしか釣れずリリース。岩にはぬるぬるした苔がついていて、ゴム底がツルツル滑って歩きにくい。源頭の感じになってすぐに湿原に出た。ここで沢もフィナーレ。誰もいない中で湿原に寝転がって晴れた空を眺める。心も晴れやかで気持ちいい。
沢のフィナーレ  ここからはいよいよ藪漕ぎだ。藪はすぐに背丈ほどになって濃くなり、踏み跡もない。上部になるとルンゼがところどころ出てきて、足元がガクっと落ちて危ない。ここでも細かく地図にコンパスを当てて方向を見定めていく荻原さんに迷いはなく、また終始先頭を行ってもらって1時間20分で藪を出た。
 大深山荘は大きく、まだ新しいようでまるで営業小屋のようだった。三ツ石山荘まで行く予定だったがあまりにも立派な小屋を見てここに泊まりたくなった。ただ天気がよかったせいもあるのか、もう中はほぼ寝袋で埋め尽くされていて、ゆっくり宴会をするようなスペースはない。装備を解いたり、水場で水を汲んだりしながらどうしようかとしばらく悩んでいたが、日もまだ高く歩き出すことにした。こぢんまりとした山頂の大深岳を越えると、景色が開けてきて色とりどりの紅葉が目に飛び込んできた。大きな山容の岩手山も見える。小畚山方面にはカラフルな絨毯のような樹木の紅葉が広がっている。小畚山の急登を登り返すころには辺りはガスに包まれ、だいぶ寒くなってきた。汗をかきながら登ったのですぐ冷えてしまった。日もだいぶ落ちたので小畚山の山頂に幕を張らせてもらった。雲の間の淡い夕焼けがきれいだった。
 この日の沢の途中で落ちていた栗が美味しそうで、拾って荻原さんに持ち上げてもらっていたが、長い時間茹でてみたものの、残念ながら美味しくなくて一口食べただけとなってしまった。

大深岳~小畚山からの紅葉

【9月25日(日) 曇り】
 風が強くてテントを畳むのもままならずザックに押し込んで出発。残念ながらガスガスで景色は全く見えない。ただ登山道の脇の紅葉は相変わらずカラフルできれいだった。
 三ツ石山はその名の通り、大きな3つの岩で構成された山頂だった。寒い中、ここの紅葉のシャッターチャンスを狙ってカメラの三脚を立てて待っている人がいた。
 三ツ石山荘は大深山荘よりも大きかった。お掃除をしている人がいてきれいに管理されているんだなあと思った。
 途中の分岐で大松倉橋の林道から上がれるところがあり、たくさんの登山者がいた。ここを過ぎると誰にも会うことがなく滝ノ上温泉まで下っていった。
 最後に、源泉でよく温まる滝ノ上温泉に入って充実の3泊4日の旅が終わった。

〈コースタイム〉
【9月22日】 滝ノ上温泉(8:30) → 入渓地点(9:50) → お函(11:10) → 葛根田大滝(14:20) → 滝ノ又沢と北ノ又沢出合で幕(15:30)
【9月23日】 幕場(7:15) → 15m滝(9:15) → 八瀬森山荘(10:20) → 北ノ又沢出合で幕(14:30)
【9月24日】 幕場(7:20) → ナイアガラの滝(8:20) → 1,120m辺り(10:40) → 湿原(12:45~13:05) → 大深山荘(15:20) → 小畚山(17:00)
【9月25日】 小畚山(5:50) → 三ツ石避難小屋(7:20~35) → 滝ノ上温泉(9:20)

【滝ノ上温泉】
通行止め箇所:玄武洞の先。「しずくいし観光マップ」には11月下旬~5月上旬の冬期は通行止めの記載あり。今回訪れたのは冬期ではないが「8:30~17:00以外は通行止め」の立て看板あり。入山と下山の時刻に要注意。

【温泉施設】
滝観荘:開館時間9:00~16:00

【装備】
ロープ 8mm40m


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