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正月合宿・塩見岳~農鳥岳縦走
内田 優生
津田 友紀子
青木 綾子
永岡 恵二
飯塚 陽子

山行日 2016年12月29日~2017年1月3日
メンバー (L)内田、金子、小幡、飯塚、永岡、青木、津田、八須

【12月29日 曇り後晴れ】記録:内田
 今年は珍しく誰も正月山行の例会を出していなかったので、誰かの個人山行に乗っかればいいかと安易に考えていたら11月に入っても誰も計画している雰囲気がない。このままでは貴重な正月休みが軟調に終わってしまう!と焦りを感じ、11月も中旬に迫る頃慌てて計画を立て興味のありそうなメンバーに送りつけた。本当に誰も何の計画も立てていなかったようで、割とすぐにメンバーが集まった。場所は今まで正月には足を踏み入れたことがなかった南アルプスに決めた。南アルプスといっても鳳凰三山や仙丈・甲斐駒のピストンじゃちょっと物足りないし、白根三山は歩きごたえはあるがメジャーすぎると思い、一度も訪れた事がなかった塩見岳に登る縦走コースに決めた。メンバーの大半は長すぎるよ~と感じたようだが、まぁ計画したもの勝ちということで泣く泣く?賛同してくれた。すぐさま新宿発飯田駅行きの最終バスの席を8人分押さえ、翌朝のジャンボタクシーを朝日交通さんにお願いし、さらに仮眠場所を使わせてもらうことまで了承頂いた。これで塩見岳までの道のりは全て整った。ヤマテンの1週間の予報を見る限り天候も味方をしてくれているようだ。こうして首尾よく8名の長い縦走の旅が始まった。

 初日、タクシーの営業所から4時半にタクシーに乗り込みいざ出発。2時間はかかると聞いていたが5時半頃間違った林道ゲートに行きあたった。遡って3週間ほど前に今回のメンバーのうち3名と参加を取りやめた1名で事前に下見に行ってくれたお蔭で、ここが正しいゲートでないことが分かった。すぐに軌道修正し、6時すぎには正しい冬の林道ゲートに到着した。途中林道ゲート直前に数台の車と仮眠のテントが見えた。塩見に入るパーティが複数いるようで安心した。ヘッデンも必要なく歩けるくらい辺りが薄明るくなった6時45分頃、身支度を整え歩き始める。空はどんよりとしていて、ときおりチラチラと小雪が舞っていた。歩き始めてまもなく後ろから来た数パーティに追い抜かれた。夏ゲートには8時半頃到着した。冬ゲートから2時間ちょっとで夏ゲートに到着したので思っていたほど悪くない。下見隊には冬ゲートからの林道歩きが長いと散々脅かされていたので、まさか初日に三伏峠まで辿り着かないなんてこともあるのかと戦々恐々としていたが、この分なら昼過ぎには三伏峠に到着できそうだ。登山口は夏ゲートからさらに1時間ほど歩いたところだった。ここで一同アイゼンに履き替えゆっくりと準備をしている間にさらに何パーティも後ろからやって来ては追い抜いて行った。こんなに人気のルートだったとは! ただ残念なことに皆塩見ピストンで、どのパーティも塩見の先には行かないという。我々が縦走予定だと言うと、皆一様に「スゴイですね~。頑張って下さい。」と声をかけてくれたが、スゴイのは人数と計画だけで計画倒れに終わる可能性も充分あるのでなんとも微妙な気持ちになる。
三伏峠登山口でアイゼンに履き替える面々  林道を歩き始めたのはトップだったが、ほぼ全ての後続パーティに抜かれ三伏峠に着いたのは14半時近くだった。三伏峠までの道のりは10に区切られそのたびに三伏峠小屋まで3/10や4/10とサインが出るのでペース配分もしやすく歩き易い。初日はとにかく荷物も体も重いので休憩を多めに取りゆっくりと進んだ。天候は徐々に回復に向かい、尾根に乗ってからは小河内岳が見渡せた。さらに三伏峠付近に近づくと、北方向にくっきりと仙丈・甲斐駒、そして我々が向かう塩見岳とその後方に間ノ岳までが見渡せた。間ノ岳までの道のりは果てしなく遠く見えた。到着してみると三伏峠のテント場はエスパース祭りで、翌日塩見を登頂しようとする人達で埋め尽くされていた。 三伏峠はもっとひっそりした場所かと思っていたので、まるで赤岳鉱泉のような賑やかさに若干の違和感を覚えたが、同時に年末のちょっとしたお祭り気分も味わえた。その晩はこれから進む長い縦走路を想い静かに心躍る夜になった。

