トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ353号目次

正月山行・遠州の山
鈴木 章子

山行日 2016年12月30日~2017年1月2日
メンバー (L)鈴木(章)、藤岡、成田

 長い間懸案だった遠州の山行き、私が腰を痛めたことで実現、正に『塞翁が馬』だ。県別ガイドブック静岡県の山を全て登ることを目標にしている藤岡氏のお陰だ。他何人か声を掛けたが良い答えは得られず、いつもの「グリコのおまけ」の成ジイさんだけが即答。こんなときは頼もしい限りだ。
 前夜、池袋駅21:30出発。途中、掛川サービスエリアのヘリポート脇で仮眠。
 出発当初は北風が冷たく雪の心配もしたが4日間好天に恵まれ暖かなお正月だった。
 岩岳山・京丸山の山域は国の天然記念物にされているアカヤシオ・シロヤシオの群生地。登山道を挟んでツツジの木の群生しているのは観察できた。落葉したこの時期に訪れるのは勿体ない気もするが、我々勤め人が、関東から行くには休日利用では難しい。再度行く機会があれば見てみたいものだ。
 歩き始めて気が付いたことだが、たかが1,400m足らずの山でも、さすが南アルプスの前衛。谷深く・尾根細く急峻。取付きはいつも這い上がるようだった。

【12月30日】
 初日は睡眠不足もあり、今回一番短時間の県別ガイドの岩岳山から登り始めた。登山口にログペンションがあったが、営業しているとは思えなかった。
岩岳山山頂  ゲート手前の駐車場に車を停め歩き始めたが、水道タンクは確認できないまま林道を1時間ほど進むとトイレのある休憩所に着いた。ここが小俣事業所跡、そこから20分ほど林道を進むと登山口があった。急斜面のトラバース道を重ねながら荷小屋峠に着く。峠から先も細い尾根が続き稜線と合流。まず神社に向かう。鳥居を2つ潜ると祠のある山頂に着く。賽銭箱が至る所にありローマ字で「SAISEN」と書いてあるのもあり集金の熱意を感じる。
 山頂から竜馬ヶ岳が大きくゆったり見える。元気なら足を延ばす予定だったが手前に深い峠が有り、「寝不足だから」を言い訳に岩岳山方面に引き返した。途中で浜松北から来たという若い男性とすれ違う。結局、彼とは、抜きつ抜かれつで、ゴールまで一緒だったが。
 痩せ尾根の先の山頂は狭かったが展望は良く、明日登る京丸山や高塚山など深南部方面が見渡せた。花のない時期はどこにでもある岩山にしか感じないのが悲しい。岩岳山の西斜面はアカヤシロが素晴らしいらしいが岩の多いガレ地でのんびり花見は難しいのでは。
 入手山までは虎ロープも多くあったが、その後はゆったりとした登山道が続き高架線の下を潜るとまもなく水道タンクの脇を通り林道に出た。呆気なく下山した気がした。残り10分も歩けば駐車場。駐車場で今夜の宿泊地を相談した。

深南部の山々

【12月31日】
 2日目の京丸山は「京丸牡丹の悲話」のある地域。遠州で最奥の山。南北朝時代の落人が住み着いた話もある。15年ほど前まで最後住民の1人が住んでいた藤原家がある。「ボタンに京の家紋」。歴史好きな私には心惹かれることが多い山域だ。
 少しハードだが、永野敏夫氏著『南アルプス・深南部』のルートを歩く。周遊コースだ。
 狭いゲートの前に車を停め、左側の林道を10分ほど行くと作業小屋がありその斜め向かいに取付きがあった。取付きから梵字山分岐までキツイキツイ登りが続いた。約2時間、這い上がるに等しい感がある。主稜線に出てしまえばゆったりとした尾根に変わるのがこの山域の特徴なのか、梵天山山頂は広くゆったりとしていた。風が少しあり寒かったので陽だまりまで下山。雑木林の間から御岳・中央ア・赤石?・富士山の雪が少ない山々が見える。
ボタンに京の家紋  日陰で寒いので早々に下る。梵字山の分岐まで下がると花柄の可愛い指導標があった。女性が作ったのだろうと男性たち。木肌が白く塗られているのが色っぽい。
 京丸山までの尾根はハイキングのような、ゆったりとした尾根で、途中の灰縄山を気づかず通り過ぎてしまった。尾根の左側は何百本もツツジの木が、花の時期は見事だろう。
 遠くに見えていた京丸山もあっけなく到着。山頂は雑木もなく展望は梵字山より遥かに良いが特に印象つけるものをこの時期には感じ取れなかった。山頂でゆっくり休み下山コースを検討。山頂から林道と合流するあたりで藤原家に行ける道があったらしいが藪と化して見つけられるか疑問。林道が予定より早く合流したため下山口が見つからずそのまま林道を1時間半歩くことになった。途中の山から20分ほど下った先にお墓があり、その先に今は無人となった大きな中2階の藤原家が有った。鬼瓦は勿論「牡丹に京」の家紋。道路を挟んだ向かい側に藤原家の神社。時々人が入るのか廃屋感を感じさせなかった。