三伏峠の幕場

【12月30日 晴れ】記録:津田
 朝食は野菜たっぷりのハッチーのすいとん。やさしい醤油味のスープとモチモチした触感が嬉しく、山の新定番になるかも。
 今日も雲ひとつない快晴の朝だ。すっかり明るくなった7時に歩き始めた。ふかふかの雪の中を歩き15分ほどで三伏山に到着。周りの山々が見渡せ、目指す堂々とした塩見岳が前方に見える。空のブルーに白くて大きな塩見岳が映えてかっこいい。いったん緩く下って明るい樹林の中を歩いていく。その後登り返して本谷山に到着。塩見岳が少し近づいた。ここからシラビソの樹林に入っていく。森の中を歩くのがとても気持ちがいい。ジャンボ天が張れそうな空いた場所がいくつか見られた。樹林の最後から急登が始まり、重たい荷物に息が切れる。いよいよ稜線に上がると日が真っ白な雪面に射して眩しい。偵察隊がデポしていたお酒をここで確保。すべて見つけることができず一部断念。
塩見岳直下の岩稜帯  ここからが今日のハイライトだ。ゴツゴツして黒々とした岩が露出している塩見に向かって一歩一歩登っていく。
塩見岳岩稜帯のトラバース  雪がクラストしてピッケルがあまり刺さらない。アイゼンをしっかり雪に噛ませることを意識した。尾根の南側を歩いていくが、天狗岩の辺りだっただろうか、足元がおぼつかない私に、小幡さんがロープを結んでくれた。カツカツの雪面から今度は足元が固まらない雪になってバランスを崩しやすい。細い尾根になると私の前を行く永岡さんは雪の状態が変わるたびに足の置き場を教えてくれ本当に有り難かった。一手一歩を間違ってバランスを崩せば何百メートルも滑っていってしまうと思うと緊張感が半端でない。とにかく余計なことは考えず手と足とバランスに集中して進んでいった。
 全員無事に登り切って14時半過ぎに山頂着。ここで三峰旗を持って記念撮影。
 この下をクライムダウンして下る。時間は押していたが、この先のルートは翌朝凍結して状態が悪いと予想されたので、予定通り先へと進む。しかしこのまま進んでも日が暮れる前に下りきる見通しが立たなかったので塩見岳東峰直下で幕を張ることになった。ここは風も遮ることができ、また景色も見渡せて素晴らしかった。この日は青木さんの具だくさんのカレーうどんを食べて就寝。

塩見岳頂上にて塩見岳直下に幕を張る

【12月31日 晴れ】記録:内田
 昨日は塩見岳直下の2,980mあたりに幕を張った。少しでも進んでおきたい気持ちもあったが、「氷壁」になっていると言われた塩見を越えられたことで安堵の気持ちと共に疲れもどっと出ていた。また、2,940mの北俣岳分岐からの急な下りを暗くなる前に降りられるか自信がなかった。朝30分寝過ごして4時半に起床し、7時過ぎには目の前に富士山を臨む最高の幕場を後にする。昨日に引き続き紺碧の空が広がっている。歩き始めて数分後、北俣岳分岐の手前の比較的斜度の緩い斜面をトラバースしていたときだった。急にアイゼンが雪に入りにくくなったなと思った瞬間、アイゼンの爪が斜面を捉えられずツルッと滑った。直後斜面を15メートルほど滑落した。幸運なことに滑落して数メートルでパフパフの雪質に変わったので、なんとか減速して止まることができた。どこも怪我はなく、一瞬の出来事だったので恐怖心すら湧かなかった。このときは何も感じなかったが、このプチ滑落が後を引き、その後トラバースをする度、小さな恐怖心が徐々に増幅していくのを感じた。逆に言えばここで滑っていたからこそ、その後慎重に進めたのかもしれない。そういった意味では無駄な経験ではなかったと思う。
塩見岳から北俣岳分岐へ向けて  北俣岳分岐のピークに立つと眼下にはテカテカと光る薄い氷をまとった急斜面が広がっていた。急すぎて斜面の途中までしか見えない。ここから2,685mまで一気に250メートル下らなくてはいけないというのに・・昨日ほとんど使用することがなかったロープをトラバース箇所で2回、その後の急斜面で1回使った。スタンディングアックスビレイをするにも雪面にピックが深く入らず、まともなアンカーが取れない状態だった。KGとバタやんがロープをなんとかフィックスしてくれ、一同ロープを手繰りながら降りた。
スリリングな北俣岳分岐からの下り  この程度の斜面で完全にバックステップで前爪のみに頼らなくてはいけないのならば、今後控える三峰岳と間ノ岳はどうなるんだろうと地形図を見て暗澹たる気持ちになってしまった。今心配してもしょうがない。とりあえず今日のうちはもうこれほどの急下降はない。気持ちを切り替え長い縦走路を進む。天気はこれ以上望めないほど最高だ。進路には間ノ岳があり、その奥には仙丈と甲斐駒ヶ岳がそびえ立ち、左には中央アルプス、奥に北アルプス。右には農鳥、その向こうに富士山。こんな好天北アルプスでは経験したことがない。一度正月で南に来るともう北には戻れないね~と話しながら9時半頃北荒川岳手前のキャンプ場跡地を通過する。ここの手前の小ピークにも幕営禁止という看板があった。少し下れば夏場は雪投沢から水が取れるのだろう。確かに絶好の幕場になりそうだ。
雪投沢源頭のコル  北荒川岳を過ぎたあたりで、段々と雪が深くなり、今回初めてワカンを装着した。すると、驚いたことに我々の進路から人が近づいてくるのが見えた。30歳前後の単独の男性で、仙丈から三峰岳を越えて塩見を通り荒川岳の方まで行くという。相当なツワモノだ。三峰岳の様子を聞くと、登りはアイゼンが入らないほどカチカチに凍っていたと言う。間ノ岳は通ってはいないが、もっと悪いコンディションだと思いますとサラッと言ってのける。ここまで雲一つない青空の下、爽快な雪山歩きをしていた一同の心にまたまた暗~い雲がかかった。しかし我々が下る三峰岳の下降ルート(東面)は彼が登って来た仙丈から来るルート(北面)とは違う尾根だ。状況もきっと違うはずだとなんとか自分に言い聞かせる。ここから先はルーファイが大変だったという単独の男性の言葉通り、この後は樹林帯に突入し、踏み後も右往左往し、自分でもどこを歩いているのかわからなくなる。尾根から外れ森の中を歩き、再度尾根に乗り眺望が開けたピークが新蛇抜山だった。時刻は既に2時を過ぎていた。ピークから見渡す限り、熊ノ平の小屋はいくつかのアップダウンを繰り返し、樹林帯を通りトラバース気味に下った先にあるようだ。目的地は見えるが果てしなく遠い・・ 安倍荒倉岳の数十メートル下をトラバースした頃にはヘッデンが必要なくらい辺りは暗くなっていた。途中錯綜する踏み後を無視してコンパスの方角だけあわせて進んでいたが、暗くなった樹林帯では全く道がわからない。もう一度踏みあとを探し小屋まで辿っていきなんとか18時に熊ノ平小屋に到着することができた。小屋は内部で2段に分かれていて清潔に保たれていた。4.5テントが2張収まるスペースがあるかは見た限り微妙だった。それ以上に皆疲れ果ててテントを張る気力すらなかった。小屋には10メートルほど下ったところに沢が流れていて水は確保することができた。なんとありがたい! 結局この日は11時間行動となり、疲労で嘔吐する者2名、うち1名は食事も喉を通らずという惨憺たる結果になってしまい、明日に控える三峰岳、間ノ岳を前に若干不安要素を残したまま1日が終わった。