廃屋藤岡さんと成田さん

 60年に1度咲く直径傘を広げた大きな白い牡丹の伝説の地。遠い昔のロマンを感じる。
 そこから、駐車場までは林道を戻り山道に入るより林道を下ったほうがいいと話が決まり、夕暮れを気にしながら1時間10分ほどでゲートに着いた。本日は9時間歩いた。
 今宵の宿泊地は、川根本町の道の駅。川を挟んで大井川鐵道が走っていた。

【1月1日】
 3日目、本日が山登り最終日。昨日までの疲れもあり今一つ元気が出ない高齢者2人。
 今夜宿泊予定の接阻峡温泉駅前の森林浴(宿名)の駐車場に車を停め出発。登山口は大井川を挟んだ対岸。静岡県のガイドブックを頼りにお茶畑の中の道をウネウネと登っていくと林道に出る。林道を横切る登山道はよく整備されていて体力だけの山登りだ。キツイ登りも最初の鉄塔を過ぎると気にならなくなった。
 長島ダムを右眼下に見下ろす周遊ルート。冬枯れの山は展望もよく中央ア・御岳・深南部・富士山・更に何度トライしても飽きない大無間連山(小無間・中無間・大無間・前無間)が大きく目に入る。2年前の冬は大雪で敗退したが、今年の積雪は見る限り皆無。悔しい気持ちが少し湧く。しかし、このルートは展望を楽しむには申し分ない尾根が続く。
七ッ峰山頂  七ッ峰山頂は狭く山頂を目指して登ったような迫力はなかった。三角点と山名板以外何もなかった。休憩も程々に、山頂から20分ほど急下降をするとこれまでと同じ穏やかな尾根に戻った。日だまりハイクに近い尾根がしばらく歩くと1,320mP益田山山名板があり分岐にもなっていた。地図にはこのピークも山名もない。良く判らないまま天狗石山を目指す。キツイ登り返しから始まり3つほど登り切ると我々の下山口の指導標があり、その先が広い広い天狗石山の山頂だった。山頂からわずかの所に丸い智者山が見える。名前が良いので行ってみようとは思うが『行き35分、帰路はもう少しかかるかなー』と、なぜか全員弱気。結局、井川線に乗りたいという藤岡氏の意見で下山することにした。
 最終便が15:48。14時出発、駆け足で下山。奥大井湖上駅に15:35着。千頭に向かう列車が入線。静かな駅だが思いの他、利用者が多かった。
井川線  我々は、待ち時間を利用して、藤岡氏はレインボーブリッジを渡りたいと鉄橋を歩きに行き、私と成ジイさんは駅周辺を見学。予定時刻に接阻峡温泉行が入線、乗車。一駅の旅が終わった。
 井川線も、今は接岨峡温泉駅が終点だが3月中旬には井川駅まで開通すると車掌さんが教えてくれた。見渡せばどの乗務員も、皆、若く親切で明るい。観光業とはこうでなければ。
 宿に着いた我々は2部屋を貸し切り、風呂と食事と暖かい布団で3日間の疲れをほぐした。

〈コースタイム〉
【12月30日】 岩岳山(快晴 風少々)
『このコースは県別ガイド静岡県から』
駐車場(7:50) → 水道タンク手前分岐 → 小俣事業所跡(8:55~9:10) → 最後の水場(9:55) → 荷小屋峠(10:25~10:35) → 神社手前分岐 → 鳥居(11:10) → 岩岳神社(11:15~11:20) → 分岐に戻る → 岩岳山山頂(12:10~12:30) → 入手山(13:45) → 水道タンク(15:00) → 駐車場(15:10)宿泊地春野町気田 ホタルの里公園
【12月31日】 京丸山(快晴 無風)
『このコースは南アルプス・深南部から』
駐車場(ゲート前)(7:23) → 作業小屋前(取付)(7:32) → 977尾根合流(8:35) → 梵字山分岐(9:25) → 梵字山山頂(9:50) → 分岐に戻る(10:30) → 灰縄山(1,420P)(11:45) → 京丸山山頂(12:23~12:45) → 山の神(14:30) → 藤原家宅(14:50~15:00) → 駐車場(ゲート)(16:10)宿泊地大井川鐡道脇 川根本町の道の駅
【1月1日】 七ッ峰・天狗石山(快晴 無風)
『このコースは県別ガイド静岡県から』
接岨峡温泉駅(8:25) → 接阻峡大橋 → 登山口(8:40) → 最初の鉄塔(9:30) → 2番目の鉄橋(9:50) → 三峰分岐(11:20) → 七ッ峰山頂(11:30) → 益田山(1,320)(12:30) → 分岐(13:40) → 天狗石山山頂(13:50) → 分岐に戻る(14:07) → 林道(15:20) → 奥大井湖上駅(15:35)接岨峡温泉宿泊
【1月2日】 帰京

トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ353号目次