【1月1日 晴れ】記録:青木
 「5時です、5時です」2017年は皆を起こすハッチの声で始まった。小屋の中は寒かったがシュラフにもぐってしまえば快適で、4時起床のはずが元旦から朝寝坊してしまった。実は4時から皆を起こそうとしてくれていたのだが、誰も起きなかったらしい。元旦の朝食はおせち。ニワトリとサル(永岡さん似との声あり)の絵柄の蒲鉾、黒豆、昆布、もち入り雑煮。数日間山を歩き続けて、今日が何日なのかすぐに思い出せなくなっていたが、このプチおせちで正月を迎えたのだなあと実感した。
 8時、熊ノ平小屋を出発。木々の間を縫うように急な斜面を登ると、40分ほどで稜線にでる。風は強いが今日も快晴に恵まれた。前方にはこれから向かう間ノ岳、背後には塩見岳とこれまで歩いてきた稜線が見えて爽快だ。しかし、この先は凍結した斜面とやせた岩稜が続き緊張を強いられる。凍結した斜面を、前爪で蹴りこみながら進む。一歩足を滑らせたら、この斜面をどこまで滑り落ちるのだろう。一刻も早くこのスリル満点な場所を通過したい思いでいっぱいになった。小屋から約3時間で三峰岳到着。ひとまず緊張から解放されてホッと一息、山頂で内田リーダーと握手した。
三峰岳直下の気が抜けない斜面の通過  この山は『みぶだけ』と呼ばれているが、本来は『みつみねだけ』というらしい。その名前に親近感がわくと同時に、惜しい山だなあと感じた。標高は2,999mもあるのに、3000m級の峰が連なるこの地域にあっては目立たない存在。あと1m高ければもっと知名度も上がっただろうに、残念な山である。三峰岳から来た方向を振り返ると、なんと我々の通過してきた稜線をたどる単独の登山者が見えた。前日も単独行の若者とすれ違ったが、この季節にひとりでこんな場所に来るなんて、世間には物好きな人がいるものだ。三峰岳でしばし休憩後、下りは急なため、山頂に立つ丈夫そうな標柱を支点にしてロープをおろし、懸垂下降した。三峰岳~間ノ岳は約2時間。
間ノ岳までもうひと踏ん張り!  相変わらず気の抜けない行程であったが、間ノ岳山頂近くは傾斜が緩くなり広い山稜となる。山頂からは北岳がすぐ近くに見え、広く開けた東側に大きな富士山が出迎えてくれた。ここまで来たらあと一息。本日の幕営予定地、農鳥小屋へと向かうのみ。農鳥岳方面に下っていると、少し離れた場所から間ノ岳へ登っていくパーティーが目に入った。永岡さんが「もーとー!!頑張れよー!」と叫び手を振った。こちらを向いたようだが、ちゃんと聞こえたのか。何事だと思われただろうか。
 午後遅くなるにつれ、ますます西風が強くなり、立っていても風にあおられるほど。15時前に農鳥小屋に到着したが、あまりの強風に幕営地がなかなか決まらない。まず農鳥小屋前。小屋はほとんど雪に埋もれている。建物と建物の間に設営すれば少しは風が防げるか?しかしスペースが狭すぎる。
雪に埋もれた農鳥小屋  次にテント場へ移動。設営を始めるも、強風にあおられてテントが今にも飛ばされそうになる。だめだ、とても張れそうにない。撤収!!少し戻って再び適地を求めて右往左往。結局、わずかに岩陰になっていて気持ち風が遮られそうな場所を幕営地に決定。雪壁を掘り崩してスペースを広げるとのこと。みんなで手分けしてスコップで堀りはじめた。いったん決心したら早いもの。特に小幡さんの掘りっぷりが見事であった。ベテランの技だ。強風の中、テントを3人で抑えつつ1人がポールを固定、急いで荷物を中につっこんで人がもぐり込む。やれやれ、やっと落ち着いた。一時はテントをかぶって小屋影でビバークかと本気で心配した。テントの中でご飯を食べ、お酒を飲んで、シュラフにもぐる...それがこんなにもありがたいことだとは。テントの中が今までになく幸せに感じられた。夜も風が弱ることはなく、テントを激しく揺らし続けた。この暴風の中では眠れまい、と思ったのもつかの間、爆睡。

【1月2日 晴れ】 記録:永岡
 昨日テント設営からずっと強風だったが、夜中はほとんど風がなく穏やかな夜が過ごせた。入山してから毎日4時起き予定が20~30分ほど遅れていたが、今日は皆4時に目が覚めた。前日みた西農鳥岳の急登、西農鳥岳から農鳥岳の稜線付近にヘリがホバーリングしていて、何かあったということが想像され、厳しいルートであることを皆が感じ取っていたからだと思う。食事をしてテントを出るときには前日同様風が強くなり、テントをたたむのも苦労した(自分は某所から皆がテントをたたむのを見ていただけだったが・・・)。
西農鳥岳から農鳥岳へのヒヤヒヤのトラバース  今日は農鳥小屋直下から西農鳥岳、農鳥岳、大門沢小屋までの行程。早速西農鳥岳への急登である。毎回のようにリーダーうっちーが先頭で進んだ。2番手は、リーダー指示でロープを持っている小幡さん、それに続いて青木さん、はっちーである。2日目から妙に体調が優れず、少し歩くとすぐに息があがってしまう自分は後ろから2番目。一番後ろは金子さんがついてくれた。すぐに息があってしまう自分の荷物を、前にいるうっちー、はっちー、青木さんに持ってもらった。急登を登りきると、東側に西農鳥岳に向かう嫌らしい稜線だ。前日ヘリがホバーリングしていたのもこの稜線だったと思う。主に稜線の南側の斜面をトラバース気味に進んだ。
 途中、滑落者のものと思われるザックが残置されていた。西農鳥岳経由で農鳥岳までの稜線はしっかりアイゼンが効くが、長いトラバースの連続で、前の方にいるうっちーらは大変だ。後ろの方にいる自分らは前の人のステップがしっかりできているので、それほど苦労はなかった。荷物を持ってもらっている分、何かしらフォローをしてあげたいが、息が上がって前まで行けない。何とももどかしい山歩きだった。
 なんだかんだで農鳥岳山頂に到着。山頂で写真撮影し下りに入る。

農鳥岳頂上から富士山を眺める農鳥岳から大門沢下降点へ向けて下山

【1月3日 晴れ】 記録:飯塚
 冬山合宿6日目の朝一。一番若手のハッチが、今日も元気に4時に起床したらしく、なかなか起きない(起きられない?!)みんなを懸命に起こしている声で目が覚めた。目覚めたここ大門沢小屋はすでに下界のようで、昨日の烈風の稜線とはまるで別世界。冷え込みもほとんどなく、安心感に包まれながら起床することができた。6日目の予備日に入っていたので、各自の予備日用の朝食を分け合い、早々に下山にとりかかる。最終日も天気は快晴で、これで全行程の6日間全て天候に恵まれたことになり、このことに改めて感謝。ここからは積雪もほとんどなくなり里山のような道になるが、沢を渡る箇所が多くあり、危うい滑りそうな丸太の橋をいくつも越えていくことになる。壊れかけている橋は避けて、沢中の石を飛び越えたり、やむを得ない場合は渡渉をしながら進む。そんなことを繰り返しながら下山をしていき、眼下に発電所の取水口が見えてきて、その脇を通り抜け、長い吊り橋を渡り終えて、ようやく林道に降り立つことができた。6日間の厳しい山行を終えて、ほぼ全員がむくんだ顔をしていたが、無事に下山できたことに自然に顔がほころんでいた。最後は、お楽しみの奈良田温泉で汗を流し反省会で締めくくり、帰京となった。
 何年か振りに厳冬期の南アルプスを縦走し、かなり厳しい思いをしたのだが、終えてみてその山々の懐の大きさを感じとることもできた。まだまだ歩いていない尾根も発見したので、懐の大きな南アルプスにまた足を向けてみたい。そして、今回の長大な尾根ルートを歩き通すことができたのは、何よりもリーダーのうっちー始めメンバーの皆様のお蔭です。本当にありがとうございました。

〈コースタイム〉
【12月29日】 冬季ゲート(6:40) → 三伏峠(14:30)
【12月30日】 三伏峠(7:20) → 本谷山(8:45) → 塩見小屋(11:30) → 塩見岳(14:40) → 幕場(15:15)
【12月31日】 幕場(7:00) → 北荒川岳(11:00) → 新蛇抜山(14:00) → 安倍荒倉岳(16:50) → 熊ノ平小屋(18:00)
【1月1日】 熊ノ平小屋(8:00) → 三峰岳(11:15) → 間ノ岳(13:30) → 農鳥小屋(15:00)
【1月2日】 農鳥小屋(6:45) → 西農鳥岳(8:30) → 農鳥岳(10:50) → 大門沢分岐(11:40) → 大門沢小屋(15:15)
【1月3日】 大門沢小屋(7:00) → 林道(9:45) → 奈良田温泉(10:40)

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